著者
新美 利
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬蟲兩棲類學雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.24-28, 1970-02-25 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5

愛知県半田市にて捕獲したカナヘビ Takydromustachydromoides の精子形成過程を年間各月別に追求した。日本産カナカヘビの精子形成過程には日本産トカゲ Eumeces latiscutatus における如く,明白に季節的変化が存在することが認められた。カナカヘビの生殖期は4月から8月に及ぶがこの期間中に前年に産生貯蔵されていた精子は殆んどすべて排出される。成熟分裂は8月∼9月の間に行われ,9月には精巣内に極めて多数の精細胞像が認められる。11月∼12月,すなわち冬眠期に入るにあたり,産生された精子によって精巣は充たされる。気候,特に気温の変化に伴なって,生殖細胞の活動状態に変化が著明に認められた。
著者
松井 正文
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.50-64, 1987-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
19
被引用文献数
27

近畿地方以北に分布するカスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群244個体のアイソザイムについて,デンプンゲル電気泳動法を用い,17遺伝子座における変異を調べた。これまでに命名されていた6種(トウホク,クロ,ホクリク,アベ,トウキョウ,カスミ)は比較的小さなNeiの遺伝的距離(2種個体群間距離の平均の最小値=0.22)によって,たがいに明瞭に区別された。しかし,これらの種間にみられた遺伝的な関係と,これまで認められてきた系統関係との間には大きな不一致があった。白馬村産のサンショウウオ個体群は,他のすでに命名されている種と比較した場合に,独立種として認めるに足るほどの大きな遺伝的相違を示した。この結果にもとづいて,白馬村産の個体群を新種ハクバサンショウウオとして記載する。この種は中部地方飛騨山脈に含まれる,長野県の山地帯に分布する。カスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群に属し,鋤骨歯列が浅いこと,鋤骨歯数が少ないこと,トウホクとカスミの中間的体型をもつこと,卵嚢外被に縦条を欠くこと,独特のアイソザイム泳動パターンをもつこと,で特徴づけられる。
著者
田中 清裕
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-49, 1987-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Hynobius takedai was observed in the breeding season at Joyama in the city of Toyama in 1983. Measurements of five dimensions i. e., head width, head length, snout-vent length, tail length, and maximum tail height, were taken and the males were also individually marked. Twenty males and eighteen females appeared at the breeding site, and five of the males succeeded in protecting their territories. The males with territories (MTs) appeared earlier in the water than the males without territories (non-MTs). The males with larger bodies succeeded in protecting their territories and inseminating, since they were dominant in the struggle among fellow males. The snout-vent length of the MTs was more than 50mm, and their heads were wider than those of the non-MTs. The longer the snout-vent length of the MTs was, the larger their head and tail were, compared with those of the non-MTs and the females. The heads of the MTs grew larger and their tails grew longer only during the breeding season.
著者
太田 英利
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.54-60, 1981-12-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
6

Six species of reptiles and amphibians were collected on Hateruma Island, Ryukyu Archipelago, in March and in August 1981. They are: Microhyla ornata, Rana limnocharis, Hemidactylus frenatus, Eumeces stimpsoni, Scincella boettgeri, and Rhamphotyphlops braminus. Of these, the record of E. stimpsoni was the first one for this island. The specimens of this species, collected in March, included two yearlings both of which were already sexually mature.
著者
佐藤 眞一 倉本 満 小野 勇一
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.119-125, 1994

九州の21地点から採集したブチサンショウウオ108個体の斑紋と体の大きさを比較した結果,地理的に隔てられた3型が区別された.九州北部に分布する北九州型は頭胴の背面に白斑をもたない.大分の中九州型と祖母山地以南の南九州型では白斑がよく発達しているが,前者は大形,後者は小形である.北九州型は中九州型に比して相対的に四肢が短く頭幅は大きい.これらの3タイプは系統的に異なり,九州の地史と関連して分化したものと考えられる.
著者
アルメイダ-サントス S.M. サロマノ M.G.
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.46-52, 1997

ガラガラヘビ<i>Crotalus durissus terrificus</i>の子宮にみられる回旋と筋肉収縮を,冬を越えて精子を貯蔵する(長期精子貯蔵)ための戦略として報告した.交尾期(秋季),濾胞の大きさ(5-30mm),排卵の時期(春季),妊娠期間(4-5ヵ月)など,雌の繁殖周期について述べた.雌の子宮には,交尾後すぐに形態学的,生理学的変化が観察された.この状態は1季節(冬季)続くだけで,排卵後に子宮に弛緩し,精子が卵管をさかのぼる.生殖管の解剖形態を記述し,温帯産の近縁種プレーリーガラガラヘビとの関連で,語句の用法について論議した.交尾期にはまだ受精の準備ができていない卵黄形成後の濾胞を,無駄にしないような生理学的過程の重要性を仮定すると,この種では繁殖に関する出来事が時間的に同調しないため,長期精子貯蔵をせざるを得ないと考えられる.
著者
仲地 明
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.124-128, 1992
被引用文献数
1

