著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-64, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では愛知県の雑煮を構成する食材について検討した。愛知県の雑煮の食材構成では,東日本で多く使用された角餅に,醤油とかつおだしの清まし仕立てが多かったが,これは味噌仕立を嫌った武家社会の歴史的影響である。具は古くからの形式が現在も維持され,縁起担ぎから,尾張地域在来の餅菜が使用され,かまぼこ・なるとを加え,かつお削り節を添えていた。しかし,尾張地域と三河地域には相違点がみられた。和風風味調味料の使用が,女性の労働力率が高い三河地域で有意に多かった。また,三河地域の雑煮の具は,収穫量が多い白菜,豆腐・油揚げ(大豆),人参を使用する地産地消の傾向が伺え,尾張地域より多彩な具であった。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子 山澤 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.86, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】セロリは18世紀中頃からサラダとして食されるようになった。現在は生食だけでなく,シチューなどの香味野菜や炒め物のアクセントとして幅広く利用されている。しかし,セロリは一般的に好まれない傾向がある。本研究では,セロリについて,生および加熱調理法別の嗜好性を明らかにし,好まれるセロリの調理法について検討した。【方法】セロリは中央部分を5mm幅に切って試料とした。試料は生と茹で・蒸し・焼き・揚げの各方法で火が通るまで加熱した。官能評価は,N女子大学生27名(平均年齢21.6歳)をパネルとして,5点尺度で色,香り,硬さ,味,歯触り,総合の6項目について分析型官能評価を採点法で,嗜好型官能評価を順位法で行った。データの統計処理は多重比較検定のTukey法とNewell & MacFarlaneで行い,統計的有意水準を5%で示した。さらに官能評価の結果に基づき,好まれるセロリ料理4品を提案した。【結果および考察】官能評価の採点法では,生と比較して茹で加熱は有意に色が薄かった。4種類の方法で加熱したセロリは生より有意に軟らかく,味が薄く,歯触りがないと評価された。香りと総合に有意差はなかった。嗜好型分析評価の順位法では,生と比較して茹で加熱の色と硬さが有意に好まれ,茹でと揚げ加熱の味が有意に好まれた。香り,歯触りおよび総合に有意差はなかった。したがって,セロリの色と味を薄くし,歯触りを弱く,硬さを軟らかくする茹で加熱法が,セロリの生および4種類の加熱法において最も好まれることが示された。この結果に基づき,セロリと豆のリボリッタ・鶏手羽元とセロリのトマト煮・夏野菜の冷やし茶わん蒸し・セロリのかき揚げを好まれるセロリ料理として提案した。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 山内 知子 阪野 朋子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 愛知県岡崎市名産の八丁味噌は赤褐色で発酵臭があり,濃厚なうま味と渋みを持つ個性的な味噌である.本研究は八丁味噌を使用した新たな菓子とパンの商品開発を試み,その特性と嗜好性について検討した. <b>方法</b> 味噌は無添加豆味噌を使用した.菓子とパンは洋菓子類,和菓子類およびパン類に分類して,栄養価と原価を求めた.官能評価はパネリスト16人を対象に8項目ついて「八丁味噌の特性を生かせているか」を5点尺度の評点法で評価した.嗜好評価として好きな順番に1位~3位までを選んだ.データはTukey法による多重比較検定を行い,統計的有意水準を5%で示した.<b>結果</b> 官能評価の結果から,加熱しない味噌は酸味が強く,塩辛く感じることが示され,味噌を入れた生地では味噌の味と香りが減少した.調製時に砂糖との味のバランスに配慮する必要性を認めた.評点法(総合)と嗜好評価の上位5位の中に共通して芋プリン味噌カラメルかけ・味噌ダックワーズ・味噌シフォンケーキ・味噌鬼まんじゅうが入ったので,これらの菓子は味噌の特性を活かした好まれる菓子だと考えられた.以上の結果から,総体的に八丁味噌の使用は洋菓子類で評価が高く,薄力小麦粉,乳製品,砂糖,卵を使用することで味噌の塩辛さをまろやかにして八丁味噌の特性を活かした好まれる菓子となることが示され,今後の商品開発に向けて有用な資料を得た.<u></u>
著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】たまり醤油は、豆味噌と並ぶ愛知県の代表的な調味料である。本研究では、たまり醤油についてのイメージや認知度、使用方法についての意識調査を実施した。また、たまり醤油の使用用途を広げる目的で菓子の商品提案を試み、その特性と嗜好性を検討した。</p><p>【方法】調査対象者はN女子大学の学生318名(平均年齢20.5歳)で自記式質問紙調査を実施した(回収率100%、有効回答率94%)。菓子は、イチビキ㈱製のたまり醤油を使用して5品目(フィナンシェ、チョコレート、ドーナツ、ワッフル、キャラメル)を調製し、栄養価を求めた。官能評価はパネル16名(女性、平均年齢42.4歳)が6項目を5点尺度の採点法、嗜好性を順位法で評価した。得られたデータは<i>Excel</i>で集計し、意識調査の結果は<i>x<sup>2</sup></i> 検定(2×2分割表、n×m分割表)、官能評価結果は<i>Tukey</i>の多重比較検定および<i>Newell&MacFarlane</i>を行った。統計的有意水準は5%で示した。</p><p>【結果】たまり醤油の認知度は43%で、イメージは「味が濃い」の68%が最も多く、使用度は26%と少なかった。たまり醤油の認知度と使用度は、本人や母親が愛知県出身者のほうが、愛知県外出身者より有意に多かった。たまり醤油を使用する人は、刺身に使う人が80%と多かったが、愛知県の三河地域出身者に煮つけやたれなどにも使用する傾向がみられた。たまり醤油を知っている人では、刺身にたまり醤油を使う人は38%と少なく、醤油を使う人が66%と最も多かった。たまり醤油を使用した菓子5品目の官能評価の結果、たまり特有のとろみや濃厚なうま味などの特徴を活かし、新規性もあり好まれることが認められ、さらに工夫することで商品化に繋がる可能性が示された。</p>
