著者
西山 孝樹 藤田 龍之 知野 泰明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.123-131, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
64

わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀にかけて,「土木事業の空白期」が存在していたことを本研究で指摘した.その背景には,10世紀における律令国家の崩壊が最も影響したと考えられる.そして更なる要因として,平安貴族を中心に,土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が,10世紀後期から11世紀に存在しており,その思想が「土木事業の空白期」に影響を及ぼしていたとみられることを示した. しかし,空白期における土木事業は,全く実施されなかったわけではなかった.わずかではあるが,僧によって行われており,文献史料を中心に彼らの事績をまとめた.そして,「犯土」思想が僧による土木事業に影響を与えたかについても迫り,平安時代における「土木事業の空白期」の実態を明らかにした.
著者
古川 健司 重松 恭祐 岩瀬 芳江 三上 和歌子 星 博子 西山 孝子 大塚 藍 阿部 宏子
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.1139-1146, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
25

【目的】がんに対する糖質制限食として、medium chain triglyceride(以下、MCTと略)オイルの少ない修正MCTケトン食を導入し有効性を検討した。【方法】ステージⅣ進行再発大腸癌患者10例に、ケトン比が1.4:1の修正MCTケトン食を1年間抗がん剤と併用し、RECIST判定、血中総ケトン体、quality of life(以下、QOLと略)の評価を行い、ステージⅣで抗がん剤治療のみを行った群14例と比較検討を行った。【結果】抗がん剤単独群は、CR0例、PR3例、SD6例、PD5例で、奏効率21%、病勢コントロール率64%で、ケトン食併用群は、CR5例、PR1例、SD1例、PD3例で、奏効率60%、病勢コントロール率70%で、1年継続することで、CR率が50%に上がった。【結論】ケトン食併用の抗がん剤治療は、抗がん剤単独群と比較し、奏効率、病態コントロール率が高く、ステージⅣ大腸癌の支持療法になると思われた。
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 天野 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00280, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
30

本研究では,江戸幕府の公式記録である『徳川実紀』をすべて読み,「山川掟」の初出とされる1666(寛文6)年以前の治水をするために治山も同時に行わなければならないと言及した法制度に関する事項を抜き出した.その結果,既往研究で「山川掟」の初出とされてきた20年ほど前の1645(正保元)年には,同様の内容に言及した法制度が存在していることを明らかにした.さらに,1666(寛文6)年から1742(寛保2)年の「山川掟」に関する事項も抜き出した.それらを整理したところ,「山川掟」に関するものは6事項が掲載され,約20〜30年ごとに発布されていた.現在においても,「山川掟」のように,治山と治水を同時に考えていくべきであり,江戸時代の政策は現在を生きる我々も,参考にすべき点は大いにあることを示した.
著者
緒方 靖哉 西山 孝 土居 克実
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.20-33, 2020

<p>近年,国内では全国規模での豚コレラの感染拡大やマダニ感染症による死亡例が大きなニュースとなり,国外でのエボラ出血熱やジカ熱などの蔓延が東京オリンピックを控えた我が国の大きな問題となっている.また,ゲノム解読技術の進展から新たなウイルスの存在が多数報告されている.このようなウイルスによる新興や再興感染症および環境ウイルスが注目を浴びている一方,これらのウイルスの分類について顧みられることは少ない.本稿では,ウイルス分類学の定義に基づいて,話題のウイルス,分類の改訂されたウイルス,さらに新たに発見されたウイルスについて紹介する.なお,本編には,興味のあるウイルスを手軽に検索できる索引リストを併記した.</p>
著者
岡本 裕行 内橋 康充 ルォン ゴォク カーン 宮原 照夫 川面 克行 西山 孝 藤井 隆夫 古川 憲治
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.318-327, 2009-07-20
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

