著者
久居 宣夫 矢野 亮 久保田 繁男
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.137-159, 2006

Forty-seven species of butterflies in 8 families were collected in the garden of the Imperial Palace, Tokyo from 2000 to 2005. They are 8 species of Papilionidae, 5 species of Pieridae, 12 species of Lycaenidae, 1 species of Libytheidae, 1 species of Danaidae, 10 species of Nymphalidae, 6 species of Satyridae and 4 species of Hesperiidae, and their seasonal and annual occurrence in the garden of the Imperial Palace are recorded. All the collection data are given in the list, in which some noteworty butterflies are commented. Many endangered butterflies in urban area of Tokyo are still survived in the garden of the Imperial Palace, that is, Atrophaneura alcinous alcinous and Papilio maackii, Papilionidae, Anthocharis scolymus, Pieridae, Narathura japonica japonica, Japonica lutea lutea, Japonica saepestriata, Antigius attilia attilia and Rapala arata, Lycaenidae, Sasakia charonda charonda, Nymphalidae, Lethe diana, Satyridae, and so on. A total of the records of our investigation from 1996-1999 (Hisai et al., 2000) and this survey, is 48 species. The butterfly fauna of the Imperial Palace is rich and very similar to such larger green tracts as the Institute for Nature Study (Hisai et al., 2001) and the Akasaka Imperial Gardens (Owada et al., 2005), central Tokyo.
著者
田中 正明 武田 正倫 永野 真理子
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.419-439, 2006

The micro-organisms in 35 samples obtained from inside moats of the Imperial Palace of Japan in Tokyo during the years 2000-2004 were studied, and only the additional species unrecorded in the previous survey during the years 1996-1999 are enumerated. They are 49 species of 35 genera, viz. 10 species of 8 genera in the Protozoa (8 species of Rhizopoda, and 2 species of Chiliatea), 22 species (including variety and forma) of 12 genera in the Rotatoria, 1 species of the Gastrotricha, 1 species of the Nematoda, 15 species of 13 genera in the Arthropoda (13 species of Crustacea, and 2 species of Insecta). In 20 samples obtained in the previous survey, 81 species of 40 genera were recorded (Tanaka & Takeda, 2000), although the nematod worms and insect larvae were not examined. As a result, at present, the micro-organisms are known by a total of 130 species of 63 genera from four inside moats, Kami-dokan-bori, Naka-dokan-bori, Shimo-dokan-bori and Hasuike-bori, and from a small pond, Hisago-ike. Comparing the limnological fauna of the inside moats of the Imperial Palace of Japan with that of some ponds in the Akasaka Imperial Gardens in Tokyo recorded by Tanaka et al. (2005), it is definitely said that the inside moats of the Imperial Palace of Japan are still kept in good condition due to its large scale, though the Imperial Palace of Japan is surrounded by artificial buildings in Metropolitan Tokyo.
著者
中村 修美
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.497-504, 2000
被引用文献数
1
著者
生塩 正義
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-"98-2", 1976

