著者
加藤 斉史 土屋 江里 久保田 壮一 宮川 謹至
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.42-46, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
4
被引用文献数
4

JSTが中心となって現在開発中のジャパンリンクセンター(JaLC)は,国内の各機関が保有する電子的学術コンテンツ(雑誌論文,書籍,学位論文等)の書誌・所在情報を一元的に整備・管理し,国際的なデジタルオブジェクト識別子であるDOIの付与機能も備える日本の情報機関が共同で運営するシステムである。国内外の学術コンテンツとのリンクや引用・被引用情報を提供することで,日本の情報サービスの機能向上と学術情報の発信力強化に資するものである。ジャパンリンクセンターは,日本で発行される情報コンテンツにDOIを付与するため国際DOI財団(IDF)から9番目のDOI登録機関(RA)として認定を受ける予定である。
著者
卓 興鋼 吉田 佳督 大森 豊緑
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.254-266, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
43
被引用文献数
4 16

近年,わが国においてもエビデンスに基づく医療(EBM)の提供が求められており,その根拠となる学術論文のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの重要性は,ますます高まっている。システマティックレビュー報告は,疾病の診断および予後,予防対策などに広く活用されている。これまでいくつかの研究でシステマティックレビュー報告の質が評価された結果,報告の質は全体的に不十分であった。1996年,メタアナリシス報告の質を向上させるために,国際研究グループが「QUOROM(メタアナリシス報告の質)声明」という指針(guidance)を作成した。さらに,QUOROMの項目等について検討してきた運営委員会は,2009年6月,その改訂版を作成し,「PRISMA(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目)声明」と名づけた。このPRISMA声明では,システマティックレビューの概念および実践面におけるいくつかの発展が見られる。本稿では,著者らがこれまでシステマティックレビューおよびメタアナリシスを行ってきた経験を踏まえ,PRISMA声明の概要と展望について概説する。
著者
三輪 唆矢佳 安藤 聡子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.833-841, 2014-03-01 (Released:2014-03-01)
参考文献数
16

進化を続ける世界のサイエンスコミュニティーの中で,各大学が独自性を「見える化」し,内外からの評価を向上させるには,一貫したポリシーに基づく戦略が必要である。その戦略策定の各段階において,エビデンスデータの活用が必須となっている。本稿では,現在の日本の状況を概観するとともに,国内5大学(名古屋大学,東京大学,慶應義塾大学,山口大学,岡山大学)における実際の先進的な分析,活用事例を紹介する。さらに,研究分析に用いるエビデンスデータの中核の1つを成す,ビブリオメトリクスの可能性や名寄せについても言及する。
著者
赤倉 優蔵
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.166-175, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
18

「データからニュースを発見する」「データから発見したニュースをわかりやすく表現する」手段として,データジャーナリズムと呼ばれる,データを活用する報道手法が,日本をはじめ,世界各国の報道機関に急速に浸透している。データジャーナリズムの手法を取り入れた取材活動は,スクープを生み出し,政治や行政を動かす,あるいは社会に大きな影響を与えるなど,すでに大きな成果を上げ,さらにはニュースの概念をも変えている。本稿ではデータジャーナリズムについて概説したうえで,世界的な広がりをみせる背景とその影響について言及する。
著者
田中 政司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.172-180, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
被引用文献数
1

ジャパンナレッジは事典・辞書を中心に日本語コンテンツを検索・閲覧できるデータベースサービスである。サービス開始から15年が経過し,大学や公共図書館を中心に世界約800の機関で利用されるサービスに成長した。本稿では,ビジネス的な側面からみたサービスの取り組みと経緯を紹介しつつ,今後,サービスが目指す方向性について紹介する。
著者
佐藤 義則 小山 憲司 三根 慎二 倉田 敬子 逸村 宏 竹内 比呂也 土屋 俊
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.506-514, 2013-11-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
8

国内45機関の参加・協力の下,2011年10月から12月にかけ電子ジャーナルの利用に関するアンケート調査を実施し,広範囲の主題領域の研究者(教員,博士後期課程大学院生)から3,922の回答を得た。これらのデータを多方面から分析した結果,電子ジャーナルの利用がより広範囲にかつ深く浸透するようになっただけでなく,利用者の読書行動や意識(選好)も大きく変化していることが明らかとなった。また,電子ジャーナルの利用度の違いは国際文献と国内文献のいずれを主に利用しているかに密接に関係しており,印刷体と電子情報資源に対するそれぞれ別個のサービスモデルの維持を避けるためには,国内文献の電子化の遅れの解消が必要であることがあらためて確認された。
著者
太田 茂
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.226-231, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)

日本薬学会は1880年創立当初より学会論文誌を継続して刊行しており,現在は英文誌として『Chemical and Pharmaceutical Bulletin』と『Biological and Pharmaceutical Bulletin』の2誌と,和文が主である『薬学雑誌』を毎月発行している。これらの学会論文誌はいずれもJ-STAGEによりオープンアクセス誌として公開されている。また,2016年5月に試験的に公開された「J-STAGE評価版」に協力し,英文誌2誌をモデル誌として公開している。J-STAGE評価版は,スマートフォン等のモバイル端末での閲覧が可能となり,特に若い世代における閲覧の増加が期待できると考えている。
著者
松澤 孝明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.697-711, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

