著者
辻 哲也 園田 茂 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.301-309, 1996-05-18
参考文献数
13
被引用文献数
26 51

機能的自立度評価法(FIM)を用いて, 脳血管障害患者190例の入院・退院時のADL評価を行った.項目別自立度により運動, 認知項目の難易度パターンを調べ, Rasch分析により運動, 認知項目の合計点別に各項目の点数分布を分析した.運動項目では, 難易度パターンは入院・退院時とも同様であり, 損傷病巣側, 年齢による差もなかった.認知項目では損傷病巣側により差がみられた.痴呆は難易度パターンに影響を与えていた.また, Rasch分析により, 運動項目は合計点別に50点未満の介助群から80点台後半の応用歩行自立群までの5つのグループに分けられた.一方, 認知項目では症例の一元性に問題があり, Rasch分析以外の解析手法を検討すべきであると思われた.
著者
園田 茂 榊原 美紀 森 光代 山本 純子 岡島 康友 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.641-644, 1998-09-18
被引用文献数
2

サウンドスペースプロセッサRSS-10を用いたヘッドフォン方式の音方向覚検査の信頼性を検討した. 15名の難聴でない健常被験者を対象に, ホワイトノイズ(WN)および女声(FV)を正面と, 左右に30度, 60度, 90度の計7点より3回ずつ呈示した. 音は全試行とも方向覚を持って聞こえ, 平均正答率62%, 呈示音と回答とのずれの角度は5〜18度, 平均12度(SD=9) (WN), 1〜19度, 平均11度(SD=8) (FV)であった. WNを左から右, 右から左に被験者の前を通るように約10秒で移動させ, 正中を通過したと感じられる時点の位置の平均はそれぞれ正面から-11.1度(SD=8.0), 3.4度(SD=7.5)であった. RSS-10を用いた音方向覚検査は再現性が高く, 臨床上有用と考えられた.
著者
園田 茂
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4-5, pp.265-271, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

Understanding the societal and personal impact of immobilization or disuse syndrome is important in Japan with its large elderly population. The indication of disuse syndrome for rehabilitation was narrowed and the fee for disuse syndrome was set at a low level. Muscle strength decreases at a rate of 2.3 % per day in 40 % of the people. Also, the muscle fractional synthetic rate decreased with 10 days rest. Other functional or morphological changes also occur in the neuromuscular junction and the muscle internal structure. Additionally, we must consider the contribution of muscle to the limitation of joint angle after immobilization. Both elasticity and viscosity increase. Cardiac wall thickness and cardiorespiratory fitness decrease during immobilization. Gravitational dependent lung disease or deep vein thrombosis may occur. The brain is also affected by immobilization, leading to condition of learned non-use. The best solution for immobilization is to be active ; however, we must have a detailed knowledge of the pathophysiology of a patient's disease in order increase their activity level. In an acute hospital setting, prevention of immobilization is crucial. The system used in Japan, whereby therapists are assigned full-time in the ward was introduced in April 2014. Furthermore, even though 20.35% of maximal strength training is effective in atrophied muscles, it is ineffective in trained muscles. Another sticking point is that there is no evidence-based recommendation for range of motion exercise. However, rehabilitation intervention in respirator patients improves their ADL. Prophylaxis of deep vein thrombosis is also very important. And learned non-use of the brain may be diminished by the skillful application of vibrations that makes patients feel that their hand is moving even when it is not. Finally, the mechanism of hibernation may be the key to improving our rehabilitation against immobilization in the future.
著者
笛吹 亘 園田 茂 鈴木 亨 岡本 さやか 東口 高志 才藤 栄一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.184-192, 2008-03-18
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

回復期リハビリテーション病棟での栄養サポートチーム(NST)介入効果をFIMを用いて後方視的に検討した.脳卒中患者304名を対象にNST介入対象者を栄養強化群と減量群に分類し,各々をNST介入非対象者(非NST群)と比較した.FIM利得は栄養強化群17.3±15.9,非NST群16.7±12.5と両群に有意差はなかったが,FIM効率は栄養強化群0.20±0.19,非NST群0.27±0.19と有意差を認めた.入院時FIM得点が54点以下の患者ではFIM利得,FIM効率ともに両群に有意差を認めなかった.入退院時BMI変化とFIM変化の間で一定の傾向を認めなかった.栄養介入を要した栄養強化群は一般的には予後不良の群と判断されるにもかかわらず,非NST群と差がなかった今回の結果は,NSTという栄養介入が有用であった可能性を示唆している.
著者
鈴木 亨 園田 茂 才藤 栄一 村田 元徳 清水 康裕 三沢 佳代
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.180-185, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
8 5

