著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-25, 2005-04-20
被引用文献数
7

68組の夫婦に縦断研究(子どもの誕生前, 親になって2年後, 3年後)をおこない親になることによって夫婦関係がどのように変化していくかについて検討した。夫婦関係は「親密性」「頑固」「我慢」「冷静」の4因子からなる尺度によって明らかにした。その結果, 親密性は親になって2年後に男女ともに顕著に低くなるが, 2年後と3年後の間には大きな変化はなかった。このことから, 夫婦間の親密な感情は親になって2年の間に下がるが, 3年を経過するとその下がったレベルのまま安定し推移していくことが明らかになった。しかし妻の「頑固」得点は母親になると著しく高くなっており, 妻は母親になると夫に頑固になる傾向が認められた。さらに夫の「我慢」得点は3期にわたって常に妻よりも高かった。これは夫が妻の顔色をうかがって妻に不快なことがあっても我慢してしまう傾向があることを示している。最後に「親密性」が低下するのに関連する要因について重回帰分析を用いて検討した。その結果, 夫の場合は妻自身のイライラ度合いが強いことと夫の労働時間が長いことが親密さを低下させていた。一方の妻の場合は夫の育児参加が少ないことや子どもが育てにくいことが夫への親密性を低める要因としてかかわっていた。
著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-25, 2005-04-20 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
7

68組の夫婦に縦断研究(子どもの誕生前, 親になって2年後, 3年後)をおこない親になることによって夫婦関係がどのように変化していくかについて検討した。夫婦関係は「親密性」「頑固」「我慢」「冷静」の4因子からなる尺度によって明らかにした。その結果, 親密性は親になって2年後に男女ともに顕著に低くなるが, 2年後と3年後の間には大きな変化はなかった。このことから, 夫婦間の親密な感情は親になって2年の間に下がるが, 3年を経過するとその下がったレベルのまま安定し推移していくことが明らかになった。しかし妻の「頑固」得点は母親になると著しく高くなっており, 妻は母親になると夫に頑固になる傾向が認められた。さらに夫の「我慢」得点は3期にわたって常に妻よりも高かった。これは夫が妻の顔色をうかがって妻に不快なことがあっても我慢してしまう傾向があることを示している。最後に「親密性」が低下するのに関連する要因について重回帰分析を用いて検討した。その結果, 夫の場合は妻自身のイライラ度合いが強いことと夫の労働時間が長いことが親密さを低下させていた。一方の妻の場合は夫の育児参加が少ないことや子どもが育てにくいことが夫への親密性を低める要因としてかかわっていた。
著者
畑 潮 小野寺 敦子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-47, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1 6

本研究では,Block & Kremen(1996)が作成したエゴ・レジリエンス尺度(ER89)の日本語版を作成し,その信頼性,妥当性の検討を行った。研究1では,ER89日本語版尺度を作成し,大学生520名に質問紙調査を実施した。主成分分析の結果,原版と同じ14項目1成分解が得られ,十分に高い内的整合性(α=.82)が確認された。研究2では,ER89日本語版尺度の妥当性の検討を行った。大学生261名(サンプル1)と大学生240名(サンプル2)に質問紙調査を実施し,他の概念(レジリエンス,精神的健康度)との関連から本尺度の併存的妥当性および構成概念妥当性が確認された。以上により,ER89の日本語版の信頼性と妥当性が明らかにされた。
著者
小野寺 敦子 青木 紀久代 小山 真弓
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.121-130, 1998-07-30
被引用文献数
15

はじめて父親になる男性がどのような心理的過程を経て父親になっていくのか, そして親になる以前からいだいていた「親になる意識」は, 実際, 父親になってからのわが子に対する養育態度とどのように関連しているのかを中心に検討を行った。まず, 父親になる夫に特徴的だったのは, 一家を支えて行くのは自分であるという責任感と自分はよい父親になれるという自信の強さであった。そして父親になる意識として「制約感」「人間的成長・分身感」「生まれてくる子どもの心配・不安」「父親になる実感・心の準備」「父親になる喜び」「父親になる自信」の6因子が明らかになった。親和性と自律性が共に高い男性は, 親になる意識のこれらの側面の内, 「父親になる実感・心の準備」「父親になる自信」が高いが「制約感」が低く, 父親になることに肯定的な傾向がみられた。また, これらの「親になる意識」が実際に父親になってからの養育態度にどのように関違しているかを検討した。その結果, 「制約感」が高かった男性は, 親になってから子どもと一緒に遊ぶのが苦手である, 子どもの気持ちをうまく理解できないと感じており, 父親としての自信も低い傾向がみられた。さらにこれらの男性は, 自分の感情の変化や自己に対する関心が高い傾向が明らかになった。
著者
小野寺 敦子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.289-295, 1984-12-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3

