著者
酒井 治己 高橋 俊雄 古丸 明
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1-4, pp.109-121, 2014-03-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
54

Allozyme variability in the androgenetic freshwater clams Corbicula leana from Japan and the exotic C. fluminea were investigated. A total of 462 individuals of C. leana from 19 localities throughout the distribution range of the species were monomorphic at three allozyme loci as well as in purple inner shell color. Corbicula fluminea from three localities, on the other hand, was variable in shell color; with white, purple, white with purple flash, or deep purple examples. The present results suggest that they may include several clonal lines with different shell colors and allozyme genotypes. We discuss possible diversification of freshwater clams among bisexual species and hermaphroditic clones through clonal capture, genome capture, or ploidy elevation.
著者
麦谷 達郎 谷口 弘穀 高田 敦 増山 守 田中 宏樹 小山 拡史 保島 匡和 高橋 俊雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.1295-1301, 1996-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
21

肝切除術71例を対象に自己血輸血法の有用性を検討した.貯血式自己血輸血を44例に施行した.術前貯血量は, rh-エリスロポェチン併用群で550g(平均値)とrh-エリスロポエチン非併用群より有意(p<0.05)に多く,採血後のHct値の低下はrh-エリスロポエチン非併用群と同程度に留まった.術中輸血法に関しrh-エリスロポエチン非併用自己血, rh-エリスロポエチン併用自己血,同種血,無輸血に分類し,術後の変化を検討した.術後Hct値は,同種輸血群で回復遅延を認め,第14病日に29.4%と他の3群より低値であった.術後総ビリルビン値,血中肝逸脱酵素は,同種輸血群で第1病日に他の3群に比し有意な上昇を認めた.自己血輸血の2群は無輸血群と同様の経過を示し,総ビリルビン値の上昇も1.20と軽度で,肝切除術には同種輸血は避け,自己血輪血が望ましいと考えられた.また,術前貧血の無い場合,術前貯血量800g, 術中出血量1,500g以下が同種輸血なしに自己血輪血のみで行える指標になると考えられた.
著者
川井 啓市 劉 輝雄 施 壽全 楊 國郷 翁 昭紋 林 肇堂 王 正一 王 徳宏 渡辺 能行 山口 俊晴 土橋 康成 高橋 俊雄 CHUAN Shin-Shou YANG Kuo-Ching MIN Weng-Chao LIN Jaw-Town WANG Cheng-Yi WANG Teh-Hong LIU Hui-Hsiung 青池 晟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

