著者
臼田 雅之
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.839-861, 2011-03-30

本論はインド大反乱までの英領インドを近世ととらえた上で論じる。植民地支配は宗教を特異な領域として生み出し、それがインドをとりわけ宗教的とみなすインド観を成立させた。合理的な精神をもち、世俗的な国民国家のイデオローグとしての性格を強く示すラームモーハン・ローイ(一七七四-一八三三)は、「近代インドの父」と言われるばかりではなく、「宗教・社会改革者」として有名である。宗教に限定されない近代イデオローグであったローイが、なによりも「宗教・社会改革者」として登場せざるをえなかった点に、英領インドにおける「宗教」領域の特異性がある。そこでは社会は宗教と一体化したかのごとく現象する。こうしたローイの思想的位置を、内村鑑三によって「宗教の敵」と呼ばれた福澤諭吉との対比からさらに考える。ローイと福澤の類似点を、両者がともに評価したユニテリアンの思想を媒介させることで明らかにする。
著者
臼田 雅之
出版者
三田史学会
雑誌
史學 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.109-133, 2015-04

文学部創設125年記念号(第1分冊)論文 東洋史はじめに第一章 詩人の形成とナショナリズム第二章 タゴールとスワデシ運動 : ナショナリズム批判論の形成第三章 ナショナリズム批判の内在的展開おわりに
著者
水野 善文 藤井 守男 萩田 博 太田 信宏 坂田 貞二 臼田 雅之 石田 英明 宮本 久義 高橋 孝信 橋本 泰元 高橋 明 松村 耕光 横地 優子 山根 聡 萬宮 健策 長崎 広子 井坂 理穂
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

インドの多言語状況は、時代を通して地域的な多様性だけではなく社会的にも幾つかの層をなしていた。言語の差異を超えて愛好・伝承され続けてきた文学・文芸を対象に、古代から現代まで、多くの言語の各々を扱うことのできる総勢30名以上のインド研究者が共同して研究を進めた。その結果、民衆が自らの日常語による創作から発した抒情詩や説話、職業的吟遊詩人が担った叙事詩、それらをサンスクリット語で昇華させた宮廷詩人、さらには詩の美的表現法が現代の映画作りにも至っている、といったインドの人々の精神史の流れを解明できた。