回復期リハビリテーション目的で88床のリハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者の転倒の現状とADLの変化について検討した.脳卒中患者256名を対象に,転倒の有無,回数,場所,転倒までの期間,時間帯,ADL状況を調査した.ADLはFIMにて入退院時に評価した.256名のうち121名で延べ273回の転倒事故があった.病室とトイレで229件の転倒があり,入院から4週以内の転倒は147件,朝6時から10時までと夕方4時から8時までで129件であった.入院時のFIM車椅子移乗の自立割合は転倒なし群で58.5%,転倒1回群で30.5%,複数転倒群で15.9%であった.入院時に運動合計が38点以下でかつ認知合計が19点以下の36例中,24名が2回以上の転倒を経験したが,運動合計65点以上,認知合計20点以上の者94名中73例が転倒しなかった.運動,認知とも低下している脳卒中患者では転倒を繰り返す危険性が高かった.このような患者では朝夕を中心とした注意深い観察が必要であろう.
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS,MMSE,DRS得点とは統計学的に.有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18
参考文献数
15
被引用文献数
2

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS, MMSE, DRS得点とは統計学的に有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.(リハ医学 2001;38:253-258)
著者
園田 茂
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.123-132, 1995-02-18
被引用文献数
20

脳卒中患者のための機能評価法Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の体幹, 高次能機能, 感覚項目の信頼性および妥当性を検証した.検者間信頼性は一致率(0.52〜0.85), kappa(0.30〜0.87)と高かった.妥当性検証に関して, SIASの座位腹筋項目は従来の臥位腹筋検査と高い相関があった(r=0.67).視空間認知項目と線分二等分テストの順位相関は0.45となった.視空間認知, 言語項目は, 能力低下を示す機能的自立度評価法FIM認知項目群と相関していた.退院時FIM運動項目合計の予測は, 入院時FIMによる予測(R^2=0.56)より, FIMにSIASの諸項目を加えることでさらに正確に予測できた(R^2=0.60).以上よりSIASは信頼性, 妥当性のある評価法と考えられた.
著者
大塚 友吉 道免 和久 里宇 明元 園田 茂 才藤 栄一 椿原 彰夫 木村 彰男 十野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.731-735, 1994-10-18
被引用文献数
10

60歳以上の高齢者において握力測定法とその正常値について検討を行った.握力測定法については,握力計の握りの幅が5cm前後であれば問題なく,また体位については,座位または立位で測定すると臥位での測定に比べ有意に大きな測定値が得られた,そこで,疾患群への応用を考慮して,座位で,握力計の握り幅は5cmとし,被験者による若干の修正を許可して,60歳以上の健常高齢者における握力の正常値を求めた.男性に比べ,女性において,加齢の影響が強い傾向にあった.また,対象を運動群と非運動群とに分けた場合,前者では,後者より握力が有意に強く,ゲートボールなど運動を行うことが,高齢者の握力維持に有効である可能性が示唆された.
著者
園田 茂人 菱田 雅晴
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度にあたる2007年度は、従来の研究成果を取りまとめ、対外的な発信を行うことに最大のエネルギーを払った。たとえば、中国社会学会第17回全国大会で"Two Types of Urban New Middle Classes in Confucian Asia?"と題する発表をし、アジア内部における中間層の2類型論を展開するとともに、今回のプロジェクトで得られた2時点データを利用して、東北大学の不平等研究拠点が主催したシンポジウムで"Social Inequality and Injustice in Developing China:Some Empirical Observations"と題する発表を行った。また、11月2日には、中国の4都市で調査を担当した海外共同研究者4名を招聘し(上海大学の仇立平氏が都合で来日できなかったため、代わりに胡申生氏を招聘した)、早稲田大学現代中国研究所と共催で国際シンポジウム「中国の階層変動と都市ガバナンス」を開催、日本の中国研究者も含めて討論を行った。これらの作業を通じて、最終的に確認できた現代中国の階層変動に関する知見は以下の通り。(1)前回調査からも、学歴別にみた月収は格差が拡大している。また、収入格差に対して不公平だとする評価が高まっており、これが全体の社会的不公平感を強めている。(2)しかし、学歴が社会的不平等を生み出しているという認識は強くなく、教育機会をめぐる不平等以上に、教育達成のもつ公平性・健全性が強く意識されている。(3)富裕層は、1990年代の外資系企業・私営企業といった周辺セクターから2000年代の国家機関・国有事業体へとシフトしており、発展の「体制内化」が急激に進んでいる。そのため、学歴(文化資本)、権力(政治資本)、収入(経済資本)の独占状態が生まれつつあり、従来の社会主義体制を否定する力学が生まれている。
著者
才藤 栄一 横田 元実 平野 明日香 大塚 圭 園田 茂
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.87-92, 2012-04-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
前島 伸一郎 岡本 さやか 岡崎 英人 園田 茂 大沢 愛子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.322-332, 2016-12-25 (Released:2017-01-18)
参考文献数
53
被引用文献数
2