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p><b>【</b>目的<b>】</b>最近の味噌の摂取量は減少傾向を示し,特に若者世代で顕著である。本研究は,愛知県の特産品である豆味噌を使用した肉および肉加工品料理10品を提案し,栄養価と嗜好性の面から検討した。</p><p><b>【</b>方法<b>】</b>使用した豆味噌はイチビキ㈱製で,愛知県産大豆「フクユタカ」と天日塩を使用したものであった。料理の調製は,一般の料理本などを参考にレシピの考案と試作を行い,10品の肉および肉加工品料理のレシピを決定後,調製した料理を撮影した。官能評価は官能評価に慣れているパネル13名(女性,平均年齢36.2歳)を対象に8項目について5点尺度の分析型評価を採点法で,同じ項目について嗜好型評価を順位法で実施した。データの解析はTukey法とNewell & MacFarlaneで検定し,統計的有意水準を5%で示した。</p><p><b>【</b>結果<b>】</b>官能評価結果から,ハンバーグの味噌チーズ・味噌チキン南蛮・味噌スペアリブ・味噌チャーシューは,ソースに使用した豆味噌が肉のうま味を際立たせて高い評価を得た。また,調理操作では乾式加熱が湿式加熱より評価が高かった。副材料では植物性油,玉葱,卵との取り合わせが,味噌辛さをまろやかにした。また,チーズやパイとの組み合わせは味噌の強い個性が緩和されて食べやすくなることが示された。さらに,肉料理の栄養価では,総体的にたんぱく質量と脂質量が高かったが,特に乾式加熱の料理で脂質量が高かった。以上の結果から,豆味噌の特徴を活かした好まれる肉および肉加工品料理の提案では,植物性油,玉葱,卵,チーズの取り合わせが味噌辛さをまろやかにして好まれる料理となり,ソースに使用した豆味噌が肉のうま味を際立たせた。調理操作では乾式加熱が湿式加熱より好まれた。</p>
著者
阪野 朋子 小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子 成田 公子 山本 淳子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-153, 2015

本研究では,東海三県に居住する人々を対象に,子・母・祖母の三世代別に通過儀礼の認知と喫食状況を調べ,東海地方の特徴と伝承に影響する要因について検討した。<br> 認知率では,経験の有無が値に影響し,子世代の百日祝いと初誕生および結納と婚礼の認知率が母と祖母世代より有意(<i>p</i><0.05)に低かった。経験率では,経験時の経済的・社会的状況の厳しさと,儀礼の意義の希薄化が経験率を減少させた。しかし,母と祖母世代の長寿に見るように高齢者が同居する条件は経験率を向上させた。また,儀礼における地域活動や人々の意識の高さが認知率と経験率を向上させた。東海三県の特徴として製造量の多い外郎と漁獲量の多いアサリが儀礼食に利用されていた。
著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-64, 2016

本研究では愛知県の雑煮を構成する食材について検討した。愛知県の雑煮の食材構成では,東日本で多く使用された角餅に,醤油とかつおだしの清まし仕立てが多かったが,これは味噌仕立を嫌った武家社会の歴史的影響である。具は古くからの形式が現在も維持され,縁起担ぎから,尾張地域在来の餅菜が使用され,かまぼこ・なるとを加え,かつお削り節を添えていた。しかし,尾張地域と三河地域には相違点がみられた。和風風味調味料の使用が,女性の労働力率が高い三河地域で有意に多かった。また,三河地域の雑煮の具は,収穫量が多い白菜,豆腐・油揚げ(大豆),人参を使用する地産地消の傾向が伺え,尾張地域より多彩な具であった。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br><b>目的</b> 食用サボテン(以後,ノパル)は,酸味,粘りおよび鮮やかな緑色を有する春日井市認定の特産品である.栄養的にはビタミン類やミネラル類などを多く含んでいる.本研究ではノパルの特徴を活かす食品開発を行い,その嗜好性について検討した.<br><b>方法</b> ノパルは後藤サボテンから購入した.ノパルを使ってグラタン,お好み焼き,シュウマイ,ミートパイ,ベーグル,スムージー,パンケーキ,アップルパイ,クッキー,ドーナツの10食品を調製し,栄養価を求めた.官能評価はパネル15名(平均40歳)を対象に6項目ついて「ノパルの特性を生かしているか」を5点尺度の採点法で評価した.嗜好評価は好きな順番に1位~3位までを選んだ.得られたデータはTukey法による多重比較検定を行い,統計的有意水準を5%で示した. <br><b>結果</b> 調製した食品の栄養価では,副材料の影響が大きかった.官能評価から最も好まれたアップルパイは,粘り,味,総合で高い評価を得た.グラタン・お好み焼き・シュウマイでは,ノパルの色と粘りは活かせたが,香りと酸味が調味料などに消された.スムージーは,低カロリー・高カルシウムであり,ノパルの酸味・粘り・色を活かした食品であった.以上の結果より,採点法,嗜好順位ともに5位までに入ったアップルパイ,スムージー,クッキー,ミートパイは,ノパスの特徴を良く活かし,かつ好まれる食品であることを認め,さらに改良することで商品化の可能性が示された.
