著者
越水 麻子 荒木 佐智子 鷲谷 いづみ 日置 佳之 田中 隆 長田 光世
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.189-200, 1998-01-20
参考文献数
19
被引用文献数
17

国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)内の谷戸の放棄水田跡地において土壌シードバンクを調査した.谷戸谷底面の植生を代表するヨシ群落,チゴザサ群落,およびハンノキ群落から土壌(各0.1m^3,総計0.3m^3)を採取し,水分を一定に保つことのできる実験槽にまきだし,出現する実生の種,量および発芽季節を調べた.出現した実生を定期的に同定して抜き取る出現実生調査法と,実生をそのまま生育させて成立する植生を調査する成立植生調査法とを併行して実施し,5月中旬から12月下旬までの間に,前者では25種,合計6824個体,後者では26種,合計2210個体の種子植物を確認した.出現種の大部分は低湿地に特有の種であり,特に多くの実生が得られたのは,ホタルイ,アゼガヤツリ(あるいはカワラスガナ),チゴザサ,タネツケバナであった.また成立植生調査法で確認された個体数は,出現実生調査法の半数に過ぎないものの,ほぼ全ての種を確認することができた.調査地の土壌シードバンクは,植生復元のための種子材料として有効であること,また,土壌水分を一定に保てば,土壌をまきだしてから数ヵ月後に成立した植生を調べるだけで土壌シードバンクの種組成を把握できることが明らかになった.
著者
若杉 晃介 長田 光世 水谷 正一 福村 一成
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.219, pp.421-426, 2002-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

近年, 農村地域における生物多様性の低下が指摘されており, 原因の一つとしてほ場整備による湿生動物の生息地破壊等があげられている.その改善策として, ほ場整備に際して, 整備区域内に生態系保全地を設ける事例が増えつつあるが, その設置間隔等は明らかになっていない.本研究は, ほ場の湿潤な場所に生息する動物の保全地を設置する場合を想定し, 保全地の最短設置間隔の指標の一つとして, 移動能力が低いとされている湿生動物のアジアイトトンボについて移動距離を調べた.調査は栃木県宇都宮市の一般的な平地水田地帯で, 標識再捕獲法を用いて2000年8月から9月に行った.その結果, アジアイトトンボの移動距離は1.1~1.2kmであること, 出現場所は湛水休耕田の存在に大きく影響を受けていることが分かった.
著者
長田 光世 飯島 博 守山 弘
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.547-552, 1996-03-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

農業環境技術研究所 (茨城県つくば市) 内の複数の池沼において, 湿性緑地 (湿性の推移帯を含み水陸にまたがるオープンスペース) の範囲を定め, その植生構造とトンボの間の対応関係を検討した. 木本植生, 抽水植物, 浮葉植物, 沈水植物および開水面を植生構造の要素として, これらの要素がつくる植生構造とトンボの分布との関係を解析し, 両者の対応から類型化を行った.その結果, 以下のようなことが明らかとなった.(1) トンボの種類数個体数は湿性緑地の要素が欠損しない植生構造で最も多かった.(2) 各要素の植被率によって, トンボの植生構造に対する選択性に変化がみられた.(3) ある特定の要素が欠けたり植被率が100%に近い湿性緑地に対して集中もしくは回避する種の存在が明らかになった.
著者
長田 光世 森 清和 田畑 貞寿
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.151-156, 1993-03-24
被引用文献数
1 3

本研究は,生態学的な水辺緑地計画の視点から,計画指標となりうるトンボの種の把握を目的に,トンボの生息環境としてきわめて良好な環境である桶ケ谷沼におけるトンボの優占種の検討を行い,それを基礎とした複数の池の比較考察を行ったものである。その結果,トンボ科の広域分布種について,環境復元の段階的な発展に伴い種を4段階に分類し,それぞれ有効と推定できる指穏種を提示した。また,特にチョウトンボは,池を中心とする水辺緑地の多様な構造に対応して個体数密度を増加させ,さらに最もトンボ相が豊かになるような多様な構造をもった水辺緑地では,夏期調査時のトンボ科全体に対して最大の優占種となる指標性をもつことが把握された。
著者
河野 勝 日置 佳之 田中 隆 長田 光世 須田 真一 太田 望洋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-61, 1997

Nowadays, ponds in urban parks as habitats of plants and animals are strongly required in order to maintain biodivesity. The authors investigated on present and past situation of aquatic plants and structure of ponds in urban parks by questionnaires which sent to management staffs of urban parks. 160 sample data from all parts of Japan. were analyzed for clarifying relationships between aquatic plants and some factors of ponds' structures.<BR>Consequently, following relationships became cleared.<BR>(1) Approximately 30% of ponds are made with waterproof sheets and area of them are limited below mostly 10, 000<SUP>2</SUP> The main reason that ponds' area are limited is difficulty of water supply.<BR>(2) Most of the substratum of natural or semi-natural ponds are mud or silt in contrast that gravel used in man made (artificial) ponds.<BR>(3) More than 50% of ponds have only hygrophyte and emerged plants. On the other hands floating plants and benthophyte disappeared in many ponds though they were existed in past. It is considered that floating plants and benthophyte are sensitive for environmental impacts such as eutrophication.<BR>(4) Four structural factors; area of ponds, waterproof, structure of ponds' shore, and origin of ponds are related each other. Also certain relationship between hygrophyte or emerged plants and area of ponds or structure of ponds' shore are recognized. However, these kinds of relationships are not exist between hygrophyte or emerged plantsand waterproof or origin of ponds.