西南日本に分布することが確認されたトリハダゴケ属地衣2種, Pertusaria haematommoides ZAHLBR. と P. nagasakensis NYL. について報告した。どちらも, 1点の資料にもとづく原報告があるのみで, これまでその実態が不明確であった種である。Pertusaria haematommoidel ZAHLBR. は, 1933年に A. ZAHLBRUCKNER が朝比奈博士採集の台湾蓮花池 (Lienhuach) 産の資料に基づいて記載した種である。今回, 本種が日本(沖縄本島, 徳之島, 種ケ島)に分布していることが確認された。いずれも樹皮に着生していた。低く小さいレカノラ型の子器を多産する灰白色の明るい地衣体と未知の地衣成分(C+赤色)を含むことから, P.velata (TURN.) NYL. や P. philippina VAIN. と混同されやすい種であるが, 1胞子性の P. velata とは, 皮層を失った薄い托線を有する小さい子器とより小さい長楕円形の2重膜胞子(40-60×125-200μ)によって, また, P. philippina とは, 後者が2胞子性の種であることによって区別される。Pertusaria nagasakensis VAIN. は, E.ALMQUIST の採集品に基づいて W.NYLANDER が記載した種である。顆粒を散在する灰色の粗雑な地衣体, 数個の子器を容れる大きく不整な瘤状隆起(径5mm, 高さ3mmにも達する)とその上部のくぼみに数個開く点状の暗い子器孔, そして子のう内に一列に並ぶ有筋紋2重膜の8胞子 (35-45×70-110μ) が本種の特徴である。加えて, K, C, KCおよび PD による呈色反応がすべて陰性であること, そしてまた, リケキサントンを含むことによって, 日本産の他のトリハダゴケ属地衣と区別される。
著者
重井 陸夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.195-201, 1982

伊豆半島東岸浅海域の海胆相について, 次の諸調査を総合して取りまとめた。(1) 著者とその補助者が1971年4月, 1981年2月, 1981年10月に爪木崎, 須崎, 鍋田湾, 城ケ崎海岸において行なった潜水・磯採集を中心とする調査。 (2) 国立科学博物館が1981年10月に日本列島の自然史科学的総合研究の一環として, 筑波大学下田臨海実験センターの調査船「つくば」によって行なった下田沖ドレッジ調査の一部 (St. 3∿6,St. 9). (3) 生物学御研究所所蔵の標本で1972年6月から1975年6月にかけ, 天皇陛下が下田湾, 田の浦, 西島, 爪木崎など15地点から18回にわたって御採集になったものについての分類・分布学的調査。 得られた種は次の28種で, 5目14科に分類された。 Asthenosoma ijimai, Diadema savignyi, Diadema setosum, Temnopleurus toreumaticus, Temnopleurus reevesii, Mespilia globulus levituberculatus, Temnotrema sculptum, Toxopneustes pileolus, Tripneustes gratilla, Pseudoboletia maculata, Pseudoboletia indiana, Hemicentrotus pulcherrimus, Pseudocentrotus depressus, Echinostrephus aciculatus, Anthocidaris crassispina, Echinometra mathaei, Clypeaster japonicus, Fibularia japonica, Fibularia sp., Fibulariella acuta, Echinocyamus crispus, Peronella japonica, Astriclypeus manni, Schizaster lacunosus, Brissus agassizii, Brissus latecarinatus, Pseudomaretia alta, Lovenia elongata. 上記の内, マメウニの一種 (Fibularia sp.) は未記載種であり, マダラウニ (Pseudoboletia maculata) とミナミオオブンブク (Brissus latecarinatus) は新たな北限分布の記録であり, Pseudoboletia indianaについては日本近海での分布の初記録である。 海胆相は全体として種数の上では熱帯要素が60.7%, 暖温帯要素が35.7%, 冷温帯要素が3.6%で, 熱帯要素が優占しているかに見えるが, 生息数の点では温帯要素の比率が遥かに高く, 温帯系種の内, 特にムラサキウニとバフンウニは極めてふつうに見られ, ヨツアナカシパン, タコノマクラ, アカウニ, オオブンブクなども多数生息していることが分った。熱帯系種の内, ガンガゼ, アオスジガンガゼ, ラッパウニの生息数は多いが, ナガウニ, シラヒゲウニ, マダラウニ, ミナミオオブンブクは少なく, 熱帯海域にふつうのトックリガンガゼモドキ, ガンガゼモドキ, クロウニ, パイプウニ等は調査を通じて1個体も見出されなかった。
著者
大和田 守
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.197-214, 1989

