著者
岩崎 泰政
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.18, no.Supplement, pp.97-100, 1997 (Released:2012-09-24)
参考文献数
8

Selective photothermolysis with a long-pulse flashlamp dye laser with 585 nm is becoming widely accepted as a treatment for cutaneous vascular lesions because of high efficacy with a very low risk of scarring. The light of dye laser penetrated into 1,400 μAm depth of the human skin and induces selective intravascular and perivascular coagulation necrosis. However, the numbers and diameters of blood vessels were significantly decreased only in tissues down to a depth of 600 μm 3 months after the laser irradiation. Fifty two out of 550 patients (9.5%) with port-wine stains (PWS) showed an excellent clinical improvement after single treatment and up to 4 times additional irradiation further improved clinical responses in as much as 115 patients with excellent improvement. The degrees of clinical responses are dependent on histological type, age, anatomic location and color of PWS lesions. Treatments of strawberry mark are usually begun in a thin flat stage or at initial presentation with some success especially for their superficial lesions. However, they hardly affect the size of tumor and often leave atrophic and redundant skin surface with scarring. Finally practical problems in dye laser treatment of hemangioma were discussed.
著者
片山 博貴 中山 斌義
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.362-366, 2008-01-15 (Released:2009-03-28)
参考文献数
14

チタン(Ti)あるいはTi合金で作製されたインプラント材へのハイドロキシアパタイト(HAp)被膜形成は,インプラント材の生体親和性を高める技術の一つである.HAp被膜は,生体中でその性質を維持するためには高い結晶性を必要とする.この被膜の成膜法の一つとして,レーザーを用いたパルスレーザー堆積(PLD)法がある.PLD法によるHAp被膜形成では,被膜を結晶化するために成膜中,基板を高温(500~800℃)で加熱する.しかしながら,一般的なHAp被膜形成の場合,水雰囲気中で成膜するため基板上に酸化層が生成される.この酸化層は,HAp被膜とTi基板との間の密着強度を弱める.我々は,PLD法を改良したレーザーアシスト・レーザーアブレーション(LALA)法を開発した.本研究ではLALA法で作製したHAp被膜の密着性の原因について調べた.その結果,LALA法はTi基板に酸化層を形成しないことがわかった.さらに,基板表面を粗面化することがわかった.これらから,LALA法は,HAp被膜の密着強度を高める優れた方法として期待できる.
著者
坂本 優
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-110, 2021

今回,粟津邦男編集委員長のご発案により,産婦人科領域におけるレーザー診療の現状と将来に関する特集を組む機会をいただきました.本特集では,婦人科領域において,まず,子宮頸部病変に対するレーザー円錐切除術の現状と展望について,東邦大学の久布白先生に執筆していただきました.次に,子宮頸部初期癌ならびに異形成に対する光線力学療法(PDT)の現状と展望について,杏雲堂病院の坂本が概説いたします.さらに,子宮体部病変に対するレーザー治療の開発状況について,奈良県立医科大学の重富先生に執筆していただきました.また,産科領域では,双胎間輸血症候群における胎児レーザー治療の現状と展望について国立成育医療センターの山下先生に執筆していただきました.最後に,子宮頸部再発病変に対する光線力学療法(PDT)の現状と展望に関して,杏雲堂病院の三宅先生に執筆していただきました.本特集により,我が国における産婦人科領域におけるレーザー診療の現状が理解され,その将来展望として,ふたたび,医療用レーザーが産婦人科診療においても積極的に使用され,開発中のレーザー治療が保険承認され,さらに発展していくことを特集の企画者として切に願います.
著者
櫛引 俊宏 大川 晋平 平沢 壮 石原 美弥
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.394-401, 2014-03-15 (Released:2015-04-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

光技術と遺伝子操作技術を組み合わせたオプトジェネティクス(光遺伝学)により,光技術を用いた遺伝子発現制御,細胞形態や細胞内シグナルカスケードの制御が報告されている.本稿ではオプトジェネティクスで用いられるチャネルロドプシンやLOV(light oxygen voltage)ドメインなどの光活性化タンパク質について記述し,最近の研究報告を紹介する.オプトジェネティクスにより,様々な生理学的現象の解明だけでなく,疾患や薬剤作用機序の解明が期待されている.
著者
関 成人
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.445-450, 2015-01-15 (Released:2016-05-19)
参考文献数
20

