著者
尾花 明 植田 俊彦
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.452-455, 2012-02-15 (Released:2014-02-05)
参考文献数
4

光による眼の傷害事例を紹介した.13 歳男子はレーザーポインターによる熱傷害により,中心暗点と網膜外層の形態異常を来したが,変化は可逆性であった.15 歳男子はLED による光化学傷害により,不可逆性の視力傷害と網膜萎縮を来した.33 歳男性は日食観察に伴う光化学傷害により,一過性の眼痛,違和感と網膜外層の軽微な異常を来した.
著者
遠藤 英樹
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.289-296, 2006
被引用文献数
1

炭酸ガスレーザーは波長10600nmの気体レーザーであり,水分に吸収される特長を利用して皮膚科・形成外科領域では,皮膚小腫瘍の治療に多用されている.腫瘍の大小により,発振モード(シングルパルス,リピートパルス,連続波,スーパーパルス,スキャン)を選ぶことができる.日常の診療においても治療の選択範囲を広げる意味においても大変,有用なレーザーであるが,施術者は機器の特徴と出力設定,副作用について充分に理解しておく必要がある.
著者
丸子 一朗
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-45, 2015-04-15 (Released:2016-12-28)
参考文献数
36

光干渉断層計(OCT)は,本邦には1997年より導入され,2006年にはスペクトラルドメイン(SD)OCTが市販となり網膜全層の詳細な観察が可能となった.2012年には更に光源を改良したスウェプトソース(SS)OCTが開発された.現在これらのSD-OCTおよびSS-OCTを用いて視機能の根幹である網膜外層,硝子体,脈絡膜,さらに強膜を観察することにより様々な網膜,とくに黄斑疾患の病態解明が進んでいる.本稿では症例を挙げながら概説する.
著者
坪内 利江子
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.509-514, 2016

<p>汗管腫は,眼囲に集簇あるいは頚部や体幹などに播種状にみられる数mm大の良性腫瘍である.パルス式の炭酸ガスレーザーが治療法として確立されてきたが,従来の隆起部のみ深く蒸散する方法では,直後のびらん,遷延する紅斑や色素沈着,瘢痕のリスク,および再燃性が課題であり,近年フラクショナルタイプの照射が検討されてきている.皮疹の病態に合わせて,蒸散および熱凝固作用を熟考した治療計画が必要と考える.</p>
著者
X. イリヤル 山本 豊 加藤 治文 荒明 美奈子 黒岩 ゆかり 會沢 勝夫
出版者
日レ医誌
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.281-284, 1996

The cytotoxicity of PDT with ME2906 and Laser to P388 cells was examined. Cell viability was assayed by the MTT method. When the laser irradiated at 10J/cm<SUP>2</SUP> after incubation for 4 hours with 10&mu;g/ml of ME2906, cell viability was not decreased but with 20 and 30&mu;g/ml of ME2906, cell viabilities were 9 and 1.4% respectively. When the laser irradiated at 10J/cm<SUP>2</SUP> after incubation for 24 hours, cell viabilities were almost same as those of 4 hours incubation. ME2906 contents at 24 hours after drug administration at concentration of 10&mu;g/ml measured 2.8&times;10<SUP>-9</SUP>&mu;g/cell, and at 4 hours after drug administration at 20&mu;g/ml measured 5.5&times;10<SUP>-9</SUP>&mu;g/cell. These data showed that the cytotoxicity of PDT to P388 cells was dependent on the ME2906 intracellular accumulated contents but independent on laser doses.
著者
黄 聖琥 菅原 順 佐武 利彦
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.118-125, 2018-07-15 (Released:2018-10-16)
参考文献数
32

