著者
鎌野 俊彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.570-574, 1985

膝関節疾患に多くの漢方医家に使用されてきた防已黄耆湯は, 漢の時代に作られた「金匱要略」という書物に記載されている漢方薬で, 主薬は防已と黄耆でその他に蒼朮, 大棗, 甘草, 生姜の6種類の生薬の組合せにより構成されている. 防已は, オオツヅラフジという植物のツル性の根茎から採取され, 薬効は消炎鎮痛利尿作用を有する. 黄耆は, マメ科の植物で防已と同じように水を逐う作用がある. 使用目標としては, 体表に水分代謝の異常のために下肢に浮腫があり関節が腫脹し痛みがある, 体質的にはやや虚弱で肥満の傾向があり色が白く筋肉の軟かく水太りの人, 多汗で利尿減少があり疲れやすく体が重い足が冷えるといった症状の人に用いる. かかる特性を有する防已黄耆湯を変形性膝関節症3例に使用し, 良好な臨床効果を認めたので, その臨床経過を詳細に記し, かかる漢方療法の今後の適応について考察した.
著者
白井 將文
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.335-342, 2002-12-12 (Released:2014-11-12)
参考文献数
14

わが国では更年期と言えば女性特有なものと言う考えが支配的であるが, 男性にも更年期は存在する. ただ女性の更年期に相当する年齢の男性に女性に見られるような症状があるかと言えば必ずしもそうではない. しかしその症状の程度には差こそあれ多くの男性に, 倦怠感・不眠・うつ傾向・集中力の低下・性欲の減退・勃起障害 (ED) などがみられる. 男性の精巣も女性の卵巣と同様加齢と共に機能低下, 即ち精子形成能の低下やホルモン分泌能の低下がみられるが女性と違い精子形成は続いているし, 男性ホルモン分泌の減少も緩やかで, しかもこれら変化は個人差が大きい. 従って出現する症状も女性程激しくなく, 個人差も大きい. この男性に見られる各種症状のうち男性にとって最も関心の高いのが性欲の減退とEDである. 加齢と共に勃起機能, 特に夜間勃起の減少が見られ, 年齢と共に男性ホルモンの欠乏に伴うEDも増加してくる. これら症例に男性ホルモン補充療法を行うと勃起力の回復だけでなく, 気力や体調の改善も見られる. しかし, 前立腺癌の存在を知らずに男性ホルモンを使用すると前立腺癌が発育してしまう危険があるので, ホルモン補充用法前には必ず前立腺癌の無いことを確認すると共にホルモン補充療法中も常に前立腺癌に対するチェックが必要である. また最近EDに対する経口治療薬のバイアグラ®が加齢に伴うEDにも使用され良好な成績が得られている. これらホルモン補充療法やバイアグラ投与で男性のみを元気にしても, ホルモン補充療法の普及していないわが国の女性の多くは性欲の減退や膣分泌液の減少に伴う性交痛などから性交を希望していないことが考えられ, 女性に対するホルモン補充療法や膣分泌液を補う目的のリューブゼリー®の使用なども考慮しながらEDを治療していく必要がある.

1 0 0 0 OA 麻ノ中毒實驗

著者
鈴木 肝一郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.M23, no.82, pp.469-473, 1890-05-30 (Released:2015-06-18)
被引用文献数
1
著者
佐藤 貢
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-18, 1959

The status of the primary group, predisposition (intelligence and character) and the view of life and world and the logics of the prostitute and non-prostitute Inmate in Women's Rehabilitations Home in Japan after World War II are studied.2. On the primary group it is found that its status is more or less similar to that of Geishagirl and "Waitress" rather thau "legal" prostitutes in prewar Japan.3. Intelligence of the Inmates in these Home on the average is more or less lower than the average intelligence grade of Japenese women of the same age groups. Also the intelligence is lower in the prostitute groups than in non prostitute groups.4. The proportion of the persons with abnormal character is greater in these Inmates than in the average Japanese women but no difference between these two Inmate-groups is found.5. The logics and the view of life and world of these women are not consistent and this tendency is stronger in the home, where the christian discipline is adopted.6. The results of these researches indicate the necessity of psychiatric examination of personality (including the grade of intelligence of Inmates) at the time of their entrance to Homes.
著者
箕輪 健太郎 森本 真司 高崎 芳成 玉山 容碩 戸叶 嘉明
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.268-273, 2010-06-30 (Released:2014-11-21)
参考文献数
19

