著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.9-21, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
51
被引用文献数
1

世界観は,いわば見たり,気づいたり,体験したりすることの一形式として,個々の体系の背後にある(中略)それゆえ,すべての世界観は,ある態度の表現であり,器官であり,現実に対する意識のある側面の表現である.われわれが純粋に自然を探究するという態度を取り,したがって,われわれが感覚的に経験し,悟性的に結びつける場合には,実証主義がある.客観的観念論の意味では,われわれは観想的な態度をとる.われわれが行為的な態度をとる場合,自由の観念論がそれにふさわしい体系である.ここから以下のことが明らかになる.すなわち,現実は多面的なものであって,それはさまざまな世界観によっては一面的にしか表現されないと私は主張する.複数の世界観の中で表現されているのは,生そのものの多面性である.さらに,ここから明らかになることは,現実の客観的関連を認識すると主張する形而上学的体系は,厳密な学的妥当性を要求することはできないということである.
著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.12-23, 2009

本研究の目的は、自然言語処理技術を援用して、熟達した噺家の語りに〈核〉として現れる中心的な概念を明らかにすることである。インタビューの逐語記録(芸談)をデータとし、複数の語が同一の文に同時に含まれるという共起情報を利用して、語によって表現される信念どうしの相互関係を推定し、信念地図を作成した。この手法は、先入観によるバイアスや見落としの危険性を低減させ、噺家の信念地図の時系列的な変化や師匠と弟子とのあいだの信念地図の類似性を客観的・定量的に検討することを可能にするものである。
著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.188-201, 2007 (Released:2009-10-30)
参考文献数
35

The purposes of the present study were to construct a humor elicitation model based on Comprehension-Elaboration Theory (Wyer & Collins, 1992), and to investigate the effects of Narrative Strategies on humor elicitation processes. 159 (79 male and 80 female) undergraduate and graduate students (18--25 yrs old) rated the model relevant variables after watching a videotaped RAKUGO performance. With structural equation modeling (SEM), it was confirmed that the model had generalizability and high intra-model consistency. The further results demonstrated that the performance with Narrative Strategies, compared to the one without the strategies, increased both comprehension and elaboration, which led to increase of humor.
著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.257-272, 2014
被引用文献数
4

個人の認識論とは, 各人が暗黙に持っている"知識"や"知ること"の性質についての信念のことであり, 個々の信念は認識的信念と呼ばれている。本研究の目的は, 野村・丸野(2011)が想定した教授学習過程への影響のうち, 個人の認識論が授業観と授業中の振る舞いを規定するという想定を検討することであった。そのために, まず745名の学生を対象とした調査によって認識的信念尺度を作成し, その信頼性・妥当性を確かめた(研究1)。このうち, 159名(男性79名, 女性80名)の大学生に対して, 質問と回答を取り入れた講義を行った(研究2)。その結果, 同一の授業に対して, 認識的信念下位尺度のうち, 利用する知識についての性質(条件性および適用可能性)を高く見積もった群は, 授業に協同活動的な側面を見出しやすく, 授業中の質問と回答の意義を実感し活用していた。また, より議論中に自他の意見の調整を行ったと自己評価した。この結果は, 授業を協同的活動として捉えるための認識的信念という観点から議論された。
著者
野村 亮太 岡田 猛
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.226-244, 2014

How do expert storytelling artists captivate audiences with a single performance? In<br/> study 1, we observed the eyeblink responses of expertized 7 of 20 audience members<br/> (10 male and 10 female, aged 16 to 67 years; <i>M </i>=40<i>.</i>6, <i>SD </i>=16<i>.</i>4) at the performance<br/> of two professional story-telling Rakugo artists. With using a surrogate data method,<br/>the statistically significant synchronization of eyeblinks among audience members was<br/> detected when performers changed scenes and characters and immediately after the<br/> performer delivered words essential to the understanding of the story. In study 2, we<br/> conducted a laboratory experiment with 32 (19 male and 13 female) participants aged<br/> 20 to 34 years (<i>M </i>=22<i>.</i>56, <i>SD </i>=2<i>.</i>85) to examine whether the expertise of the story-<br/>teller affected the frequency and intensity of synchronization of eyeblinks by recording<br/> each participant's eyeblinks. The synchronization of eyeblinks was also detected in this<br/> study that each participant viewed videotapes alone, which eliminated potential au-<br/>dience interaction. The participants who were assigned to the watching a videotaped<br/> performance of an expert storyteller displayed frequent synchronized eyeblinks and had<br/> a higher score of transportation into the narrative world of Rakugo compared to those<br/> were assigned to watch a videotaped performance of a novice. These results imply<br/> that expert performers gain a listener's unintentional process of attention as well as<br/> somatic-emotional responses, evidenced by synchronized eyeblinks.
著者
丸野 俊一 松尾 剛 野村 亮太 小田部 貴子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究では、対話型授業に焦点を定め、(1)教師の対話方略の運用の仕方・変化、(2)創造的対話が生起するために不可欠な心的要因に対する子どもの気づき、(3)教師の認識論の違いと授業形態との関連、(4)批判的思考や共感性の育成の変化の様相を解明した。その結果、(1)教師の対話方略の運用は子どもたちの対話力の水準に依存する,(2)対話の生起には、異なる考えを認め合う、他者の視点を共有し、自分の考えを省察することの重要性に気づく、(3)授業スタイルは、教師が抱く認識論に大きく依存する、(4)対話型授業の中では、創造的・批判的思考のみでなく、情動的な共感性も育まれることが分かった。