- 著者
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鈴木 健吾
- 出版者
- 公益社団法人 応用物理学会
- 雑誌
- 応用物理 (ISSN:03698009)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, no.5, pp.266-270, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
- 参考文献数
- 8
我々は,宇宙機への応用を目指した新しい方式の水素センサを,JAXAと共同で開発している.宇宙機向けの水素センサには,酸素が共存しない環境や真空中でも微量の水素を検知することが求められる.開発したセンサは,酸化物イオン・電子混合伝導体である酸化セリウム(セリア)を感応材料に用いた基板型で,500℃に加熱して動作させる.不定比性の酸化物であるセリアは,加熱状態で酸素分圧に応じて酸素を吸蔵・放出する性質がある.一方,水素共存下では,水素はセリア表面に解離吸着し電荷が移動することで電子伝導性(抵抗値)が変化する.つまりセンサの抵抗値は,全圧にはよらず酸素/水素分圧比に依存する.このセリア表面での平衡反応をクレーガー=ビンク表記法で表し,ガス分圧とキャリヤ濃度の関係からセリア表面のガス吸着の状態を考察した.さらにin-situ XAFS観察により,水素吸着前後のセリアの価数変化はわずかであることを確認し,これらの結果から検知メカニズムを明らかにした.