目的: 長期間ステロイド薬を投与した全身性エリテマトーデス (SLE) 患者における副作用が, どの時期で発現しやすいかを投与開始年齢, 初回投与量との関連について検討するとともに, 副作用予防の観点から, ステロイド薬投与開始後に発現した生活習慣病と動脈硬化性疾患発症との関連についても検討した. 対象: 1987-1997年の間に当科へ入院し, 観察期間内でステロイド薬の増量を行わなかったアメリカリウマチ学会の診断基準を満たすSLE患者116例 (男性14例, 女性102例) を対象とした. 結果: ステロイド投与開始年齢との関連では脂質異常症, 大腿骨頭壊死の発現頻度が若年群で有意に高く, ステロイド薬の初回投与量との関連では脂質異常症と, 入院を要する感染症の発現頻度が高用量群で有意に高かった. さらに, ステロイド薬の副作用として発現した複数の生活習慣病を有する例では虚血性心疾患を発症する例が有意に多く認められた. 結論: SLE患者において長期ステロイド薬投与による副作用として発現する脂質異常症は, ステロイド投与開始年齢が若年で高用量の症例に多いため, このような症例では早期から脂質異常症に対する予防が必要と考えられた. またSLE患者においても, ステロイド薬投与による複数の生活習慣病因子を予防することが, 動脈硬化性疾患の発症予防に重要であることが示唆された.
著者
川崎 志保理
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.16-20, 2011

最近, 裁判外紛争解決 (Alternative Dispute Resolution;ADR) という言葉を耳にするようになってきています. これは, 医療機関側が紛争解決に向けて行う方策の一つと理解してもらうとわかりやすいと思います.ADR (Alternative Dispute Resolution) は文字通り裁判以外の紛争解決手段の総称であり, 通常は「第三者機関による紛争解決制度」を意味します. 多くの施設では「院内ADR」とか「院内メディエーション」という言葉を使用しています.ADRを行うにあたりまして, 必要なことは第三者的に医療機関側と患者側の間に立って双方の言い分をコントロールする人の存在です.問題は, このようなことをわざわざ第三者としてのADRに依頼しなければならない場合が存在するのはどうしてなのだろうかということにあります. これはADRを要する場合のほとんどが, 患者側の医療機関側への不信感によって生じていることが多いからです.患者クレームに対する初期対応としては, 接遇・マナーを遵守した誠意のある説明を行うことにより, 紛争を未然に予防しながら解決が可能と思われます. 逆に初期対応の失敗により, 感情的対立姿勢が患者側に生じてしまった場合には, 当事者同士での紛争解決は困難であり, ADRを介入しての説明が, 法的手段への訴えを予防できる唯一の手段であるといっても過言ではないと思います.
著者
T K
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.33, no.315, pp.131-133, 1900
著者
唖佛生
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.33, no.316, pp.184-185, 1900

1 0 0 0 図南の翼

著者
有山 登
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.140-141, 1969
著者
関根 美和 馬場 理 片山 由紀 平松 啓一
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.232-242, 2011-06-30 (Released:2014-11-11)
参考文献数
21

