著者
川崎 雅子 坂寄 里紗 加茂 登志子
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.71-78, 2021 (Released:2021-10-14)
参考文献数
25

PCIT(Parent-Child Interaction Therapy:親子相互交流療法)は,1970年代に米国で開発されたエビデンスに基づく心理療法である.I-PCIT (Internet-delivered Parent-Child Interaction Therapy:インターネット親子相互交流療法)は,ビデオ会議システムを利用してセラピストが自宅にいる家族に遠隔でセラピーを提供できるようにしたものである.コロナ禍において,特に発達障害児は,外出制限のあるストレスフルな状況下において問題行動が増加しやすく,それに伴い親の育児ストレスの高まりも危惧される.パソコンやタブレット等の日常的デバイスを用いて遠隔リアルタイムコーチングを行うI-PCITは,コロナ禍でも発達障害児とその親への継続的な支援が可能である.また,親が感じる治療への障壁が少ない点や般化のしやすさ等メリットは多く,発展性は高い.
著者
伊藤 大輔 中澤 佳奈子 加茂 登志子 氏家 由里 鈴木 伸一 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-29, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、PTSD症状と生活支障度の関連を検討し、認知行動的要因がそれぞれに及ぼす影響を明らかにすることであった。主にDVをきっかけに医療機関を受診した女性のPTSD患者41名を対象に、出来事チェックリスト(ECL)、PTSD症状(IES-R)、生活支障度(SDISS)、認知的評価(CARS)、PTSD症状に対する否定的解釈(NAP)、対処方略(TAC)を実施した。IES-RとSDISSに弱い相関が見られたため、階層的重回帰分析を行った結果、PTSD症状には、トラウマの脅威性の認知、症状に対する否定的予測と意味づけ、回避的思考の有意な正の影響性が見られた。一方、生活支障度には、トラウマの脅威性の認知、放棄・諦めの有意な正の影響がみられ、肯定的解釈、責任転嫁の有意な負の影響が見られた。これらのことから、DVに起因したPTSD患者には、生活支障度の改善に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性が示唆された。
著者
伊藤 まどか 金 吉晴 加茂 登志子 臼井 真利子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2017-02-07

本研究の目的は、複雑性PTSDに対するSTAIR/NSTの日本における実施可能性、安全性、有効性を単群での前後比較試験にて検討することである。2019年度までに8例の登録を行った。予備試験の症例の治療経過については、学会や学術雑誌にて症例報告を行った。また本課題では、STAIR/NSTの治療マニュアルやマテリアル、複雑性PTSD診断評価ツールの整備も進めてきた。その中でICD-11に基づくPTSD/複雑性PTSDの診断面接(国際トラウマ面接;ITI)の翻訳を行った。また自記式評価尺度(国際トラウマ質問票;ITQ)を翻訳と逆翻訳を経て日本語版を作成し、学術雑誌にて全文公開した。
著者
橋本 聖子 宮岡 佳子 鈴木 眞理 加茂 登志子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 = Journal of Atomi University, Faculty of Literature (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
no.53, pp.265-276, 2018-03

