著者
道山 晶子 藤井 暁彦 山田 京平 梅田 智樹 高田 順司 内川 純一 細田 誠也 山口 浩 松山 幸彦
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.83-92, 2022-08-25 (Released:2022-09-17)
参考文献数
34

In Ariake Bay, catches of the manila clam Ruditapes philippinarum have decreased considerably due to the low rate of larval return to adult habitats, shrinkage of larval networks among each local population, and shortening of the occurrence period of larvae. In this study, we examined the seasonal and annual occurrence trends of planktonic clam larvae and the environmental factors related to the quantity of larvae based on surveys conducted in the Ariake Sea between 2015 and 2018. In the Ariake Sea, emergence peaks with population densities of more than 1,000 m−3 individuals occurred during the spring and fall spawning seasons. In spring, the peak onset often occurred between late April and May, but trends also varied from year to year. In autumn, the peak period was observed at approximately the same time every year, from mid-October to November. The peak emergence of plankton larvae was thought to be related to water temperature.
著者
横山 佳裕 森川 太郎 藤井 暁彦 内田 唯史 中西 弘
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.111-117, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

二枚貝類の保全に向けた検討として,有明海等において食害影響を与えているナルトビエイの生態特性を組み込んだ個体群モデルを開発し,有明海で実施されているナルトビエイの駆除による貝類食害量低減の効果を試算した。さらに,食害量低減に効果が高い駆除時期・場所を検討した。その結果,ナルトビエイの生態特性等を考慮した個体群モデルにより計算した来遊期間中の総個体数は,現地調査に基づき推定された総来遊個体数と一致していた。現在,有明海において6~10月に実施されているナルトビエイの駆除は,駆除を行わない場合と比べて,貝類食害量を40%程度低減できていると個体群モデルによる結果から試算された。また,産仔前の6,7月に駆除を行うことにより,貝類食害量低減の効果が高くなることがわかった。さらに,この時期に有明海湾奥部に位置する福岡県・佐賀県海域で駆除を行うと,さらに効果が高まると考えられた。
著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 藤井 暁 長野 正信 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-10, 2022-02-05 (Released:2022-02-08)
参考文献数
31

江戸期及びそれ以前の書物に記載されている酢製造法を調査し,16冊の書物から33件の米酢製造法を抽出した。江戸期の米酢製造法では,現代と比べて汲水歩合が著しく低く,仕込み時期は夏が多く,仕込み期間は1週間から1カ月程度と短いものが多いという特徴がみられた。江戸期書物記載の方法による再現仕込み試験は,江戸期から伝統的製法で壺酢製造を続けている酢製造会社にて行われた。その結果,汲水歩合が現代と同様およそ300%の仕込みでは30日目以降に酢酸発酵を認められたが,汲水歩合がおよそ100~250%の仕込みにおいては,仕込初期に乳酸発酵で 1~2 g/100 mlの乳酸が生成され,9~13 g/100 mlという高いエタノール濃度となって酢酸発酵へは移行しなかった。江戸期には,乳酸を酸味の主体とする発酵物が酢として作られていた可能性が示唆された。
著者
藤井 暁彦 道山 晶子 田中 憲一 横山 佳裕
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.103-108, 2016 (Released:2016-07-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

夏季に干潟温度が40 ℃近くまで高温化する和白干潟では, この温度上昇がアサリの斃死要因のひとつとなっている。アサリが35 ℃以上になると斃死することは既往の研究においても指摘されているが, 温度と暴露時間, 生残する個体の割合についての知見は乏しい。そこで, 高温暴露実験によりアサリ稚貝の生残率と温度, 暴露時間との関係を求め, この生残率を温度と時間の関数として定式化することにより, 高温条件によるアサリ稚貝の減耗の程度を明らかにした。この式により求めた生残率の推定値と, 野外における高温条件と稚貝の個体数密度の経時変化から, 野外においても高温条件がアサリ稚貝の減耗要因のひとつとなっている可能性が示された。本実験に基づく, 一定割合の個体数の減耗を現す温度・暴露時間と生残率の式は, アサリ稚貝の減耗の状況を定量的に推定するものとして有効であると考えられた。
著者
越川 義功 高山 晴夫 竹内 康秀 真崎 達也 大城戸 博文 藤井 暁彦 林 健二 渡邉 洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_73-II_81, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
30

ダム建設工事では,工事区域での樹木伐採や剥土に伴い,昆虫類の生息場が短期間で広範囲に減少する.施工者による自然環境保全の取り組みのひとつとして,伐採材を活用した木柵(エコスタック)設置により,昆虫類の代替生息場の確保を実施した.設置からわずか1カ月後の調査において,木材に依存するカミキリムシ類、オサムシ類等をはじめとした56種の昆虫類がエコスタックで確認された.その後も季節による変動はあるものの,多くの昆虫類がエコスタックを利用しており,伐採材を利用したエコスタック設置は昆虫類の代替生息場の提供として有効に機能することが確認できた.
著者
関 淳一 藤井 暁 大橋 誠 佐藤 利彦 山本 雅規 和田 正久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.541-548, 1984-04-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

糖尿病患者にみられるMonckeberg型石灰化 (M型石灰化) の成因並びにその臨床的意義につき研究するために, 糖尿病患者におけるM型石灰化の頻度を性・年齢分布を一致させた非糖尿病対照例と比較するとともに糖尿病の各種臨床像との関連性について検討した.また, 一部の例については椀骨骨塩含量 (RMC) との関係についても検討を加えた.対象は糖尿病患者92例, 非糖尿病者48例の計140例であり, Xeroradiographyを用い下肢動脈石灰化の有無を判定し, その石灰化像よりM型石灰化とPatchy型石灰化 (P型石灰化) とに分類した, 成績は次のごとくである.1) 糖尿病例, 非糖尿病例のM型石灰化の頻度は22.8%2.1%であり, 糖尿病例で有意に高率であった (P<0.01).また, 女性に比し男性に高率でその比はほぼ1.7: 1であった.一方, P型石灰化は糖尿病例15.2%, 非糖尿病例6.2%で両者間に有意差なく性差も認めなかった.2) M型石灰化は年齢との間には一定の関係はなく, 糖尿病の罹病期間が長期に及ぶにしたがい高率となる傾向がみられた.これに対しP型石灰化は加齢とともに頻度は増加し, 糖尿病の罹病期間との関係は明らかてなかった.3) M型石灰化例には, 検査前1年間の空腹時血糖値の平均値が250mg/dl以上の箸しいコントロール不良例が高率にみられた (P<0.05).4) M型石灰化例ては, P型石灰化例, 非石灰化例に比し増殖性網膜症合併例が有意に高率であった (P<0.05).神経病変との間には一定の関係はなかった.5) 間欠性跛行, 壊疽合併率はM型, P型両石灰化例でほぼ同率にみられ, 両者とも非石灰化例に比し有意に高率であった.6) IDDM例では, 非石灰化例に比しM型石灰化例でRMCは有意に減少していた.NIDDM例ではそのような傾向は認められなかった.