オキナワルリチラシは, スリランカ, インド, ネパール, ビルマ, タイ, 中国, 台湾をへて琉球列島から本州中部まで広く分布する種で, 多くの亜種に分けられている。井上 (1982) は, 日本の亜種を, それまでの知見と多くの標本をもとに, 本州, 四国, 九州, 沖ノ島, 隠岐, 対馬のものを亜種 sugitanii MATSUMURA, 1927,屋久島のものを亜種 micromaculata INOUE, 1982,トカラ列島から奄美大島と沖縄のものを亜種 okinawana MATSUMURA, 1931,八重山諸島のものを亜種 ishigakiana INOUE, 1982 とした。最近, 当館の友国雅章氏が奄美大島で採集した多数の標本が, 屋久島や沖縄のものと違うことに気づき, もう一度琉球列島を中心に本種の亜種を再検討し, 以下のような結論に達した。Eterusia aedea sugitanii MATSUMURA, 1927 分布 : 本州, 四国, 九州, 沖ノ島, 隠岐, 対馬。本亜種は常緑広葉樹林内に生息し, 茶の害虫とはならないようで, 年1化を基本的な生活環としている。成虫は 8∿9 月に出現するが, 九州南部では6月に1♂が採集されているので, 2化することもあるようである。雄はよく灯火に飛来するが, 雌ではそういうことはない。伊豆の湯ヶ島では多数の雄が採集されているが, そのほとんどが灯火に来たもので, 昼はあまり活動していないようである。また, この地では, 幼虫が野外でヒサカキから採集されている。一方, 隠岐で採集された雌から採卵されたものはヤブツバキを好み, ヒサカキはあまり食べなかったという。たいへん局地的な発生をし, 分散力もあまりないようで, 地域による変異が認められる。伊豆湯ヶ島のものがもっとも大きく, 奈良と和歌山のものが最小, 四国や九州のものはその中間くらいで, 隠岐や対馬の雄の前翅の白帯は幅広く, 中国大陸のものにすこし似てくる。これらの関係はもうすこし標本を集めてから論じたい。 Eterusia aedea micromaculata INOUE, 1982 分布 : 屋久島, 中ノ島(トカラ列島)。斑紋や大きさは奈良・和歌山のものに似ているが, 雄交尾器はむしろ隠岐のものに似る。年2化すると考えられる。トカラ列島のものは斑紋がやや異なるが, この亜種のものとして扱かっておく。Eterusia aedea tomokunii OWADA, 1989 分布 : 奄美大島。屋久島亜種に似るがより小型で, 前翅は赤褐色のことが多く, 中央の白帯は中室の下で外方へずれ, 内縁が直角をなす。雄交尾器の差は大きい。友国氏によると, 湯湾岳の発達した暖温帯林を通る林道で, 曇天の午後, 高さ 3∿4m の梢をゆっくりと飛翔していたという。雄の方が活発で, 雌のほとんどは葉上に止まっていたらしい。少なくとも年2化はしている。 Eterusia aedea sakaguchii MATSUMURA, 1931 分布 : 沖縄北部, 渡嘉敷島。小型で奄美大島のものに似るが, 前翅が幅広く, 斑紋も顕著。沖縄北部の山原地方の暖温帯林に生息する。井上 (1982) が亜種 okinawana として図示したものは本亜種である。学名の適用については次亜種の項で述べる。渡嘉敷島の雄の斑紋は sakaguchii とほとんど変わらないが, 交尾器はかなり違う。Eterusia aedea okinawana MATSUMURA, 1931 分布 : 沖縄南部?, 八重山諸島。大型で, 前翔はあざやかな緑色, 赤みを帯びる変異があるのはほかの亜種と変わらないが, 黄金色を帯びるものもいる。後翅外縁の黒帯内の青の輝きも, もっともあざやか。井上 (1982) は沖縄で採集されるものすべてを同一の亜種と考え, 八重山諸島産のものだけを別亜種 ishigakiana INOUE, 1982 としたが, 八重山諸島タイプのものは沖縄南部でも採集され, okinawana のホロタイプは明らかにこちらに属している。亜種 sakaguchii との分布の境界は今のところはっきりしていないが, 本部半島の名護で sakaguchii の雌が採集されている一方で, 伊豆味では okinawana の雌が採れている。沖縄で採集された okinawana は, 八重山諸島から侵入したものかもしれない。雄の第8腹板後側にある1対の角状の突起には, 微小ではあるが明瞭な副突起が認められる。この微小突起は sakaguchii までの日本の亜種にはなく, 台湾とアジア大陸のものにはある。ただし, okinawana のホロタイプはこれを欠く。このような変異は, ほかには台湾のものから1個体見いだしているにすぎない。年に数世代の発生があると考えられる。幼虫は, 飼育下ではツバキ, サザンカ, チャをよく摂食した。成虫は, これも飼育下ではあるが, 室温15度以上で雌雄とも活発に飛翔し, 砂糖水を与えれば1カ月は生きるとのことである。Eterusia aedea formosana JORDAN, 1908 分布 : 台湾。前亜種にたいへんよく似ているが, 前翅の地色ははるかに暗く, 後翅外縁の輝きも少ない。
著者
山田 格 Chou Lien-Siang Chantrapornsyl Supot Adulyanukosol Kanjana Chakravarti Shyamal Kanti 大石 雅之 和田 志郎 Yao Chou-Ju 角田 恒雄 田島 木綿子 新井 上巳 梅谷 綾子 栗原 望
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-10, 2006

