著者
比嘉 勝一郎 金城 英雄 六角 高祥 伊藝 尚弘 金谷 文則 屋良 哲也 勢理客 久 仲宗根 朝洋
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.738-741, 2017

上殿皮神経障害は,腸骨稜および胸腰筋膜との間で上殿皮神経が挟まれて疼痛を生じる絞扼性障害である.上殿皮神経は1~2 mm径の細い皮神経であるためMRIなどでは確認できず,上殿皮神経障害の画像的な診断は難しいとされている.今回,われわれは上殿皮神経障害の2例に術前超音波検査を行い,絞扼性の神経腫大と思われる所見を認め,診断に有用と考えられたので報告する.【症例1】73歳女性.10年前から誘因なく右腰痛があり当院を受診.右腸骨稜上に強い圧痛があった.腰椎及び骨盤MRIで疼痛の原因となる病変はなかったが,超音波検査で3.5×2 mmの腫瘤を認めた.上殿皮神経障害と診断,保存的治療で改善なく手術を施行,術中所見では上殿皮神経の絞扼と偽性神経腫を認めた.【症例2】38歳男性.1カ月前から誘因なく左腰痛があり当院を受診.左腸骨稜上に強い圧痛があった.疼痛部の超音波検査でφ2.8 mmの腫瘤を認めた.上殿皮神経障害と診断し手術を施行,術中所見では上殿皮神経の絞扼と偽性神経腫を認めた.
著者
喜屋武 諒子 勢理客 久 屋良 哲也 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.728-730, 2017

50歳女性.受診数日前から生じた腰痛が急激に増悪し,歩行困難となり当院へ救急搬送された.下肢筋力低下や深部腱反射の減弱・亢進を認めなかった.腰椎X線像ではL5分離滑りを認め,単純MRIのSTIR画像ではL5/S1椎間板の高輝度および両L5椎間孔の狭窄を認めた.高度腰痛が持続したため入院24日目に再度MRIを撮像したところ,L5およびS1椎体にSTIR画像にて高輝度を認め化膿性脊椎炎が疑われた.経過中発熱を認めず,血液検査ではWBC 3900/μL(好中球51%),CRP 0.30 mg/dL,血沈54 mm/1 h,procalcitonin 0.04 ng/mLと炎症所見に乏しく造影MRIでは,L5・S1椎体の淡い造影効果および椎間板の減高を認めるのみであった.以上より化膿性脊椎炎は否定的でありL5/S1不安定性による骨髄浮腫と考えPLIFを施行した.術中検体の培養は陰性で病理所見にて明らかな感染所見は指摘されなかった.術後3ヵ月現在,腰痛なく独歩可能である.
著者
伊藝 尚弘 六角 高祥 比嘉 勝一郎 金城 英雄 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.724-727, 2017

先天性腰椎高度すべり症は早期手術が勧められているが,%slip矯正の程度,固定範囲,骨癒合率,術後神経麻痺などが問題点となっている.症例は,8歳女児の先天性第5腰椎すべり症(Meyerding grade Ⅳ)で,半年前から殿部を後方に突き出す様な歩容異常(でっちり)を来たし,1ヵ月前から腰痛と両大腿後面痛が出現した.両腸腰筋・両長母趾伸筋はMMT4と低下し,アキレス腱反射は減弱していたが,膀胱直腸障害はなかった.脊髄モニタリング下にL4, 5 reduction screwとintra sacral buttress screwを用いてすべりと骨盤後傾を整復し,L5/S1 PLIF+L4/5 PLFと同種骨移植を行った.術前のPT 39゜,SS 33゜,Slip angle 36゜,%slip 85%が,術後PT 25゜,SS 45゜,Slip angle 2゜,%slip 0%と,良好なアライメントに整復された.術後7日目にでっちりは改善,術後1ヵ月で腰痛および両大腿後面痛は軽快,術後5ヵ月の単純X線像で矯正損失はなくCTでL5/Sに骨癒合を認めた.
著者
深瀬 昌悟 大久保 宏貴 川越 得弘 金城 政樹 普天間 朝上 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.904-908, 2017

【症例1】26歳,男性,他院で左アキレス腱皮下断裂に対し腱縫合を施行された.術後感染を来しデブリドマンを施行され,皮膚・アキレス腱欠損に対する再建目的に紹介された.初回手術で抗生剤含有セメントビーズを留置し,veno-accompanying artery fasciocutaneous(以下VAF)flapで被覆した.皮弁術後4週で腓腹筋筋膜弁を用いたアキレス腱再建術を施行した.術後2年,片脚立位・つま先立ちが可能となり趣味のバスケットボールにも参加している.【症例2】64歳,男性,他院で左アキレス腱付着部裂離骨折に対し骨接合術を施行された.術後感染を来し,紹介された.デブリドマン,抗生剤含有セメントビーズ留置を行い,術後7日後に,皮膚欠損部をVAF flapで被覆した.皮弁術後4週,腓腹筋筋膜弁を用いたアキレス腱再建術を施行した.術後8ヵ月で片足つま先立ちが可能となりソフトボールに参加している.
著者
呉屋 五十八 末永 直樹 大泉 尚美 吉岡 千佳 山根 慎太郎 谷口 昇 金谷 文則
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.763-767, 2017