This study aims to examine the attractiveness of father to his late-adolescent daughter. In the study Ia, the structure of the attractive father was investigated by means of the factor analysis, and three different factors were found. Each factor was considered to be associated respectively as follows; F1: humanistic attractiveness, F2: attractiveness as a male, and F3: affiliation between father and mother. In the study Ib, the contents of the father-daughter contact in everyday life was investigated and other three factors were found: F1-father who talks on the society, F2-father who acts as a parent, and F3-father's openness as a male. In the study II, later elements which heightened the attractiveness of father were examined. As a result, the most important element for heightening the attractiveness of father was revealed to be the good relationship between father and mother. The second element was revealed the high degree of attractiveness as a male. The third element was the high degree of everyday contact between father and daughter. It was also predicted that for the father-daughter relation, mother was taking a significant role as a indirect medium.
著者
小野寺 敦子 青木 紀久代 小山 真弓
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.121-130, 1998-07-30 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
4

はじめて父親になる男性がどのような心理的過程を経て父親になっていくのか, そして親になる以前からいだいていた「親になる意識」は, 実際, 父親になってからのわが子に対する養育態度とどのように関連しているのかを中心に検討を行った。まず, 父親になる夫に特徴的だったのは, 一家を支えて行くのは自分であるという責任感と自分はよい父親になれるという自信の強さであった。そして父親になる意識として「制約感」「人間的成長・分身感」「生まれてくる子どもの心配・不安」「父親になる実感・心の準備」「父親になる喜び」「父親になる自信」の6因子が明らかになった。親和性と自律性が共に高い男性は, 親になる意識のこれらの側面の内, 「父親になる実感・心の準備」「父親になる自信」が高いが「制約感」が低く, 父親になることに肯定的な傾向がみられた。また, これらの「親になる意識」が実際に父親になってからの養育態度にどのように関違しているかを検討した。その結果, 「制約感」が高かった男性は, 親になってから子どもと一緒に遊ぶのが苦手である, 子どもの気持ちをうまく理解できないと感じており, 父親としての自信も低い傾向がみられた。さらにこれらの男性は, 自分の感情の変化や自己に対する関心が高い傾向が明らかになった。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-10, 2021-03-31

本研究では,片づけ行動を促進する要因を明らかにするために,片づけ動機および実行機能が片づけ行動に及ぼす影響を検討した。さらに,片づけ行動の心理的効果を明らかにするために,片づけ行動がwell-beingに及ぼす影響についても検討した。大学生を対象に質問紙による調査を実施し,回答に不備のない525名を分析対象とした。仮説モデルに沿って,構造方程式モデリングを実施した。その結果,片づけ動機から片づけ行動に有意な正の影響がみられたことから,片づけ動機が高いほど片づけ行動が実行されていることが示唆された。また,実行機能から片づけ行動にも有意な正の影響がみられたことから,実行機能が高いほど片づけ行動が実行されていることが示唆された。さらに,片づけ行動からwell-beingに正の影響がみられたことから,片づけ行動がwell-beingを高めていることが示唆された。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-64, 2019-03-31

本稿では,日本における片づけについて先行研究を概観し,片づけにおける研究の課題について考察する。保育・家政学の分野における片づけ,発達障害・精神疾患と片づけの関連,情報処理における片づけ支援の観点から,それぞれの先行研究について概観した上で,今後の片づけに関する研究の展望を論じた。全体を概観して捉えられる研究の動向の特徴としては,まず一つ目として,片づけを促すための方策や支援を提案した研究がどの観点においても見られることである。「どうすれば片づけられるのか」という視点は,片づけの研究において中核をなすものだといえるだろう。二つ目は,片づけを,個人を理解するための指標として活用できる可能性を示唆する研究が見受けられることである。子どもの発達の状態を理解するために,片づけは指標となると考えられる。現状として,片づけに関する研究は保育における研究が多い。今後は,幼児期以降の片づけに関する研究が進められることが望まれる。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-64, 2019

本稿では,日本における片づけについて先行研究を概観し,片づけにおける研究の課題について考察する。保育・家政学の分野における片づけ,発達障害・精神疾患と片づけの関連,情報処理における片づけ支援の観点から,それぞれの先行研究について概観した上で,今後の片づけに関する研究の展望を論じた。全体を概観して捉えられる研究の動向の特徴としては,まず一つ目として,片づけを促すための方策や支援を提案した研究がどの観点においても見られることである。「どうすれば片づけられるのか」という視点は,片づけの研究において中核をなすものだといえるだろう。二つ目は,片づけを,個人を理解するための指標として活用できる可能性を示唆する研究が見受けられることである。子どもの発達の状態を理解するために,片づけは指標となると考えられる。現状として,片づけに関する研究は保育における研究が多い。今後は,幼児期以降の片づけに関する研究が進められることが望まれる。
著者
日指 志乃布 福光 涼子 石田 光代 野寺 敦子 大谷 尭広 丸岡 貴弘 中村 和己 和泉 唯信 梶 龍兒 西田 善彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.550-554, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)の嚥下障害は予後に関係する重要な因子だが,進行するまで見落とされやすい傾向にある.我々は主に軽症から中等症のPD患者31例の嚥下機能を嚥下造影により検討した.嚥下障害は咽頭期28例,口腔期19例,食道期15例,準備期1例とほぼ全例にごく早期から咽頭期を中心に認められたが,質問票などのスクリーニング検査では検出が困難であった.今回の検討によりPDの早期から嚥下障害が不顕性に認められる場合があることが臨床的評価指標から示された.今後,PD発症前の嚥下機能低下を何らかの形で追跡して嚥下障害が発症前症状になり得るか検討する必要がある.
著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.474-483, 2013