黄色ブドウ球菌の全ゲノム解読は, 同菌のほ乳類主要組織適合遺伝子複合体: Major histocompatibility complex (MHC) 様分子をコードする遺伝子を4つ見い出した. この遺伝子産物 (MHC1-4) はヒト免疫機構に何らかの影響を及ぼしているものと考えられ, MHC3 (extracellular adherence protein: Eap) についてはフィブロネクチンやフィブリノーゲン等血漿タンパクと黄色ブドウ球菌表面の接着に関与することや, 血管内皮細胞上に存在するInter-Cellular Adhesion Molecule-1 (ICAM-1) に結合し, 好中球の遊走を抑制することがよく知られているが, ほかのMHC様分子も含め, それらの生理的機能には不明な点が多い. 本研究ではMHC1-4の生理的機能を網羅的に追求すべく, 市中感染強毒型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (community-acquired MRSA: CA-MRSA) であるMW2株から, 4つのMHC様分子の遺伝子それぞれの単一-4重遺伝子欠損変異株を作成した. この変異株を用い, 野生株と対比してヒト血球細胞に対する応答性を調べ, さらにマウスに対する感染実験を行った. その結果, MHC1はリンパ球分化増殖および炎症性サイトカイン産生を促進し, また, MHC3はリンパ球分化増殖を抑制し, 樹状細胞上のHLAおよび補助刺激因子であるCD86の発現, およびINF-γ産生を抑制していることが明らかになった. また, 野生株と比較して, 1-4をすべて欠損した株は3倍以上貪食されやすく, ほかの単一欠損株に比べても2倍近く貪食をされやすかった. 一方で好中球による殺菌活性に差はみられなかった. これらの結果から, MHC様分子は貪食からの回避に関与するのに加え, 宿主の獲得免疫系の応答にも影響を与えていることが明らかとなった.
著者
横井 尚子 石川 正治 加納 章子 芳川 洋 市川 銀一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.185-193, 2003-07-31
参考文献数
9

目的:音響外傷による急性感音難聴の薬物治療には,ビタミン剤・循環改善剤等とともに,ステロイドホルモンの投与が多く行われており,特にステロイドホルモンで高い臨床効果が得られている.ステロイドホルモンは鼓室内投与によって内耳障害に治療効果を示すと報告されている.そこでわれわれは急性音響外傷モデルを作成し,デキサメタゾンの鼓室内投与の効果を聴性脳幹反応(以下ABR)および蝸牛神経複合電位(以下CAP)を指標に検討した.対象:鼓膜正常,プライエル反射正常のハートレー系モルモット(体重約400g) 方法:全身麻酔の後,局所麻酔下に気管切開し,筋弛緩剤を投与し人工呼吸管理下においた.両側の中耳骨胞を開放し,鼓室内に銀ボール電極を設置した.音響負荷としては,耳介側方3cmの位置より105dBSPL,4kHz純音を30分間与えた.音響負荷後同一個体の一側の鼓室内にデキサメタゾンを,対照として反対側の鼓室内に生理食塩水を鼓室内に充満するよう投与した.10分後薬液を除去した.音響負荷前,負荷直後,薬剤投与直後,音響負荷1時間後・2時間後のABRのI波潜時,蝸牛神経複合電位(CAP)のN1の潜時・振幅・閾値について検討した.結果:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.しかし各個体毎に検討するとABRのI波・CAP潜時の改善がより多く認められ,ステロイドの効果が示唆された.結論:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.
著者
高橋 康造 佐渡 一成
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.56-65, 2002-07-10
参考文献数
13

目的:老視に対するコンタクトレンズ(CL)として多数の累進多焦点(遠近両用)コンタクトレンズ(以下BFCL)が存在する.それぞれのBFCLに対し視機能検査を行い比較検討した.対象:順天堂大学医学部付属医院コンタクトレンズ科において老視対策としてBFCLを処方した120例(224眼),(男性17例女性103例・平均年齢51.7±8.5歳<40〜64歳>).方法:視機能検査として遠見・近見視力,コントラスト感度およびBFCL装用者による装用状況またその満足度を聴取し検討した.結果:BFCL全体の平均では遠見視力0.93±0.07近見視力0.78±0.15と良好であった.処方変更回数は1.46±0.45回.コントラスト感度は,中間周波数領域および高周波数領域での低下をどのBFCLにおいても認めた.視力は遠方・近方ともに比較的良好であった.結論:現状のBFCLは十分に日常生活に有用なレベルに達していると思われた.しかし,コントラスト感度の低下は否めなく,いわゆる鮮明さは単焦点CLあるいは眼鏡に比較し劣る.現在のところハード系BFCLではコントラスト感度の点では交代視型の方が有用な視機能が得られ,ソフト系BFCLは,照準線共軸型同時視型ソフトコンタクトレンズが良好な視機能を得られるようである.
著者
中村 洋
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.372-376, 2008-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
20