台湾,タイ,インドの研究施設に保存されている中型ナガスクジラ属鯨類標本22点を調査し,骨格の形態学的特徴から,ミンククジラBalaenotera acutorostrata 4点,カツオクジラB. edeni 7点,ニタリクジラB. brydei 1点,ツノシマクジラB. omurai 10点を確認した.1970年代以来議論は提起されていたもののWada et al.(2003)が記載するまで不明瞭であったツノシマクジラの標本点数が相対的に多かったことは特筆に値する.本研究の結果は,これまで混乱が見られたいわゆる「ニタリクジラ類」の分類学的理解を解きほぐすものである.さらにこの混乱を完全に解決するためには,とくにカツオクジラのホロタイプ標本の分子遺伝学的調査が強く望まれる.
著者
加瀬 友喜 アギラー ヨランダ・マーク
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.175-183, 2006

フィリピン・ルソン島中部のブラカン地方に分布する前期鮮新世後期のタルタロ層から得られたツキガイ科二枚貝の新属新種Bulacanites obtusiplicatus gen. et sp. nov.を記載した.Bulacanitesは大型でこう歯を欠く点ではAnodontia属とMeganodontia属に似るが,殻が厚く,殻頂部がより前方に傾き,さらに殻表面に特徴的な分岐をする放射肋をもつ点で容易に区別される.産出した地層の堆積相と随伴する他の貝化石の解析から,この二枚貝は熱帯の潮間帯あるいは潮下帯に生息していたと考えられる.
著者
黒川 逍
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-"30-2", 1978

当館の井上浩博士が父島で採集した地衣類39種を1969年に報告したが, それらを含めて小笠原諸島産地衣類として報告されているのは74種である。本報告では1977年夏, 筆者が小笠原諸島の父島および母島で採集した地衣類と既に当館に保存されている標本を検討して, 3種について報告した。Parmelia cristifera TAYL. は熱帯に広く分布しているが, 日本では今回の小笠原での記録が初めてである。Parmelia pacifica KUROKAWA は新種として記載したが, 1969年の報告では P. conformata VAIN. として発表したものである。本種は琉球列島にも分布しており, 西太平洋地域に特産と考えられる。アカチクビゴケ Trypetheliopsis boninensis ASAH. は小笠原特産種と考えられていたが, 琉球, 台湾にも産するこを報告した。なお, Lopadium hiroshii も同様の分布を示す。種子植物については, 小笠原産のものと日本南部の温暖な地方, 琉球, 台湾, 中国南部のものと同一種であったり, あるいは極めて近縁であったりして, 西太平洋における, 植物地理学的なつながりのあることが既に報告されている。地衣類についてはこのような研究はなかったが, Parmelia pacifica, Trypetheliopsis boninensis, Lopadium hiroshii は西太平洋地域に特産と考えられ, 種子植物の場合と同じように, 琉球や台湾と植物地理学的な関連を示しているようである。
著者
吉村 庸 黒川 逍
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-"84-3", 1973