わが国における研究不正の低減に向けた検討に資するため,文献情報をもとに諸外国の国家研究公正システムの特徴を分析した。研究活動における公正さ(Research Integrity)を確保し,研究不正の低減を図っていく国全体としてのシステムのことを,本報では「国家研究公正システム(National Research Integrity System: NRIS)」と定義する。近年,NRISの比較研究は広く世界的な規模で行われている。そこでまず,先行研究におけるNRISの比較・分類の考え方を整理し,調査対象国のNRISの分類を行ったところ,米国をはじめとする「法的な調査権限を有する研究公正当局のある国」に分類される国は,全体としては少なかった。さらに主要国の研究不正の状況と研究開発やNRISの特徴の関係について俯瞰的な分析を行った。その結果,NRISの検討に当たっては,各国の研究不正の特徴や国情を踏まえ,さまざまな特徴あるシステムを検討していくことが重要であることが示唆された。
著者
小野 永貴 常川 真央
出版者
科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.185-197, 2010
被引用文献数
1

近年,図書館関係者の間で貸出履歴データを図書館サービスに活用していく議論が活発である。議論は図書館総合展など大規模なフォーラムにおいても注目されるようになり,実際に貸出履歴を活用した図書館システムを導入する例も出始めている。しかし一方で,貸出履歴の活用によって図書館の在り方そのものにどう影響を与えるかについての議論は少ない。本稿では貸出履歴についての議論や活動を解説したうえで,近年台頭しつつある新たな図書館サービスと合わせてWeb時代にあるべき図書館について検討した。その結果,筆者らは貸出履歴の活用方法の4類型を提示し,利用者コミュニティーの形成を重視した新たな図書館モデルを提示した。そのうえで,図書館の利用者コミュニティー形成を支援するために筆者らが開発したWebサービス「Shizuku2.0」について紹介し,今後の展望について記述した。
著者
安藤 俊幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.20-31, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

近年,企業における特許情報活用の重要性はますます高まっている。膨大な特許情報の中からエンドユーザーにとって必要な情報を迅速に抽出することが求められている。テキストマイニングツールと統計解析言語Rを用いて下記2種類の特許情報の可視化を検討した。(1)類似度による特許公報群の解析・可視化,(2)発明者,特徴語のネットワーク分析。商用特許データベースの検索集合に本手法を適用することで特許情報の分析・評価支援や戦略的特許情報活用に応用できる。
著者
池内 有為
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.673-682, 2015-12-01 (Released:2015-12-01)
参考文献数
30

分野や国境を超えた研究データ共有は世界規模で拡大しつつある。本稿は,まず先進事例として生物データの共有に関する総合的な取り組みについて概説したうえで,最近の注目すべき動向として,イノベーション創出に向けた異分野データの統合,および研究データ共有のインセンティブを確立するためのデータの業績化や引用に関する活動を紹介する。また,日本の研究機関によるデータの公開状況やリポジトリのプレゼンスについて,トムソン・ロイター社のData Citation Index(DCI)と世界のリポジトリのディレクトリであるre3data.orgを用いて調査した。日本の研究機関がかかわるデータは約6万2,000件で全体の4.3%を占めており,分野は生化学・分子生物学,遺伝学,分光学が多かった。re3data.orgに収録されているリポジトリは43件,うち認証リポジトリは10件であった。公開したデータの発見可能性を高め,さらなる活用を目指すためには,リポジトリの認証基準を満たすことや相互運用性の向上が重要だろう。
著者
大谷 卓史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.389-392, 2013-09-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
東 修作
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.140-147, 2013-06-01 (Released:2013-06-01)
被引用文献数
1 2

本稿では,OpenStreetMap Foundation Japanの事務局として,そのライセンスの切り替えに立ち会った筆者の経験をもとに,政府データを公開しようとするオープンガバメントの動きとも絡めて,オープンデータに設定すべきライセンスについて考察する。
著者
澤田 大祐
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.505-513, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
6

国立国会図書館は国立国会図書館法に基づいて設置され,国会議員に対するサービス(国会サービス)を第一義的任務としている。本稿では,国会サービスの中心を担う,調査及び立法考査局の役割と組織について概観し,次いでその業務の中心である「依頼調査」と「予測調査」について,業務の実態を交えながら述べる。また,調査業務をより実効的なものとするために行うさまざまな取り組みや,内部での研修,外部との連携協力などについても紹介する。
著者
南山 泰之 照井 健志 村山 泰啓 矢吹 裕伯 山地 一禎 金尾 政紀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.147-156, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
20

「データジャーナル」は従来の「出版」の枠組みを活用しながら,データの保存や再利用を促すために有効な手法と考えられているが,国際的にも概念形成の途上である。本稿では,国内におけるデータジャーナル構築,運用に向けた具体的な検討材料を提供するため,国内での実践例として2017年1月に創刊されたデータジャーナル『Polar Data Journal』を紹介する。具体的には,背景としての国立極地研究所におけるデータ公開の歴史,構想から創刊に至るまでの合意形成プロセス,「データジャーナル」を通じてデータを適切に取り扱うために必要な要件やワークフロー,およびそれらと連携する基盤構築について示す。
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.487-495, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
27

日本の漢字情報処理における難題のひとつに,異体字処理の問題がある。当用漢字表およびそれに続く常用漢字表が,固有名詞を埒(らち)外としてしまった結果,人名における漢字と,地名における漢字が,それぞれ異なる字体を持つに至った,という現実が,この問題をさらに複雑なものとしている。この問題を解決するには,Unicodeのような「漢字統合」を主眼とする文字コードでは力不足であり,むしろ日本国内向けに特化された文字コードが望ましい。本稿で紹介するAdobe-Japan1-6は,Adobe Systems社が日本向けに開発した文字コードだが,日本市場でのニーズ,特に異体字処理を,非常に強く意識した文字コードとなっている。