著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子 山澤 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.86, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】セロリは18世紀中頃からサラダとして食されるようになった。現在は生食だけでなく,シチューなどの香味野菜や炒め物のアクセントとして幅広く利用されている。しかし,セロリは一般的に好まれない傾向がある。本研究では,セロリについて,生および加熱調理法別の嗜好性を明らかにし,好まれるセロリの調理法について検討した。【方法】セロリは中央部分を5mm幅に切って試料とした。試料は生と茹で・蒸し・焼き・揚げの各方法で火が通るまで加熱した。官能評価は,N女子大学生27名(平均年齢21.6歳)をパネルとして,5点尺度で色,香り,硬さ,味,歯触り,総合の6項目について分析型官能評価を採点法で,嗜好型官能評価を順位法で行った。データの統計処理は多重比較検定のTukey法とNewell & MacFarlaneで行い,統計的有意水準を5%で示した。さらに官能評価の結果に基づき,好まれるセロリ料理4品を提案した。【結果および考察】官能評価の採点法では,生と比較して茹で加熱は有意に色が薄かった。4種類の方法で加熱したセロリは生より有意に軟らかく,味が薄く,歯触りがないと評価された。香りと総合に有意差はなかった。嗜好型分析評価の順位法では,生と比較して茹で加熱の色と硬さが有意に好まれ,茹でと揚げ加熱の味が有意に好まれた。香り,歯触りおよび総合に有意差はなかった。したがって,セロリの色と味を薄くし,歯触りを弱く,硬さを軟らかくする茹で加熱法が,セロリの生および4種類の加熱法において最も好まれることが示された。この結果に基づき,セロリと豆のリボリッタ・鶏手羽元とセロリのトマト煮・夏野菜の冷やし茶わん蒸し・セロリのかき揚げを好まれるセロリ料理として提案した。
著者
山澤 和子 山下 ルミ
出版者
東海学院大学・東海女子短期大学
雑誌
東海女子短期大学紀要 (ISSN:02863170)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.73-78, 2001-03-31

従来のペクチン定量法は,メトキシル基含量別の分画が不良,分析時間が長いなど若干の問題点がある。そこで,0.OlM塩酸溶液(pH2.0)に続き酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0),次にヘキサメタ燐酸ナトリウム溶液(pH4.0)を抽出溶媒^5)に使用し,短瞬間でメトキシル基含量の異なるペクチン質を分別定量する簡易法について検討した。(1)超音波による振とう攪拌を塩酸溶液および酢酸ナトリウム緩衝液で10時間の抽出中2時間毎に,ヘキサメタ燐酸ナトリウム溶液で2時間の抽出中30分毎に,各々2分間行った結果,溶出した糖量は振とう攪拌を行なかった場合に比し顕著に増加した。(2)抽出を18,25および35℃の3種の温度で行った結果,糖の溶出量は処理温度が高いほど多く,特に塩酸溶液および酢酸ナトリウム緩衝液による抽出ではこの傾向が顕著であった。(3)抽出温度35℃および超音波による振とう攪拌を一定間隔で2分間付加した場合,糖溶出に要する抽出時間は,塩酸溶液および酢酸ナトリウム緩衝液で10時間,ヘキサメタ燐酸ナトリウム溶液で4時間であった。
著者
木村 孝子 山澤 和子 堀 光代 長屋 郁子 横山 真智子 辻 美智子 川田 結花 土岐 信子 長野 宏子 西脇 泰子 山根 沙季
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県岐阜地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県岐阜地域の本巣市、山県市、瑞穂市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代女性9名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】農業が主であった本巣市・瑞穂市では、日常食は米、小麦、自家栽培された作物を中心に朝はご飯、味噌汁、漬物、昼は農作業のため弁当(白飯、梅干しや紅しょうが、芋の煮物)、農作業の合間には「みょうがぼち」、夜は雑炊に漬物を食した。混ぜご飯の「おかきまわし」もよく食べられた。山県市は急峻で石灰質の土地のため、白飯は貴重であり、飯に小麦粉を混ぜてこね、みょうがの葉で巻いた餅を食した。里芋や芋茎、干した里芋の葉、手作りのこんにゃくを使った料理、味噌も家で作り、芋を使った味噌煮は日常食であった。本巣市、山県市では大根の古漬けをしょうゆや味噌味の煮物にしていた。伝え継ぎたい家庭料理には、みょうがぼち、芋もち、里芋の煮っころがし、芋茎の酢の物や煮物、おばこ煮、十六ささげの味噌和え、千石豆の胡麻和え、桑の木豆のフライ、ねぐされもち、おかきまわし、味噌煮などがある。
著者
