著者
前澤 裕之 松本 怜 西田 侑嗣 青木 亮輔 真鍋 武嗣 笠井 康子 Larsson Richard 黒田 剛史 落合 智 和地 瞭良 高橋 亮平 阪上 遼 中須賀 真一 西堀 俊幸 佐川 英夫 中川 広務 笠羽 康正 今村 剛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

近年、火星では赤外望遠鏡やキュリオシティなどによりメタンが検出され、その起源については、生物の可能性も含めた活発な議論が展開されている。また、2010年には、ハーシェル宇宙望遠鏡に搭載されたHeterodyne Instrument for the Far Infrared(HIFI)により、低高度で酸素分子の濃度が増加する様子が捉えられ謎を呼んでいる。系外惑星のバイオマーカーの挙動を探る上でも、こうした分子の変動を大気化学反応ネットワークの観点から詳細理解することが喫緊の課題となっている。現在、東京大学航空工学研究科の中須賀研究チームが火星への超小型深宇宙探査機/着陸機の検討を進めており、我々はこれに搭載可能な簡易なTHz帯のヘテロダイン分光システムの開発検討を進めている。火星大気の突入速度とのトレードオフの関係から超小型衛星に搭載できる重量に制限があるため、現時点で観測周波数帯は450 GHz帯、750 GHz帯の2系統で検討しており、地球の地上望遠鏡からでは地球大気のコンタミにより観測が難しいO2やH2O,O3や関連分子、それらの同位体の同時観測を見据えている。これにより、昼夜や季節変動に伴う大気の酸化反応素過程に迫る予定である。これらの分子の放射輸送計算も実施し、バージニアダイオード社の常温のショットキーバリアダイオードミクサ受信機(等価雑音温度:4000 K)、分光計にはマックスプランク研究所が開発したチャープ型分光計(帯域1GHz)を採用することで、火星の地上から十分なS/Nのスペクトルが得られる見込みである。重量制限から追尾アンテナなどは搭載せず、ランダーではホーンアンテナによる直上観測を想定している。着陸はメタン発生地域近傍の低緯度の平原を検討中であるが、現時点ではまだランダーとオービターの両方の可能性が残されている。ランダーによる観測の場合は、off点が存在しないため、通常のChopper wheel法による強度較正が行えない。そこで、局部発振源による周波数スイッチと、2つの温度の黒体/calibratorを用いた較正手法を検討している。システムを開発していく上でPlanetary protectionも慎重に進めていく必要がある。本講演では、これら一連のミッションの検討状況について報告する。システムや熱設計の詳細は、本学会において松本他がポスターにて検討状況を報告する。
著者
笠羽 康正 三澤 浩昭 土屋 史紀 笠原 禎也 井町 智彦 木村 智樹 加藤 雄人 熊本 篤志 小嶋 浩嗣 八木谷 聡 尾崎 光紀 石坂 圭吾 垰 千尋 三好 由純 阿部 琢美 Cecconi Baptiste 諸岡 倫子 Wahlund Jan-Erik JUICE-RPWI日本チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.96-107, 2016

<p>欧州宇宙機関(ESA)木星探査機JUICEに搭載される電波・プラズマ波動観測器RPWI(Radio Plasma Wave Instruments)は,欧州チームにとり米土星探査機カッシーニ搭載のRPWS,日本チームにとり月探査機かぐや・ジオスペース探査衛星ERG・日欧水星探査機BepiColombo搭載の電波・プラズマ波動・レーダー観測器群からの発展展開となる.木星・衛星周回軌道への初投入となる低温電子・イオンおよびDC電場観測機能,電磁場三成分のプラズマ波動観測機能,電波の方向探知・偏波観測機能,および高度オンボード処理によるパッシブ表層・地下探査レーダー機能や波動-粒子相互作用検出機能の実現により,木星磁気圏の構造・ダイナミクスおよびガリレオ衛星群との相互作用,氷衛星の大気・電離圏および氷地殻・地下海へのアクセスを狙う.2016年7月に仙台で行なった「RPWIチーム会合」での最新状況を踏まえ,1970年代に遡る本チームの経緯・目標・展望を述べる.</p>