著者
岸田 和明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.439-448, 2011 (Released:2011-11-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

本稿の目的は情報検索研究における評価方法の歴史的な変遷を概観し,評価の高度化のために探究されるべき課題を論じることにある。最初にクランフィールド実験・TRECという2つの画期的な検索実験を紹介する。これらは現在の検索実験の標準的な枠組みを提供した。次に,検索実験における評価指標について論じる。特に,順位付き出力の評価用に開発された平均精度について詳しく説明し,その問題点を議論する。最後に,評価尺度としての「適合性」概念について述べ,その客観的な解釈と主観的な解釈との相違を明確にする。
著者
西内 啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.799-811, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
2

最速で最善の答えを導き出せると,統計学が今,注目を浴びている。しかしどのようなデータを,どう分析し,どう生かしていくか,明確にわかっている人は少ないのではないだろうか。そこでまず,偏りを避け客観的な結果を導くランダム化比較実験(ランダム化比較試験)や,日本の高品質生みの親・デミング博士のマネジメントの根幹となった統計学を紹介する。そして実践編として,リサーチデザインを駆使し,仕事に生かせるデータ分析の理想サイクルを作る方法を伝授する。
著者
原井 直子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.592-601, 2013-12-01 (Released:2013-12-01)
被引用文献数
1

国立国会図書館(NDL)は,2013年2月におおむね5年間を対象とする書誌データ作成および提供に関する方針を公表した。これは,先行する書誌サービスに関する方針を発展させると同時にNDLの全体戦略の中に位置づけられたものである。その最も重要なポイントは,Web環境に適応して,従来の図書館資料と電子情報を一体として扱うことと,書誌データの多様な利用者・利用方法に対応することである。
著者
北村 聖
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.363-373, 2013-09-01 (Released:2013-09-01)

日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)は,日本医学会112分科会の機関誌の編集委員から構成される。JAMJEは,2008年の設立総会で,医学雑誌と編集者の自由と権利の擁護,医学雑誌の質の向上への取り組み,倫理規範の策定,国際的な連携という4項目を活動の目標とした。この目標に即した医学雑誌の編集方針のためのガイドライン(案)を作成した。ガイドラインには,世界医学雑誌編集者協会(WAME)による「方針書」と「編集者候補および新任編集者を対象としたシラバス」および国際医学雑誌編集者会議(ICMJE)の「統一投稿規程」に記載されている内容を盛り込み,さらに国内事情を反映させた。JAMJEの4つの目標に準じた章立てとしている。
著者
泉 浩人
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.535-543, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
3

今日,市場には多くの商品やサービスがあふれ,消費者には多様な選択肢が与えられている。一方,インターネットやスマートフォンの普及により,消費者は,どこにいても,商品・サービスの機能や価格を,瞬時にかつ簡単に比較・検討することができるようになった。購入や利用の決定に関する主導権が「買い手」に移る中,「売り手」は機能や性能,価格といった「伝統的」な要素だけで,自らを差別化することは難しくなっている。そこで重要になるのがユーザーエクスペリエンス(UX)だ。商品やサービスの購入や利用にまつわる一連の体験を快適で便利なものにできなければ,消費者の心をつかみ続けることは難しい。それゆえ,UXデザインは,意匠や機能のデザインにとどまる問題ではなく,経営を左右する重要な課題の一つになりつつある。
著者
江上 周作 渡邊 勝太郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.261-270, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
6

現在,オープンデータの取り組みは世界的に広がりをみせており,実際の利用例の開拓を目的としたコンテストは注目を浴びている活動の一つである。日本国内で最初期から活動を継続しているコンテスト「Linked Open DataチャレンジJapan」は,Linked Dataに力点を置いているだけでなく,協賛者のデータを使った応募作品を作るハッカソン等イベントを共催で開催できる特典をスポンサーに用意するなど特色ある制度が存在する。本稿では,コンテストの運営者の視点に加えて,スポンサー・データ提供で協賛したデータ提供者の両方の視点から,コンテスト形式でのオープンデータ普及活動の実例を紹介する。LODチャレンジのこれまでの歩みと2016年の開催報告,JST(科学技術振興機構)との共催のイベント開催の様子とコンテストにデータを提供することのメリット,そして今後の展望と課題について述べる。
著者
川村 隆浩 渡邊 勝太郎 松邑 勝治 櫛田 達矢 古崎 晃司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.839-848, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
23

近年,大規模書誌情報データベースを対象とした科学計量学の研究が盛んに行われている。そのため,論文や特許,研究データの分類やクラスタリング,検索のため科学技術に関するシソーラスの重要性が増している。科学技術振興機構(JST)では,1975年からJST科学技術用語シソーラス,また2005年からは関連する大規模用語辞書の構築・改訂を進めてきたが,今回,合わせて約24.5万概念を含む両者を国際標準化団体W3Cが規定するResource Description Framework形式のLinked Dataに変換し,期間限定で公開した。本稿では,まずJSTシソーラスおよび大規模辞書の概要,およびLinked Data版の特徴や有用性について述べる。そして,さまざまなドメインオントロジーをつなぐハブとなるトップレベルオントロジーとしての位置付けについて考察し,オントロジー的観点から概念間の関係性の再整備を進めているライフサイエンスカテゴリーにおける取り組みを紹介する。最後に今後の取り組みとして自然言語処理技術による半自動的なシソーラス保守・整備作業の可能性について触れる。
著者
喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.705-711, 2013-01-01 (Released:2013-01-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

米国が2億ドルの研究開発投資をするとの発表以来,「ビッグデータ」なるITキーワードが急に取り上げられるようになった。本稿では,ビッグデータの背景について述べると同時に,情報爆発,情報大航海プロジェクトを振り返りながら,その本質について考察する。加えて,ITメディアを取り上げ,動画を用いつつ,ビッグデータの有用性について具体的に紹介する。さらに,ビジネスにおけるビッグデータとして,プローブカーのセンサー情報利活用,科学におけるビッグデータの動きとして第4の科学に触れ,最後に,データの利活用を促進するためのエコシステムの必要性について論ずる。