前立腺肥大症に対する手術治療として,波長532 nm のLBO レーザーを用いる光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP)ならびにHo:YAG レーザー(波長2140 nm)による前立腺核出術(HoLEP)は,いずれも標準術式である経尿道的前立腺切除術(TURP)と同等の治療効果を示す一方で,周術期の出血リスクの軽減や術後のカテーテル留置や入院期間の短縮が期待できる有用な方法として我国において普及が進んでいる.
著者
佐藤 正人 石原 美弥 荒井 恒憲 菊地 眞 持田 讓治
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.146-151, 2010-07-30 (Released:2010-11-14)
参考文献数
20

本研究の目的はレーザー照射後の椎間板細胞の影響を3次元培養法を用いて明らかにし,同時にHo: YAGレーザーのPLDDにおいて光音響効果,光熱効果の関与を確認することである.椎間板細胞の反応を細胞代謝の点から,これらの影響を同定するため,日本白色家兎30羽を用いて,椎間板細胞の3次元培養を行った.Ho: YAGは石英ガラスファイバーへ導光し,PVdFトランスデユ-サ-と音響アブソーバーから応力波を検出した.同時にサーモグラフィーによりレーザー照射による光熱効果を同定した.この計測システムを使って,光音響効果を同定したところLDH放出率,プロテオグリカン合成との関係に何れも線形相関が得られ,光音響効果が細胞に与える影響を捉えることが可能であった.一方,光熱効果は,サーモグラフィー上は温度上昇を認め細胞への影響が示唆されるが,線形の相関関係は認めなかった.本計測システムは,レーザーと椎間板細胞との相互作用を細胞代謝と物理的因子-照射による光熱,光音響両者の効果-の観点から計測評価でき,レーザー照射条件の最適化に有用である.
著者
小倉 俊一郎 中山 沢 山本 新九郎 福原 秀雄 花﨑 和弘 井上 啓史
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.238-248, 2023-01-15 (Released:2023-01-15)
参考文献数
40

5-アミノレブリン酸(ALA)は生体内で合成されるアミノ酸の一種であり,ポルフィリンやヘムの前駆体である.がん患者にALAを経口投与した場合,腫瘍特異的なプロトポルフィリンIX(PpIX)の蓄積が認められる.ポルフィリンが蛍光物質であること,さらには可視光照射下において活性酸素種を発生させることを利用して,がんの光線力学診断(ALA-PDD)や光線力学療法(ALA-PDT)へ応用されている.休眠がん細胞は,腫瘍内の微小環境などの影響によって,細胞増殖が抑制されたがん細胞である.周囲の環境変化により再増殖をするうえ,化学療法や放射線療法に対して抵抗性を持つため,がんの再発と密接な関わりがあると考えられている.本研究では,ヒト前立腺がん由来細胞株PC-3を用いて,細胞密度に着目したin vitroにおける休眠がん細胞モデルを構築した.また,休眠がん細胞モデルにおけるALA添加後のPpIX蓄積およびPDT感受性の評価を行い,休眠がん細胞のALA-PDTに対する感受性が高いことを示した.さらに,休眠がん細胞モデルに対してマイクロアレイ解析を行うことにより,休眠状態への移行に付随して脂質代謝が亢進することを明らかにした.Acyl-CoA synthetase(ACSs)の抑制剤(triacsin-C)を添加することによって,PpIX蓄積が減少し,ALA-PDTに対する感受性が低下した.以上のことから,休眠状態への移行に付随するALA-PDTの殺細胞効果の亢進は,脂質代謝の亢進と相関するものであることが判明した.
著者
下条 裕 西村 隆宏 粟津 邦男
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.219-227, 2022-01-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
20

本研究では,接触式レーザー前立腺蒸散術用の新規ファイバーであるXCAVATORファイバーによる治療の熱影響を評価するために,ブタ前立腺組織を用いた照射実験にて蒸散深さ,損傷深さ,蒸散幅を既承認のTwisterファイバーと比較することを目的とする.同一光源装置を用いて2つのファイバーから出射される波長980 nmレーザー光の照射対象面での空間分布と光拡がり角を計測し,ブタ前立腺組織を用いて蒸散深さ,損傷深さ,蒸散幅を測定した.Twisterファイバーと比較し,XCAVATORファイバーは出射光数が多く,光拡がり角で36°広範囲に光照射された.蒸散深さ,損傷深さ,蒸散幅の最大値は,それぞれXCAVATORファイバーで 1.9 ± 0.4,4.0 ± 0.7,8.1 ± 1.6 mm,Twisterファイバーで2.7 ± 1.5,4.3 ± 1.5,5.0 ± 1.5 mmであった.XCAVATORファイバーはTwisterファイバーと比較して広くて浅い蒸散をしながら同等な損傷深さとなった.以上より,XCAVATORファイバーを用いた接触式レーザー前立腺蒸散術の熱影響解析を基に,治療におけるXCAVATORファイバーの特性を明らかにした.
著者
西村 隆宏 下条 裕 粟津 邦男
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.37-43, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

