著者
山下 泰正 田邊 俊彦 磯部 しゅう三 西野 洋平 北井 礼三郎 末松 芳法 黒河 宏企 平山 淳 中村 士 代情 靖 船越 康宏
出版者
国立天文台
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

1.研究の概要平成3年7月11日の皆既日食は、7分近い皆既継続時間を持つ今世紀最大規模のものであった。この貴重な機会を利用して、平常では十分行なうことが出来ない太陽コロナの精密観測を実施して、その物理状態を調べる事が本研究の目的であった。研究調査は、2年に跨ってメキシコ国内各所で行なわれ、初年度は観測地の調査選定を、本年度は皆既日食本観測を実施した。当初、メキシコ国内の治安の悪さ、自然環境の厳しさ等危惧されたが、初年度の予備調査により、晴天率、望遠鏡設置条件、居住条件、安全性、機材輸送経路等の諸条件を十分検討して観測地点を選択したこと、予めメキシコ大学その他現地の協力機関と折衝出来たこと等により、約40日にわたる本年度調査は、概ね順調に実施され、晴天にも恵まれて太陽コロナその他の観測に成功した。2.研究の実施経過日本観測隊は11名により構成された。内訳は国立天文台6名、京都大学理学部3名、海外保安庁水路部2名である。前者2機関9名が本研究計画により派遣されたものである。3チ-ム8名(国立天文台3名、京都大学3名、水路部2名)は、カリフォルニア半島南端のラパス市にて、1チ-ム(国立天文台3名)が、メキシコ市南東のポポカテペトル山(5452m)にて観測した。全員メキシコ市日本大使館にて打ち合わせた後、2箇所に分かれて、設営準備を開始した。ラパス隊はカリフォルニア半島北端のエンセナ-ダ港にて、観測機材(全重量8.7トン)の通関手続きを行った後、トラック2台によりラパス市までの1600kmを陸送した。予め選定していたラパス市郊外の南バハカリフォルニア自治大学の運動場にて、観測機械を設置し、調整、テスト観測等約20日間余りにわたる準備を行なった末、皆既日食当日に臨んだ。当日は快晴に恵まれ、観測機器も順調に作動して観測に成功した。観測機材散収梱包作業後、再びトラックにて陸送し、エンセナ-ダ港にて通関手続き、船積み手続き完了後メキシコ市に帰還した。ポポカテペトル隊は、メキシコ大学天文学教室の応援を得て、5400mの山頂付近に観測機器を設置した。皆既当日は朝から快晴で、後半薄雲の影響を受けたものの、観測機器も正常に作動して観測に成功した。3.研究の成果得られた多くの観測デ-タの解析は現在進行中であるが、観測デ-タの内容と予備的な解析結果はすでに、別冊の研究成果報告書「平成3年7月11日メキシコ日食による太陽コロナの観測」としてまとめられている。その概要は次の通りである。(1)太陽コロナの微細構造の観測によるコロナの熱力学構造の研究。異なる温度構造を代表する4本の輝線、既ち中性水素輝線Hα(1万度)、9回電離鉄イオン6374輝線(100万度)13回電離鉄イオン5303輝線(200万度)、14回電離カルシウム5694輝線(350万度)と連続光の、合計5種類の単色フィルタ-によって、内部コロナの単色像を多数撮影した。これによってコロナ中の高温ル-プ、低温ル-プ、紅炎周縁等の微細温度構造を示すデ-タを、従来にない高分解能で得ることに成功した。予備的な解析から、コロナのル-プ構造は従来から考えられていた「中心が冷たく外側が高温」の同軸モデルでは説明できない構造が多いことが判った。(2)太陽コロナ中の低温物質の起源の研究中性ヘリウむ輝線10830(1〜10万度)と10000オングストロ-ム連続光及び13回電離鉄輝線5303の単色像を撮影すると同時に、紫外領域と赤外領域の偏光分光観測により、カルシウムイオンH.K輝線、ヘリウム10830輝線等のスペクトルを多数撮影した。予備的な解析によると、コロナ中には、紅炎以外には、はっきり検出できる低温物質が存在しないようである。又、Kコロナの観測から、コロナストリ-マ-の太さを調べた結果、太陽表面では約15〜40秒角の大きさの構造につながる事が判った。(3)太陽周縁の塵の研究4波長(5325A、5965A、7200A、8015A)の広帯域フィルタ-と偏光板によって、外部コロナの二次元偏光測光を行い、偏光の二次元分布図を作成した。これから、真のFコロナ偏光成分を求めるためには、地球大気によるバックグラウンド偏光成分とKコロナのストリ-マ-偏光成分とを分離する必要があり現在整約を続行中である。これにより、太陽周縁の惑星間塵の分布及び物理状態を調べることが出来る。
著者
木嶋 晶子 西野 洋 梅田 二郎 片岡 葉子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1397-1402, 2007-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