2群のタイワンスジオの孵化幼蛇を異なった餌条件下で1年間飼育した.A群(15個体)には初回の脱皮終了後より給餌し,B群(14個体)は孵化から2ヵ月間飢餓状態においた後に給餌を開始した.絶食期におけるB群の体重の減少は2.99%/週であった.B群の絶食期間中にA群は捕食・成長し頭胴長および体重でそれぞれB群の1.5倍および5.9倍となり,両群間に有意な成長差を確認した.しかし孵化より1年後に両群は等しい累積量の餌を摂取し,頭胴長ではA群が大きかったが,体重に成長差は認められなかった.両群の給餌期間中の月間捕食率および月間転換率はB群で有意に高い値が観察された.この結果は,飢餓期の存在がその後の捕食率および成長率に影響を与えることを示唆している.
著者
森 哲
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.39-45, 1997-12-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
25
被引用文献数
6

発達したデュベルノイ腺を持つヘビであるヤマカガシの孵化幼体に様々な大きさのカエルとサカナを飼育下で与え,餌の大きさやサイズが捕食行動に及ぼす影響を調べた.カエルはサカナよりもたやすく捕獲され,処理された.呑み込みの効率はカエルとサカナとで明瞭な違いはなかった.餌の相対的サイズは餌を呑み込む方向と呑み込むときの餌の生死に影響しなかった.サカナは一部が死んでから呑まれ,頭部から呑み込まれる傾向があった.これに対し,カエルはすべて生きたまま呑まれ,呑み込む方向に選好性はなかった.カエルにおいては,呑み込む方向は最初に咬みついた部位に依存する傾向が強かった.どちらの餌においても,餌を呑み込む方向は呑み込み時間に影響しなかった.サカナの生死は処理時間の長さと関係していると考えられた.カエルを頭部から呑み込む傾向がなかったことを除けば,ヤマカガシ孵化幼体はサカナよりもカエルの方がより効率良く捕食できると考えられた.
著者
太田 英利
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.87-90, 1990-06-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

琉球列島八重山諸島の西表島より,キノボリヤモリ(Hemiphyllodactylus typus typus)の1雌が採集された.これは本種の日本からの最初の記録である.今回採集された標本の外部形態について記載し,検討を加えた.この標本は,本亜種が西表島へ最近移入されたことを示すものと思われる.
著者
佐藤 眞一 倉本 満 小野 勇一
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.119-125, 1994

九州の21地点から採集したブチサンショウウオ108個体の斑紋と体の大きさを比較した結果,地理的に隔てられた3型が区別された.九州北部に分布する北九州型は頭胴の背面に白斑をもたない.大分の中九州型と祖母山地以南の南九州型では白斑がよく発達しているが,前者は大形,後者は小形である.北九州型は中九州型に比して相対的に四肢が短く頭幅は大きい.これらの3タイプは系統的に異なり,九州の地史と関連して分化したものと考えられる.
著者
岩沢 久彰 解良 芳夫
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.73-89, 1980-07-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2 19

A table for the normal stages of the development of the Japanese lungless salamander, Onychodactylus japonicus, is presented. Adult males and females, collected in Hinoémata, Fukushima Prefecture, in the breeding season, were injected with frog pituitaries, and oviposition was induced. The number of eggs laid by one female was 11 on the average. The eggs are pale yellow in color and ca. 5mm in diameter. The temperature of the water in which the materials were kept was maintained at 10±1°C. The progress of development is remarkably slow. Under the present conditions, the embryos hatched at the age of 142 days on the average. In contrast to most amphibian species, the 3rd cleavage is meridional and the 4th one is latitudinal. Under field conditions, the period of larval life is fully 2 years, and the body size of metamorphosing larvae is 7-10cm in total length. The process of development from fertilization till the completion of metamorphosis is divided into 72 stages. External characteristics in each stage are described in tabular form, and illustrated with sketches.
著者
岩澤 久彰 山下 香
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.39-62, 1991-12-31 (Released:2009-03-27)
参考文献数
17
被引用文献数
56

A table for the normal stages of development of a hynobiid salamander, Hynobius nigrescens Stejneger, is presented. The materials used in the present study were collected from a breeding pond in Iwamuro-mura, Niigata Prefecture. The eggs were ca. 2.6mm in diameter. The larvae were fed on Tubifex. Under a constant temperature of 17°C, the larvae metamorphosed at the age of 80 days. and the total length of these metamorphosed animals was 53.4mm on the average. The ratio of body length, measured from the tip of the snout to the posterior angle of the vent, to total length in the metamorphosed animals was 58.3% on the average in 63 individuals. The process of development from just after spawning till the completion of metamorphosis is here divided into 73 stages. External characteristics in each stage are described in tabular form, and illustrated with sketches.