著者
藤田 和樹 陣内 裕成 藤井 淳子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.23-32, 2021-01-15 (Released:2021-01-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

目的 本研究の目的は,地域の自立した高齢者を対象にロコモティブシンドローム(以下,ロコモと省略)と認知機能低下の関連を横断調査により検討することである。方法 対象者は,2014~2016年度に大阪府泉佐野市が実施した介護予防に関する質問票(基本チェックリスト)により一次予防事業の候補者と判定され,ロコモに関する質問票(ロコモ25)に回答した高齢男女3,751人(男性;1,914人,女性;1,837人,平均71.9±5.7歳)とした。ロコモのステージ(ロコモ度)はロコモ25の合計点を用いて判定した(ロコモ非該当:ロコモ25≦6点,ロコモ度1:7点≦ロコモ25≦15点,ロコモ度2:ロコモ25≧16点)。認知機能低下のレベルは基本チェックリストの認知関連の3項目を用いて評価した(該当項目なし:低下なし,1項目該当:軽度低下,2項目以上該当:中等度低下)。本研究では,ロコモと認知機能低下の関連を検討するため,認知機能低下を目的変数,ロコモ度を説明変数とする多項ロジスティック回帰分析を用いオッズ比を算出した。また,ロコモ度が他の要介護危険要因とは独立した認知機能低下の要因になるかを検討するため,年齢,BMI,基本チェックリストの低栄養,口腔機能,閉じこもりを調整した多変量調整オッズ比を推定した。結果 多項ロジスティック回帰分析の結果,認知機能軽度低下に対する多変量調整オッズ比と95%信頼区間は,男性では,ロコモ度1で1.63(1.22-2.18),ロコモ度2で1.78(1.15-2.75)であり,女性では,ロコモ度1で1.65(1.22-2.21),ロコモ度2で1.81(1.18-2.77)であった。同様の解析により,認知機能中等度低下に対する多変量調整オッズ比と95%信頼区間は,男性では,ロコモ度1で1.65(0.97-2.81),ロコモ度2で2.99(1.56-5.73)であり,女性では,ロコモ度1で1.97(1.11-3.50),ロコモ度2で2.43(1.14-5.19)であった。男女ともにロコモ度が高いほど認知機能低下者の割合が多くなる傾向が認められた。結論 地域の自立高齢者では,男女ともにロコモ度と認知機能低下の間に有意な関連が認められた。また,ロコモは認知機能低下の独立した関連因子になる可能性が示唆された。今後,縦断研究による検証が必要と考えられた。
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2022-017-E, (Released:2023-03-19)

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティス ギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.260-267, 2023-09-20 (Released:2023-09-25)
参考文献数
16

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティスギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
北村 明彦 木山 昌彦 野藤 悠 山岸 良匡 横山 友里 谷口 優 清野 諭 新開 省二 西 真理子 村木 功 阿部 巧 山下 真里 陣内 裕成
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

地域住民の疫学研究により、生活因子(身体活動、食事、喫煙、飲酒、精神的ストレス等)、医学的因子(脳卒中、心疾患、動脈硬化、メタボリックシンドローム等の生活習慣病、及び低栄養、サルコペニア、認知機能低下、うつ等の老年症候群)、社会的因子(社会参加、近隣・地域との交流、ソーシャルサポート等)がフレイルの発症に及ぼす影響を中年後期、前期高齢期、後期高齢期の年齢層別に明らかにする。
著者
村部 義哉 木村 大輔 平松 佑一 加藤 丈博 上原 信太郎 松木 明好 陣内 裕成
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.651-657, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
16

〔目的〕内的リズム形成を目的とした運動療法による,パーキンソン病患者のすくみ足とタッピング能力への改善効果を検討する事とした.〔対象〕一定頻度でのタッピングの持続が困難で,視覚・聴覚刺激を用いた外的手がかりによるすくみ足の制御が困難であった進行期パーキンソン病患者1名とした.〔方法〕内的リズム形成能力の向上を目的とした1回20分の運動療法を2回/週の頻度で8週間実施し,タッピング課題による内的リズム形成能力の評価,および歩行評価から,その治療効果を検証した.〔結果〕介入によって一定頻度でのタッピング持続回数の増加,すくみ足歩行の軽減が認められた.〔結語〕外的手がかりに代り,内的リズム形成を促す運動療法による治療介入は,すくみ足症状を軽減できる可能性がある.