- 著者
-
高山 充代
- 出版者
- 順天堂医学会
- 雑誌
- 順天堂医学 (ISSN:00226769)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.339-344, 2009
私は, 去年の8月に順天堂浦安病院で乳がんと診断され, 乳房温存手術を受けました. 現在手術から9ヵ月が過ぎたところで, 治療はまだ継続中です.我が家では父親が50代で直腸がんで亡くなっているので, ゆくゆくは自分もがんになるかもしれないという危惧を以前から抱いてはいましたが, それはまだ先のこと, まさかこの年齢で, しかも, 乳がんになるとは, 思ってもみませんでした.それでも, 乳がんは早期であれば怖くないといわれているので, 手術さえうまくいけば, すぐに元の生活が送れるようになる, と私は思い込んでいました. ところが, 治療は手術だけではありませんでした. 手術の後に, 想定していなかった, 長くて大変な治療が待っていたのです.ホルモン療法と放射線療法, 2つの術後の治療を受けるうちに, 副作用とみなされる様々な心身の変調が出てきて, 私はずいぶん戸惑いました. そのなかで, 乳がんになってしまったというショック, 喪失感, 孤独感は強くなり, 自分ひとりが貧乏くじをひいてしまったような, みじめでやり切れない思いにとらわれて, そこから抜け出せない自分を自覚するようになりました.「このままでは自分がダメになってしまう, 何とかしなくてはいけない」と, 乳がんになったことで生じたこころの痛みを緩和する手立てをめぐり, あれこれ試行錯誤をくり返しました.その結果, 次の3つのことを日々の生活の中で実践するようになっています.1. 喪失した女性性の復権2. 自然とのふれあい-散歩の価値の再発見-3. 今を楽しむ-日常の生活習慣を変える-今もまだ模索の途中で, とても十分とはいえない内容ですが, 今回の都民公開講座では, この3つを『私流・こころのセルフ緩和ケア3ヵ条』と仮題して, お話しさせていただきました.