2002年から2014年までの間に,一次修復不能な後上方腱板広範囲断裂に対し広背筋・大円筋移行術を行い2年以上経過観察可能であった25例25肩の術後成績を検討した.関節症変化がなく,骨頭を温存し移行術を行ったのは12例12肩(RCT群),関節症をともなうcuff tear arthropathyで小径骨頭を用いた人工骨頭置換術と移行術を行ったのは13例13肩(CTA群)であった.RCT群は平均年齢65.0歳,男性11例,女性1例,平均経過観察時間は38.3ヵ月であった.CTA群は平均年齢68.6歳,男性4例,女性9例,平均経過観察時間は52.9ヵ月であった.両群の術前と最終観察時のJOAスコアと肩関節可動域,外旋ラグサインの変化,合併症,さらにRCT群では術前と最終観察時のX線所見,術後のMRIによる再断裂の有無を調査した.<BR> JOAスコアはRCT群39.9点から77.7点,CTA群は40.6点から78.0点へ,屈曲はRCT群は49.6&deg;から141.3&deg;,CTA群は56.5&deg;から136.9&deg;へ,外旋はRCT群は15.4&deg;から33.3&deg;,CTA群は16.2&deg;から29.2&deg;へ有意に改善した.外旋ラグサインは術後全例で消失していた.合併症は認めなかった.RCT群で4肩(33.3%)に術後の肩甲上腕関節症の進行を認め,4肩(33.3%)に骨頭上方化の進行を認めた.再断裂は認めなかった.両群でJOAスコア,外旋ラグサインを含め可動域の改善を認めており,広背筋・大円筋移行術は一次修復不能な後上方腱板断裂に対する有用な手技であると考えられた.
著者
比嘉 浩太郎 池間 康成 小浜 博太 島袋 孝尚 米田 晋 立花 真理 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.387-390, 2017

当院では前十字靭帯(以下ACL)損傷に対して解剖学的二重束再建を行っており,大腿骨孔はtranstibial法で作成している.H22年4月からH25年3月までに施行した解剖学的二重束ACL再建術を施行した16例中,術中に起きた合併症3例について報告する.症例1.大腿骨骨孔作成時にガイドピンの先端が大腿骨内で折損した.ガイドピンをハンマーで叩いて刺入したため髄内釘になってしまい,大腿骨内で折損した.症例2.術後のX線像にて大腿骨の前内側骨孔外に金属粉と思われる陰影を認めた.ガイドピンが弯曲したままドリルした事が原因と考えられた.症例3.脛骨の後外側骨孔を作成時,骨孔作成ガイドを倒しすぎたため顆間隆起を損傷した.【まとめ】解剖学的二重束ACL再建術において術中合併症を生じた3例を報告した.transtibial法で大腿骨孔を作成する場合は,ガイドピンが適切に挿入されていることと脛骨骨孔作成時は関節面の軟骨損傷を防ぐため骨孔刺入角度に注意する必要がある.
著者
小浜 博太 新垣 寛 知念 弘 山口 浩 大城 亙 森山 朝裕 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.319-321, 2017

鎖骨遠位端骨折に対するフックプレート(HP)と非フックプレート(n-HP)の術後経過を比較した.HP群は14例(男性12例,女性2例,平均年齢47.8歳,術後平均観察期間9.7カ月)で全例LCP clavicle hook plateを使用した.n-HP群は12例(男性10例,女性2例,平均年齢41.2歳,術後平均観察期間9.9カ月)でClavicle Wiring plate 6例,Tension band wiring, Scorpion plate, Now J, Distal clavicle locking plate, LCPクラビクルプレートラテラルエクステンション,髄内釘をそれぞれに使用した.最終観察時の平均JOA ROMスコア(30満点)はHP群22点,非HP群28点で,n-HP群で良好であった.全例で骨癒合を認め,HP群で肩峰下のびらんを13例,偽関節を1例に認めた.肩峰を跨がないHP以外の内固定では術後肩関節可動域が良好な傾向であった.
著者
島袋 全志 呉屋 五十八 当真 孝 山口 浩 伊佐 智博 森山 朝裕 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.337-341, 2017
被引用文献数
2

