著者
井口 貴紀
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.67-76, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

現代日本ではゲームが社会に浸透して、代表的な娯楽メディアとなっている。これまでゲーム研究はゲームによる身体への影響や、暴力的ゲームの悪影響など送り手側の視点を取った効果研究が中心だった。だがゲームは能動性の高いメディアであり、他メディア以上に受け手側であるユーザーの立場を取った研究が必要である。本研究では若者のゲーム利用動機に注目し「利用と満足研究」の手法を用いて大学生1503名を対象にした量的調査を行った。調査の結果、分類された動機は「空想」「承認」「趣向」「達成」「友達」「学習」「気晴らし」の7つである。その中でも「承認」には競争の要素が含まれていることがわかった。加えて「気晴らし」以外の6つの動機が高いほどゲームへの没入度が高くなることが明らかになった。
著者
石井 健一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.25-36, 2011-12-25
被引用文献数
1

5つのSNSサービス (Facebook、mixi、モバゲータウン、グリー、Twitter) について、個人情報の開示が利用にどのような影響を与えているのかという視点から分析をおこなった。その結果、既知の友だちが多く個人情報の開示度が高い「強いつながりのSNS」 (Facebook、mixi) と、既知の友だちが少なく個人情報の開示度が低い「弱いつながりのSNS」 (モバゲー、グリー、Twitter) に分かれることが確認された。「強いつながりのSNS」は既知の対人関係、「弱いつながりのSNS」はネット上の対人関係と結びついていた。個人情報のうち属性情報の開示はSNSの利用頻度や友だちの数と有意な相関があったが、識別情報の開示は、既知の友だちの数のみに有意な相関があった。コミュニケーション不安やプライバシー意識とSNS利用の間には有意な関連はみられなかった。
著者
海野 敦史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.1-12, 2016 (Released:2017-02-06)

米国の法執行機関による IMSI キャッチャーを通じた情報収集について、それが令状手続によらずに行われる場合に、米国憲法修正 4 条にいう「不合理な捜索」に該当する可能性が議論の焦点となっている。これは、①公権力が個々の通信に関する情報を直接かつ一方的に収集する、②対象となった携帯電話端末の占有者において当該収集の事実を知ること及びそれを回避することが物理的に困難である、③収集・分析対象の情報の中には端末の所在地のように利用者のプライバシーに関する利益に深く関わると認められるものが含まれ得る、などの点にかんがみ、物理的な不法侵入の不存在や誰もが容易にアクセス可能な公共の空間における電波の受信という手法等にかかわらず、「プライバシーの合理的な期待」の保護と解されている同条の趣旨に基づき、令状主義の原則の要請に服すると考えられる。このとき、米国法上、通信傍受や通話番号等記録装置の設置・使用のあり方に関する電子通信プライバシー法の規律と同様に、かかる要請を具体化する新たな立法措置が求められる中で、通信傍受でも通話番号等記録装置の設置・使用でもない固有の特質を有する新種の「捜索」として位置づけられ得る。このことは、我が国において、今後 IMSI キャッチャーが普及するか否かを問わず、技術革新に対応した新種の捜査について、その実施が各人のプライバシーの権利等の基本権又は基本権に関する法益に対する本質的な制約となり得る限り、強制処分としての立法上の位置づけの再整理が必要となるという示唆を与える。
著者
海野 敦史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-07-22)

