著者
友国 雅章
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.153-161, 1985

The heteropterous fauna of the Oki Islands lying far-off the Shimane Peninsula, western Honshu, Japan, has been poorly known up to the present. Eighty-six species of Heteroptera from there are listed in the present paper. Of these, 38 are newly recorded from the Islands based on the materials collected by the author's research made in 1984. These 86 species excepting Orius sp. are classified into the following five groups according to the difference in their distributional patterns as shown in the author's papers (TOMOKUNI, 1979,1981). Group 1 contains 18 species of the Oriental origin such as Macroscytus subaeneus. Scotinophara lurida, Nezara antennata, Plautia crossota stali, Leptocorisa chinensis and so on. Of these, Gardena melinarthrum is the most typical species of this group. As far as the author knows, this rare reduviid has been known only from Kyushu in Japan. Group 2 is predominant in the heteropterous fauna of the Islands. It consists of 36 species, that is Megacopta punctatissima, Poecilocoris lewisi, Halyomorpha mista, Homoeocerus unipunctatus, Piocoris varius and so on, distributed within the southern area of the Palearctic Region. Group 3 includes 24 species, whose ranges are limited within the northern part of the Palearctic Region, such as Legnotus triguttulus, Graphosoma rubrolineatum, Dybowskyia reticulata, Carbula humerigera and so no. One of the representatives of this group is Saldula scotica which dwells on the surfaces of large dry stones exposed in mountain streams. The heteropterous fauna of the Islands is comparatively rich in this group considering their low elevation. This seems to be attributed to the richness of vegetation. The 6 species, Nysius plebejus, Acalypta sauteri, Stephanitis takeyai, Amphiareus obscuriceps, Lygocoris (Apolygus) nigritulus and Gerris (Gerris) yasumatsui, are discriminated from the others as Group 4. Though they are endemic to Japan, all of them seem to be of Palearctic origin. Group 5 includes only one widespread species, Zicrona caerulea. The heteropterous fauna of the Oki Islands is rather poor, and most of the known species are common and widely distributed in the other areas of Japan. The following two reasons can be pointed out for this : 1) The area of the Islands is small (348 km^2), 2) The Islands were covered by volcanic products from the end of the Tertiary to the beginning of the Quaternary, though they were isolated on the Sea of Japan at the middle of the Miocene. It is, however, worth noticing that two apterous species, Acalypta sauteri and Schidium marcidum, are distributed on the Islands. The problem when and how the ancestors of these species immigrated in the Islands should be carefully elucidated on the basis of more adequate data than are now at hand.
著者
根田 仁 土居 祥兌
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.89-95, 1998
被引用文献数
1
著者
門田 裕一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.77-90, 1984