第1例:24歳女性.歯科治療8時間後,全身に膨疹出現.第2例:23歳女性.歯科治療30分後,全身に膨疹出現.2例ともホルムアルデヒドのプリックテストは陰性であったがホルムアルデヒド特異的IgE RASTが高値でありホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと診断した.ホルムアルデヒドは歯根管治療に広く用いられているが,即時型アレルギーの原因物質としての認知度は低い.その特徴として,アナフィラキシー等の重篤な症状が多いこと,通常の即時型反応より発症が遅いこと,また,プリックテストの陽性率が一定せず,診断に苦慮する場合があるなどが挙げられる.過去の報告例を検討した結果,本症の診断において,ホルムアルデヒド特異的IgE RASTが,プリックテストと比較して,感度,特異度ともに優れた検査法であり,自験例の如くプリックテスト陰性例でも簡便に的確で迅速な診断が可能であると考えられたため報告する.
著者
宮島 進 西野 洋 澤田 由佳 岡田 奈津子 松下 哲也
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.135-144, 2003-02-20 (Released:2014-12-13)

背景:糖尿病性潰瘍,壊疽などの患者は通常他の糖尿病に伴う全身的合併症を有し,しばしば生命予後が不良である.目的:糖尿病性潰瘍,壊疽患者の臨床像を解析し,生命予後に与える危険因子を検索することを目的とした.方法:1994年7月から2001年8月までに糖尿病性潰瘍,壊疽で加療した自験例140例を対象として,死亡・生存の転帰により群分けしてretrospectiveに解析し,臨床的観察項目別に各群のKaplan-Meier法による生存率をLog-rank testを用いて単変量比較し,危険因子を推定した.更に推定された危険因子からCoxの比例ハザードモデルを用いて予後因子を推定した.結果:症例の内訳は死亡例19例,生存例121例,5年生存率は74.5%であった.19例の死亡例はいずれも血糖コントロールが不良で,HbAlc値は平均で9.5%と生存群の7.8%よりも高かった.また死亡群はより広範囲な足病変を有し,糖尿病に伴う合併症を高頻度に認めた.2例は網膜症による失明を合併し,また11例は腎症による長期間の血液透析を受けていた.死亡群の全例が閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis Obliterans:ASO)を合併し,70%が高位での切断術を余儀なくされた.これらの項目は死亡群,生存群の間で統計的に有意な差であった.死因は突然死,および心不全,不整脈,心筋梗塞などの心臓関連死がともにもっとも多く,次に敗血症,肺炎,脳梗塞の順であった.これらの結果に基づいて比例ハザードモデルで多変量解析を行った結果,生命予後に関連する危険因子は高位切断(ハザード比9.9),HbAlc値(1.6),年齢(1.1)であった.考察:糖尿病性潰瘍,壊疽の生命予後改善のためには,高位切断に至らぬよう足病変の早期発見,治療が重要であるとともに,血糖コントロールや,他の全身的な合併症に注意を払うことが必要である.
著者
原田陽雄 米山博人 下谷啓 藤居徹 西野洋平 飯田靖 西原義雄
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.13-14, 2012-03-06

発話のコンテクストから人と人のコミュニケーションの状況を可視化するシステム「VoiStrap」を提案する。本システムは、各ユーザーが装着するIDカードネックストラップ型のクライアント端末、一定範囲のクライアント端末と無線通信を行うエリアコーディネータ、および各エリアコーディネータとLANで結ばれた解析サーバーを基本構成とする。クライアント端末のネックストラップ内に複数の超小型マイクを埋め込み、自分や他人の発話をセンシングする。発話の内容ではなく発声のタイミングや韻律だけを取得し、信号解析/データマイニングによって、ユーザー間でどのようなコミュニケーションが行われているかを推定する。
著者
前田 七瀬 猿丸 朋久 木嶋 晶子 吉田 直美 西野 洋 片岡 葉子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.Suppl.12, pp.B707-B712, 2009 (Released:2012-04-18)
参考文献数
3
被引用文献数
1

