著者
四方 順司 渡邉 洋平
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.260-267, 2014-02-15

現代暗号理論における安全性は,主に計算量理論的安全性(計算量的安全性)と情報理論的安全性(情報量的安全性)に大別される.情報理論的安全性に基づいた暗号技術では,攻撃者が知りえない情報量を担保にして情報理論的あるいは確率論的立場から安全性を保証し,攻撃者の計算能力が無制限であっても安全性を達成できる.本稿では,情報理論的安全性に基づいた暗号基礎技術(暗号化,認証技術)について解説する.一般に,情報理論的安全性を保証するためには,この分野特有のモデルや仮定を必要とするが,それに関しても本稿で概観し,実用的・応用的な観点からの研究動向についても紹介する.
著者
酒井 和幸 熊谷 大慧 阿部 五月 渡邉 洋輔 山田 直也 古川 英光 藤本 拓 南 絵里菜 光上 義朗 足立 芳史
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.539-546, 2016-11-25 (Released:2016-11-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

走査型顕微光散乱装置(Scanning Microscopic Light Scattering:通称SMILS)によって,代表的な吸水性高分子ゲルであるポリアクリル酸ナトリウム(PSA)ゲル,PSAゲルを酸型にしたポリアクリル酸(PAA)ゲルの内部構造評価を行った.SMILSによって得られる動的ゆらぎの緩和時間分布関数を基準に膨潤率・ヤング率を併用し,ゲルの内部構造を評価した.とくに,動的ゆらぎから得られるスケールをFluctuation Size (FS)とし,FSから算出される架橋密度(νS),膨潤率から算出される架橋密度(νW),ヤング率から算出される架橋密度(νY)を比較することにより,総合的にゲル内部の網目構造を評価した.PSAゲルにおいては,νW ,νY に対してνSは非常に大きな値となったため,SMILSで測定されるFSの値はゲルの網目サイズを直接示唆していない可能性がわかった.さらに,PSAゲルではνY>νWとなり,さらに,被吸収液の塩濃度が低くなるにつれてその差が大きくなることから,ネットワーク主鎖上のイオン基どうしの静電反発が増えるほど主鎖の剛直性が増していることが明らかになった.また,それに伴ってνSが増大する事から,今回の動的光散乱測定においてもネットワーク主鎖の剛直性がνSに影響を及ぼしていることが推察された.そのため,PSAゲルの内部構造を動的光散乱によって解析する場合には,FSの減少を考慮した適切な補正手法が必要になることが判明した.
著者
岡田 耕治 渡邉 洋輔 齊藤 梓 川上 勝 古川 英光
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.81-87, 2016-03-10 (Released:2016-05-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

3D プリンターが,「材料に合わせた方式でユーザーが設計した通りの構造物を造形する新たなツール」として注目され始めてからはや数年。この3D プリンターブームは,熱溶解積層法の特許失効による開発コストの低減,3D ソフトウェアのフリー化,インターネットによる情報の共有化が背景にあり,いまや個人レベルでのモノづくりを可能にした。一方,全く別の経緯で同時期に,著者らは3D ゲルプリンターを開発に着手しており,数百 μm オーダーで柔らかくて潤いのあるゲルの三次元造形に成功している。本稿では,従来の3D プリンターで使 用される樹脂や金属,セラミックなどドライマテリアルにはないゲルの優位性と,その特徴を生かしたゲル造形物の将来性,開発の経緯の一つである高強度ゲルの登場を述べながら,実際の造形方法・造形例について紹介する。既存の3D プリンターによるモノづくり革命をさらに加速するツールの一つとして,3D ゲルプリンターが活躍する日は近い。
著者
渡邉 洋子
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.142-147, 2007-02
著者
宜野座 到 渡邉 洋平 和泉 俊輔 野口 信弘 照屋 孝二 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
雑誌
Cardiovascular Anesthesia (ISSN:13429132)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.79-83, 2020

<p> 38歳の女性,冠動脈3枝病変の不安定狭心症に対して人工心肺下冠動脈バイパス術(On-pump coronary artery bypass, ONCAB)が予定された。麻酔導入後,声門下狭窄に伴う挿管困難が判明した。適切な気道確保を行わなければ,周術期の呼吸器合併症のリスクが高いと判断し,一旦手術を延期しアプローチ法を検討した。後日,上気管切開術と下部胸骨部分正中切開による一期的ONCABを施行し良好な術後経過を得た。</p>
著者
渡辺 厚 毛利 環 渡邉 直子 渡邉 洋平 宮崎 秀夫 齋藤 功
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.142-154, 2009-10-25
参考文献数
43
被引用文献数
2

