著者
佐藤 悠子 藤森 研司 石川 光一 佐藤 一樹 石岡 千加史 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.156-165, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
著者
藤森 研司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-24, 2016-04-30 (Released:2016-05-13)
参考文献数
4
被引用文献数
14 13

医療のビックデータの一例として匿名化電子レセプトのアーカイブであるNational Database(NDB)について,その特徴と制約について詳述した。NDBは平成21年度分からすべての電子レセプト(医科,DPC,歯科,調剤)と特定健診データが突合可能な匿名化の後に厚生労働省保険局に集積されている。本来は医療費適正化のために集積されたデータであったが,都道府県や研究者にも門戸が開放された。そもそもの電子レセプトの制約に加えNDB特有の制約はあるが,電子レセプトの電子化率が98%に迫る今日では,我が国の医療状況を悉皆性を持って把握できる仕組みと言えるだろう。NDBの活用例として厚生労働省医政局と共同で申請し,都道府県の地域医療計画,地域医療構想のために提供しているデータブックの例を記した。都道府県別,二次医療圏別,市区町村別の医療提供体制と患者受療動向を示したものである。NDBに対する大きな期待は全国民を対象とするコホート研究の優れた情報源となることである。現在は保険情報に基づいたレセプト情報の突合であるので,保険が切り替わると結合が中断するが,今後,医療用の個人番号等の導入により,長期間に渡るレセプトの結合が可能となり疾患の発生から収束まで一連のエピソードを把握することが可能となる。
著者
たら澤 邦男 藤森 研司 森谷 就慶 尾形 倫明 千葉 宏毅 三澤 仁平
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本は超高齢・多死社会を迎え、国民が希望する場所で最期を迎えるための条件整備が急がれる。国民の55%は自宅で最期を迎えることを希望する一方、死亡場所の74%は病院であり、がんによる病院死は83%とさらに高い。がん患者について、病院死症例を多く含む病床機能と終末期医療の実態は明らかにされておらず、在宅看取りが多い地域にはどのような病院機能があるか解明されていない。そこで本研究は、在宅看取りの高低に対し同一地域の病院機能が与える影響を明らかにすることを目的とする。目的達成のためNDBレセプトデータ、官公庁公開データを併用した分析を行い、地域で実現可能な在宅看取りの普及啓発のあり方を検討する。
著者
松田 晋哉 藤森 研司 伏見 清秀 石川 ベンジャミン 光一 池田 俊也
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-10, 2018 (Released:2018-02-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

National Database( NDB)を用いて算出した標準化レセプト比SCR の在宅医療分をデータとして、在宅医療の推進に関連する要因の検討を行った。その結果、在宅医療(居宅)に関連する要因として、往診(.313)、訪問看護指示(.218)、緊急往診(.219)、在宅療養中患者_ 緊急入院受入(.049)、療養病棟入院基本料(-.078)、訪問薬剤指導の実施(.004)が在宅医療(居宅)のSCR に有意に関連していることが示された。この結果は、在宅医療(居宅)を進めるためには、訪問看護や訪問薬剤指導といった在宅のチーム医療提供体制に加えて、緊急往診や在宅療養中患者_ 緊急入院受入といった後方病院の役割が重要であることを示している。
著者
後藤 伸之 山田 成樹 藤森 研司
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.165-168, 2014-02-28 (Released:2014-04-02)
参考文献数
5

Objective: The purpose of this study was to clarify the importance of therapeutic drug monitoring (TDM) at acute care hospitals using Diagnosis Procedure Combination (DPC) data.Methods: We used DPC data from about 3,500,000 inpatients at about 950 acute care hospitals.  The investigation period was from July 2010 to December 2010.  Patients were divided into 2 groups: TDM intervention (n=22,012); and non-TDM intervention (n=26,400).  We compared the clinical indicators (length of hospital stay, payment based on performance and drug costs) and use of antimicrobials.Results: TDM intervention was carried out in 45.5% patients for whom an anti-MRSA agent was prescribed.  The duration of anti-MRSA agent administration was significantly longer in the TDM intervention group than in the non-TDM intervention group.  The total daily cost of anti-MRSA agents was significantly lower in the TDM intervention group than in the non-TDM intervention group.Conclusion: Our results suggest that TDM intervention is often performed for seriously ill patients who require continuous treatment.  TDM intervention may prevent adverse reactions as a result of adjusting the dosage of the anti-MRSA agent.