匿名表現の自由が憲法上保障される程度に関し、米国法上の議論を参照しつつ考察すると、以下の帰結が導かれる。すなわち、①匿名性は個人の尊厳の確保に資する役割を果たすうえに、それが表現物と結びつくことにより固有の価値を有することを踏まえ、匿名表現の自由は憲法21条1項に基づき保障される、②他人の基本権に関する法益を著しく害する表現については、公共の福祉に基づき制約され、当該他人との関係において表現者を特定する必要性が生じ得る限りにおいて、その匿名性についても制約される、③公共的事項に関する表現のうち、その表現者の身元の把握が民主政の意思決定過程における各種の判断に際して必要となると認められる場合における匿名表現の自由については、国民の「知る権利」と緊張関係に立つ結果、憲法上一定の範囲で制約され得る、④前記③以外の表現に関する匿名表現の自由は、前記②の場合を除き、憲法上手厚く保障される、⑤匿名性は、非表現の行為との関係においても憲法上一定の保護を受ける、と考えられる。
著者
三友 仁志
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.37-46, 2015 (Released:2015-07-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本論文では、地域情報化に内在する諸課題の解決を目指した、ユニバーサルサービス提供のための新しい枠組みを提案するともに、そのメリット・デメリットを考察し、実行可能性を検討する。条件不利地域においては、通信をあまねく利用可能とするため、ユニバーサルサービス基金制度に基づき適格通信事業者の費用を一部補填することにより、現状、アナログ固定電話を対象としてユニバーサルサービス制度が維持されている。光ネットワーク網の進展に伴い、光 IP 電話もユニバーサルサービスの対象に含まれたが、他方、携帯電話が普及し利便性も高いため、固定電話への依存度は下がっている。さらにブロードバンドの世帯カバー率も 100%に近づくなど、技術的な側面からも制度の抜本的な検討が迫られている。また、番号ユーザに全額転嫁されるというユニバーサルサービス基金への拠出の在り方にも消費者団体を中心に抵抗感が根強いため、費用負担の在り方にも再検討が必要である。一方、地域におけるブロードバンドの提供のため、2.5GHz 地域 BWA 帯が用意されているが、利用度は低く、その活用が喫緊の課題となっている。本発表では、これらの課題に総合的に対処し、地域情報化の維持発展のための枠組みを提案する。
著者
戸所 弘光
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.1-14, 2021 (Released:2022-01-28)
参考文献数
17

国際海底ケーブルは、19 世紀後半から20 世紀前半の電信ケーブルの時代に特権設定契約に基 づく一私企業による所有・運営として始まった。第二次世界大戦後は通信主権を背景に、各国の 独占事業体の共同事業によるコンソーシアムが形成され、2000 年前後のケーブル・バブルの時代 には第2、第3 キャリアを含む大規模コンソーシアムができる一方、プライベート・ケーブルが 勃興した。バブルの崩壊とともに、ケーブル建設は一時ほとんど途絶えたが、数年後「UNITY」 が成立した時には、少数の事業者によるコンソーシアムが模索された。なぜ、資金力も技術力も あるオーナーが、調整や意思決定に時間がかかるコンソーシアムを形成しようとするのか。一義 的には、国際海底ケーブルが建設・運営されるための必須条件をクリアすることであるが、新ルー ト開拓に伴うリスク分散を図り、ネットワーク強靭化のために積極的にコンソーシアムを利用し ようとする動きも出てきている。
著者
山田 肇
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-22, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
15

日本では、2011年に障害者基本法の改正、2013年に障害者差別撤廃法の制定、条約の批准など、障害者政策が段階的に強化されている。これらの法律は、公共および民間セクターが情報のアクセシビリティに対応することを要求し、特に公共機関にとって義務的と解釈できる。しかし、情報アクセシビリティへの対応は実際には進んでいない。他の国々は、官民双方に情報アクセシビリティを義務として課しており、施行力は日本よりも強い。情報通信機器やサービスの新技術がアクセシビリティ問題を容易に解決できるのを考慮すると、日本も情報アクセシビリティを義務付けることが適切である。
著者
斉藤 邦史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.127-138, 2018 (Released:2018-11-08)

本稿では,私人間におけるプライバシーの法的保護を再検討することにより,以下の考察を得た。第一に,信頼関係に基づく情報の分配状況は,個人の自律的な選択により実現する状態としてのプライバシーそのものなのであり,米国では信認義務の法理による保護の拡張が模索されている。第二に,私人間でプライバシー外延情報の「適切な管理についての合理的な期待」を保護する日本の判例法理は,当事者間の信頼関係に基づく情報の分配状況を保護法益と捉えるものであり,信認義務の法理と共通する側面がある。第三に,情報の「適切な管理」に関する事業者の義務を,信義則に基づくものと理解するならば,秘密保持義務だけでなく,情報開示義務をも基礎付けることができる。
著者
山口 真一 彌永 浩太郎 坂口 洋英
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-46, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
27

本研究では、インターネット上の口コミ投稿行動の分析を行う。分析の結果、口コミ投稿経験者は約32%にとどまった。また、回帰分析による属性検証では、投稿経験に対し、年齢が有意に負で、大卒・新聞購読・インターネット利用時間が有意に正となった。また、動機としては利他的な動機が多いという結果となった。さらに、虚偽の口コミについては、口コミ投稿経験者の約5.7%が経験しており、属性分析では年齢が有意に負で、既婚、男性が有意に正となった。また、投稿動機が「投稿自体が楽しいから」「見返りがあるから」等の利己的な人は、虚偽の口コミを投稿しやすいことが分かった。以上のことから、口コミを投稿している人はインターネット利用者の約3分の1に過ぎず、その口コミも、ある特定の属性を持った人々が投稿しやすい傾向がある。そして、虚偽の口コミは少なからずあり、特に、若い人、既婚者、男性を対象とするような製品・サービスではその傾向が強まるといえる。
著者
安岡 規貴
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.109-123, 2016 (Released:2017-02-06)