中高年にみられる関節痛のもっとも多い原因が変形性関節症osteoarthritis (OA) である. 保存的治療として, 安静, 保温, 運動療法に加えて, 薬物治療が行われる. アセトアミノフェンは容易に購入できる鎮痛薬で, 本邦では一日1.5gまで使われる. 痛みが強い場合は非ステロイド性消炎鎮痛薬nonsteroidal anti-inflammatory drug (NSAID) であるインドメタシン, ジクロフェナック, ロキソプロフェンといった薬を使用するが, 上部消化管障害などの副作用に注意が必要である. これらの薬剤はシクロオキシゲナーゼcyclooxigenase (COX) を抑えることによって, 痛みや炎症の原因となるプロスタグランディンE2 (PGE2) の産生を抑制して効果を発揮する. 近年, 胃腸障害を軽減するため, COX-2選択的阻害薬が使われるようになってきた. 関節内へ薬剤を直接注入する治療法も医療機関では行われている. ステロイド剤は即効性があり, 効果も劇的であるが, 副作用を避けるため頻回に用いないほうがよい. ヒアルロン酸はその物理的性質と抗炎症作用により, OAの症状を軽減するとされている. 副作用が少なく, 定期的に注入して効果をあげている. 現在販売されているサプリメントにはさまざまな種類があるが, グルコサミンはその作用が科学的に議論されている唯一の物質である. グルコサミンのOA治療への歴史は1960年代のドイツにさかのぼる. その後, 1990年代後半から北アメリカで大ブームを巻き起こし, いくつもの臨床治験が行われた. 有効性を示す研究結果があるが, 否定的な意見もある. 一方, グルコサミンの基礎的研究は盛んに行われており, 抗炎症作用, 軟骨分解酵素の抑制作用が明らかにされ, OAの症状を軽減するだけでなく, 進行を抑制する可能性が強く示唆されている.
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.53_E1, 2007-12-22 (Released:2015-04-16)

「順天堂医学」52巻1号(2006年)2-10ページに掲載された,「田中亮太:神経幹細胞を用いた脳梗塞治療の可能性」について以下のように公告いたします. 1.海外の共同研究者から,未発表の図表を含む論文を共同研究者の承諾なしに単著として発表した,という指摘があり,著者もこれを認め論文の取り下げを了解した. 2.したがって,遡って掲載を取り消すこととし,インターネット上の検索システムからの削除作業を行い,手続きを終了した. 3.それにともない,読者諸氏には印刷版から上記論文の削除をお願いいたします.
著者
田中 亮太
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.2-10, 2006-03-31 (Released:2014-11-12)
参考文献数
25

「順天堂医学」52巻1号(2006年)2-10ページに掲載された,「田中亮太:神経幹細胞を用いた脳梗塞治療の可能性」について以下のように公告いたします. 1.海外の共同研究者から,未発表の図表を含む論文を共同研究者の承諾なしに単著として発表した,という指摘があり,著者もこれを認め論文の取り下げを了解した. 2.したがって,遡って掲載を取り消すこととし,インターネット上の検索システムからの削除作業を行い,手続きを終了した. 3.それにともない,読者諸氏には印刷版から上記論文の削除をお願いいたします.
著者
大塚 親哉
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.241-247, 1971-07-10 (Released:2014-11-22)
参考文献数
17
著者
森近 浩
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, 2002-03-22
著者
川南 勝彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.484-494, 2003