視床病変では,運動障害や感覚障害などの神経症状だけでなく,失語症や半側空間無視,記憶障害など多彩な神経心理学的症状をしばしば伴う.一方,失語症を伴わない読み書きの障害が単独でみられることは少ない.読み書きの障害を生じる視床の局在病変として明らかにされているのは,背内側核(DM核)と外側腹側核(VL核),後外側腹側核(VPL核)であり,それぞれ大脳皮質の前頭葉,運動関連領野,感覚野へ投射する.既報告例の多くで,SPECT検査が実施され,同側の頭頂葉や前頭葉,側頭葉の皮質・皮質下に局所脳血流の低下による機能的病変が示されている.
著者
辻 哲也 園田 茂 千野 直一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.301-309, 1996-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
13
被引用文献数
41 19

機能的自立度評価法(FIM)を用いて,脳血管障害患者190例の入院・退院時のADL評価を行った.項目別自立度により運動,認知項目の難易度パターンを調べ,Rasch分析により運動,認知項目の合計点別に各項目の点数分布を分析した.運動項目では,難易度パターンは入院・退院時とも同様であり,損傷病巣側,年齢による差もなかった.認知項目では損傷病巣側により差がみられた.痴呆は難易度パターンに影響を与えていた.また,Rasch分析により,運動項目は合計点別に50点未満の介助群から80点台後半の応用歩行自立群までの5つのグループに分けられた.一方,認知項目では症例の一元性に問題があり,Rasch分析以外の解析手法を検討すべきであると思われた.
著者
山中 速人 山田 晴通 園田 茂人 山本 真鳥
出版者
中央大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

フィールドワークの教育にあたっては、フィールドワークが野外調査をもっぱらとし、言葉だけでは再現できないリアルな現場を調査対象とするため、現場から離れた教室的環境での講義や演習には、事例の提示や技法の紹介などで多くの困難が存在してきた。本研究は、マルチメディアを活用し、現場から離れた教室環境においても、リアリティのある現場の映像や音声情報を学生にインタラクティブに提示することによって、これまで教室講義では果たせなかったフィールドワーク教育のための新しい教育方法の開発を行った。本研究で開発した教材は、1.初学者(学部教育レベル)を対象とし、2.フィールドワークのための基本的な知識と技能の習得をめざし、3.マルチメディアされた素材(映像・音声・文字)によって現場の事例を擬似的現実として提示しながら、4.ステップを踏んでインタラクティブに学習を行うものである。教材の媒体は、教室講義のための補助的教材を想定し、CD-ROMとした。その後、さらに、たんに補助教材の制作だけでなく、それとメディアミックスする印刷教材と組み合わせて使用するよう教材の内容が練り上げられた。執筆者として、研究分担者を中心に7人の社会学・文化人類学者が1章づつを担当し、印刷教材の内容に対応する著者自身のフィールドワークの現場と調査経験を写真、映像、文字によって再現した。これらの研究成果をもとにして、CD-ROMが添付された大学教科書を出版する契約が出版社との間で交わされ、CD-ROM付きの教科書が2001年度秋に出版の予定である。
著者
今西 英雄 植村 修二 園田 茂行
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.483-489, 1986
被引用文献数
2

1. くん煙あるいはエチレン処理により休眠打破を促した球茎と無処理の球茎とを用いて, 発芽試験, 球茎最上腋芽における葉の分化及び底部における根の出現の推移より, 球茎の休眠の様相を明らかにすると共に, これらの球茎を異なる時期より低温処理に移し, いつから低温感応が可能であるかを調べた.<br>2. 室温下に貯蔵された無処理の球茎では, 8月31日に最上腋芽で葉の分化が再開し, 引き続いて根の出現が認められ, この段階の球茎を14&deg;C下で置床すると速やかな発芽がみられた. これに対し, 無処理球に比べエチレン処理球では2週間, くん煙処理球ではほぼ6週間,より早い時期に同じ状態に達することが認められ, 両処理, とりわけくん煙処理による顕著な休眠打破効果が確かめられた.<br>3. このように休眠程度の異なる球茎を種々の時期より, 10&deg;C湿潤5週間の低温処理に移したところ, 低温処理終了時における発芽及び花芽分化は共にくん煙処理球で最も進み, エチレン処理球, 無処理球の順であった.これらの低温処理球の開花をみたところ, くん煙及びエチレン処理球ではそれぞれ8月17日, 8月31日低温処理開始において全個体開花し, 完全な低温感応が認められたが, 無処理球では最も遅い9月14日の処理開始でも開花率が86%にとどまった.<br>4. これらの結果, 低温処理開始可能時期は室温下に貯蔵した球茎の最上腋芽における葉の分化再開時期よりも2週以上遅く, 根の突起がほぼ全個体で認められた時期に一致することが確かめられた.