[目的]摂食障害は、拒食、過食など摂食行動の異常を呈する精神疾患である。摂食行動の異常のみならず、肥満恐怖、ボディイメージの障害を生じる。患者は若い女性に多いが、発症には、やせを礼賛するマスメディアの影響が人きい。このような社会文化的要因に、個人のもつ生物学的脆弱性、性格傾向、ストレスフルな環境、家族関係などの要因がからんで発症する。近年、新しいメディアのツールとして、ソーシヤルネットワーキングサービス(social networking service : SNS)が急速に普及している。 SNSでは気軽に他者の写真を見ることができるため、摂食障害を引き起こす誘因のひとつになる可能性がある。そこで本研究では、SNSの使用状況、食行動異常、ボディイメージとの関連について調べることにした。[方法]調査対象は、20~30代の女性摂食障害患者42名(患者群、平均年齢25.3歳)および、一般女子大学生143名(一般群、平均年齢20.4歳)に質問紙調査を行い比較検討した。[結果](1)一般群のほうが患者群よりもSNSを利用する傾向があり、SNSの写真をコーディネートの参考にしていた。一方、患者群のほうがSNSで他人の写真の体型が気になると回答した。(2)自分の体型についてどう認知しているかによって、患者群、一般群それぞれ3群に分けた(「自分が実際よりも太っているという認知が患者または一般群内で高い群(1群)」、「中間群(2群)」、「自分が実際よりも太っているという認知が患者または一般群内で低い群(3群)」)。患者群の「自分が実際よりも太っているという認知が高い群」は、摂食障害の中でもボティイメージの障害が強い群と考えられる。この群は他の患者群よりも、ダイエット(体重を減らすこと)に関心があり、SNSではブログをより使っていた。[考察]ブログは、他のSNSと比較すると長い文章を記載することができる。やせや体型へのこだわりの強い摂食障害患者ほど、食生活やダイエットに関する記事、摂食障害患者の日記や闘病記などを読んでいる可能性が示唆された。
著者
宮岡 佳子 秋元 世志枝 上田 嘉代子 加茂 登志子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.194-201, 2009-10-31 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
4

近年,月経前不快気分障害(PMDD)が,精神科医,婦人科医双方で注目されている.PMDDは,PMSのある種の重症型であり,うつ病に類似した症状を持っている.著者らは,DSM-IVの診断基準を基に,Steinerら(2003)の尺度を参考にしてPMDD評価尺度を開発し,その妥当性と信頼性を検討した.20から45歳までの327名の女性に尺度を実施した.因子分析では,3因子が抽出され,「疲れ・身体症状」「抑うつ気分」「対人関係・怒り」と名付けた.PMDD評価尺度の各因子と項目全体のCronbach'sα係数から,高い内的整合性が得られた.黄体期後期つまり月経前にある女性を抽出し,その群で,PMDD評価尺度と自己記入式抑うつ尺度の相関に有意な相関がみられた.よって,この尺度は妥当性と信頼性があることが示された.PMDDの発症頻度は5.9%であった.以上の結果から,PMDD評価尺度は,PMDDをスクリーニングするために有効な尺度であることが示唆された.
著者
片井 みゆき 櫻井 晃洋 加茂 登志子 福嶋 義光
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2011-00-00)

女性医師の離職防止・キャリア向上のため、男女医学生と保護者を対象に意識調査を行った。女性医師の仕事と家庭の両立に対し、医学部入学直後の男子医学生の約30%が否定的な意見を述べた。一方、女子医学生のほとんどは肯定的であったが将来への不安感が強く、男女医学生の意識に明らかな性差がみられた。女性医師のキャリア形成に関心を持つ保護者は、女子医学生の母親が最も高率だった。こうした性差をふまえ医学部でのキャリア教育を行う必要があり、ジェンダーバイアスの解消が医学における男女共同参画のためにも望まれる。
著者
澤口 聡子 加茂 登志子 米山 万里枝 滝口 清昭 坂本 慎一 大脇 敏之 多木 崇 栗原 千絵子 加藤 則子 佐藤 啓造 京相 雅樹 平澤 恭子 加茂 登志子 杉山 登志朗 森 友久
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

解離性同一性障害における複数人格を音声録音しSOFTware PRAATの基本周波数分析で人格識別することが可能であった。PRAATの関係する要因を用いた個人を対象とする(nested)多値logistic回帰分析および一般線形モデルを構築し、前者において0.5<odds ratio<1.0、後者において尤度比・LR統計量>0.05を一つの目安として、専門医にアクセスする対応方針で臨床研究をすすめ得る。薬剤使用時の客観指標としてMetaRNA(複数のRNA・mRNA分子種)測定モデルを作成し治療や研究の潜在的なnavigationを与え得る。anticiper de ja saisirを推唆。