目的: 〈難病患者に共通の主観的quality of life尺度 (主観的QOL尺度) 〉の開発時に課題となった点について検討し, さらに, Short Form 36 Health Survey (SF-36) を使用して主観的QOL尺度の基準関連妥当性を検討した.対象: 全国の保健所のうち, 本研究に調査協力可能であった30保健所管内における新規, 継続特定疾患医療受給者2,060人とした.方法: 特定疾患治療研究事業医療受給申請書, 臨床調査個人票, 主観的QOL尺度, SF-36を対象者に対して調査し, 内的構造の確認, SF-36各サブスケール得点との相関関係等を検討した.結果: 1) 有効回答者数1,563人 (対象者2,060人のうち, 調査協力に同意しなかったあるいは回答拒否者497人), 有効回答率75.9%であった.2) 因子構造として病気に対する《受容》と《志気》の2因子の構造 (2因子で初期の固有値1.0以上, 累積寄与率70%以上) で, 開発時の因子構造との変化は認められなかった.3) 信頼性・内的整合性が高く (α係数=0.85), 主観的QOL尺度の得点分布において正規分布に近い分布を示した.4) 重症度・病状との関連性については有意な関連性は認められなかった.5) SF-36サブスケールのうち, 〈心の健康〉〈活力〉〈全体的な健康観〉で中程度以上 (r≧0.5) の有意な相関関係が認められた.結論: 開発時の課題点を考慮して, 調査対象として難治性皮膚疾患, 特発性拡張型心筋症などの疾患を加えADLの低い対象者を含め, 各疾患の機能水準を評価するために重症度・病状を調査内容として加えて, 主観的QOL尺度の妥当性を検討した結果, 内的妥当性が得られ, 各疾患の重症度や病状に影響されることのない尺度であることが確認された. SF-36との関連性より基準関連妥当性のある尺度であることも確認された.
著者
飯島 恵
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.501-508, 2005-12-30
参考文献数
7

ADHDやアスペルガー障害に代表される軽度発達障害における関心は医療関係者と教育現場で近年高まってきている.軽度発達障害の子供たちの一番の問題点は知的に明らかな遅れがないためさまざまな困難を抱えているにもかかわらず障害に気づかれない点である.軽度発達障害の子供たちへの早期介入は,二次的に併発する情緒や行動面での問題を予防する上でも非常に重要である.そしてこのような子供が通常学級に在籍しながら,それぞれ個人にあった,個別の教育がうけられるようにするための特別教育支援が文部省によりたちあげられている.教育・医療にかかわるさまざまな職種・機関が協力して早急に軽度発達障害の子供たちの支援体制を確立する必要がある.
著者
伊藤 匡
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.71-83, 1992-06-01 (Released:2014-11-18)
参考文献数
28

心因反応を生じた境界知能および軽度精神遅滞者46名を対象に, その男女差・学歴・臨床経過・心理検査の面から検討した. 対象は昭和59年4月1日から平成2年12月31日までの期間に, 順天堂大学医学部附属順天堂医院と順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院の入院患者34例と外来患者12例である. その結果1) 男女比は女性が多かった. 2) 平均初発年齢は男女ともに21歳台であったが, 初発年齢と知能間に有意な相関はなかった. 3) WAISの下位検査で単語問題が算数問題を除き, 他の下位検査と比べ有意に低かった. 4) 学歴と知能では, 高校卒業以上の群は中学校卒業までの群に比べ有意に知能が高かった. 5) 心因は対人葛藤・学業不振・身体疾患と事故が多かった. 6) 状態像は短絡行動, 心気・不安状態, ヒステリー状態, 妄想状態の順であった. 心気・不安状態の方がヒステリーに比べ知能が有意に高かった. 7) 予後と知能間には有意な相関はなかった. 8) 心因反応の成立には社会環境要因が大きく関係していることが考えられた. また知的制限が大きいほど, より未熟な状態像を呈しやすいこと, 抑うつ状態が持続せず各状態像間の移行が頻繁に認められることが判明した.