著者
間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 小出 あつみ 山内 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】愛知県は中京圏の中心である名古屋市を含む尾張と、八丁味噌で知られる三河の2地域に大別できる。どちらの地域も長年にわたり独特で豊かな食文化を育くんできた。本研究では両地域における雑煮に関する摂取状況調査を実施して比較検討した。【方法】調査の対象はN女子大学の学生401名(21歳)である。方法は質問数15問の自記式質問紙を使用して留め置き法で行い、配布3週間後に回収した。期間はH23年12月31日~H24年1月3日で、回収率は92%であった。得られたデータはエクセルで集計してχ⊃2;検定を行い、統計的有意水準を5%で示した。【結果】雑煮の摂取頻度では、「元旦に食べる」に地域差はなかったが、二日目と三日目では、尾張地域(OA)が三河地域(MA)より多く食べていた。元旦の具ではOAは餅菜と小松菜、蒲鉾と鳴門、鰹節、青菜類の順で多く、MAは白菜、蒲鉾と鳴門、餅菜と小松菜、鶏肉の順で多かった。この内、餅菜と小松菜、白菜、人参、鶏肉、豆腐と油揚げの摂取経験の地域間に有意差を認めた。正月二日および三日の具は元旦より具の種類が減る傾向を示した。だしの種類のOAでは鰹節だしが多く、MAでは鰹節だしと同程度にだしの素が使われており、だしの素の使用頻度に有意差を認めた。味付けは両地域ともにすましの味付けが約90%であったが、MAでは味噌味の割合がOAより高かった。餅では角餅が両地域で80%摂取されており、加熱法では共に「煮る」が最も多かったが、OAでは「焼く」と「焼いた後煮る」の両方を用いる割合が高かった。以上の結果から、尾張と三河地域の雑煮の摂取経験、味付け、餅の形に地域差を認めなかったが、具とだしの種類で有意な地域差を認めた。
著者
山内 知子 阪野 朋子 小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子 勝崎 裕隆 今井 邦雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.15, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】愛知の地元野菜であるアシタバに着目し,生活習慣病予防を目指した機能性パンの開発を試みた。試料のアシタバの構成成分の分析と粉末アシタバ置換量が製パンの機能性亢進に与える効果について,製パン中のポリフェノール量及び抗酸化活性の変化を明らかにした。【方法】】アシタバは,2012年11月に稲沢市の栽培農家から購入し,凍結乾燥(-80℃)し粉末(250μm)にした。強力粉重量400gの内、1%(4g)、3%(12g)、5%(20g)をアシタバ乾燥粉末で置換してパンを作成し、試料とした。対照としてアシタバ無置換パンを作成した。パンの材料配合は置換したアシタバ以外は、使用したホームベーカリーに示される方法で焼成した。アシタバ成分の構造はLC-MSとNMRで分析し,ポリフェノール量はFolin Denis法,抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性測定法を用いて測定した。データは多重比較法によりTukey-Kramer法で解析し,統計的有意水準は1%とした。【結果】成分分析の結果,今回実験に使用したアシタバの主要成分の一つがChlorogenic acidであることを明らかにでき, Quercetin やkaempferol の配糖体が含まれていることも示唆できた。アシタバ置換パンにおいて,ポリフェノール量・DPPHラジカル捕捉活性能は対照パンと比較して,両者ともにアシタバの置換量増加に伴い有意(p<0.01)に増加する傾向を認めた。日常的に食するパンの強力粉の一部をアシタバに置換することにより、効率的に機能性成分を摂取できる可能性が示唆された。今後,より生理活性の高まるアシタバを用いた調理・加工法について検討していきたい。