肝斑に対するQスイッチNd:YAGレーザーによるトーニング治療(以下QYT)の効果は,ケラチノサイト内のメラニン顆粒を除去していく作用とメラノサイトを刺激するサイトカインを一部抑制する作用もあるが,メラノサイトの沈静についてはトラネキサム酸内服を主体にしたスキンケアや遮光などの保存療法が効果的であり,優先される.保存療法下でのQYTは照射頻度など注意すべき点はあるものの,肝斑治療に効果的に働くことが多い.一部QYTに抵抗性の肝斑もあり,対策が必要となる.Low reactive Level Laser Therapy(LLLT)などのSkin Rejuvenation治療が長期的な肝斑のコントロールに有益に働くこともある.画像診断をもとにQYTやその他治療の適応を見極め治療計画をたてることが,Skin Rejuvenationと肝斑治療を両立させるのに重要である.
著者
小幡 純一 北村 佐代
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.439-445, 2018 (Released:2018-03-28)
参考文献数
21

関節リウマチの治療(RA)は20年以上にわたり,劇的な変革期にある.薬物治療,特にメトトレキサートや生物学的製剤の進化によって生み出されたと言えよう.RA治療の達成目標は世界標準として定められるようになった.RAは疼痛と関節腫脹を特徴とする慢性炎症性疾患である.疼痛は患者にとって最も重視する関心事であるが,医師にとっての関心事は関節腫脹である.治療方針は患者と共有すべきであり,メデイカルスタッフは患者と医師の認識に乖離があることを認識すべきである.発展し続けるRAの薬物治療の時代にあって,変化し続けるLLLTの歴史を紹介する.さらには,抗TNF療法によりLLLTの疼痛寛解効果が高まることを示す.RA症例の高齢化に対するLLLTと薬物治療の結合治療がそれぞれ単独治療より有用である.
著者
高沢 亮治 北山 沙知 辻井 俊彦
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.456-461, 2015

最近,日本では高齢者の上部尿路結石症が問題となっている.高齢者では,女性患者,尿路感染の合併患者,心血管系および麻酔リスクの高い患者が増える.高齢者においても,ホルミウム・ヤグレーザーを用いた内視鏡的結石破砕術は有効かつ安全な治療である.また,寝たきり患者の多発性・感染性尿路結石に対しては,適切なドレナージで感染徴候を抑えたのち,内視鏡的結石破砕術を駆使して,「結石の完全除去complete stone free」をめざすべきである.
著者
岡田 昌義
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.106-113, 2017-07-15 (Released:2017-10-10)
参考文献数
22

現在,虚血性心疾患に対しては,内科的に経皮的冠動脈形成術,ステント内挿術や外科的に冠動脈バイパス手術が行われている.ところが,冠動脈が全体に細すぎると,このような手技が不可能なことがある.このような末期的虚血性心疾患の場合には,左室の表面から心筋内貫通孔を開けて,虚血性心筋部を動脈血で循環することによって心筋の虚血をよみがえらせるのではないかと考えた.これが, いわゆる,心筋内血管形成術(Transmyocardial laser revascularization, TMLR)である.1985 年11 月12 日に臨床例で本法単独の世界初の成功例を得た.次いで,CO2 レーザーを用いる血管吻合である.細い血管吻合には,異物反応を起こす縫合糸を可及的少なくするのが良いのではないかと考えた.その出力は,20-40 mW,照射時間6-12 sec/mm が最も良い条件であった.また,吻合部の耐圧試験や抗張力試験などでも十分に吻合部の強度があることが判明し,臨床例に応用した.吻合部は,冠動脈部をはじめ,下肢の動静脈に多数応用され,好結果を得た.
著者
根本 知己
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 = The Journal of Japan Society for Laser Medicine (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.435-440, 2010-01-30
参考文献数
29
被引用文献数
1

近赤外超短光パルスレーザー光によって引き起こされる多光子励起過程を利用する2光子顕微鏡は,その固有の物理学的,化学的特性のため,生組織や生細胞のイメージングに適している.特に,インタクトに近い組織の深部断層像を,高い空間分解能をもって長時間にわたり観察することが可能である.また開口放出現象の分子基盤やその病理学的研究にも有効であることを示してきた.本稿では2光子顕微鏡を中心に,新しいバイオ分子イメージングについて議論する.
著者
戸井田 昌宏 近藤 真 市村 勉 稲場 文男
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.51-54, 1989 (Released:2012-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

