著者
田中 優大 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.97-100, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
15

1960年代、京都市では高度経済成長による都市問題の解決や行政運営の効率化に向け、総合計画の作成を試みた。本研究は、その総合計画の試行過程における都市像の変遷と経緯を整理・概観し、1960年代の京都市における都市計画の思想の一端を明らかにすることを目的とする。京都市では、1960年代に三度総合計画の作成が試みたが、各総合計画で構想された都市像は、動態著しい社会構造の変化や市政の変化を受け、形を変えた。その過程では、大規模な事業を行い、都市構造を根本から転換させようとする壮大な都市像も構想された。当時構想された都市像は、その後の京都市における都市像に大きく影響を与えている。
著者
筈谷 友紀子 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.37-40, 2020 (Released:2020-07-25)
参考文献数
16

本研究では、被爆遺構でありながら、強制連行された中国人や朝鮮人などを収容していた歴史を持つ長崎刑務所浦上支所を事例に、悲劇の記憶に関する叙述の変化を明らかにすると共に空間の残存が集合的記憶の形成・継承にどのような影響を与えるのか考察を行った。本研究から、1)浦上支所跡地に平和公園が建設されたのちも、浦上支所に関する記憶は当事者らにより鮮明に叙述されていること、2)戦後すぐにおける浦上支所跡地をめぐる叙述は説明的要素が強かったのに対し、近年にかけてはその印象を俯瞰的に叙述したものが多く見られたこと、3)1991年に明らかとなった浦上支所の遺構は、継承すべき記憶とは何かということに大きく揺さぶりをかけたことが明らかとなった。
著者
久保田 健彦 冨田 尊志 濃野 要 阿部 大輔 清水 太郎 杉田 典子 金子 昇 根津 新 川島 昭浩 坪井 洋 佐々木 一 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.109-116, 2015 (Released:2015-05-07)
参考文献数
28

目的 : 超高齢社会の現代において, 咀嚼・会話・審美に不可欠な歯を喪失する最大の原因となっている歯周病を防ぎ健康増進を図ることは, 歯周病が糖尿病や直接死因につながる循環器・脳・呼吸器疾患などと密接に関係することからも国民にとって急務である. 本研究は, 抗炎症効果を有するホエイペプチド (WHP) 配合流動食摂取が臨床的歯周組織検査項目, 唾液および歯肉溝滲出液 (GCF) 中の生化学的マーカー・炎症性サイトカインレベルに及ぼす影響について調べたものである.  材料と方法 : 本研究は新潟大学倫理審査委員会の承認を得て, 新潟大学医歯学総合病院にて実施した. インフォームドコンセントが得られた36名の慢性歯周炎患者 (男性24名, 女性12名, 66.8±11.7歳) を対象とし, WHP摂取群 (n=18), Control群として汎用流動食 (Control) 摂取群 (n=18) に無作為に振り分けた. 実施方法は評価者盲検法とし, 摂取前と摂取4週間後に臨床検査としてPlaque Control Record (PCR), Gingival Index (GI), Probing Pocket Depth (PPD), Bleeding on Probing (BOP), Clinical Attachment Level (CAL) の測定, さらに生化学的検査として最深歯周ポケット部位よりGCFを採取し, 炎症性サイトカイン (TNF-α, IL-6) 量, Alanine Transaminase (ALT) 量, Asparate Transaminase (AST) 量, 唾液中遊離ヘモグロビン (f-Hb) 量を測定した. 群間比較にはMann-WhitneyのU検定, 群内比較にはWilcoxonの符号付き順位検定, 相関分析はPearsonの積率相関分析を用い, 有意水準は5%に設定した.  結果 : GCF中の生化学的パラメーターでは, TNF-α, IL-6はWHP群においてのみ有意に減少した. Control群では有意差は認められなかった. ALT, ASTは両群ともに有意差は認められなかった. 臨床パラメーターは両群ともにPCR, GI, BOPにおいて改善傾向が認められた. PCRの低下したControl群でのみ, 有意にGI, BOPが減少した. PPD, CALは両群ともに有意な変化はなかった. 唾液中のf-Hb量は両群ともに有意差は認められなかった.  結論 : WHP群, Control群ともに, 4週間の摂取により歯周病臨床パラメーターが改善されることが示された. 特に, GCF中のTNF-α, IL-6がWHP群でのみ有意に減少したことより, WHPに含まれるホエイペプチドがGCF局所での炎症性サイトカインレベルに影響を与えた可能性が示された.
著者
川井 千敬 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.241-249, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
21