この研究は Google に対する我が国の DMCA テイクダウンノーティスの利用実態を Google 透明性レポートおよび Lumen の 2015 年上半期までのデータを利用することによって分析する。その結果、我が国において DMCA テイクダウンノーティスは、主にアダルトコンテンツと同人の著作権者が関わることによりかなり活発であることがわかった。さらに Google によって不正利用とされた削除リクエストおよび何らかの理由で対応されなかった削除リクエストが多いという問題点が明らかになった。これらの事実を基に、本稿は DMCA テイクダウンノーティスが適切に利用されているかどうかを社会全体で注意して見ることおよび申立者の DMCA テイクダウンノーティスの適切な発行を促すことを提案する。
著者
張 永祺 石井 健一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_47-4_59, 2012 (Released:2012-06-22)
参考文献数
23

中国で最も使われているマイクロブログの新浪微博の発言を分析対象とし、Twitterの日本語利用者の発言と比較しながら、中国のマイクロブログの情報伝播過程の特徴を明らかにした。分析には、「昆布の噂」に関する発言と無作為に抽出した発言の二種類のデータを用いた。結果によると、マイクロブログにおいて日本人の方がフォローの相互性が高く、個人間のやりとりに使う傾向がみられるのに対して、中国ではリツイートの利用率が高く、リツイート回数も日本より多い。また、中国ではマイクロブログにおいて情報が影響力の高い人から低い人へと伝わる。このため、中国では人気のある発言がリツイートによって短時間で多くの人に伝達される。一方、日本では、情報は水平的に伝わる傾向がある。ロジスティック回帰分析の結果では、中国のマイクロブログにおいて画像があることと個人体験的な内容ではないことがリツイートを有意に促進していた。
著者
吉見 憲二
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.81-95, 2016 (Released:2017-02-06)
参考文献数
29

2014 年に行われた第 47 回衆議院議員総選挙は、ネット選挙解禁後に行われた初の衆議院議員総選挙ということもあり、候補者のソーシャルメディア等のネット選挙手段の活用も大いに注目された。中でも、毎日新聞と朝日新聞は候補者の Twitter 投稿分析を記事にしており、従来の世論調査とは異なったアプローチでの報道がなされるようになっている。一方で、これらの新しいアプローチでの報道は方法論が確立されているとは言い難く、その信頼性に疑問が残る点もある。本研究では、発表者が独自に収集した候補者の投稿データとの比較から、報道機関による Twitter投稿分析のアプローチ及び結果について批判的に検討する。特に、毎日新聞が記事にした「自民党候補が「アベノミクス」の話題を避けた」という説に関して、その妥当性を検討する。
著者
山口 翔 植村 要 青木 千帆子
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_67-2_80, 2012 (Released:2012-12-25)

従来視覚障害者は、ボランティアや福祉機関の支援のもと、書籍を点訳したり、音訳したりして読書を行ってきた。IT技術の普及以降、スキャナで書籍を読み取り、OCR処理を行うことにより、効率化が図られている。しかし、デジタル化作業には依然多大なコストと時間がかかり、読みたいときに読みたい本を読める状況にはない。だが電子書籍が普及すれば、電子書籍のテキストデータをスクリーン・リーダーや合成音声技術を通じて読み上げることが可能となり、障害者は健常者と同じタイミングで、本を利用することが可能になると期待される。実際に、米国ではAmazonのKindleや、AppleのiPadで購入した電子書籍の多くが読み上げ可能な形となっているが、現在、日本の電子書籍においては実用的な段階にない。本論文では、日本において現段階で利用可能な視覚障害者向けの音声読み上げ機能について評価し、国内での電子書籍の普及の時代を見据えた、書籍の音声読み上げ環境を実現するための課題を明らかにする。
著者
松木 祐馬 西川 開 向井 智哉
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.29-38, 2020 (Released:2021-02-02)
参考文献数
43