This paper repots and discusses for the first time the possibility for realizing an optical computer tomograpy for biological subjects using the optical heterodyne technique that has excellent sensitivity and directivity to distinguish one specific direction in highly scattering absorptive media. Employing an optical heterodyne system with a single frequency He-Ne laser, Lambert-Beer's law was demonstrated for directly transmitted beam even in highly scattering media such as milk-water solution and its mixed solution with absorptive dye. We discuss the detection system based on the antenna property of the optical heterodyne receiver for investigating the characteristics of laser beam propagation and its direction as well as image detection in highly scattering media.
著者
楢原 啓之 三村 征四郎
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.39-42, 1995

Esophageal cancer reacts to photodynamic therapy (PDT) markedly and it necrotizes easily besides the ulcer after PDT repairs soon, because it is more sensitive to PDT than gastric cancer. In order to improve the therapeutic effectiveness of PDT with Photofrin II and laser light for superficial esophageal cancer, we employed an excimer dye laser instead of an argon dye laser since 1990. The characteristics of the current laser are as follows: wavelength, 630nm; pulse energy, 4mJ; peak power, 400kW; pulse width, 10nsec; frequency of repetition, 80Hz; average output, 320mW. The entire lesion plus a 5-mm wide perimeter of mucosa was irradiated with an EDL beam at 630nm wave length transmitted endoscopically.<BR>In PDT for esophageal cancer, we had used a front-view fiberscope (model GIF-P10, GIF-XQ20, Olympus, Tokyo, Japan) for five cases with esophageal cancer according to the traditional method of diagnostic endoscopy until 1991. But uniform irradiation was difficult, especially with large lesions, because of esophageal peristalsis and respiratory movement. Since the first trial using a side-view fiberscope in PDT for esophageal cancer in 1992, we used a side-view fiberscope (model GF-20, Olympus, Tokyo, Japan) for five cases with esophageal cancer, not only in PDT, but also in pretreatment examinations and follow-up examinations. Two of them were located in abdominal esophagus (Ea) just above EC junction, where PDT had been considered out of application. In this procedure, patients with a lesion located on the right side can lie in a left lateral position as usual, whereas patients with a lesion located in the left side, especially from 7 to 10 o'clock, must lie in a right lateral position. This enabled photoradiation of esophageal cancer from a 90°angle without any difficulty, besides with less energy intensity of the irradiated laser light. Of these 10 lesions, 9 were cured by initial treatment and no recurrence was proved by endoscopy and biopsy. The final rate of cure was 90% (9/10).
著者
小嶋 秀夫 多和田 昌弘 下山 宏 原田 匡也 加藤 剛
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.357-366, 1999 (Released:2012-09-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

通常の光学顕微鏡にはない特徴を備えた顕微鏡として,レーザ光を用いた新しい顕微鏡が各方面で注目されるようになってきた.本論文では,共焦点走査型レーザ顕微鏡走査型近接場光学顕微鏡光音響顕微鏡にっいて,それぞれの顕微鏡の動作原理,特徴ならびにいくっかの応用例を紹介する.同一試料を異なる測定法により同時に計測し,多方面から分析可能な複合装置の開発が,今後重要になるであろう.
著者
森山 一郎 大山 勝 昇 卓夫
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.9-14, 1992 (Released:2012-09-24)
参考文献数
14

