著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

2011年3月に発生した東日本大震災は、地震・津波・原発爆発による放射能被害の三つの被害をもたらした。本分科会は、このうち放射能被害に関わる人類学的取り組みについて現状報告を行い、知見を共有するとともに、このテーマでの研究の発展と方向性について、参加者とともに検討することを目的とする。3.11 Tohoku Earthquake ended in three disastrous impacts of earthquake, tsunami, and radioactive pollution from the explosion of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. This panel is to focus on the radiation disaster and societies. The purpose is to exchange the knowledge on the disaster case studies and to argue the way of development as an anthropological discipline with the participants.
著者
藤岡 悠一郎 高倉 浩樹 後藤 正憲 中田 篤 ボヤコワ サルダナ イグナチェワ ヴァンダ グリゴレフ ステパン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100094, 2017 (Released:2017-05-03)

1.はじめに 気候変動や地球温暖化の影響により、シベリアなどの高緯度地方では永久凍土の融解が急速に進行している。そのプロセスやメカニズムは、地域ごとに固有の自然環境や社会環境要因によって異なり、各地域における現状や環境変化のメカニズムを把握する必要性が指摘されている。また、そのような環境変化に適応した生業・生活様式を検討し、社会的なレジリエンスを高めていくために、地域住民や行政関係者、研究者などの多様なステークホルダーが現状や地域の課題を認識する必要がある。本研究チームでは、現地調査によって気候変動の影響を明らかにすることと、その過程によって明らかになった諸科学知見を、教育教材の作成を通じて地域住民に還元することを目的として共同研究を進めている。そして、2016年から自然系科学者と人文系科学者との共同調査を東シベリア・チュラプチャ地域において開始した。本発表では、現地の住民が地域で生じている環境変化をどのように認識しているのかという点に焦点を絞り、結果を報告する。 2.方法 2016年9月にロシア連邦サハ共和国チュラプチャ郡チュラプチャ村(郡中心地)において現地調査を実施した。衛星画像を基に現地踏査を実施し、永久凍土融解の実態を把握した。また、チュラプチャに暮らす住民5名を対象にトピック別のグループ・インタビューを実施し、彼らの認識について把握した。さらに、チュラプチャ村近郊のカヤクスィト村において、現地観察および住民に対する聞き取り調査を実施した。 3.結果と考察 1)チュラプチャ村と周辺地域では、永久凍土が融解することによって形成されるサーモカルストが顕著に発達していた。現地踏査の結果、耕作放棄地において融解の進行が顕著であった。また、耕作放棄地に住宅が建築された場所では、住居近くにサーモカルストが形成され、盛り土などの対応を迫られていた。 2)住民は永久凍土の融解がこの地域で広域的に進行していること、特に耕作放棄地で融解が深刻であり、タイガのなかでも部分的に認められること、融解が2000年頃から急速になったことなどを認識していた。本地域における環境変化の問題としては、永久凍土の融解に伴う住宅地の盛り土の必要性や農業・牧畜に対する問題が語られたが、同時に、降水量の減少による干ばつの発生や雪解け時期の早まりなどの問題も重要視されていた。 3)融解の速度が場所によって異なる点について、住民はそのメカニズムを認識していた。例えば、耕作地では、畑を耕起することで土壌表層に空気が入り、断熱材代わりとなって熱が永久凍土に伝わりにくく、耕作放棄地では土壌が圧縮されることで熱が地中まで伝わり、サーモカルストが発達することなどが指摘され、ソ連崩壊やソフホーズの解体が遠因であるとの認識が示された。今後、自然系の研究成果との関係などを考察し、教材としてどのような知見を共有していくのか、検討していく予定である。 付記 本研究は、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)東北大学グループ「環境変化の諸科学知見を地域住民に還元する教育教材制作の取組」(代表 高倉浩樹)の一環として行なわれている。
著者
吉田 睦 高倉 浩樹
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ロシアの極北地域におけるトナカイ牧畜文化は、ソ連邦崩壊後、集団化企業体制の崩壊するなかで地域的民族的な特質を示しつつ変容した。当該文化の担い手は少数先住民族であり、そのうち西シベリアのネネツ人と東シベリア(サハ共和国)のエヴェン人における実態を、経済・社会構造の変化、環境変化への適応と文化的再構築という現象的側面から現地調査した。その結果、当該文化が、諸局面に柔軟に対応する民族文化の重要な一要素として機能していることが確認できた。
著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.91, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は、東日本大震災によって被災した人類学者としての経験をふまえて、震災にかかわるサルベージ人類学の必要性と、その理論的根拠、そこから見えてくる社会的実践の豊かなひろがりを論じるとともに、その実施に必要な調査体制についての展望について述べるものである。
著者
岡 洋樹 高倉 浩樹 北川 誠一 黒田 卓 木村 喜博
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

