著者
渡邉 悟 沖 大幹 太田 猛彦
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.119-132, 2009

地球表面にある水の97.5%は塩水で、2.5%が淡水である。しかしこの大半が地下水や北極や南極に氷河・氷床として存在し、私たちが身近に使える川や湖の水は全体のわずか0.01%である。UNESCOが発表した「World Water Resources at the Beginning of the 21st Century、2003」によると、1995年(平成7年)における世界の水使用量は約3,750km3/年となっている。また、水使用量の伸びをみると、1995年(平成7年)の水使用量は1950年(昭和25年)の約2.74倍となっており、同期間における人口の伸び約2.25倍より高くなっている。特に生活用水の使用量の伸びは約6.76倍と急増していると報告されている。このような中で、様々な水に関する問題を解決するため、2009年3月には、第5回世界水フォーラムがトルコにおいて開催されたところである。我が国は世界有数の木材輸入国であることから、このような水に関する問題の一環として、木材輸入との関連について理解を深めるため、先に報告されている農産物に関する仮想水(バーチャルウォーター)(以下「バーチャルウォーター」という。)の研究事例を参考として、木材輸入に伴うバーチャルウォーターを算定したので報告する。
著者
寺田 和弘
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.122-128, 2016

大阪府は森林面積5万6千ha,林野率は31%と,いずれも全国で最下位となっている。大阪平野部を取り囲むように位置する山地は現在では豊かな森林に覆われているが,かつては,府民や都市部の生活を支えるため,森林の木々が農耕用や薪,柴,炭などの燃料として利用され,過剰に伐採された結果,木のない荒廃した山が広くみられた。大阪府南部の泉南地域(現在の泉南市・阪南市・岬町)は,かつて荒廃した,はげ山が広範囲に存在した。こうした山々では表土が流出していたため,森林の自然回復が望めず,大雨が降ると崩壊や土砂流出が度々発生していた。また,崩壊により谷に溜まった土砂は度々,土石流となって渓流を下り,道路の損壊や,集落や田畑に土砂が流れ込むなどの被害を引き起こした。こうした災害を防ぐため,この地域では昭和の初期から治山事業による森林基盤の造成事業が続けられてきた。当時の作業は,人力によるもので,ツルハシ等で斜面に階段切付を行い,石筋工等を設置し,その段上にマツ等の苗木を植える植栽工,崩れた斜面を安定させる山腹工,渓流に堆積した土砂を固定する小規模な治山堰堤が主な工種となっていた。このような対策がとられてきたが,森林機能が完全に回復する状況には至らなかった。そのような状況の中,昭和27年7月11日未明,阪南市の山間部にある鳥取池が決壊する大規模な災害が発生した。府では,この鳥取池の災害の翌年の昭和28年度から治山事業による本格的なはげ山復旧に着手した。はげ山復旧事業は昭和38年度までの11年間にわたり実施され,積苗工・石筋工による筋工18万8千m等により山腹からの土砂の流出を抑えるとともに植栽261haが実施された。また,谷部には玉石コンクリート等の治山ダム45基を設置して,谷に堆積した土砂を固定するとともに,山脚を固定した。事業実施から50年の歳月が流れ,泉南地域で裸地化した山は見られなり,現在では,広葉樹を主体とした豊かな森林が広がっている。はげ山復旧事業以降も,荒廃した渓流には治山ダム等が設置され,泉南地域では近年,大規模な災害は発生していない。今回の「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~60選」の候補地選定にあたり,大阪府庁に断片的に残されていた過去の災害や治山事業等の記録を調べると,過去の災害の履歴や,治山事業の実施状況,山地における森林の変遷から,治山事業による森林造成事業は,山地災害防止をはじめとする森林の持つ公益的機能の向上に大きな役割を果たしてきたことが見て取れる。これらの成果は,特別な取り組みからではなく,治山技術者が日々取り組んでいる通常の治山事業の積み重ねから生まれたものである。治山事業の資料は通常,保存期間が過ぎると破棄され消滅することとなるが,治山事業を実施するだけでなく,その記録を整理し残すことで後世に現在の治山事業の果たしている役割を伝えられるよう取り組んでいくことが重要と考える。
著者
森 文一
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.44-52, 1959 (Released:2016-05-23)
著者
菊谷 昭雄
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.24-56, 1982-12-01 (Released:2020-02-16)
参考文献数
19
著者
菅原 正巳
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.92, pp.47-59, 1973 (Released:2011-03-05)
著者
土屋 信行
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
no.330, pp.57-72, 2013-04

治水対策は国が国民に対して備えなければならない必須の最重要施策である。これは国の責任において国民の命と資産を守る安全保障と捉えるべきである。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告によれば,気候システムの温暖化には疑う余地がなく,大気や海洋の全球平均温度の上昇,雪氷の広範囲にわたる融解,世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。このことにより干ばつ,熱波,洪水など極端な気象現象のリスクの増加,水災害の危険性も増大している。台風の大型化,降雨強度の増大などによりこれまで100~200年確率を目指してきた河川でも実際には既に,治水安全度は著しく減じていると言える。さらに,地球温暖化というさらなるリスクの増大を捉えたとき,これまでの計画高水流量という指標に対し行ってきた水災害対策を,超過洪水をも視野に入れて検討する事が求められている。このような状況から超過洪水はもはや起こることが確実であり,これに備えることは予断を許さないところまで来ていると考える。首都圏のように中枢機能が集積している地域では,国家機能の麻療を回避するため,被害の最小化を目指すことが必要である。
著者
松浦 茂樹
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.158, pp.9-27, 1984 (Released:2011-03-05)