癌温熱療法とは, 41℃以上に腫瘍の温度を上げ, 悪性細胞に何らかの影響を及ぼし有用な効果を期待する新しい治療法であり, その加温法により全身温熱療法と局所温熱療法とがある。耳鼻咽喉科領域の腫瘍の特徴は, 解剖学的に骨, 腔洞, 筋, 軟部組織などの複雑な構造の中に発生し, 比較的表在性, 孤立性であることが多い。そのため癌温熱療法としては, 局所温熱療法, 特に組織内刺入型の温熱療法が容易に利屠され得る。組織内刺入型癌温熱療法の加温の方法としては, 安定した熱供給の得られる接触型Nd: YAGレーザーが最も適している。すでに, われわれはNd: YAGレーザーを用いたレーザーハイパーサミアすなわちレーザーサーミアの実験的ならびに臨床的研究を試みて来た1) 2) 3) 4) 5)。その結果, 抗癌剤や放射線療法などとの併用で特に優れた効果が得られたので, その手法と成績を報告する。
著者
佐藤 俊一 川内 聡子 奥田 航 西舘 泉 苗代 弘
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.132-139, 2014

近年,爆弾テロの多発により爆風による頭部外傷(blast-induced traumatic brain injury, bTBI)の受傷者が急増している.しかしbTBI は病態,メカニズムに不明な点が多く,診断・治療技術は確立していない.我々はラット頭部にレーザー誘起衝撃波(laser-induced shock wave, LISW)を適用するモデルを対象に各種リアルタイム診断を行った.その結果,全身性生理学パラメーターに著明な変化が無く,大脳皮質において出血や挫傷がごく限定的な条件においても,拡延性脱分極,持続性の血管収縮,乏血・低酸素血症等が発生することが明らかになった.
著者
岡田 裕之 清水 良幸 吉川 悦次 江田 英雄 尾内 康臣
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
pp.jslsm-36_0015, (Released:2015-04-30)
参考文献数
23

高周波領域非可聴音を含む音楽の刺激で若中年者と健常高齢者にハイパーソニック・エフェクトが発現するか,PET (Positron Emission Tomography)による脳イメージング,脳波(Electroencephalogram:EEG)計測を用いて検証した.対象は平均年齢36.8 歳SD±7.7 歳(27 歳~48 歳),男性3 名,女性5 名,合計8名の若中年者健常ボランティアと平均年齢 77.6 歳SD±4.1 歳(72 歳~88 歳),男性5 名,女性10 名,合計15 名の健常高齢者である.高周波領域非可聴音刺激は脳幹を刺激し,後頭葉のα波を増大させたことから,ハイパーソニック・エフェクトは若年者だけてなく高齢者においても発現することが分かった.
著者
陳 明裕 浅見 勲零 吉位 尚 藤田 邦夫 寺延 治 石井 準之助 寺尾 牧 浜田 充彦 平田 たつみ 島田 桂吉
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.5-11, 1993
被引用文献数
1

矯正治療におげる歯牙移動時にはしばしば疼痛を伴うことがある。 近年, 低出カレーザーによる除痛効果は一般臨床において広く認められている。 <BR>そこで本研究では矯正治療における歯間離開時に発生する痛みに対するレーザー除痛効果の有効性を二重盲検法を用いて検討した。 歯と歯の間隙が正常範囲内 (50μm-110μm)で, 予め左右対象であることを確認した28例の被検者の両側第三大臼歯近心, または近遠心にエラスティックセパレーターを挿入直後に左右どちらかの第1大臼歯のみに低出力Ga-Al-As 半導体レーザー (波長830nm, 出力20mW) を2分間, 歯根相当部頬側歯肉より接触照射した。 その際, 二重盲検とするため, 左右どちら側を照射するかは, 乱数表に従い, 検者被検者双方に判らないように決定した。 疼痛評価には, Visual analog scale (VAS) を用い, 次来院時に被検者自身により記入された用紙を回収した。 その結果, 28例中重7例において, レーザー照射側の疼痛軽減が認められた。 また, VAS平均値も2%の危険率で有意の差が認められた。以上の結果から低出力Ga-Al-As半導体レーザーは矯正治療における歯牙移動時に発生する痛みに対しても有効であることが判った。
著者
陳 明裕 寺尾 牧 浅見 勲 吉位 尚 藤田 邦夫 寺延 治 石井 準之助 島田 桂吉 浜田 充彦
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-7, 1994

