著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.117, 2013 (Released:2013-05-27)

動物行動への理解がすすむにつれて、私たちは動物に対して過剰な合理性を押し付け、動物は無駄な殺しをしないはずだと信じている。しかしヒトにもっとも近縁なチンパンジーにおいては、他の動物を殺す場合に、必ずしも明確な殺意や動機が存在しているとは解釈できない事例などが多数あることが分かった。こうした観察結果は、動物においても不合理な殺しはさまざまな形で遍在することを示唆している。
著者
兼城 糸絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.88, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、東日本大震災における津波によって被災した地域社会が復興へと歩みをすすめる過程においてアニメ聖地巡礼者たちが果たしてきた役割について具体的事例とともに考察していく。地縁血縁的枠組みに基づくローカルな組織でも災害復興を目指すアドホックな組織でもない、趣味に基づいて形成された組織が災害復興において重要な役割のひとつを担っていることを震災前後のコンテクストに基づいて明らかにする。
著者
木村 大治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.141, 2013 (Released:2013-05-27)

この発表では,SFの一ジャンルである「ファースト・コンタクト」,すなわち,異星人との最初の接触の「事例」を梃子として,出会いとコミュニケーションにおける「理解」の成立について論じる。
著者
大村 敬一 木村 大治 磯部 洋明 佐藤 知久
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.140, 2013 (Released:2013-05-27)

人類の宇宙への飛躍が目前に迫っているかもしれない今日の状況下、人類学に何が求められ、人類学に何ができるのだろうか。本分科会の目的は、宇宙空間への人類の進出が同時代的な課題となりつつある今日の世界にあって、「地球」という限定された空間を超えて、「宇宙」 という新たなフロンティアから人類を見つめ直す宇宙人類学の可能性を示し、問題提起を行うことにある。
著者
中川 敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.37, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は他者にエージェンシーを付与する(志向姿勢をとる)ことについて考察する。第一部では、生活世界においてわれわれが他者にエージェンシーを付与するのはどのような状況なのかを考察する。第二部では、他者が論理空間の外部ならば、 他者は「謎」として現れるという野矢茂樹の指摘を受け、 そのような他者に対する姿勢、志向姿勢を越えた姿勢(倫理姿勢)の可能性について考察する。
著者
玉城 毅
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.108, 2013 (Released:2013-05-27)

本研究は、沖縄の糸満漁民の移動から定住への過程に着目し、移住に始まった漁民の流動的な状況からどのような秩序がいかにして形成されたかを明らかにすることを目的としている。それによって、流動性の高さが指摘されてきた東アジア・東南アジアの多くの漁民と比べると、定住化の傾向が高い糸満漁民の特徴を明らかにするとともに、流動状況から秩序が形成され志向されるやり方についての沖縄的な文化モデルを提示する。
著者
熊谷 圭知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.36, 2013 (Released:2013-05-27)

本報告の目的は、エスノグラフィーへの空間/場所論の再定位である。グローバル化の中で、「場所」への関心が高まり、文化人類学においても、空間や場所が注目されている。その源泉には3つの志向性がある。①身体や物質性への注目、②日常生活実践や共同性(の喪失やその復興)への関心、③フィールドワーク、エスノグラフィーの再構築である。その意味と課題を、私のパプアニューギニアでのフィールドワークをふまえて論じる。
著者
新本 万里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.1, 2013 (Released:2013-05-27)

生理用品(ナプキンなど西洋起源の経血処置の道具)の受容による月経のケガレ観の変容を、パプアニューギニア・アベラム社会を事例に明らかにすることを目的とする。月経小屋があった当時、作物の栽培に危険な月経中の女性は可視化されていた。生理用品の受容によって、月経は、女性個人のものとなった。月経が作物の栽培に危険なものであるという感覚が希薄化し、当該社会の月経のケガレ観は変容していると考えられる。
著者
長沼 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-05-27)

本分科会では、沖縄、台湾、韓国、中国、タイのフィールドから個別具体的な漁村形成の事例を報告する。その際にとくに注目するのは、水上/陸上の他集団との社会・経済的関係と、国家など近代的公権力の影響(定住化政策、漁業開発、干拓事業など)である。これらを通地域的に比較するなかで、これまで移動から定住に至る一方向的なプロセスにおいて、分けて論じられてきた移動/定住漁民のあり方が、移動と定住の両方向的な動きにおけるバリエーションとして現われていることを実証する。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.6, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、日本人の女性セックスワーカーへのインタビュー・データをもとに、客と恋人の区別に注目することで、セックスワークという仕事の性格について考察する。2012年11月までに行ったセックスワーカー11人へのインタビューをもとに、セックスワーカーの恋人観、恋人と客とを区別するような行為や言説、客が恋人になる過程や葛藤を明らかにする。これによってこれまでのセックスワーク論批判を吟味する。
著者
奥野 克巳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.116, 2013 (Released:2013-05-27)

動物殺しは、一般に、人によって行われる動物殺しの面の問題検討に大きく傾いている。本分科会では、動物による動物殺し、動物による人殺し、人による人殺し、人の動物殺しを相互に比較検討することによって、動物殺しの論理と倫理について考察する。そのことは、動物殺しが人による動物殺しを中心に語られてきたことへの補正でもある。本分科会の目的は、動物殺しに関して、その人類学的な課題を浮かび上がらせることである。
著者
箭内 匡
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.53, 2013 (Released:2013-05-27)

この発表では、ジャン・ルーシュの仕事の全体(民族誌映画のみならず、民族誌的・社会学的著作、劇映画、エスノフィクション映画、教育的活動など)、そしてその仕事の人類学内外への影響の全体を視野に入れつつ、近年多数公刊されてきたルーシュに関連する文献資料・映像資料を参照しながら、彼が「共有人類学」と呼んだものの根本的な特徴(友情、口頭伝承、メディア、生成、喜び)の描写を試みる。
著者
石川 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.42, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、長野県諏訪地域のケーブルテレビ局A社を事例に、ローカルメディアが地元の祭りに「当事者」として深く関わっていることについて論じる。発表者はA社の番組制作課にアルバイトとして関わりながらフィールド調査を行った。その中でA社が氏子である視聴者のニーズに即した番組制作を行っていること、氏子たちもそのサービスを祭りの一部として認識していることが明らかになった。
著者
小西 信義
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.41, 2013 (Released:2013-05-27)

除排雪に関わるリスクは豪雪過疎地域では切実な課題である。この課題に対し、人びとがどのように対応しているかを明らかにするため、岩見沢市美流渡地区で経験的観察を行った。その結果、人びとは自然環境や個体を取り巻く状況に応じ、個体または集団の行動戦略を採っていることが明らかとなった。さらに、これらの行動戦略が互恵性に基づく活動であることを検討し、豪雪過疎地域における課題解決に寄与していることを指摘する。
著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.91, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は、東日本大震災によって被災した人類学者としての経験をふまえて、震災にかかわるサルベージ人類学の必要性と、その理論的根拠、そこから見えてくる社会的実践の豊かなひろがりを論じるとともに、その実施に必要な調査体制についての展望について述べるものである。
著者
今井 彬暁
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.26, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、ベトナムの西北地方に位置するサパと呼ばれる観光地において形成されている民族間分業の様態を描き出し、そこでのモン族の立ち位置を彼らの労働表象に着目しつつ説明する。サパでは複数の民族が観光産業に携わっているが、経済活動に付与する価値付けは民族によって異なることを労働表象の民族的差異から説明し、そのことが民族間分業におけるモン族の現在の立ち位置を決定する要因となっていることを主張する。