本研究の目的は,家族とりわけ親子関係の基礎的研究と実践活動とのインターフェース(相互の連携)について検討することであった。まず,発達心理学の先駆的研究であるLevyの「過保護」の概念とSymondsの母親の養育態度の研究が,アメリカ社会のどのようなニーズから着想されたかを記述した。次にBowlbyの愛着理論とAinsworthのSSPが,「IWMの研究」「Dタイプの研究」「情動応答性の研究」「父子間の愛着研究」という4方向に分化・発展し,今日の臨床場面での実践活動とどのようなインターフェースな関係にあるかを概観した。さらに筆者のこれまでに行った基礎的研究と実践活動とのインターフェースの事例を示した。例えば,父娘研究や親意識の形成過程に関する縦断的研究の成果を育児や教育の雑誌を媒介として子育てに悩む親に伝え,特別支援教育巡回指導の中で保護者や先生方への支援活動で活用していることについて述べた。また,日本社会の高齢化にともない,親子である期間が伸長してきているため,両者の関係性の変化や葛藤を扱った新しい研究の必要性について言及した。今後,研究者は自らの着想のもとにオリジナリティある研究をし,その研究成果を平易な表現と的確な媒体(例:雑誌・書籍・講演・インターネット)を使って実践現場に積極的に伝達し,一方で現場の実践者たちは新しい研究知見を自ら学び吸収しようとする姿勢をもつことにより相互のインターフェースな関係は強固なものになるはずである。
著者
細谷 昂 小野寺 敦子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.187-216, 2006-03-01
被引用文献数
3

近年農産物直売所が、関心をよんでいる。岩手県内でもあちこちの道路際に、果物や野菜を並べた直売所をよく見かける。しかし、ひるがえって農産物直売所とは何か、と考えると、答えはそう簡単ではない。いわゆる「産直」には違いないが、「産直」にもさまざまな形態がある。近ごろでは、スーパーマーケットにさえ、「産直コーナー」が開設されているほどである。さらに、農産物直売所は何を目指すべきか。農産物直売所にとって成功とは何か、となると、いっそう問題は難しくなる。農家の所得を増やすためであることはむろんだが、売れればよいかというと、問題はそう簡単ではないように思う。販売高からすれば、スーパーマーケットに到底かなわないのが多くの実情であろう。それにもかかわらず生産者側からも消費者側からも広く関心をよんでいるのはどのような特性にあるのであろうか。この稿では、まず前提的な作業として日本の青果物流通のなかでの直売所の位置づけ、その特質についてやや理論的な考察をおこなった上で、岩手県内の直売所に対するアンケート調査および面接調査の結果によってその実態を明らかにし、農産物直売所は何を目指すべきか、農産物直売所にとって成功とは何か、という問いに対する回答を模索してみたい。得られた結論はこうである。青果物直売所の成功は、売上高だけで測定されるようなものではなく、個別生産者のそれぞれの生産物の消費者への直接販売という特質が、そのことによる人格性、個別性の発揮という特質がどれだけ生かされているか、その基盤として小経営の小規模生産の特質がどれだけ発揮されているか、という観点から評価されるべきであり、さらにいえば経済的意義だけでなく、消費者との、あるいは生産者相互のパーソナル・コミュニケーション、そして地域活性化への寄与、などさまざまな社会的意義をも含めて、多面的な観点から評価されなければならない。
著者
小野寺 敦子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.180-190, 2003-08-15
被引用文献数
7

妊娠7-8ヵ月から親になって3年間の間にどのように自己概念が変化するかに焦点をあてて検討した。自己概念は,「活動性」「怒り・イライラ」「情緒不安定」「養護性」「神経質」「未成熟」の6尺度,さらには可能自己,自尊感情の視点から縦断研究を行って検討した。その結果,女性は母親になると「怒り・イライラ」が徐々に強くなってきたと自己をとらえていたが,他の5尺度では有意な変化はみられなかった。これは男女ともに気質的な側面を示す自己概念は親になっても比較的安定していることを示している。また親になる前後にみられた自己概念全体のズレの要因を検討した。女性の場合は妊娠期における身体的・精神的戸惑いが,男性の場合は,育児の否定的側面のイメージが希薄であることと,学歴が低いことが自己概念全体のズレと関連していた。また女性は母親になると自尊感情が低くなる傾向がみられた。次に,親としての役割意識の変化を"3つの自分"という観点から検討した。その結果,男女で大きな相違が見られた。女性は母親になると「社会にかかわる自分」が小さくなり「母親としての自分」が大きくなっていた。しかし男性は父親になってからも「父親としての自分」の大きさは変化せず「社会にかかわる自分」の割合が大きくなっていた。