【はじめに】上腕骨近位端骨折に対する骨接合術後の合併症である上腕骨頭壊死の検討を行ったので報告する.【対象および方法】対象は術後上腕骨頭壊死10肩,性別は男性3肩,女性7肩.手術時年齢は平均68歳であった.骨折型はNeer分類:3-part:2肩,3-part脱臼:1肩,4-part:6肩,4-part脱臼:1肩,平均経過観察期間は32ヵ月であり,術後肩関節可動域(屈曲,外旋),X線分類(Cruess分類),追加手術について調査した.【結果】屈曲は平均88°,外旋は平均36°であった.Cruess分類はstage 2:1肩,stage 3:1肩,stage 4:6肩,stage 5:2肩であった.追加手術として,2肩に人工骨頭置換術,1肩にスクリューの抜釘を行った.【まとめ】70歳未満では壊死後の可動域は比較的良好で,壊死のリスクが高い骨折型でも骨接合は選択肢の一つと考えられた.
著者
田中 一広 玉城 一 大久保 宏貴 赤嶺 良幸 大城 義竹 屋良 哲也 外間 浩 仲宗根 朝洋 金谷 文則
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.562-565, 2007-09-25
被引用文献数
1 1

比較的まれな特発性一過性大腿骨頭萎縮症の3例を経験したので報告する.【症例1】44歳男性.2週間前ジョギング後より左股関節痛出現,MRIより特発性一過性大腿骨頭萎縮症(以下TOH)と診断された.免荷とし外来にて経過観察していったところ6週後から疼痛は消失,3カ月後のMRIでは異常信号は認められなかった.【症例2】35歳女性.妊娠30週ころより右股関節痛出現,出産後当科外来受診した.MRIにてTOHの診断に至り現在免荷にて外来通院中である.【症例3】32歳男性.1カ月前より右股関節に荷重時疼痛認められ,近医にて加療を受けていたが,症状改善せず当科紹介受診した.可動時痛は認められなかった.MRIによりTOHの診断に至り,外来にて経過観察中である.
著者
鷲﨑 郁之 大城 義竹 六角 高祥 勢理客 久 金城 英雄 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.791-795, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
11

経過中に左右の環軸椎回旋位固定を生じたダウン症児の1例を経験したので報告する.斜頚,頚部痛が出現した2週後に当科を受診した.頚椎単純CTで環軸椎回旋位固定を認めたため,Glisson牽引を開始した.入院時は右回旋,左斜頚であったが,牽引7日後には左回旋,右斜頚と逆方向に回旋した.さらにGlisson牽引を3週間追加したが改善しなかったため,全身麻酔にて可及的整復後に中間位でhalo vest固定した.固定1週後の頚椎単純CTで左回旋の残存および後頭環椎関節での右回旋を認めたため,やや右に過矯正し固定した.固定3週後の頚椎単純CTで右回旋を認めたため,中間位に再固定した.固定8週後の頚椎単純CTで軽度右回旋が残存していたが,本人の不耐性のため9週でhalo vestを除去した.発症後6ヵ月の時点で,頚部痛,斜頚は改善し,頚椎の回旋可動域は正常である.
著者
又吉 修子 當銘 保則 前原 博樹 喜友名 翼 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.641-644, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
11

傍骨性骨軟骨異形増生は,手足の短管骨に好発し傍骨性腫瘤を形成する疾患である.今回我々は,脛骨骨幹部に発生した傍骨性骨軟骨異形増生の稀な1例を経験したので報告する.症例は12歳,男児.1年前,サッカー中に右下腿前面を打撲した後より同部位に腫瘤を自覚した.腫瘤が徐々に増大し運動後の疼痛を認めるようになったため,近医を受診した.脛骨前面に発生した骨腫瘍を疑われ,精査目的に当科へ紹介された.右下腿中央内側に5 cm大の骨性隆起を認め,単純X線像で脛骨近位骨幹端から骨幹部にかけて辺縁整で台地状に隆起した骨腫瘍を認めた.MRIでは,T1強調像で低信号,T2強調像では腫瘍基部で低信号,隆起部では高信号を示す二層性の変化を認めた.腫瘍隆起部に造影効果を認めた.切開生検術を行い,傍骨性骨軟骨異形増生と診断された.腫瘍基部を含む切除術を施行し,現在術後1年2ヵ月で再発を認めず,切除部に骨形成を認める.
著者
田中 一広 前原 博樹 當銘 保則 上原 史成 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.328-330, 2016-03-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
5

初回術後多発肺転移と複数回局所再発を来し治療に難渋した右肘頭骨巨細胞腫にdenosumabが著効した1例を報告する.【症例】18歳,女性.右肘頭骨腫瘍にて当科紹介され,単純X線像,切開生検にて骨巨細胞腫の診断に至った.骨腫瘍掻爬,アルコール処理,自家腸骨移植施行後4ヵ月で肺転移を認め化学療法施行,zoledronateを投与した.術後9ヵ月で局所再発し再手術施行するも,計3度再発を来した.転移性肺腫瘍は徐々に増加,増大し初回手術後4年2ヵ月より肺炎,血胸を来すようになりdenosumabを投与開始した所,転移性病変は縮小し症状改善した.10ヵ月投与後に一旦休薬したが,再度転移性病変が増大したため投与を再開した.以降転移性病変は縮小傾向であり,現在術後6年2ヵ月経過している.