わが国の不正咬合の疫学調査は独自の基準によるものが散見されるのみで,国際的に比較可能なIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)を用いた疫学調査はほとんどない.そこで今回,日本人における不正咬合の種類と程度および矯正治療の必要性に関する基礎データの構築を目的に,IOTNを用いた疫学調査を行った.調査対象は,4つの地域の11歳から14歳児,497名としたが,矯正治療経験のある72名(14.5%)は除外した.調査は,レントゲン,研究用模型を利用せず口腔内診査法によりIOTNを算出した.機能と形態の両面から咬合を評価するDHCにおいて「矯正治療必要性あり」(DHC Grade 4,5)と判定された者は34.1%であった.不正咬合の内訳は,叢生17.4%,過度のoverjet 10.1%,萌出余地不足13.2%,永久歯欠損4.0%,過蓋咬合2.6%,交叉咬合2.4%,開咬0%,反対咬合0%であった.一方,客観的審美性の観点から咬合を評価するACにて「矯正治療必要性あり」(AC Grade 8-10)に分類された者は10.4%であった.これらの結果を総合すると,「矯正治療必要性あり」と分類された者は35.5%であった.以上の結果をこれまでの報告と比較すると,矯正治療が必要とされる者の割合は英国の調査結果とほぼ近似していたが,不正咬合の種類としては叢生が約2倍で,不正咬合の特徴は欧州と異なる可能性が示唆された.
著者
越川 義功 高山 晴夫 竹内 康秀 真崎 達也 大城戸 博文 藤井 暁彦 林 健二 渡邉 洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_73-II_81, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
30

ダム建設工事では,工事区域での樹木伐採や剥土に伴い,昆虫類の生息場が短期間で広範囲に減少する.施工者による自然環境保全の取り組みのひとつとして,伐採材を活用した木柵(エコスタック)設置により,昆虫類の代替生息場の確保を実施した.設置からわずか1カ月後の調査において,木材に依存するカミキリムシ類、オサムシ類等をはじめとした56種の昆虫類がエコスタックで確認された.その後も季節による変動はあるものの,多くの昆虫類がエコスタックを利用しており,伐採材を利用したエコスタック設置は昆虫類の代替生息場の提供として有効に機能することが確認できた.
著者
渡邉 洋一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第25回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.279, 2014 (Released:2014-12-16)

平成24年度環境省の一般廃棄物統計では、全国で3,399万トンが焼却処理されている。焼却施設数は1,188、そのうち634施設がごみ処理量100トン/日未満施設であり、中小規模のため発電によるエネルギー回収が難しく、新たなエネルギー回収方策が模索されている。 他方、ボイラー燃料をめぐる状況は大きく変化し、資源エネルギー庁の調べでは、この20年間でC重油の価格は4倍以上上昇した。そこで、ごみ処理量100トン/日未満焼却施設のごみおよび廃棄物系バイオマスをRDF(一般廃棄物等を原料としたごみ固形燃料)にして重油代替燃料として熱利用すれば、燃料コスト削減に加えて地球温暖化対策に資することとなる。本報告では、RDF等廃棄物系バイオマスの熱利用の方策について検討する。
著者
四方 順司 渡邉 洋平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.260-267, 2014-02-15

現代暗号理論における安全性は,主に計算量理論的安全性(計算量的安全性)と情報理論的安全性(情報量的安全性)に大別される.情報理論的安全性に基づいた暗号技術では,攻撃者が知りえない情報量を担保にして情報理論的あるいは確率論的立場から安全性を保証し,攻撃者の計算能力が無制限であっても安全性を達成できる.本稿では,情報理論的安全性に基づいた暗号基礎技術(暗号化,認証技術)について解説する.一般に,情報理論的安全性を保証するためには,この分野特有のモデルや仮定を必要とするが,それに関しても本稿で概観し,実用的・応用的な観点からの研究動向についても紹介する.
著者
生田 和良 作道 章一 中屋 隆明 高橋 和郎 纐纈 律子 奥野 良信 纐纈 律子 渡邉 洋平 佐々木 正大
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

H5N1亜型高病原性トリインフルエンザウイルス(HPAIV H5N1)は、一部の地域において致死率の高いヒト感染例が散発的に確認され、ヒトに対してパンデミックとなる懸念が指摘されている。エジプトは現在、世界的にも多くのHPAIV感染者を出している流行国の1つである。本研究においては、エジプトで飼育されている家禽からHPAIV分離を試み、得られた遺伝子配列から分子疫学調査を実施した。その結果、エジプトにHPAIVが初めて導入された2006年に比べて、2008-09年のウイルスはヒトに感染しやすいと考えられるα2,6 SA糖鎖親和性を獲得していた。
著者
渡邉 洋一 猿田 和樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.513, pp.57-62, 2001-11-11
被引用文献数
2

手書き漢字の読みやすさを人の判読基準に準拠して定量化した.人の認知特性と対応する, 概形特徴と詳細特徴とで文字形を記述し, 数量化理論を適用した.大学生280人の姓名から切り出した580文字を材料とし, 33人の観測者の過半数が「読みやすい」・「読みにくい」とした文字を外的基準とした.その結果, 90%の精度で読みやすさを予測できることがわかった.一方で, 同じ材料を用いて, 手書き漢字に対する人の意味空間を因子分析した.文字の読みやすさ, 文字の見やすさ, 書き方のうまさ, 明快さの4つの因子が抽出された.数量化理論による予測は, 因子分析から導かれた「読みやすさ」とよく合致するものであった.