本稿では,2016年に通知「レーザ医療機器の承認申請の取扱いについて」(薬生機審発0629第4号)が発出されたことを受けて,工学側からみたレーザー治療機器の評価アプローチについて論述する.本通知を安全かつ有効に活用するための方策としての計算機援用レギュラトリーサイエンスによるレーザー治療機器評価を提案し,シミュレーションによるレーザー治療評価に関する取り組みを示す.
著者
西村 隆宏 下条 裕 間 久直 粟津 邦男
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.301-308, 2020-01-15 (Released:2020-01-16)
参考文献数
26

本研究では,新規レーザー治療装置に対する迅速かつ低コストな評価手法として,レーザー治療における計算機臨床試験を提案する.レーザー光照射により生じる生体組織内の光熱伝搬とそれに伴う熱損傷過程をモデル化し,レーザー治療における安全性を数値シミュレーションにより評価する.皮膚良性色素疾患治療用ナノ秒パルスレーザー装置の承認申請機器を対象とし,パルス幅の異なる既承認機器と比較して熱損傷の観点から安全性が同等であることが,計算機臨床試験により評価可能であることを示した.
著者
竹内 康雄 青木 章 平塚 浩一 Chanthoeun Chui 一ノ瀬 顕子 上窪 彩乃 和泉 雄一
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
pp.jslsm-38_0035, (Released:2017-12-12)
参考文献数
59
被引用文献数
2 2

従来,歯科治療における感染歯質や歯根表面のプラーク除去は,主に機械的な手段により行なわれてきたが,近年,半導体レーザーやLED光に色素を組み合わせた抗菌的光線力学治療(a-PDT)の応用について研究が進められている.本稿では口腔の二大疾患であるう蝕と歯周病におけるa-PDTの応用について,基礎的・臨床的研究に基づき概説するとともに,特に歯周治療への応用を目指した我々の研究を紹介する.
著者
尾花 明
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.64-70, 2021-07-15 (Released:2021-07-15)
参考文献数
23

カロテノイドは抗酸化物質で,酸化ストレスから生体を守る働きをする.網膜のカロテノイドは黄斑色素を形成し,心理物理学的方法,眼底反射光測定法,眼底自発蛍光分光法,共鳴ラマン分光法の4つの方法で非侵襲的に計測できる.加齢黄斑変性との関係が指摘され,ルテイン,ゼアキサンチン含有サプリメントの加齢黄斑変性予防効果が報告されている.皮膚カロテノイド量は反射光測定法で非侵襲的に測定できる.カロテノイド血中濃度と強く相関し,食事摂取量を反映するので食育に有用である.
著者
櫛引 俊宏 平沢 壮 大川 晋平 石原 美弥
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.482-488, 2016-01-15 (Released:2017-08-09)
参考文献数
39

光技術と遺伝子操作技術を組み合わせたオプトジェネティクスにより,光による細胞機能制御技術が報告されている.本稿ではオプトジェネティクスに用いられる代表的な光受容体であるチャネルロドプシン2を用いた疾病の治療報告をまとめ,私たちの最近の研究成果をあわせて記載する.
著者
中野 俊二
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.435-439, 2017-01-29 (Released:2017-10-10)
参考文献数
21

2012 年より使用可能となった刺青治療用のピコ秒レーザー機は現在,3 社より販売されている.パルス幅にはそれぞれに特徴があるが,使用される波長が532, 755, 1064 nm であることから従来ナノ秒レーザーの対象疾患である良性色素性疾患に対しても使用可能と考えられる.本稿では波長532 nm,パルス幅750 psec を用いた日光黒子や後天性真皮メラノーシスに対するピコ秒レーザー効果について検討した.
著者
王丸 陽光 王丸 光一 大山 美奈 清川 兼輔 詠田 由美
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.367-371, 2014-03-15 (Released:2015-04-16)
参考文献数
22