anammox処理を応用してビール工場排水の窒素量を効率良く削減することを目指し,アサヒビールの工場において実際の排水を用いて,anammox処理に適用させるための前処理実験を実施した.供試排水のTOC値の18.5%は酢酸とプロピオン酸から成り曝気処理で容易に分解した.有機物分解後にアンモニア態窒素酸化が起こる事象が確認され,前処理工程としてはアクリル繊維担体で微生物を固定化した曝気槽(有効容積360 L)で有機物の除去(活性汚泥処理)を行った後,同型の曝気槽にて部分亜硝酸化処理を行うプロセスが構築できた.<br>半年間の連続実証運転において,有機物除去能力1.5–2.4[kg-TOC/m<sup>3</sup>/d]程度,部分亜硝酸化処理能力は1.5–2.5[kg-NH<sub>4</sub>/m<sup>3</sup>/d]程度であった.供試排水への急激な高濃度排水あるいは浮遊性懸濁物質(Suspended Solid : SS)の流入や運転ミスがない限りは,有機物を80%除去した上,亜硝酸化率が50%付近で維持できる前処理が可能であることを連続1ヶ月間確認することができた.
著者
渡辺 万紀子 天野 光一 西山 孝樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.17-32, 2021 (Released:2021-03-20)
参考文献数
17

街路空間を沿道建築物からの観点で見ると,内部空間と外部空間が存在する.この境界である建築壁面線は,曖昧な境界を構成し中間領域を形成している.この中間領域は,内部空間が外部空間に貫入した「浸み出し」と,外部空間が内部空間に貫入した「入り込み」から構成される.本研究では,「浸み出し」の中間領域を構成する要因を検討し,中間領域の類型化を行った.その結果得られた7類型は直観情報の活動支援装置,活動,商品と,内部情報によりその性格を説明することができた.また,その類型は商品展開型,活動展開型,商品活動展開型,内部情報型,情報不特定型,活動支援装置商品展開型,活動支援装置展開型となることがわかった.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 天野 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-31, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

わが国の近世以降に実施された社会基盤整備は,現代へ繋がる萌芽であったとされる.しかし,江戸幕府下に実施された先の整備は,一次史料から網羅的に明らかになっていないのが現状である. そこで本研究では,幕府が編纂した公式記録『徳川実紀』を用いて,江戸時代前中期に実施された道路行政政策に着目した.その結果,「道路」に関する記述は,維持管理等を定めた「規則の制定」に関する記述が最も多かった.一方,「道路」の新規造成や補修等,「道路施工」に関するものは非常に少ない状況であった.研究対象とした時代は,「道路」の維持管理は行われたものの,幕府直轄による道路造成は積極的に行われていなかった.幕藩体制を維持するために江戸へ攻め込まれることを防ぐ必要もあり,土木工事を抑えていたと推察される状況にあったことを示した.
著者
楠田 啓 西山 孝
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.292-299, 1994-02-10 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

Examination of microcracks by image processing, including pattern recognition and image analysis, is becoming popular in applied geology. In the case of image processing, microcracks in rocks are usually recognized by apparent features, such as differences in brightness, color and/or pattern.On microscopic examination, it is usually difficult to distinguish microcracks from the other elements.The fluorescent method was devised recently to visualize microcracks and cavities in rock and concrete specimens. This method is useful for image processing because images recorded by a CCD camera under ultraviolet ray display a great difference of brightness between microcracks and other texture.We tested five techniques of image processing, linear differential operator (Sobel operator), quadratic differential operator (Laplacian operator;matrix size=3×3 or 9×9), and template matching operator (Kirsch operator and line detection operator), to extract microcracks in weathered granite and andesite fractured by uniaxial compression test retreated by fluorescent method.Actual microcracks in specimens of weathered granite were represented most realistically by thinned binary image obtained by Laplacian operator (matrix size=9×9).Image analysis of microcracks in specimens of andesite fractured by uniaxial compression test was also performed. The results revealed that two types of microcracks, tensile cracks parallel to major principal stress and shear cracks inclined to major principal stress, were extracted.It was also demonstrated that parallel microcracks were formed mainly in groundmass, while inclined microcracks were present mainly in phenocrysts.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.9-19, 2014 (Released:2014-07-18)
参考文献数
71
被引用文献数
1

わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀に「土木事業の空白期」が存在していた.その背景には,平安貴族を中心に土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が影響していたとみられる.そこで本研究では,空白期の存在をより明確にするため,当該の時代に設置された官職に着目した.土木と関わる官職が設置されていなければ,社会基盤整備を実施できなかったと考えられるからである. わが国の律令制度が倣った中国の唐および空白期と同時期に成立していた宋には,土木と関係する官職が設置されていた.一方,わが国の中央政府には土木事業を行う官職は設けられておらず,地方では災害発生時など臨時に設置されていたに過ぎなかった.9世紀から11世紀には,社会基盤整備に通じる事業を専門に掌っていた官職は存在していなかったことを本研究で示した.
著者
西山 孝 安達 毅
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
資源と素材 (ISSN:09161740)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.473-477, 1993-06-25 (Released:2011-01-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

World production of widely used metals grew rapidly until the early 1970's, as expressed in The Limits to Growth (Meadows et al., 1972), but then metal demand dropped sharply after 1973. Growth rates in production of each metal varied year by year or among metals.The difference between supply-demand forecast and actual production during last 20 years was examined. Different patterns between the two for 16 metals were classified into four groups.(1) The actual production of Co, Cr and Pt exceeded the projected trend that had been predicted in 1970.(2) Iron accounts for more than 95% of all metals consumed. A significant proportion of Mn, Ni, W, Mo, Cr and Co produced is used in the steel industry. This group, composed of iron and related metals other than Co and Cr, shows a similar pattern.(3) Growth rates of production of Cu, Zn, Ag, and Al continued to be low during the last 20 years, but the rates are not negative.(4) Growth rates of production of Pb, Au, Sn and Hg are negative or zero. Large differences between actual production and predicted consumption prevailed during the 1970-1990 period.When the lifetime of these metals calculated in 1970 are compared with those in 1990, static indices of Au, Hg, Ag, Sn, Zn and Pb which fall in the range of 10-30 year, have not changed very much. No tendency toward depletion of the resources has been found under the present condition. New reserves have been discovered in the last 20 years. A basic question in the long-term supply is how long the present situation continue.
著者
西山 孝 ニシヤマ タカシ Takashi NISHIYAMA
雑誌
南極資料
巻号頁・発行日
vol.58, pp.171-185, 1977-03

ドライバレーに産出する塩類析出物について,X線回折分析法により鉱物の同定を行い,水平的および垂直的な分布の相違を検討した.同定された鉱物は,地表からの試料では炭酸塩5種,硫酸塩5種,硝酸塩2種,ハロゲン化物2種で,ボーリソグコアーからの試料では炭酸塩1種,沸石2種,ハロゲン化物2種,緑泥石1種であった. これらの塩類析出物は産出個所により異なり,一般に炭酸塩はテイラー谷に,硫酸塩はライト谷に多い傾向があり,とくに炭酸ソーダ石,サーモナトライト,モノハイドロカルサイトの産出がテイラー谷の海岸に近い部分に限られていること,チリ硝石,ダブラスカイト,ブレーダイトがライト谷にのみ晶出していることは顕著な特徴であった. 次に塩類析出物の分布と湖水の化学成分とを比較検討した結果,一部には熱水起源と考えられる塩類析出物もあるが,多くの塩類の起源は海水あるいは風送塩によるものと推察された.The areal and vertical distributions of evaporite minerals in the Taylor Valley and the Wright Valley were studied with X-ray diffraction techniques to disclose the origins of salts. Halite, sylvite. thenardite. mirabilite. Gypsum, calcite, aragonite, trona, thermonatrite, monohydrocalcite, soda niter, bloedite, and drapskite were identified in specimens on the ground surface, and calcite, fluorite, laumontite, chahay.ite. antarcticite, and chlorite in core samples. In general, carbonate minerals predominate in the Taylor Valley, while sulphate minerals, except thenardite, predominate in the Wright Valley. Halite and thenardite are widespread in both areas. Trona, thermonatrite, and monohydrocalcite are found exclusively in the eastern Taylor Valley, and soda niter, bloedite, and drapskite in the Wright Valley. There is a general trend for sulphate minerals to be concentrated in elevated areas, and carbonate minerals in low areas. From a comparison of the distribution of these salts and the chemical composition of lake water in the area, it seems that the main sources of salts distributed in the Taylor Valley and the Wright Valley are of marine and/or wind-transported origins, and that based on the nature of minerals from core samples, a small amount of salts is formed from hydrothermal solution.
著者
小池 克明 西山 孝 石田 志朗 藤田 和夫
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.395-404, 1990
被引用文献数
4 1