東北地方のトリカブト属トリカブト亜属植物(キンポウゲ科)は4種2亜種から成ることが明らかになった。これらは, 垂直分布の点で高山性と低山性に, 水平分布の点で日本海型と太平洋型に, 染色体数の点では2倍種(2n=16)と4倍種 (2n=32) に区分される。 1. オンタケブシ Aconitum meta-japonicum NAKAI 2n=16(Fig.5-A)。 飯豊山地梶川峰(山形県)の山地帯においてのみ発見されている (Fig.4)。 これまで「オンタケブシ」と呼ばれていたものは, このオンタケブシそのものとウゼントリカブト及びセンウズモドキを含むことが明らかになった。その結果本種の分布上, 飯豊山地は基準産地の木曽御岳に次ぐ第2の産地となる。 上記の3種類は形態的特徴, 分布域そして染色体数によって明瞭に区別される。オンタケブシは, 概形が円く5-7-浅・中裂する葉をつけ, 花梗に滑面開出毛が生え, 枝が斜上して伸長し, 円筒状で短い嘴をもつ上萼片をつけることなどで特徴付けられる (Fig.2-A)。本種は2倍種で, 著しい隔離分布を示し, 形態的形質の変異性が低いことから, 遺存的な種と推定される。 2. ウゼントリカブト Aconitum okuyamae NAKAI 2n=32(Fig.5-C)。 山形・福島・秋田・宮城・岩手・東京の各都県に分布する (Fig.4) が, 奥羽山脈南部の山地帯(とくに山形県側)に多く見られる。本種は上述のように, これまで「オンタケブシ」とされていたものの一部である。オンタケブシによく似ているが, 本種は分枝した枝があまり伸長せず, 花梗が花と等長かより短く, そしてそのために花序に花がより密集すること, 上萼片がより浅い円錐形で, 花弁(密腺)の距が短く屈曲する点で区別される (Fig.2-D)。 福島県・谷地平と山形県・奥山寺では本種とオクトリカブトとの同所的生育が確認された。とりわけ奥山寺では, この2種とともに両者の自然交雑の結果生み出されたと推定される多数の中間形が発見されている。 3. シヤマトリカブト Aconitum nipponicum NAKAI 2n=32(Fig.5-D)。 本州日本海側山地に分布する高山性種で, 石川県・白山と山形県・月山がそれぞれ南限と北限である(Fig.3)。東北地方の高山性種は本種のみであり, 鳥海山以北の出羽山地, 白神山地, 奥羽山脈, 北上高地には高山性種は見出されていない。本種の現在の分布の中心は, その個体数の豊富さから, 飯豊山地にあるといえる。飯豊山地の東方約40km に位置し, その主稜線の延長上にある吾妻連峰では本種が全くみられないのは興味深い。 シヤマトリカブトはこれまで「ハクサントリカブト」と呼ばれていたものの大部分にあたる。ハクサントリカブトのタイプ標本(本文参照)はミヤマトリカブトと未記載のトリカブトとの自然交雑に由来する個体と推定された。実際に白山ではこれらの3種類が同所的に生育している。白山における自然交雑の実態については改めて詳述する予定である。 4. オクトリカブト Aconitum subcuneatum NAKAI 2n=32 (Fig.5-B)。 東北地方の内陸地域から日本海側地域にかけての低山に最も普通に生育するトリカブトで (Fig.4), 概形が円く5-7-浅・中裂する葉, 粗面屈毛が密生する花梗, 背の高い三角錐状〜僧帽状の上萼片をもつことなどで特徴付けられる (Fig.2-C)。 奥羽山脈北部の秋田駒ケ岳では本種の高山帯における生育が認められている。この山岳では, 低山性のオクトリカブトが高山帯へと垂直方向に分布域を拡大したものと考えられる。オクトリカブトの学名としては従来 A.japonicum THUNB. が用いられることが多かった。しかし A.japonicum THUNB. のタイプ標本はいわゆるヤマトリカブトとみなすのが最も適当であるので, オクトリカブトの学名は上記のように A.subcunetuam NAKAI となる。 5. ヤンウズモドキ Aconitum jaluense KOM. subsp. iwatekense(NAKAI) KADOTA 2n=32(Fig.5-E)。 前述のように本亜種もオンタケブシと混同されてきたものであるが, 葉は概形が五角形状で三全裂あるいは三深裂する点などで明瞭に区別される (Fig.1; Fig.2)。 東北地方では岩手・宮城・福島各県の太平洋側沿海地域に生育し, 北限は岩手県・種市である。分布状況と形態的形質の変異性が低いことから, センウズモドキは遺存的な分類群とみなされている。 6. ツクバトリカブト Aconitum japonicum THUNB. subsp. maritimum (KAKAI ex TAMURA & NAMBA) KADOTA 2n=32(Fig.5-F)。 東北地方では岩手・福島両県の太平洋沿岸地域に普通に生えるが, とくに北上高地に多い。本亜種の分布域は上記センウズモドキのそれに似るが, 温帯落葉広葉樹林の林縁や林内から草原までのさまざまな生育地に生え, したがって形態的形態的形質の変異性がより高く, かつ個体数がより多い。
著者
森本 義信
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.135-143, 1974

今回の調査で, 沖繩本島と石垣島からはじめてムカシエビ類が見つかった。沖繩本島産のオナガムカシエビ属の1種は, 奄美大島のアマミオナガムカシエビParabathynella gracillima insularisと同一であり, 石垣島のカワリムカシエビ属Allobathynellaの1種は, 幼体であったので種の決定ができなかった。沖繩本島産のムカシエビ属の1種には, オキナワムカシエビBathynella okinawanaという新名を与えてこの論文に記載した。今回の分をあわせて, 琉球全体のムカシエビ類を総括すると, ほぼ次のようになる。オオシマムカシエビBathynella oshimensisとアマミカワリムカシエビAllobathynell giganteaとは, どちらも奄美大島と徳之島とに分布し, アマミオナガムカシエビは, 前述のとおり奄美大島と沖繩本島から同じ種がとれている。また, オキナワムカシエビは, 四国南西部のヤノムカシエビBathynella yanoiに近い種であって, いずれの場合にも中部琉球と日木のものとの関連性がみられる。しかし, 石垣島産のカワリムカシエビ属の1種は, 中部琉球や日本のものと似ていないので, 中部琉球と石垣島とのあいだで, ムカシエビ類の分布に断絶があるのではないかと思われる。