十二指腸潰瘍が胃潰瘍よりも多く,かつ胃瘍が少ない沖繩県に隣接する台湾でも十二指潰腸瘍が胃潰瘍より多いといわれており,台湾における胃癌や大腸癌の実態を明かにし,その発生要因を検討するのが本研究の目的である。記述疫学的に死亡統計をみてみると,台湾では,男で胃癌の漸減傾向,直腸癌と結腸癌の増加傾向が,女で胃癌の減少傾向,結腸癌の漸減傾向,直腸癌の漸増傾向がみられたのに対して,日本では男で台湾と同様の推移が,女で胃癌が減少傾向,直腸癌が漸減傾向,結腸癌が増加傾向を示していた。また,日本では結腸癌の増加傾向が著しいが,台湾では過去15年間に一貫して結腸癌の方が直腸癌よりも高率であり,いわゆる欧米的なパターンを呈していたことが強調される。臨床統計として台湾大学医学院内科において1992年1年間に診断したすべての胃癌患者は男52例,女30例,合計82例であった。同様に大腸癌は男22例,女18例,合計40例であった。大腸癌の部位は結腸癌23例(男11例,女12例),直腸癌17例(男11例,女6例)と,男では結腸癌と直腸癌は同数であったが,女と合計では結腸癌の方が多かった。1990年1年間の京都府立医大・第一外学教室で新たに診療したすべての胃癌患者は男73例,女38例,合計111例であった。同様に大腸癌は男20例,女13例,合計33例であった。その部位は結腸癌15例(男8例,女7例),直腸癌18例(男12例,女6例)で,直腸癌の方が多かった。台湾におけるこれらの胃癌の組織型をみてみると,well differentiated adenocarcinoma10%,moderate differentiated adenocarcinoma15%,poorly differentiated adenocarcinoma45%,signet ring cell carcioma11%,その他9%不明11%であった。同様に台湾の大腸癌の組織型は,well differentiated adenocarcinoma 5%,moderate differentiated adenocarcinoma48%,poorly differentiated adenocarcinoma3%,詳細不明のadenocarcinoma38%,その他8%であった。このような組織型はわが国における実験と大差なかった。1991年12月より台湾大学医学院内科他3施設において内視鏡検査受診者に対するライフスタイルなどの調査を開始した。1993年1月末現在で上部消化管内視鏡検査受診者7856人と大腸内視鏡検査受診者589人分の資料を収集した。最終的に胃癌患者は約100例,大腸癌患者は約50例になる予定である。このうち,既に整理の終わった胃癌患者30例と大腸癌患者24例の資料を用いて分析疫学の症例・対照研究の手法で台湾における胃癌と大腸癌のリスク・ファクターの検討を行った。解析に用いた胃癌症例は男18例,女12例,合計30例である。対照は上部消化管内視鏡検査で著変なかった男47例,女156例,合計203例である。これらの対象の既往歴,癌の家族歴,飲酒,喫煙及び食餌習慣について性・年齢階級の絞絡を補正するためにMantel-Haenzel法によって各要因単独の暴露ありのオッズ比を求めた。その結果,統計学的に10%以上の有意水準で有意であった要因について,相互の絞絡を補正するために多変量解析のunconditional logistic regression analysisを用いて解析した。高血圧の既往があることとのオッズ比は0.02であり,香辛料を週に2-3回以上摂取することのオッズ比は0.07でともに有意に胃癌のリスを下げていた。同様に大腸癌症例男13例,女11例,合計24例と大腸内視鏡検査で著変なかった対照の男47例,女60例,合計107例について単独の要因について解析した。牛肉を週を1-2回以上摂取することは有意に大腸癌のリスクを0.30に下げ,塩からい食品を毎日摂取することは有意に大腸癌のリスク3.52倍高めていた。なお,大腸癌については少数例であり多変量解析は行えなかった。この結果の評価については,最終的に収集できた全胃癌症例と大腸癌症例を用いて行う予定である。また,背景の遺伝子の解析としてPGC RFLPパターンは台湾の胃潰瘍では前庭部と他部位で異なっていた。
著者
吉開 範章 栗野 俊一 飯塚 信夫 神田 大彰 高橋 俊雄
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2011-GN-79, no.7, pp.1-6, 2011-03-10

ウイルスに感染した状況は、緊急 (パニック) 状態の一種と考えられ、心理学の対象となる領域であるが、これまでに報告された例はない。また、情報セキュリティ分野において、個人が対策する意思があっても、対策行動はとらない等の現象が知られており、個人の振る舞いや意思決定などに関する研究が始まっている。今回、感染 PC を有するユーザーの情報セキュリティに関する意識を、集合知をベースとする集団仮想ゲームを使って実験的に調査し、ウイルス対策への協調行動を誘発させる方策についてにアンケート結果も交えて検討したので、報告する。
著者
吉開 範章 栗野 俊一 飯塚 信夫 神田 大彰 高橋 俊雄
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-6, 2011-03-10
被引用文献数
6 1

ウイルスに感染した状況は、緊急 (パニック) 状態の一種と考えられ、心理学の対象となる領域であるが、これまでに報告された例はない。また、情報セキュリティ分野において、個人が対策する意思があっても、対策行動はとらない等の現象が知られており、個人の振る舞いや意思決定などに関する研究が始まっている。今回、感染 PC を有するユーザーの情報セキュリティに関する意識を、集合知をベースとする集団仮想ゲームを使って実験的に調査し、ウイルス対策への協調行動を誘発させる方策についてにアンケート結果も交えて検討したので、報告する。The situation under virus attack can be considered to be a kind of Panic. However, there have been no report about such a circumstance in the psychology. In the field of the information security, it is well known that some people do not take action for protection even if they would have the will for carrying on the protection. For investigating the thinking mechanism, the research of individual behavior and the decision making has been started. This paper mentions the experimental research results about the consciousness of Information security protection by using the wisdom of crowd game, and the analytical results for how to incubate the cooperative action based on the experimental data and some questions.
著者
高橋 俊雄
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.231-234, 1997-12-28

