著者
田中 美加 池内 眞弓 松木 秀明 谷口 幸一 沓澤 智子 田中 克俊 兼板 佳孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.386-398, 2018-08-15 (Released:2018-09-14)
参考文献数
42

目的 不眠症状を訴える高齢者は多い。高齢者の不眠症状に対しては,非薬物的アプローチが優先されることが望ましい。不眠に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)が不眠症患者に有効であることが多くの臨床研究で示されていが,地域高齢者の睡眠の改善にも役立つかは十分に示されていない。我々は,看護職でも実施可能な簡易型CBT-Iが地域高齢者の睡眠を改善させ,睡眠薬服用者の服薬量を減らす効果があるかを調べることを目的に無作為化比較試験を行った。方法 60歳以上の地域高齢者を対象に,看護職が,集団セッション(60分)と個人セッション(30分)からなる簡易型CBT-Iを実施した。主要アウトカムは,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)の得点と不眠重症度指数(Insomnia Severity Index: ISI)得点の介入前後の変化量,副次アウトカムは,介入前後の不眠症有所見者(ISI得点8点以上)の割合と,睡眠薬使用者における減薬の有無とした。フォローアップ期間は3か月間とした。結果 介入3か月後のPSQI得点は,対照群(38人)に較べ介入群(41人)で有意に改善し,介入の効果量(Cohen's d)は,0.56(95% Confidence interval [CI], 0.07 to 1.05)であった。ISI得点も,介入群で有意に改善し,介入の効果量は,0.77(95%CI, 0.27 to 1.26)であった。サブグループ解析において,不眠改善に対するNumber Needed to Treat(NNT)は2.8(95%CI, 1.5 to 17.2),睡眠薬の減薬に対するNNTは2.8(95%CI, 1.5 to 45.1)であった。結論 簡易型CBT-Iは,地域高齢者の主観的睡眠の質を改善させ,不眠症状を軽減させることが示唆された。また,簡易型CBT-Iは睡眠薬の減薬に対しても効果的な介入であることが示唆された。睡眠の問題を抱える地域高齢者は多いことから,地域保健活動における簡易型CBT-Iの方法や効果についてさらなる検討が必要と考える。
著者
安永 明智 谷口 幸一 徳永 幹雄
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-183, 2002-03-10 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
9 6

本研究では,地域の高齢者209名を対象に,QOLの重要な構成要素である主観的幸福感に運動習慣が及ぼす影響について,心理社会的変数を加えて,その関係性を明らかにしていくことが目的であった.以下のような結果が得られた.1)運動習慣は,特に後期高齢者において,社会的自立因子,健康度自己評価,家族サポート,主観的幸福感で有意に肯定的な影響を及ぼすこと.2)運動習慣はADLを維持すること,そしてADLを維持していくことは,健康度自己評価やソーシャルサポートを高め,そのことが主観的幸福感に影響すること.3)これらの結果から,運動習慣が主観的幸福感に及ぼす影響は,ADLやソーシャルサポート,健康度自己評価を通した間接的な影響であることが推察された.なお,本研究は,地方小都市である一地域を対象に実施したものである.したがって,地域的なバイアスが諸変数に及ぼす影響も考えられる.今後,都市部などを含んだ様々な地域を対象に同様な調査を繰り返し,共通性を明らかにしていく必要があるであろう.また,横断的な分析であるために,因果関係までは言及することができなかった.今後は,縦断的な調査方法を用いて,因果関係を明らかにしていくことを課題としたい.
著者
安永 明智 谷口 幸一 徳永 幹雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-183, 2002
被引用文献数
6 6

本研究では,地域の高齢者209名を対象に,QOLの重要な構成要素である主観的幸福感に運動習慣が及ぼす影響について,心理社会的変数を加えて,その関係性を明らかにしていくことが目的であった.以下のような結果が得られた.1)運動習慣は,特に後期高齢者において,社会的自立因子,健康度自己評価,家族サポート,主観的幸福感で有意に肯定的な影響を及ぼすこと.2)運動習慣はADLを維持すること,そしてADLを維持していくことは,健康度自己評価やソーシャルサポートを高め,そのことが主観的幸福感に影響すること.3)これらの結果から,運動習慣が主観的幸福感に及ぼす影響は,ADLやソーシャルサポート,健康度自己評価を通した間接的な影響であることが推察された.なお,本研究は,地方小都市である一地域を対象に実施したものである.したがって,地域的なバイアスが諸変数に及ぼす影響も考えられる.今後,都市部などを含んだ様々な地域を対象に同様な調査を繰り返し,共通性を明らかにしていく必要があるであろう.また,横断的な分析であるために,因果関係までは言及することができなかった.今後は,縦断的な調査方法を用いて,因果関係を明らかにしていくことを課題としたい.
著者
安永 明智 谷口 幸一 野口 京子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.63-72, 2011-01

本研究は,全国の70歳以上の高齢者を対象に,郵送法による質問紙調査法を用いて,服装や流行への関心と外出着の着装基準,外出の頻度,ボランティアや町内会活動への参加,QOLとの関係を横断的に検討することを目的とした。2010年1月に全国の70歳以上の高齢者850名に調査票を郵送し,568名(男性274名;平均年齢76.0±44歳,女性294名;平均年齢75.8±4.7歳)から回答が得られた(有効回答率66.8%)。調査は,自分や他人の服装への関心,流行への関心,外出着の着装基準,外出の頻度ボランティアや町内会活動への参加,生きがい,抑うつ,活動能力について質問した。分析の結果から,(1)高齢女性は,高齢男性と比較して,自分及び他人の服装への関心や流行への関心が高く,外出着の着装基準においても,個人的服装嗜好,流行,機能性,社会的服装規範を重視すること,(2)服装や流行への関心が高い高齢者は,低い高齢者と比較して,外出着の着装基準において,個人的服装嗜好や流行,機能性,社会的規範を重視すること,(3)服装や流行への関心が高い高齢者は,低い高齢者と比較して,町内活動やボランティア活動に積極的に参加していること,そして活動能力や生きがい感も高く,メンタルヘルスも良いこと,などが明らかにされた。本研究の結果は,高齢期において,装いに関心を持つことが,生活の質(Quality of Life;QOL)の維持・増進に貢献しうる可能性があることを示唆する。
著者
島田 博祐 高橋 亮 渡辺 勧持 谷口 幸一
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.375-387, 2002-11-30

本研究の目的は、加齢および居住環境要因(入所施設とグループホーム)の適応行動に対する影響を障害程度別に検討することである。対象者は40歳以上の中高齢知的障害者188名であり、適応行動尺度(ABS)および高齢化に関する調査票を材料に用いた。結果として、(1)障害程度にかかわらず「自立機能」に50歳以降における適応得点の低下と不適応者の増加が認められ、中軽度群では「身体的機能」「経済的活動」および「責任感」に、重度群では「掃除洗濯」「仕事」および「心理的障害」の領域に同様の低下が認められた、(2)居住環境要因に関しては「経済的活動」「移動」「一般的自立機能」「台所仕事」の領域で、障害程度に関係なく入所生活者の適応能力がグループホーム生活者より低く、中軽度群での「数と時間」「言語」および「計画性」、重度群での「自己志向性」と「社会性」でも同様の差が認められた。