琉球八重山諸島の地衣類については今日までほとんど研究されていなかった。幸にして, 筆者らは, 国立科学博物館が主宰した琉球列島の自然史科学的総合研究の一部を分担し, 八重山諸島の地衣類を研究することになった。吉村は1973年1月, 陰花植物班の一員として, 八重山諸島(西表島, 石垣島, 竹富島)で地衣類を採集調査した。これらの採集標本は筆者らによって研究中であるが, 今回, 下記の日本未記録の9種について発表することが出来た。これらのうち樹皮生の Coccocarpia fenicis を除くと他の8種はいずれも葉上地衣である。Arthonia macrosperma (ZAHLBR.) SANT. ヨウジョウソバカスゴケ(新称)。大型 (50-62.5×12-13μ) で多室 (8-10) の胞子と長い(約100μ)粉子を持つのが特徴である。今迄マレーシアからのみ知られていた。Byssoloma leucoblepharum (NYL.) VAIN. ヤシノビッソロマ(新称)。子器の縁部が白色で, ゆるくこうさくした菌糸でできているのが Byssoloma 属の特徴の1つである。本種は子器盤が褐色で周辺部は連続している。また地衣体は多少緑色がかっている。熱帯地方に広く分布し, 一部欧州や北米の温帯にも知られている。Byssoloma rotuliforme (MULL. ARG.) SANT. タラヨウノビッソロマ(新称) 子器盤が黒色で, 灰白色の地衣体の周辺部は小部分に分かれ散在しているのが特徴である。熱帯地方に広く分布するが, 北米や欧州の温帯の一部でも知られている。Coccocarpia fenicis VAIN. チヂレバカワラゴケ(新称) 葉状の中型地衣で樹皮に着く。細かい扁平な裂芽を持つのが特徴である。フィリピンで記載されて以来, 現在迄どこからも報告がなかった。Dimerella epiphylla (MULL. Arg.) MALME ウスチャサラゴケ(新称) 淡褐色の子器を持ち, 日本ですでに知られている橙色の子器を持つダイダイサラゴケと区別される。熱帯地方に広く分布している。Mazosia bambusae (VAIN.) SANT. コクテンマゾシア(新称) 4室の胞子を持ち, 地衣体表面に粒状突起があり, その先端に細微な黒点があるのが特徴である。スマトラ, ボルネオ, フィリピン, ニューギニアからのみしか知られていなかった。Mazoasia phyllosema (NYL.) ZAHLBR. ナミマゾシア コクテンマゾシアに胞子の形状など似ているが, 地衣体表面に粒状突起がなく平坦である。熱帯地方に広く分布している。Mazosia melanophthalma (MULL. ARG.) SANT. ハクテンマゾシア(新称)。コクテンマゾシアに似るが地衣体表面の粒状突起が白色である。熱帯地方に広く分布する。Tricharia albostrigosa SANT. ヨウジョウシロヒゲ(新称) 地衣体に白色の毛を持ち, 胞子は巨大な石垣状であるのが特徴である。熱帯地方に広く分布しているがアジアではジャワでしか知られていなかった。
著者
田中 次郎
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.53-60, 1988