矯正治療時の疼痛は殆どの場合-過性ではあるが, 有効な対処方は少ないのが現状である。我々は, 矯正治療時の疼痛緩和を目的に, Na: YAG レーザー, Ga-Al-As 半導体レーザーを応用し, その有効性を報告してきた。しかし, レーザーは波長によってその作用が異なるためHe-Neレーザーについて同様の実験を行い, その有効性について先の半導体レーザーでの結果と比較検討した。被験者は, 神戸大学病院矯正部外来患者および同医局員で, 平均年齢20.7歳であった。予め歯牙接触関係等に左右側で, 差が無いことを確認した同顎左右第1大臼歯を被験歯とした。被験歯近遠心もしくは近心に同じ厚みのエラスティックセパレーターを挿入し, 挿入直後にレーザーを片側にのみ近心根, 遠心根の各中央相当部頬側歯肉に各々1分間ずつ計2分間接触照射し、反対側を非照射対照側とした。なお, 照射に際しては被験者に, 照射側が判別されないよう努めた。レーザー装置は, 波長632.8nm, 出力6m W のSOFT-LASER 632<SUP>R</SUP>を連続波で2分間用いた。調査はアンケート用紙にて行い, 疼痛の開始時期, 消失時期, 最大疼痛の時期およびその程度を患者自身に記入させ, 次の来院時に回収した。疼痛評価はVisual analog scale (VAS) を用いて行い, 各症例の非照射側を対照として比較した。その結果22例中14例で照射側VAS値の滅少を認め, VAS平均値も照射側2.33, 対照側3.91と有意の差を認めた。疼痛時期については両群間に差を認めなかった。半導体レーザーとのVAS値の比較も有意の差を認めず, 何れのレーザーにおいても同程度の除痛効果が得られたものと考えられる。
著者
陳 明裕 藤田 邦夫 石井 準之助 島田 桂吉 平田 たつみ 藤澤 肇
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.269-272, 1991

We applied low power laser irradiation on cultured dorsal root ganglion (DRG) which was excised from mouse, Continuous wave Ga-Al-As diode laser of 830nm wave length and 20mW power output was irradiated for 5-15 minutes. Neurite elongation from DRG was inhibited significantly by laser irradiation. It also inhibited neurite elongation of single neuron isolated from DRG. Especially that of small diameter neuron was significantly inhibited.<BR>By immunostaining, neurites including substance P and/or CGRP were shown to he affected severely. These results suggest that inhibitory effect of laser irradiation on neurite elongation may relate to the mechanism of pain attenuation.
著者
清水 光 田口 直幸 草刈 玄
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.11-19, 1999

インプラント周囲組織の創傷治癒促進を目的として, 低出力レーザーが骨形成ならびに歯肉創傷治癒に与える影響を検索した. また, インプラント周囲炎の治療として, CO<SUB>2</SUB>レーザーのインプラント体表面に付着した細菌に対する殺菌効果を検討した。<BR>低出力レーザーは骨修復初期において細胞の増殖過程に影響を与え, 骨修復を促進する環境を作ることが示唆された. 培養骨芽細胞に対しては, DNA合成とALP活性の上昇をもたらした, 歯肉創傷治癒に関してはコラーゲン代謝回転の促進, プロα1 (I) コラーゲンmRNA量の促進が認められた. 以上の結果から, 低出力レーザー照射は, 骨組織および軟組織修復促進を目的とした治療法として有用であることが示唆された.<BR>CO<SUB>2</SUB>レーザーはS. sanguisとP. gingivalisをそれぞれ286, 245J/cm<SUP>2</SUP>で100%殺菌した. また, チタン表面に変化を与えず, 過大な温度上昇がなく, 照射スポット外の細胞に障害を与えることがなく, 照射スポット内に対する細胞付着, 増殖も阻害は見られなかった. 以上の結果から, CO<SUB>2</SUB>レーザーはインプラント体表面に付着した細菌を殺菌することを目的とした治療法に応用できることが示唆された.