本稿では旅館業法に基づく簡易宿所を対象に、その政策的対応及び位置付けの変化をたどりながら、1)立地傾向と、2)地価との関係性についての検討からオーバーツーリズム期の影響を考察することを目的とする。調査結果から、1)簡易宿所は2016年以降、商業機能や観光機能が集積するエリアではなく、住宅用途の優勢なエリアに立地するようになってきたこと、2)旅館・ホテルに比べ地価の低いエリアに立地すること、またそれは簡易宿所の集積する中心市街地においても同様であること、3)1)、2)を踏まえて、近年立地特性が変容した簡易宿所と地価形成の関係を分析すると、特に2017年、2018年の簡易宿所が急増しつづけた時期は簡易宿所による地価上昇の影響が大きいことが明らかになった。
著者
吉田 智美 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.17-20, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9

都市には空間を物理的に分断するものが多く存在する。それは都市空間(もしくは都市空間を構成する要素)が隣接する周辺の地域と、ある存在によって切り離されることであると解釈できる。その中には貧困や差別などといった社会的課題と連動し、地域の人々にとって負の存在になるものもある。本研究ではその一例として大阪市住吉区浅香町1丁目・2丁目を取り上げる。浅香町は地下鉄車庫によって周辺地域と分断されていたが、住民の反対運動によって撤去されたという経緯がある。本稿では浅香町の分断に対する政策的アプローチと空間構造の変化を読み解き、分断の発生・解消・接続のプロセスを明確にし、浅香町の事例を都市空間の分断の一事例としてどう位置づけることができるかについて考察する。
著者
内海 ありさ 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.61-64, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
10

本稿では、京都市の市営住宅の縮小再編について立地の変容に着目して考察した。立地の変容に関しては、①戸 数にあまり変化が見られない区、②総住戸数の半数が減少する区、③総戸数が 3/4 となるが市内に 1 団地しか立地 しておらず、今後住戸数が増加する可能性のある区という 3 つの特徴に分類できる。これを踏まえ、京都市におけ る市営住宅の縮小再編によって、①郊外部と都心部で市営住宅の立地の二極化が起こること、②主に都心部では、 団地数の減少により、区内での住宅確保要配慮者の集住を促す可能性があることが明らかとなった。市営住宅の縮 小再編により、今後、更に住宅確保要配慮者の住宅の選択肢がより一層限定され、集住が加速し、住み分けが発生 する可能性がある。
著者
石黒 壮真 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.65-68, 2023-07-29 (Released:2023-07-22)
参考文献数
38

本研究では、京都市の高野川寮と城陽市の城南農工場を対象に、引揚者寮の運営実態と廃止をめぐる議論を明らかにした。高野川寮では、住民によって組織された自治会によって運営されていた。廃止をめぐる議論では、早期の廃止を求める土地所有者側と京都府との間と議論となった。所有側は、団地の建設や寮の一部を改修するといった譲歩を行い、土地の返還を求めた。城南農工場は、農地等の共同運営によって、農業コミュニティが結成された。廃止をめぐる議論では、農地の払い下げをめぐり、京都府と一部の住民が対立した。住民にとって農地は今までの生活基盤であり、廃止後の生活に大きく関わるものだった。それが取り上げられることになり大きな反発を招いた。
著者
毛藤 洸大 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-16, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では京都市が整備した関連側道を事例に、関連側道に対する議論とその変化を明らかにし、関連側道の整備 にどのような影響を与えたか考察した。京都市で整備された関連側道はコミュニティ道路化や自転車歩行者専用道 路といった点が、他の近畿圏の関連側道にない特徴となっている。特に、関連側道の中ではあまり例のない自転車 歩行者専用道路で周辺住民と意見交換する場を設け、整備方針を議論してきた経緯を持つのが阪急西側道である。初期 7 年間は騒音や景観に関する議論、後期 1 年間は高架下に商業施設が整備されることから周辺住民の利便性を 確保しつつ、日常生活に支障をきたさないようどう配慮していくかが大きな論点となっていた。
著者
田中 智朗 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-32, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
8