近年、違法ダウンロードの取締りは社会的に大きな関心を集めている。それをめぐる議論では、違法ダウンロードは「人のもの」を盗むという点で万引きと同じ程度に取り締まるべきであるというレトリックが提示されている。本研究はこのレトリックに着目し、著作権法について特別の知識を持たない一般の大学生が、違法ダウンロードに対してどの程度の刑罰を求めるかを万引きとの比較から検討することを目的とした。大学生282 名から得られたデータを対象にベイズ推定によって違法ダウンロードに対する量刑判断と万引きに対する量刑判断がどの程度異なるかを比較したところ、万引きに対しては約半年程度長い懲役刑が求められることが明らかにされた。本研究の結果は、違法ダウンロードと万引きを同視する上述のレトリックは一般市民の意識の上では必ずしも受け入れられていないことを示唆している。このような差が生じた理由について、保護客体の相違の観点から考察を行った。
著者
松前 恵環
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.13-24, 2020 (Released:2020-08-27)

今日、子どもによるスマートフォンの利用の拡大や「スマート・トイ」の普及等により、子どもの個人情報を巡り様々なリスクが生じている。個人情報保護法制において、個人情報を保護するために重要な役割を果たしているのは、情報主体の「同意」であるが、子どもは一般に同意能力を欠くか不十分であると解されており、子どもの個人情報の処理にかかる「同意」のあり方が問題となる。米国の COPPA 及び EU の GDPR では、同意能力を付与する子どもの年齢を定め、それ以下の子どもの個人情報の処理については親権者等の同意取得が義務付けられており、近時、規制が強化される傾向がある。日本でも、同意能力を認める子どもの年齢に関する規範的な検討と、子どもの年齢確認や親権者等の同意取得を行うための方法に関する実際的な検討を進めるべきである。
著者
海野 敦史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.125-135, 2016 (Released:2017-02-06)

「放送の地域性」が放送政策の重要理念の一つとなってきた米国においては、さまざまな形でその制度的確保に向けた取組みが行われてきたが、特に直截的な措置として注目されるのが、地上放送局の免許付与に関して一定の行為規制を連邦通信委員会(FCC)が課すものである。その具体的な方法をめぐっては、米国憲法修正1条との関係から番組規律を最小限に抑えることに対する必要性が生じることを背景として、古くから FCC が試行錯誤を繰り返してきたが、2000 年に低出力 FM ラジオ放送局免許が創設されて以来、かかる行為規制を充実させるための取組みが顕著になっている。とりわけ、地上放送局と地域社会との対話の強化を指向した地域の番組の取扱い等に関して「公共検査ファイル」による情報開示を義務づけるための規律がその中心的地位を占めている。この公共検査ファイルによる情報開示については、FCC のオンライン上の統合データベースに掲載されることとなっており、近年は地上放送局のみならず CATV 事業者や衛星放送事業者等についても同様の義務が課されるなど、拡充される傾向にある。
著者
バケロ マリア 黒田 敏史
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_49-3_59, 2011 (Released:2012-03-25)
参考文献数
21

我々は第三世代携帯電話用の周波数配分において、オークションにより周波数を配分した国と、比較審査によって周波数を配分した国の間の市場成果の違いを、政策効果の推定手法 (bias corrected matching estimator) を用いて検証した。我々が分析を行った各国の市場成果は、第三世代携帯電話の普及率、携帯電話利用者に占める第三世代携帯電話利用者の割合、事業者のサービス料金、事業者数、周波数供給量、携帯電話の普及率、携帯電話のハーフィンダール・ハーシュマン指数、第三世代携帯電話のハーフィンダール・ハーシュマン指数である。推定の結果、オークションを実施した国では第三世代携帯電話の普及率が低いことが明らかになった。この結果は、市場競争の不足が普及率を低下させたメカニズムである可能性を示している。ただし、いずれの配分メカニズムにも政府が市場成果を向上させる誘因を付与することが求められる。
著者
小川 一仁 川村 哲也 小山 友介 本西 泰三 森 知晴
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-52, 2019

<p>スマートフォンの普及によって、児童や生徒がオンラインゲームでのさまざまな課金サービスに容易にアクセスできるようになった。本稿では近畿地方の小中高校生がオンラインゲームにおいてどの程度課金をしているかに関するアンケート調査の結果概要を報告する。かれらの課金経験率は約24%で、大学生を対象にした盛本(2018)と同程度である一方、社会人を対象にした新井(2013)よりは低かった。また、小中生では男子生徒の方が課金経験率が高い傾向にあった。</p>