加齢による卵巣の予備能低下が主な原因とされている難治性不妊症では,高度な生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technology:ART)に加えて補助的治療が必要となる.そこで我々は,血流改善効果を有する低反応レベルレーザー治療(Low reactive Level Laser Therapy:LLLT)に注目した.難治性不妊症患者337 例に対してLLLT を行い,妊娠した症例は110 例(妊娠率:32.6%)であった.漢方療法やメラトニン内服療法などの従来の補助的治療とほぼ同等の治療成績が得られ,LLLT も補助的治療の有効な手段に成り得ると考えられる.今後は従来の補助的治療と組み合わせることで,更なるART の治療成績の向上が期待される.
著者
山下 大輔 松本 祐直 清水 良幸 山下 豊 岡田 裕之 中山 禎司 梅村 和夫
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.103-107, 2011-08-31 (Released:2011-11-25)
参考文献数
11

急性期脳塞栓症の新しい治療法として,半導体励起の固体Nd:YAGレーザーの第二高調波である波長532nmのパルスレーザーを用いた選択的血栓治療法の研究を行っている.我々は,ラット血栓モデルにパルスレーザーを照射し,血栓除去効果の検討を行った.結果,非照射群(N=6)に対して照射群(N=6)では有意に血栓除去効果が認められた.また, in vitroファントム実験にて超高速撮像カメラによる動的解析を行ったが,血栓除去効果がパルスレーザーで発生する気泡によって機械的に破砕されている可能性が示唆された.
著者
葛西 健一郎
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.440-446, 2017-01-15 (Released:2017-10-10)
参考文献数
18
被引用文献数
3

皮膚科レーザー領域では,照射時間幅を1 ナノ秒未満に短縮したピコ秒レーザーが次々に発売され,新しい潮流になりつつある.応力緩和時間理論は実際に働いていると考えられ,ピコ秒レーザーは,刺青除去についてはこれまでのナノ秒Qスイッチレーザーを上回る有効性を発揮する.さらに,皮膚美容に対する応用の期待が高まっているが,こちらは現時点ではまだ根拠不足であり,今後の基礎研究の発展が待たれる.
著者
斗内 政吉
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.325-328, 2019-01-15 (Released:2019-01-18)
参考文献数
12

テラヘルツ電磁波は,300 GHzから30 THz程度の周波数帯の未開拓電磁波領域にある.近年,多くの応用が期待され,注目を集めている.中でも,医療・製薬・バイオ分野では大きなマーケットの存在から重要視され始めてきた.本稿では,その展望といくつかの最近の研究トピックスを紹介する.
著者
佐藤 和秀
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.104-109, 2020
被引用文献数
1

<p>Near-Infrared photoimmunothreapy(NIR-PIT)は,がん細胞表面の抗原に特異的な抗体に 近赤外線に反応するprobeをつけ,局所的に近赤外線を当てる事で治療を行う,次世代の革新的癌治療である.本研究は,probe(化学)と抗体(生物学,医学,薬学)を至適条件下でconjugationし薬剤化し(conjugation chemistry)さらに近赤外光線(光学・物理学)を加えた治療法を行う学際的な治療法である.革新的なターゲット局所治療として,高い評価を得ており,現在国際Phase III試験が既に始まっており,(LUZERA-301),数年以内の認可が期待される.しかしながら,NIR-PITの詳しい細胞死のメカニズムはこれまで良くわかっていなかった.本総説では,NIR-PITの概要と,今回明らかにした,新しい光細胞死の機序について概説する.</p>
著者
平川 和貴 岡崎 茂俊 村上 浩雄 金山 尚裕
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.349-355, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

光線力学的療法は,低侵襲ながん治療法として優れているが,光増感剤の改良により,がん選択性と治療効果をさらに向上できる可能性がある.従来のポルフィリン光増感剤は,一重項酸素生成による生体分子の酸化損傷を作用機序としているが,低酸素条件でも活性を維持できる電子移動機構に着目し,ポルフィリンのリン錯体による生体分子の光損傷を評価した研究例を紹介する.ポルフィリンのリン錯体は,DNA,タンパク質(酵素を含む),葉酸,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを可視光照射下,電子移動を介して酸化損傷した.さらに,ポルフィリンのリン錯体の中には,培養細胞レベルでがん選択性を示す誘導体が確認された.また,担癌マウスによる実験で高い腫瘍選択性を示す分子も明らかになった.