旧ソ連圏に属したモンゴル、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジア、ロシア連邦サハ共和国について、社会主義期から体制崩壊後の歴史記述・認識とその教育面への反映の状況を、収集した文献と、現地研究者との協力を通じて比較検討することによって、相互の共通性と特色を解明する。とくにソ連圏崩壊後に各国で顕著な民族主義的歴史記述や教育が創出している歴史認識の特徴と社会主義期との継承関係を解明する。
著者
高倉 浩樹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、シベリア・ヤクーチア地域の先住民社会を対象とし、歴史的・政治経済的条件のなかで、先住民の民俗環境知識の生成メカニズムの解明を目的としている。最終年度である2004年度においては、前年度までに収集してきたフィールド民族誌資料を整理すると共に、文献資料を行い、国内の専門家と意見交換を行いながら、研究を進めた。結論から言うならば、当該地域の先住民の民俗環境知識は、畜産学・家畜管理学的な知見に基づく農業政策の影響をうけながらも、放牧活動を実践する牧夫達の経験的知見の相続そして個人的な発見によって生成されている。ただし、その知識はいくつかの相に分類でき、そのことはヤクーチア地域の社会主義化=集団化・定住化と深く結びついている。知識は、(1)家畜の再生産、特に獣医学的な知識にかかわるもの、(2)家畜の群れとしての行動についての知識、(3)牧夫達が家畜管理を行う際の放牧地選定及び宿営地設営にかかわる知識である。類型的に述べると(1)から(3)の順で科学的知識の影響は弱くなり牧夫の経験的な知識が重要性を増すことになる。そのことは、これらの知識が共有される人々の量に関連する。つまり(1)に近いほど、この知識を共有する(あるいは蓄積しうる)社会的階層が人々が多く(3)については牧夫などに限られる。従来、科学的知見は専門家集団に限られ、経験的知識はより幅広い層に認められるという理解であるが、これは歴史的・政治経済的条件のなかで生業という活動に従事する人々自体が先住民コミュニティのなかで少数化していることを示している。主たる成果は、ソ連時代に科学的な畜産技術・家畜管理学的技術が導入されたトナカイ飼育のなかで、牧夫達の移動距離や行動パターンを質的・量的に把握し、群れ管理の技術と知識の位相について論考を出版したことである。第二に、その広い意味での歴史的背景を明らかにした。1920-30年代の初期ソビエト政権においてヤクーチアの民族知識人がみずからの生業の産業化の過程をどのように評価していたのか、民族学史・科学史という視点で考察した論考を出版した。さらに、上記にのべたメカニズムをより具体的な民族誌的文脈に即した論考の出版を計画している。
著者
窪田 幸子 曽我 亨 高倉 浩樹 内堀 基光 大村 敬一 杉藤 重信 丸山 淳子 PETRRSON Nicolas ALTMAN Jon
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、20 世紀末から力を持つようになった国際的なイデオロギーとしての「先住民」概念を視野に入れつつ、国際世論と国家の少数民族政策のもとで、少数者である当事者の人々が、どのように先住民としての自己のアイデンティティを構築していくのかをあきらかにすることを目的とするものである。その結果、先住民としてのアイデンティティを選び取る・選び取らないという選択の幅がみられる現状には、グローバリゼーション、なかでもネオリベラルな経済的影響が大きいことが明らかになった。最終年に開催したとりまとめの国際シンポジウムではこのスキームをベースとして、代表者、分担者そして海外研究協力者の全員が研究発表を行った。
著者
高倉 浩樹
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

200字程度本課題は、デジタル映像技術の発展を背景に、人類学的研究の新たな方法とその可能性を探ろうとするものである。具体的には、(1)デジタル映像技術と人類学調査研究に関わる最新知識の解明、(2)映像人類学の基盤的知見の探求、(3)日本の人類学における写真史に関わる総説的知見の探求、(4)デジタル映像技術を利用した研究成果発信方法の開発である。結果としてデジタル映像技術を利用した人類学調査は、調査者と被調査者との関係の相対化をふくむ双方向性的なものになっていること、この特性を利用することで人類学の知見はより効果的・説得的に社会に提起されうることを明らかにした。