著者
福島 俊一 藤巻 遼平 岡野原 大輔 杉山 将
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.543-554, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
30
被引用文献数
3

機械学習技術を用いることで,過去の事例・観測データからの学習に基づく,モノやコトの判別・分類,予測,異常検知等の知的な判断をコンピューターで実現可能になる。ビッグデータの活用と相まって,さまざまな問題解決に機械学習技術の適用が広がっている。本稿では,問題解決への適用という視点から重要と考える技術的チャレンジの方向性として,(1)学習結果の解釈性の確保,(2)機械学習から意思決定まで通した解法の実現,(3)深層学習の高速化・高効率化,(4)機械学習型システム開発方法論の確立,という4点について述べる。
著者
ホーンスティン ノバート 折田 奈甫 藤井 友比呂 小野 創 岡野原 大輔 瀧川 一学
出版者
岩波書店
雑誌
科学
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.1004-1014, 2023-12

[連載]人間の言語能力とは何か ― 生成文法からの問い 2
著者
堀 正岳 植田 宏昭 野原 大輔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.26-38, 2006-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
25

茨城県筑波山の西側斜面における斜面温暖帯の発生をとらえるため,気温ロガーを用いた10分間隔の観測を2002年11月から90日間行った.斜面温暖帯の研究において,このような高時間解像度かつ長期間の観測を行ったのは本研究が初めてであり多数の温暖帯事例による定量的な把握が可能となった.観測期間中の斜面上の夜間最低気温は平野に比べてつねに高く,11月では斜面上の気温はつねに0°Cを上回っていた.夜間の気温の階級別出現頻度は,平野上では0°Cを挟んで高温側と低温側に均等に分布していたのに対し,斜面上では高温側に偏った分布を示した.平野と斜面との間で+2°C以上の気温の逆転が10時間以上持続する場合を斜面温暖帯の事例と定義したところ,こうした事例は観測期間中37~47日(42~53%)もみられ,月による頻度の違いはほとんどなかった.斜面温暖帯発生時には平野の気温が日没前後に低下することで平野と斜面との気温逆転が生じている.斜面上の気温は午前3時以降に時間変化が小さい状態になり,これに伴って平野と斜面の気温差は時間変化が小さくなる.温暖帯の中心の気温は1月に向けて低下するのに対して,平野との気温差はわずかに大きくなる傾向がある.このとき斜面温暖帯の中心の標高は200~300mであり,夜間を通してほぼ一定の高さを保っていた.
著者
田中 博 村 規子 野原 大輔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-18, 2004-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

本研究では,福島県下郷町にある中山風穴の冷気の成因解明のために, 2001年夏季と冬季の2回にわたり現地観測を行った.夏季の風穴循環は斜面上部の温風穴から吸い込まれた外気が崖錐内部で冷やされて下方の冷風穴から吹き出すと考えられている.夏季の観測ではそれを実証するために,CO2を用いたトレーサー実験を行った.その結果,温風穴から吸い込まれた外気は約1.5時間で140m下方の冷風穴から噴出することが実証された.この実験で得られた循環速度2.6cm/sから総質量フラックスを計算し,気流の温度変化を掛け合わせることで,夏季に約4×1012Jという熱量が崖錐に蓄えられるものと推定された.一方,冬季の風穴循環は逆転して,下方で寒気を吸い込み上方の温風穴から暖気を吹き出す.冬季の温風穴での地表面熱収支観測の結果,地中から上向きに約150W/m2の地中熱流量が観測された.これにサーモグラフィーで調べた温風穴の全面積を掛け合わせると,冬季に崖錐から放出される総熱量は約5×1012Jとなり,上記の値とオーダー的に一致した.以上の結果から,中山風穴の冷気は,冬季に活発な対流混合で蓄積された寒気が,夏季に重力流として穏やかに流出する,という対流説で定量的に説明できることが示唆された.したがって,風穴保護の観点からは,温風穴の位置をサーモグラフィーで見極め,その周辺の植生を伐採して崖錐表面の目詰まりを解放させてやることが,効率的で有効な保護対策と考えられる.
著者
岡野原 大輔 辻井 潤一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.90, pp.59-64, 2008-09-17

本稿では,全ての部分文字列が素性として利用される文書分類モデル,及びその効率的な学習,推定手法を提案する.文書分類に有効な部分文字列は,単語と異なる場合や,署名やテンプレートなど,非常に長くなる場合が少なくない.しかし,部分文字列の種類数は文書長の二乗に比例するため,それらを素性として直接用いて学習することは,計算量的に困難だった.本稿では,テキスト長に比例する個数のみ存在する極大部分文字列に関する統計量を扱うことで,有効な部分文字列を漏れなく求めることができることを示す.また,拡張接尾辞配列を用いることで,これらを効率的に列挙可能であり,全文書長に比例した時間で学習可能であることを示す.さらに L1 正則化を適用することで,コンパクトな学習結果が得られ,高速な推定が可能であることを示す.このモデルは,形態素解析結果や TF/IDF などの統計量と組み合わせられることを示し,従来の単語ベースの Bag of Words 表現と比較し,精度が向上することを示す.This paper presents a novel document classification method using all substrings as features. Although an effective substring for a document classification task is often different from tokenized words, the number of all candidate substrings is the quadratic of the length of a document, and a learning using all these substrings as features requires a prohibitive computational cost. We show that all effective substrings can be computed exhaustively by checking only maximal substrings, which can be enumerated in linear time by using enhanced suffix arrays. Moreover, we use L1 regularization to obtain a compact learning result, which makes an inference efficient. We show that many prior weights (tf, idf, other tokenized result) can be included in this method naturally. In experiments, we show that our model can extract effective substrings, and more accurate than that of word-base BOW representation.
著者
岡野原 大輔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.504-512, 2012-04-15