本研究では、コミュニティ型暫定利用を対象に、空地活用の実態を把握した。 以上から、①事業の目的、用途、面積、期間は、運営形態によって傾向が異なること、②暫定利用終了後は対象地 や運営主体の変更が生じるなど新たな展開の契機となる可能性があること③暫定利用を通して場を共有することに よって形成されたコミュニティが、利用終了後も継続的なまちづくり活動として展開されている可能性があること、 が明らかとなった。コミュニティ型暫定利用は終了を前提とした事業であり、いずれ人々の拠点としての場は消滅するが、地域のコ ミュニティ形成に及ぼした影響には持続性を持つ可能性があると考えられる。
著者
川井 千敬 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1253-1258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

近年訪日外国人観光客の急激な増加を背景に宿泊ニーズが高まっている。それに伴い京都市では簡易宿所が急増している。本研究では京都市東山区を対象に簡易宿所の立地動向を明らかにし、その立地が地域に及ぼす影響を考察することを目的とする。立地の特徴は(1)これまで商業地域に立地してきた簡易宿所が近年住居地域に拡がりつつあること、(2)細街路に立地が展開されつつあること、(3)簡易宿所の増加が地価上昇の一因になっている可能性があること、などが挙げられる。また、簡易宿所の立地が及ぼす地域への影響については、(1)地域住民は路地空間への宿泊施設の立地に抵抗感を持っていること、(2)住民にとって必要な古くからある小商いなどが宿泊施設に転換されていること、および、住宅利用の減退の可能性があること、(3)簡易宿所の立地によって住民退去が惹起されていること、などがあげられる。
著者
阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.211-216, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
19

本稿は、スペイン・バルセロナの市街地拡張プラン(1859年)を作成した土木技師イルデフォンソ・セルダに着目し、彼の大著「都市計画の一般理論」(1867年)の構築に至るまでの各種理論書の展開やそこで示された計画概念の包括的な特徴を明らかにするとともに、それらの継承関係、連続性を解明することを目的とする。セルダは旧市街の「改善」ならびに新都市の「拡張」のために必要な理論を構築する過程において、徐々に論点を物理的な空間の平等性から開発に際する地権者の経済的な平等性へと移していったこと、プランの実施にあたってもとの内容に必ずしも固執せず、理想を各段階での現実と調和させるだけの柔軟性を持ち合わせていたことなどが明らかとなった。
著者
岡林 隆敏 阿部 大輔 糸永 洋次郎 足立 圭太郎
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学工学部研究報告 (ISSN:02860902)
巻号頁・発行日
vol.34, no.63, pp.65-69, 2004-07

The atomic bomb disaster can be classified to urban disaster from the viewpoint of civil engineering. "The US strategic-bombing investigating commission film", an existing aerial image data of post atomic bomb disaster in Nagasaki recorded by the commission, remains as the materials for representing the result of the attack. However, there is few material, which indicates the right places of the object structures in detail. The objective of this study is to structure the database linked with the map of Nagasaki city by Visual Basic in order to utilize the historical data. Furthermore, we utilized the data by archiving in DVD-ROM.
著者
篠原 修 垣内 恵美子 阿部 大輔 西村 幸夫 鳥海 基樹 西村 幸夫 鳥海 基樹 クサビエ グレフソルボンヌ ナタリー ベルトラン
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

わが国では往々にして対立しがちな景観保全と経済的発展をいかに持続的に両立させていくかという視点から、わが国の都市部の事例として金沢市を、地方都市の事例として近江八幡市を、そしてフランスの都市部の事例としてナンシー市を、地方都市の事例としてフランス・アヌシー地方を取り上げ、両国における自治体レベルの景観行政の到達点と実施上の問題を整理するとともに、両者の比較検討によるわが国への政策的インプリケーションの導出を試みた。