著者
則内 まどか 菊池 吉晃
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.135-140, 2016 (Released:2017-10-31)

Parenting plays a critical role in the infant’s survival and optimal development, as well as in the parent-infant attachment. The parent-infant relationship provides infants with their first social environment, forming templates to interact with others. In this review, we focus on neuroimaging studies of human maternal brain associated with the development of mother-infant relationship. First, we review the functional and structural changes in the mother’s brain during the early postpartum period. Second, we discuss the neural basis of maternal love, in which the orbitofrontal cortex integrates the reward and interoceptive processing systems, which suggests that a mother’s infant is not only a reward, but also functions to protect the mother's life through the production of homeostatic emotions in the mother. Third, we discuss the maternal brain including how the orbitofrontal cortex might possibly regulate maternal stress during the “terrible twos”. Maternal stress adaptations are important not only for the maternal behavior, but also for the mother’s well-being and mental health. Finally, we focus on the long-term effects of the early experience of parental care on the infant’s brain function, including those associated with later parenting and how maternal brain might shape the infant’s current and future brain.
著者
跡見 順子 清水 美穂 秋光 信佳 廣瀬 昇 跡見 友章 長谷川 克也 藤田 恵理 菊池 吉晃 渡邊 敏行 竹森 重 中村 仁彦 井尻 憲一 吉村 浩太郎 高野 渉 神永 拓 江頭 正人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

1Gという重力への適応を通して地球上で進化してきた人間は、動くことで重力を活用して身体を賦活化し、健康な状態を維持することができる。新しい健康科学イノベーション"重力健康科学"研究では、生命科学、脳科学、理学療法学、機器開発者が連携し、これまで皆無だった"ホメオスタシス範囲の評価系構築"に向けた研究に取り組んだ。いかに自重支持を行いながら運動し転倒しないようにするか?細胞と身体をつなぐ緊張性収縮のダイナミック制御システムを研究することが鍵でありかつ可能であることを、この萌芽的研究が明らかにした。
著者
菊池 吉晃
出版者
東京都立保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

多チャンネル脳磁界計測システムから計測される同時多発的な神経活動を高時間分解能で複数の発生源を推定できる解析システムを開発した。同システムを用いて、脳内作動記憶(working memory)に関する課題のうち、サルなど人間以外の動物を対象にしては困難なメンタルローテーション(mental rotation)の神経機構について検討した。2種類のメンタルローテーション課題を設定した。ひとつは手の線画を提示し、提示された手が被験者自身の右手であるか左手であるかを判断してもらう課題。もうひとつは、アルファベット文字を提示し、それが鏡像文字か否かの判断をさせる課題であった。いずれも、被験者の左視野に視覚刺激が提示された。両課題とも、刺激提示からおよそ100msec〜200msecにおいて視覚皮質(外側後頭皮質)や後頭-側頭皮質基底部、さらに下側頭皮質において神経活動が認められた。一方、時間的に遅い高次機能の活動部位には違いが認められた。手の心的回転課題では、刺激提示からおよそ200msec〜300msecにおいて右下頭頂小葉での活動が認められた。一方、アルファベット課題の時は、およそ300msecにおいて左上側頭領域の活動が認められた。さらに、両課題においてメンタルローテーションに深く関与すると思われる下頭頂小葉-運動前野の同時的神経活動が認められた。特に、手のメンタルローテーション課題では、運動前野の左半球優位性が観測された。それに対して、アルファベットのメンタルローテーションについてはこのような優位差はなかった。
著者
跡見 友章 則内 まどか 大場 健太郎 跡見 順子 菊池 吉晃
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.149-160, 2015 (Released:2018-09-07)
参考文献数
47

二足での身体バランス制御の神経機構は,転倒回避など,ヒトの生存戦略において重要である。一方,方法論的制限により,身体バランスが不安定な状態の脳活動に関する研究は少ない。我々は,身体バランスの不安定性に応答する自己特異的な神経機構を検討するために,動作観察および自他比較の手法が有効であると考えた。本研究では,健常男性13 名に対し3 条件のバランス課題(動的不安定,動的安定,静的安定)を実施し,被験者自身と他者による刺激動画を作成し,機能的磁気共鳴画像法により脳活動を計測した。各課題での自他比較による解析の結果,動的不安定条件でのみ側頭頭頂接合部や頭頂島前庭皮質などの前庭関連領域,島皮質や前前頭前野などの情動関連領域に自己に有意な脳活動が認められた。以上より,身体バランス不安定性認知における脳活動においては,明確な自他の差異が存在し,その脳活動は適応などの高次な神経機構と関連することが示唆された。
著者
菊池 吉晃 角田 忠信
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.35-42, 1986-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

A series of studies on human auditory laterality suggested the presence of a switching mechanism in human brainstem that automatically transmits auditory signals to either the right or the left hemisphere, depending upon the physical properties of the sound.The purpose of this study was to identify physical parameters that determine this laterality.Some environmental and artificial sounds for which the hemispheric dominance had been previously clarified by both Tsunoda's method and the auditory evoked potential method, were analyzed by analog and digital signal processing techniques.As the results, in normal Japanese, the right hemisphere was found to be dominant for the sounds with the following physical characteristics:(1) single formant (or formant-like structure) or simple (logarithmic) attenuation in higher frequency ranges.(2) two or more formants (or formant-like structures) in harmonic relations.(3) small pitch fluctuations and rich harmonic structures, particularly, when sounds consist only of harmonic tones.