Facies analysis of sediments based on the boring database systems of the Osaka, Kyoto, and Kameoka basins situated in the central part of the Kinki district, Japan, have been carried out to correlate their subsurface sediments. The analytical method is the one which calculates the appearance percentage of clay, sand, and gravel at the same elevations and at 0.5m intervals in each of the basins, and then smooths these data using the moving average method for 21 terms. As a result, it has been revealed that the fluctuations in the appearance percentage of clay in the Osaka basin occur with a frequency very similar to the fluctuations of oxygen-isotope ratio in the upper part of core V28-239 raised from the Solomon Rise at lat 3°15′N, long 159°11′E from a depth of 3, 490m. Furthermore, the fluctuation patterns of the appearance percentage of gravel in each of the basins are similar to one another, which suggests a common sedimentation related to the global paleoclimate in the basins of the same drainage system.<br>Spectral analysis using the Maximum Entropy Method (MEM) reveals that the appearance percentage of clay and sand in the Osaka basin each have a preeminent period of about 30m, while gravels in the northern part of the Kyoto basin and the Kameoka basin have a 12-13m period in common.
著者
西山 孝樹 知野 泰明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.11-21, 2012
被引用文献数
2 1

江戸幕府の河川技術流派である"紀州流"の出所である和歌山県,その北部を西流する紀の川両岸は河岸段丘が拡がり,近世初頭まで溜池と紀の川に注ぎ込む中小河川に堰を設けて灌漑が行われて来た.本研究では,"紀州流"の原点を見出すことを最終目的とし,紀の川上・中流域において荘園が形成された11世紀末以降から近世中期までの灌漑水利の変遷について研究を行った.本研究の結論として16世紀頃から荘園制度が消滅していき,近世初頭の応其上人による溜池の築堤や改修,紀州藩の事業として紀の川の堤防築堤や用水路開削が行われ,紀の川に対して横断方向の開発から本格的に大規模な縦断方向の新田開発へ転化していったことが明らかとなった.
著者
西山 孝 楠田 啓 日下部 吉彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

資源量を評価するにあたって、埋蔵量、生産量、需要、用途、価格、代替品、備蓄、地質などが基礎的事項となっている。しかしこれらの諸量は、物理的量や化学的組織のような絶対的な基準はなく、相対的なもので、社会情勢、経済状況の変化によって大きな影響を受けている。このため資源需給予測はつねにあいまいな要素を多く含んでいる。このあいまいさを軽減し信憑性の高いものにするためには鉱物資源の現状を的確に把握し、評価を下すことが必要である。上記のような考えにもとづき、本研究ではまず希金属資源についての現状を文献により調査した。初年度の昭和62年度は主に硫化鉱物として産する希金属を、昭和63年度は主に酸化物として産する希金属を、さらに平成元年度は硫化物、酸化物以外の鉱物で産する希金属に分けて調査をすすめ、合計35の鉱物種についてまとめた。この調査過程で、希金属資源は、基本的に2つの異なるグル-プ、すなわち、独自の探鉱開発、製錬の行われている金属とベ-スメタルの製錬の中間精製物を出発物質としてバイプロダクトされているものに分けて考えることが重要で、とくに希金属資源量の把握、安定供給を論ずるときにはこの違いは大きく、もっとも基本的な事項となっていることが明らかとなった。たとえばビスマスは鉛や銅製錬の、カドミウムは亜鉛の、さらにタリウムはカドミウムのバイプロダクトとして回収されており、これらの希金属の供給を考える場合、十分な量の製錬中間精製物をベ-スメタルが提供できるかどうかが問題であり、枯渇の問題はベ-スメタルの問題に置き換えて考える方が現実的な面を多くもっている。このような事情から、ベ-スメタルのアルミニウム、鉄、銅、鉛、亜鉛、錫の現状についても調査しあわせて記載した。