北海道南部沿岸に分布する海産植物(スガモ, アマモ, ホンダワラ類, コンブなど)には多くの褐藻類が着生している。これらの種類組成を調査した結果, シオミドロ科4種, ミリオネマ科2種, ナミマクラ科7種, ポゴトリクム科1種, クロガシラ科2種の計16種類の藻類が同定された。このうちLeptonematella fasciculataは日本では初めての記録である。
著者
近田 文弘 清水 建美
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.95-107, 2002

帰化植物は種数が多く,地域の植物相の重要な要素となっている.また,環境が変化した場所に侵入することが多く,帰化植物の分布状況は自然環境の改変を示唆すると考えられている.このような観点から富士山の帰化植物の分布を梅村(1923),近田・杉本(1983)の植物相調査と比較し,また垂直分布に注目して調査した.梅村(1923)には,1,110種の分布が記録されこの内,帰化植物は5種である.近田・杉本(1983)は,1,557種を記録し,この内,帰化植物は86種である(表1).今回の調査では31科113種の帰化植物を記録した.近田・杉本(1983)以後に新たに記録された種は42種である.これらの内,ナガミゲシ,ショカツサイ,シンジュ,オッタチカタバミ,マツヨイグサ,アレチウリ,ウラジロチチコグサ,セイバンモロコシは,東京とその近郊では普通であるのに,富士山ではごく限られた小地域で生育していて,最近富士山に侵入したことを思わせる.富士山の南面と北面では帰化植物の分布に違いが見られた.南面では86種が記録されこの内,40種は南面でのみ記録された.北面では53種で,17種は北面のみの記録である.南面は交通の便が良く都市化が進んでいるので,帰化植物の侵入口であることが予想される.帰化植物の垂直分布を,海岸から亜高山帯まで500mづつ標高を区切って各種の分布上限から調べると,大部分の帰化植物は標高1,000m以下に分布し,それより上では限られた少数の帰化植物が分布する.亜高山にまで分布できる帰化植物はセイヨウタンポポ,オオアワガエリ,カモガヤ,グンバイイナズナ,コイチゴツナギ等少数である.富士山の帰化植物数を他の地域と比較してみると,富士山では帰化植物数が少ないと言える.富士山の中腹以上の地表は火山灰で栄養や水分が乏しく,地表の大部分は帰化植物が生育し難い樹木の密生した森林で被われているいるので,帰化植物の生育できる範囲は限られていることが大きな原因ではないかと思われる.
著者
小林 享夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.85-"94-5", 1976

屋久島はその多雨と高い山があるという気候的地理的特徴によって植物相の変化にとんでいる。それに伴って植物寄生菌相もまた, 北方系, 南方系の要素が混在し, 地理誌的に興味深い。屋久島からは今まで約60属140種の樹木類寄生菌類が知られるが, 1975年7月の調査において新たに約20属30種を追加できた。これらの全貌については別報(KOBAYASHI, 1976)の予定であるが, ここにはその中から新種と考えられる8種について病徴と形態の記載を行なった。以下その種名とともに, 主に病徴から名づけられた病名を挙げて新病害として登録する。 1. Ascochyta yakushimensis, KOBAYASHI, sp. nov. ホソバタブ白斑病菌 2. Hypoderma insularis KOBAYASHI, sp. nov. ツガ葉ふるい病菌 3. Mycosphaerella cleyerae KOBAYASHI, sp. nov. サカキ円(まる)斑病菌 4. Plagiosphaera quercicola KOBAYASHI, sp. nov. 5. Plagiostigme neolitseae KOBAYASHI, sp. nov. イヌガシ黒点円星(まるほし)病菌 6. Plectosphaera actinodaphneae KOBAYASHI, sp. nov. バリバリノキ褐斑病菌 7. Trematospharia yakushimensis KOBAYASHI, sp. nov. (不完全世代 Hendersonula yakushimensis) カンザブロウノキ黒点病菌) 8. Vestergrenia daphniphylli KOBAYASHI, sp. nov. ヒメユズリハ褐紋病菌