近年,高い圧縮率と高速な問い合わせを両立するデータ構造として,簡潔データ構造(succinct data structure)が注目されている. 簡潔データ構造は理論的な発展とともに,実用化に向けた改善が進んでおり,今後様々な分野でその用途がさらに広がっていくと期待される.この記事では,簡潔データ構造の仕組みと,その利用事例について解説する.
著者
田中 博 野原 大輔 横井 みずほ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.611-630, 2000-10-25
被引用文献数
5

本研究では、韓国のIce Valleyと福島県の中山風穴の現地観測結果を基に、0次元モデル、流路に沿った1次元モデル、鉛直断面としての2次元モデルを開発して、風穴循環の一連の数値シミュレーションを行なった。これらの風穴は、周辺の稀少な高山植物の生育により国の特別天然記念物に指定されているが、近年氷の減少傾向が見られ、その原因究明が急務となっている。現地観測および数値実験の結果として、以下のことが明らかになった。(1)風穴循環の主な駆動力は、外気と崖錘内部の気温差による水平圧傾度力である。(2)崖錘内部の空気の滞留時間は約2日であり、平均的な風穴循環は、約1mm/sと推定される。(3)春から夏にかけてのカタバ風としての冷風穴循環は、秋から冬にかけてのアナバ風としての温風穴循環と入れ替わる。(4)崖錘表面に植生が殆どないIce Valleyの場合、夏季の安定したカタバ流とは対照的に冬季には不安定による対流混合が発生し、このような風穴循環の夏冬非対称性が、崖錘内部の平均温度を下げる熱フィルターの役割を果たす。外気が暑ければ暑いほど、崖錘内部のカタバ風が強くなることは注目に値する。Ice Valleyや中山風穴における夏期氷結の謎は、部分的ではあるが、この風穴循環のメカニズムによって説明することができる。
著者
岡野原 大輔 辻井 潤一
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.90(2008-NL-187), pp.59-64, 2008-09-17

本稿では,全ての部分文字列が素性として利用される文書分類モデル,及びその効率的な学習,推定手法を提案する.文書分類に有効な部分文字列は,単語と異なる場合や,署名やテンプレートなど,非常に長くなる場合が少なくない.しかし,部分文字列の種類数は文書長の二乗に比例するため,それらを素性として直接用いて学習することは,計算量的に困難だった.本稿では,テキスト長に比例する個数のみ存在する極大部分文字列に関する統計量を扱うことで,有効な部分文字列を漏れなく求めることができることを示す.また,拡張接尾辞配列を用いることで,これらを効率的に列挙可能であり,全文書長に比例した時間で学習可能であることを示す.さらに L1 正則化を適用することで,コンパクトな学習結果が得られ,高速な推定が可能であることを示す.このモデルは,形態素解析結果や TF/IDF などの統計量と組み合わせられることを示し,従来の単語ベースの Bag of Words 表現と比較し,精度が向上することを示す.
著者
田中 博 野原 大輔 横井 みずほ
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.611-630, 2000-10-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
13
被引用文献数
9 14

本研究では、韓国のIce Valleyと福島県の中山風穴の現地観測結果を基に、0次元モデル、流路に沿った1次元モデル、鉛直断面としての2次元モデルを開発して、風穴循環の一連の数値シミュレーションを行なった。これらの風穴は、周辺の稀少な高山植物の生育により国の特別天然記念物に指定されているが、近年氷の減少傾向が見られ、その原因究明が急務となっている。現地観測および数値実験の結果として、以下のことが明らかになった。(1)風穴循環の主な駆動力は、外気と崖錘内部の気温差による水平気圧傾度力である。(2)崖錘内部の空気の滞留時間は約2日であり、平均的な風穴循環は、約1mm/sと推定される。(3)春から夏にかけてのカタバ風としての冷風穴循環は、秋から冬にかけてのアナバ風としての温風穴循環と入れ替わる。(4)崖錘表面に植生が殆どないIce Valleyの場合、夏季の安定したカタバ流とは対照的に冬季には不安定による対流混合が発生し、このような風穴循環の夏冬非対称性が、崖錘内部の平均温度を下げる熱フィルターの役割を果たす。外気が暑ければ暑いほど、崖錘内部のカタバ風が強くなることは注目に値する。Ice Valleyや中山風穴における夏期氷結の謎は、部分的ではあるが、この風穴循環のメカニズムによって説明することができる。