著者
去川 俊二 吉村 浩太郎
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

免疫染色では凍結保存した脂肪組織の脂肪細胞はすべて死亡していることが明らかとなった。脂肪幹細胞についても、生存しているものの、割合は小さかった。さらに、脂肪移植の動物実験において、新鮮脂肪組織の移植と比較して、大きく劣ることがわかった。今回の研究によって、現存する脂肪組織の凍結保存方法では、一定の幹細胞は保存できるものの、脂肪細胞は不可能である。幹細胞についても細胞としての凍結保存に比べて、大きく劣ることが分かった。再生医療の重要な細胞源とされる脂肪組織の利用法の最適化について、新しい知見を与えた。組織としての凍結では効率が悪いため、何らかの方法を開発する必要があることが明らかとなった。
著者
跡見 順子 清水 美穂 秋光 信佳 廣瀬 昇 跡見 友章 長谷川 克也 藤田 恵理 菊池 吉晃 渡邊 敏行 竹森 重 中村 仁彦 井尻 憲一 吉村 浩太郎 高野 渉 神永 拓 江頭 正人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

1Gという重力への適応を通して地球上で進化してきた人間は、動くことで重力を活用して身体を賦活化し、健康な状態を維持することができる。新しい健康科学イノベーション"重力健康科学"研究では、生命科学、脳科学、理学療法学、機器開発者が連携し、これまで皆無だった"ホメオスタシス範囲の評価系構築"に向けた研究に取り組んだ。いかに自重支持を行いながら運動し転倒しないようにするか?細胞と身体をつなぐ緊張性収縮のダイナミック制御システムを研究することが鍵でありかつ可能であることを、この萌芽的研究が明らかにした。
著者
吉村 浩太郎
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.78-84, 2016-06-15 (Released:2016-09-15)
参考文献数
9
著者
吉村 浩太郎 青山 隆夫 岡崎 睦 北野 幸恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

メラノサイトのメラニン産生に対するall-trans retinoic acid(atRA)、ハイドロキノン、ハイドロコーチゾンの影響を三次元培養皮膚、単層培養を用いて調べた。三次元培養皮膚における総メラニン量、単層培養における総メラニン量、チロジナーゼ活性などを測定した。細胞数(蛋白量)をもとに相対値で比較した。ハイドロキノンでは強いメラニン産生抑制効果、細胞毒性が見られたが、レチノイン酸では明らかではなかった。ハイドロコーチゾン、ハイドロキノンとの相乗効果は特に観察されなかった。AtRAのケラチノサイトに対するHB-EGFmRNA誘導能を単層培養を用いて調べた。MRNA量はreal-time PCRを用いて、GAPDHとの相対値で比較、検討した。AtRA刺激12時間後で正常にくらべて10-30倍のHB-EGFmRNA増加が見られた。この変化は未分化なケラチノサイトよりも分化誘導されたケラチノサイトでより著明であった。他の天然および合成レチノイドとの比較では、Ch55においてレチノイン酸よりも強い誘導能が観察された。13cisRAおよび9cisRAではatRAとほぼ同程度の誘導能が観察された。他の天然および合成レチノイドではさらに誘導能は弱かったが、濃度を40-100倍にあげることにより、レチノール、レチナールではatRAとほぼ同程度のHB・EGFmRNA誘導能が観察された。
著者
吉村 浩太郎 岡崎 睦 長瀬 敬 吉村 浩太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ヒト頭皮から採取した毛乳頭細胞の遺伝子発現解析を、マイクロアレイおよびRT-PCRにより行った。マイクロアレイにより繊維芽細胞と比較したところ、ケモカインリガンドやインターロイキン、細胞周期関連遺伝子、プロテオグリンカンに有意な発現増強が認められた。またRT-PCRでは既知の毛乳頭細胞マーカー14種の遺伝子発現を検討したところ、繊維芽細胞と比較して2種の遺伝子で有意な発現増強、1種の遺伝子で有意な発現低下を認めた。これらの遺伝子群の発現パターンにより、毛乳頭細胞と繊維芽細胞を識別することが可能になった。毛乳頭細胞に対して21種のリコンビナント蛋白および化合物を与えて培養したところ、このうち数種の物質には増殖促進作用があることが判明した。またこのうち2種の成長促進因子は特に増殖促進作用が強く、毛乳頭細胞増殖培地用添加物質として使用できる可能性が示唆された。FACSを用いてヒト毛包の上皮系細胞の表面抗原解析を行った。表皮角化細胞と毛包内角化細胞を比較したところ、後者のみにCD200陽性細胞とCD34陰性または弱陽性細胞が10%以上含まれており、毛包組織切片に対する免疫染色における染色パターンを鑑みて、この細胞集団に毛幹細胞が多く含まれることがわかった。また、この細胞集団におけるケラチンの発現を見たところ、バルジマーカーとされているケラチン15の陽性率は60%程度であった前年度までにラット足裏皮膚に毛乳頭細胞を移植する方法(サンドイッチ法)を検討し、毛包誘導能を検定するモデルとして有用であることがわかった。毛乳頭細胞の移植法の検討を行った。サンドイッチ法の他、チャンバーを用いた移植法、注射による移植法、皮膚切開に埋入する移植法などを比較検討した。サンドイッチ法は、表皮・毛乳頭間の相互作用が良好に担保され、毛包誘導には優れた方法であることがわかったが、臨床応用は困難であり、その他の移植法を開発していく必要があることがわかった。
著者
三原 誠 吉村 浩太郎 朝戸 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

われわれの研究グループは、毛包由来培養細胞移植による毛髪再生医療を究極的な目標として研究している。本研究課題の目的は、これまでわれわれが経験してきた3次元培養皮膚モデルを応用して、ヒト細胞を用いたin vitro毛包再生モデルを新たに開発し、特定の条件操作を加えて分析することにより、ヒト毛包再生にまつわる分子基盤・細胞間相互作用について研究することである。毛包由来細胞のうちの2系統である毛乳頭細胞と角化細胞を混合培養することにより、毛包を3次元的に模倣した構造を作成することを試み、結果としてスフィア培養法を開発できた。このスフィアはin vitroにおいて顕微鏡下に経時的観察可能であり、in vivoへの移植も可能であった。このスフィアにおいて毛包誘導であるWnt 10bが発現していることが示され、この発現を増強する因子の検索を行ったところ、特定の有望な候補物質を見出すことができた。このようなin vitro毛包再生モデルを開発することにより、従前のin vivoモデルでは不可能(または多大な労力が必要)であった、毛包再生にまつわる遺伝子・蛋白レベルの解析や、移植細胞の遊走・分化についての詳細な観察がさらに進展する見込みが得られた。またヒト毛包由来細胞を用いた毛髪再生治療を実現する上で不可欠であろう、毛包上皮系幹細胞の単離、および毛乳頭細胞の毛包誘導能に関連する遺伝子解析をおこなった。ヒト毛包上皮系幹細胞はCD200やCD34の表面抗原だけでなく、細胞の大きさも利用することで、コロニー形成能の高い細胞群を生きたまま分取することが可能であることがわかった。また培養ヒト毛乳頭細胞におけるTGF-β2の発現および生体内で機能することが毛包再生において重要であることが示された。これらの結果は、将来的な毛髪再生治療の開発において、基盤となる研究結果であると考えられる。