著者
西川 由紀子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.25-38, 2003

子どもが使用する自称詞について,場面に応じた使い分けに着目して,京都市内の保育園においてアンケート調査(216家庭)と観察調査(5歳児クラス男児9名)を行った。その結果,第1に,2歳でほとんどの子どもが対称詞と同じ自称詞(愛称・名前)を用いることが示された。第2に,男児はその後「愛称・名前」と「オレ」「ぼく」を並行して使い,幼児期は両親に「愛称・名前」,友達に「オレ」を用いる傾向,学童期中頃に両親に「ぼく」,友達に「オレ」を用いる傾向が示された。また「オレ」の使用は友達関係をとおして伝播することが示された。女児は学童期になって「わたし」の使用が増加しはじめるものの「愛称・名前」の使用が学童期にも続き,両親と友達の間での使い分けはほとんど見られなかった。第3に,年下のきょうだいには年齢にかかわらず親族名称が使用される傾向が示された。第4に,男児が保育者に対して「オレ」を使用するのは,主張したり自慢する場面のみであり,日常的には「ぼく」を使用していること,友達にはどの場面でも「オレ」も「ぼく」も使うことが示された。第5に,家庭で「オレ」を使っている自閉的傾向の男児が保育園で「オレ」を使用しなかったことから,自閉症児にとって「オレ」を用いての自己主張が難しいことが示唆された。こうした自称詞の使い分け方から,男児は,相手や状況や内容に応じて,ふさわしい自称詞を選択していることが示された。
著者
小野田 正利 佐藤 晴雄 吉川 武彦 野田 正人 古川 治 楠 凡之 松本 剛 和井田 節子 岩切 昌宏 山野 則子 瀧野 揚三 西川 由紀子 新井 肇 小林 正幸 山下 晃一 岩永 定 入澤 充 嶋崎 政男 清水 和夫 清水 和夫 嶋崎 政男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

2000 年代に入ってわが国の学校現場では、教職員と保護者の間に時として激しい対立やトラブルが生じようになり、それらをどのように解決していくか、あるいは減少させていくかという課題が生まれてきた。本研究は、このような問題現象が増加している理由や背景の分析はもちろんのこと、具体的にどのようにすれば、トラブルが大きくならずに解決につながっていくかを考察したものである。このために研究者のメンバーの専門領域をより学際的なものとし、教育学だけでなく、法律学、精神医学、臨床心理学、福祉学などの幅広いものとして構成した。そこで得られた研究成果を、全国の12か所でシンポジウムとワークショップを開催する形で発表したが、これらの成果の多くは、6つの書籍などの成果物として結実した。