辻 美智子 堀 光代 西脇 泰子 木村 孝子 長屋 郁子 坂野 信子 長野 宏子 山澤 和子 山根 沙季 横山 真智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】岐阜県に伝承されている家庭料理の中で、おやつとして食べられている料理の特徴についてまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、岐阜県の家庭料理について平成24年~27年に聞き書き調査を行った。調査対象地域を岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨の5圏域に分類した。対象者は調査地で30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった43名である。聞き書き調査の結果からおやつに関する料理を抽出し、圏域別に特徴をまとめた。<br />【結果】岐阜圏域の「みょうがぼち」は、空豆餡を小麦粉生地で包み、茗荷の葉を巻き、蒸して作られ、初夏の食材を活かし田植えの合間に食されていた。西濃圏域の今尾地区の「竹寒天」は、竹神輿の材料である竹の中に寒天液を流し込んで作られ、左義長に出されていた。中濃圏域では初午の「まゆだんご」や端午の節句や田植え休みの「ぶんだこ餅」など、米や米粉に砂糖や小豆を加えたおやつを作り、ハレの日に食されていた。中濃・東濃圏域では、新米の収穫時期に「五平餅」が作られ、来客時にも供されていた。東濃圏域の「からすみ」は、米粉に好みの味(黒砂糖、抹茶、胡桃、紫蘇など)を加えて蒸したものであり、桃の節句には欠かせないものであった。また、秋には特産の利平栗を用いた「栗きんとん」や「栗蒸し羊羹」も親しまれていた。飛騨圏域の「甘々棒」はきな粉を主原料とした飴菓子であり、かつて寒冷地の農業普及に大豆の栽培が奨励され、大豆を美味しく食べる工夫がされていた。内陸県である岐阜県のおやつは、田畑や山などで収穫される季節の食材を活かし、小麦粉・米・米粉に砂糖、小豆などを用い、折々の喜びを食にも込めていた。
著者
山澤 和子 荒井 七海 井田 有香 稲垣 花歩 犬飼 陽南子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.128, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】昨今,緑茶は利便性の高い加工飲料の頻用が一般化し,日本の緑茶文化「急須でお茶を淹れ風味を味わいながら寛ぐ」に接する機会は減少してきている。愛知県の伝統工芸「常滑焼」産地では「常滑焼急須で淹れた緑茶は苦渋味が弱く,口当たりがまろやかで美味しい」と言い継がれている。本報告は,急須材質が緑茶浸出液の呈味成分含量に及ぼす影響について検討した。【方法】試料緑茶葉:1mmの篩上の煎茶葉(静岡県産)を用いた。急須:容量500ml程度の常滑焼(赤(A)および黒(B))・有田焼(C)・鉄製(D)・銅製(E)・ステンレス製(F)・ガラス製(G)を用いた。緑茶浸出液の調製:AからGの急須に,試料緑茶葉 2gを入れ,85℃のイオン交換水100mlを注ぎ1.5分間浸出した後,濾過液を分析に供した。成分分析:ポリフェノール(PP)量は酒石酸鉄法,抗酸化能はDPPH法,アミノ酸量はニンヒドリン比色法で測定した。なお,糖量は糖度,有機酸量はpH値で検討した。【結果および考察】A とDで淹れた浸出液100ml中のPP量(73mg)は,その他急須の場合に比し顕著に少なかった。これはPPが急須材質中の鉄と結合体を形成した結果と推察され,苦渋味が弱まる一因と考えた。ラジカル消去能はPP量の多少と概ね同傾向であった。アミノ酸量は,Dで淹れた場合が最も多く,A・BのそれらはDの約80%,Cでは約70%であった。糖量や有機酸量に著しい差はなかった。以上から,鉄を含む朱泥を原材料とする常滑焼急須で淹れた緑茶は,PP量の減少により苦渋味が弱まり,アミノ酸による旨味が程よく保たれて味質バランスが整ったことが「まろやかで美味しい」の評価と関係すると推察した。
著者
土岐 信子 山根 沙季 長野 宏子 川田 結花 木村 孝子 辻 美智子 長屋 郁子 西脇 泰子 横山 真智子 山澤 和子 堀 光代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本各地には、各地域の自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は、地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着してきた岐阜県東濃地域の郷土料理と、その暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査に参画し、岐阜県東濃地域の瑞浪市、恵那市、中津川市を調査した。対象者はその地で30年以上居住した70歳代~90歳代女性8名で、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br>【結果】自家栽培した作物を中心に、日常食はご飯、味噌汁、漬物が基本であった。また小麦をうどん屋に持ち込み、うどんに加工して煮込みうどんや素うどんなどで食した。山間部のため、野山の食材を中心にした料理が多く、おかずには季節の野菜や芋類を使った煮物、大豆の煮豆や炒り豆、蕗の佃煮、蜂の子の佃煮、醤油味噌などを食していた。味噌やたまり、蒟蒻などの加工品も作っていた。また乳牛や山羊、鶏、鯉、蜂の子を飼う家もあり、牛乳や卵も手に入った。魚は保存性の高い塩漬けした秋刀魚、鰯などを利用したが、昭和30年代にはスーパーマーケットができ、生の魚や肉なども手に入るようになり利便になっていった。この地で伝え継ぎたい家庭料理として、五平餅、朴葉寿司、蜂の子ご飯、さんま飯、栗おこわ、栗きんとん、栗蒸し羊羹、からすみ、朴葉餅、年取りのおかず、煮なます、柚べし、鯉こくなどがある。