13歳,男児。幼少時より重症アトピー性皮膚炎(AD)にて加療していたが,9才時,アスペルガー障害,発達障害と診断された。その後も両親の離婚や母親が精神状態不安定であり,スキンケアが十分に行えず,入退院を繰り返していた。経過中にパニックを発症し,自己欲求が満たされない際・他人と衝突した際などに,周囲への暴力行為・自傷行為に至り,精神的に非常に不安定となった。児童精神科医からパニック時の対処法の指導を受け,併診しながら加療を続けた。我々の本人への対応として,(1)パニック時は周囲に害が及ばないように配慮した。(2)話を傾聴し,支持した。(3)努力を誉めることを重視した。(4)不適切な行動は明瞭に指摘し,指導を行った。(5)理解しやすいように,あいまいな表現にならないように努めた。ADの治療に関しては,ステロイド外用指導には,図を用いてわかりやすく説明した。頻回に通院し,治療へのモチベーションをあげるようにした。この対応により,徐々に精神的に安定したことで,パニックを起こさないようになり,皮膚症状も軽快した。精神的な状態によって,ストレスによる掻破やセルフコントロールの不備が生じ,皮膚症状が大きく左右されるため,精神面の安定および適切な適応のサポートは,本児の日常生活のみでなく,皮膚炎を改善させる上でも非常に重要な因子であった。成長と共に生じた問題とその対応について報告する。
著者
中川 裕貴 Praween Amontamavut 西野 洋介 早川 栄一
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.30, pp.1-6, 2013-03-06

Androidは,LinuxカーネルとDalvikVMの二つの言語で構成されているので,複数のプロセスの動作を理解することが困難である.そこで,本報告ではAndroidにおけるプロセス可視化環境の開発を行った.本システムではftraceを用いた低オーバヘッドのシステム情報取得環境を構築し,プロセス生成や切換えに関する情報を取得可能とした.この情報を元にWebブラウザで可視化環境を開発することで,ユーザが容易に利用可能な環境を構築した.本環境ではプロセスのOSモデル図,時間変化グラフ,プロセスのツリー構造を表示することにより,利用者がプロセスの実行時間や状態の遷移,プロセス同士の関係性を容易に把握できるようにした.
著者
西野 洋介 早川 栄一 高橋 延匡
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.78, pp.107-114, 2001-07-26
被引用文献数
2

計算機科学を学ぶ学生にとってオペレーティングシステム(以下OS)の理解は必須である。しかし従来のテキスト、講義による学習では、OSの動作が見えず、非同期で実行が行われるので、学習者はOSの動作と構造の対応がイメージしにくい。このような問題に対して、我々は可視化を中心としたOS学習、教育を支援する環境を提案した。この研究はブラックボックス化しているOSを可視化という手段によって、OSの機能、構造を表示し、教育、学習支援を行う環境を提供することで、学習者の理解を促進させることが目的である。本教育支援環境では、特に重要なOSの概念から教育支援を行い、また可視化部分を可視化モジュールとして独立させることで可視化環境の構造に柔軟さを与えている。これにより学習者のレベルに応じた学習を行うことを可能にする。我々はプロセス管理、メモリ管理について実現し、マルチプログラミングの概念、プロセスとメモリとの協調の概念などの学習が可能となった。また、本学情報工学科におけるOSの講義においてデモンストレーションを行い、評価を行った。The understanding of operating system (OS) is indispensable for the student who learns computer science. But, the execution of the OS and the correspondence of the structure are hard for a learner to image because the movement of the OS can't be visualized and a usual textbook and learning by the lecture are executed by the event that occurs asynchronously. An environment to support the OS learning that utilized visualization is designed and implemented. The function of the OS is indicated, and a purpose is to make it promote learner's understanding by providing the environment where it is brought up and learning is supported by the means of the visualization. Education is supported from the operating system concepts, and a flexible visualization environment is provided in this education support environment by making a visualization part become independent as a visualization module. The matter that the learning that depended on a learner's level by this is done is made possible. It is animated about the process and the virtual memory, and learning such as a concept of multi-programming and the cooperation with the process and the memory management became possible. Moreover, evaluation was tested at the lecture on the OS in our compute science course, and the validity of this system was confirmed.