著者
髙橋 広行 金谷 勉 高橋 広行 Hiroyuki Takahashi Tsutomu Kanaya
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.27-47, 2020-07-15

本稿は,衰退傾向にある我が国の地場産業や伝統的工芸品産業の活性化を検討するものである。その活性化のひとつの方法として検討したのが,地域の資源や既存技術を活用し,現在の消費者のライフスタイルに沿った,デザイン性の高い商品を開発していくことである。その目的を明らかにするために,まず,地場産業や伝統的工芸品産業が置かれている状況,および,クリエイティブやデザイン事業を得意とするセメントプロデュースデザインが取り組んできた「みんなの地域産業協力活動」の活動事例を説明した。その後,実際に地域との協業を通じて開発されてきた商品群の中で,より高い成果(販売実績)を産み出すための要件を明らかにするために,複数の要因の相互作用による組み合わせパターンを探る「fsQCA」(fuzzy set qualitative comparative analysis)によるデータ分析を行った。分析の結果,2つの組み合わせパターンが抽出された。主な組み合わせとしては,「熱意」と「企画提案の程度」,そこに「技術力(設備)」が組み合わされる場合,高い販売実績につながることが明らかになった。
著者
髙橋 広行
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.53-61, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
26

近年,実務でも研究面でも,カスタマー・ブランド・エンゲージメントの注目が高まりつつある。そこで,本研究の目的は,カスタマー・ブランド・エンゲージメントを認知的・感情的・行動的な3要素のサブセットで測定し,ブランド評価や満足度,ロイヤルティとともに,購買履歴データを同時に分析する包括モデルを通じて,エンゲージメントの位置付けとともに,購買行動との関係を明らかにすることである。服飾雑貨SPAブランドの顧客に対して行なった質問票調査と顧客の購買履歴データを統合し,構造方程式モデルで分析を行った。その結果,エンゲージメントは,満足度とロイヤルティを経由し,購買行動の「顧客期間」,「購買金額」,「購買回数」と正の関係にあることがわかった。一方,エンゲージメントから購買行動への直接のパスは負の関係であったことから,エンゲージメントは満足度とロイヤルティを経由しなければ,購買行動には至らないことも同時に明らかにした。
著者
髙橋 広行
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.44-61, 2016
被引用文献数
1

<p>本稿は,消費者の視点で食品スーパーのイノベーションについて議論するものである。消費者は買い物の仕方や店舗内でのふるまい方を行動パターンにもとづく認知要素(スクリプト)で把握しており,そのスクリプトは買い物行動,店舗内行動,売り場行動などの階層構造で捉え直すことができる。そこで本稿では,小売の価値に関する先行研究をレビューしながら,上記の階層構造ごとに革新性を整理する。その後,それぞれの革新性を具体的に実践している小売企業の先端事例(まいばすけっと,阪急オアシス,北野エース)を取り上げることで,実務的なインプリケーションを導出していく。</p>
著者
田中 祥司 髙橋 広行
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
28

本稿は,ブランドの本物感における知覚・認知の程度の違いによる階層性に注目しながら,下位ランク(階層)から上位ランク(階層)への移行に影響を与える要因の解明を試みたものである。具体的には,潜在ランク理論を用いた分析によって,ブランドの本物感の階層性(四つのランク)を見出した。同時に,その階層性と本物感を構成する要素との関連について,上位のランクになるほど,物象的から象徴的な要素へと移行することを示唆した。さらに,上位のランクに移行する際に影響を与える要因を検討した結果,企業のこだわりが一貫して重要な要因であること,最初の移行(ランク1からランク2),および,最後の移行(ランク3からランク4)においては,こだわりに加え,感情的関与も重要な要因であることを明らかにした。
著者
髙橋 広行
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.777-784, 2010-10-20 (Released:2016-10-01)
参考文献数
23

本研究は,グレード化されたカテゴリーを形成する典型性要因,および具体性要因に基づく構造を前提にしながら,ブランド・ポジショニングを検討していくものである.先行研究におけるグレード化されたカテゴリーは「典型性」の研究に傾斜しており,競争環境やコンテクスト(文脈)などの具体性についてはほとんど議論されてこなかった.また,典型性と具体性の要因に基づくブランドの類型までは検討してきたものの,実際のデータで確認までは行っていなかった.そこで本研究では,このブランドの類型を検証していくものである.分析には2009年3月にIpsos日本統計調査株式会社の消費者パネルモニター,20代から60代前半の女性に対して収集した洗濯用洗剤ブランドのデータを用いた.分析の結果,認知者ベースから購入者ベースになるほど典型性要因が強く影響することが確認されたこと,ブランドの類型に基づいたブランド・ポジショニングによる競争構造が理解できたことから,このアプローチが有効であることを示唆した.
著者
髙橋 広行 豊田 尚吾
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊消誌 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1044-1052, 2012

<p>本研究は,震災復興支援,貧困支援,環境保護などの倫理的消費商品の購買と消費者の心理的側面との関係性をつまびらかにすることにある.具体的なアプローチは,倫理的消費商品の購買状況と価値観や社会的規範との関連性について,性・世代・地域の違いを踏まえ,アンケートデータの分析を通じて明らかにするものである.分析には,大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所が2012年2月に,20代から60代の男女5000人に対して行ったアンケート調査データを用いた.分析の結果,倫理的消費商品の購入には,消費者個人の価値観とともに社会的規範が大きく影響すること,特に,高年者世代ほど倫理的消費に対する意識が強いことがわかった.従来のマーケティング戦略において見落としてきた「規範」という概念の重要性,および,今後の主なターゲット層となりうる女性の高年者世代が倫理的消費に大きく関連するという点を明らかにしたことが本研究の貢献である.</p>