淡水産の刺胞動物であるヒドラは単純な体制と限られた細胞種からなり,強力な再生能力を持つ生物で,形態形成のメカニズムを研究する上での理想的な小動物である。従来の研究で様々なシグナル分子がヒドラの出芽,再生,細胞分化などのダイナミックな発生過程の制御や神経情報伝達に関与していると示唆されている。しかしながら,多大な努力にも関わらずヒドラのシグナル分子の実体はほとんど明らかにされていない。唯一,11個のアミノ酸残基からなり頭部形成を促進するペプチドHead activator(pGlu-Pro-Pro-Gly-Gly-Ser-Lys-Val-Ile-Leu-Phe)が同定されているだけである(Schaller and Bodenmuller, 1981)。実体が明らかにされていない主な理由は,シグナル分子の組織内含量が非常に少なく,しかも精製過程における生物活性検定に多大な労力と時間を要することにある。この点を克服するために,従来の方法とは異なる新しいアプローチ方法を開発し,ヒドラの発生過程や神経情報伝達を制御するペプチド性シグナル分子を大規模かつ系統的に単離し,その構造及び機能を解明する目的で研究を始めた。対象をペプチド性シグナル分子に限定した理由としては,容易に単離,構造決定及び化学合成ができ,また,前駆体遺伝子の同定を行うことによりペプチドの発現調節機構の解析までもが可能であることによる。この新しいアプローチ方法は下記の4段階に分けて推進した。(1)ペプチド分離大量に培養したチクビヒドラ(Hydra magnipapillata)からペプチド性画分を分画した。本研究では,ヒドラからのペプチド性成分の抽出には熱酢酸法及び冷アセトン法の2種類の方法を試みた。次に,HPLCを用いて系統的にペプチドを分離精製した。この段階では生物活性検定を行わない。(2)活性スクリーニング 各精製ペプチドにつき, Differential Display(DD)-PCR法(Liang and Pardee, 1992)を用いて,ヒドラの遺伝子発現パターンに変化を与えるペプチド(シグナル分子)を選択した。出芽や再生などの形態形成に際しては様々な遺伝子の発現が起こっていると考えられる。そこで分離精製したペプチドでヒドラを処理して4時間または20時間後にmRNAを抽出した後cDNAを作成し,ランダムなプライマーを用いてPCRで増幅し,電気泳動によるバンドパターンを無処理ヒドラのものと比較してmRNAの発現様式が変化したものをピックアップした。(3)構造決定及び化学合成 (2)でシグナル候補分子であると思われるペプチドにつき,アミノ酸配列分析,アミノ酸分析及び質量分析を行い,ペプチドの構造を推定した。推定した構造をもとにペプチドを合成した。そして,合成ペプチドと天然物とのHPLC上での挙動を比較し,一致したらその構造が正しいと判定した。(4)生体内機能検定 最終段階では,構造決定し,化学合成したペプチドを用いてヒドラにおける生物活性を調べた。第1章では,本法により現在までに329種のペプチド性と思われる物質を単離し,200種のアミノ酸配列分析を行い,45%(56/124)のペプチド性物質にヒドラの遺伝子発現に影響を及ぼす活性がみられた。この結果から,単純に計算して,ヒドラ組織中には約600種のペプチド性シグナル分子が含まれていることを示す。また,DD-PCR法を用いたスクリーニングの方法は,数多くのペプチド性シグナル分子と思われる物質を効率よくスクリーニングすることができることが示された。現在までに27種のペプチドの構造を決定しており,これらペプチドのうち,ペプチド族を形成する2つのグループを同定した(表1)。ひとつはLWamide族ペプチド(LWamides)で,これまでにヒドラから7種の同族体を単離,同定している。LWamidesの構造上の特徴として,C-末側にGly-Leu-Trp-NH_2構造を共通に持つ。Leitzら(1994)によりイソギンチャクから単離,同定され,海産のカイウミヒドラのプラヌラ幼生変態を促進する生理活性ペプチドMetamorphosin A (pGlu-Gln-Pro-Gly-Leu-Trp-NH_2)(MMA)もこのペプチド族に属する。もう1つはPW族ペプチド(PWs)で,このペプチド族は現在までにどの動物門からも単離されていない新型のペプチド族であった。これまでにヒドラから4種のPWsを単離,同定した。4種のペプチドは,5残基から8残基のアミノ酸残基からなり,共通構造としてC-末側にLeu(or Ile)-Pro-Trpを持つ。また,PWsのHym-33H (Ala-Ala-Leu-Pro-Trp)を除く3種のペプチドはN-末側から2残基目にPro (X-Pro)を持つ構造をしており,このことは,これらペプチドが分解酵素により分解されにくく,比較的安定な構造のペプチドであることを示唆する(Carstensen et al., 1992)。Hym-330,Hym-346と仮に名付けたペプチドは,Hoffmeister (1996)によりヒドラ(Hydra vulgaris)から足部再生を促進する活性を持つ因子として同定されたペプチドpedin,pedibinとC-末のGlu残基を欠く構造と同一のペプチドであった。