著者
横手 逸男
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.163-178, 2020-03-31

平成28(2016)年8月8日,「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」がビデオメッセージで発表されて以降,内閣は,天皇の公務の負担軽減を図るため「有識者会議」を設置し検討を重ね,また国会では衆参両院正副議長の下で,天皇陛下の「退位に関する法整備のあり方」が検討された。内閣は,国会や有識者会議で示された意見をもとに「天皇陛下の退位等に関する皇室典範特例法案」を作成して国会に提出し,本法案は平成29(2017)年6月9日に可決成立し,平成31年4月30日に施行された。本法の制定過程においては,法案の施行日,天皇陛下の退位と新天皇の即位に関する儀式をめぐる憲法上の問題,女性宮家創設の問題等さまざまな議論が噴出した。本稿では,皇位継承儀式の特に憲法上の論点と課題を明確にし,今後の研究の一助としたい。
著者
岩崎 敏之
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-8, 2012-03-31

学生が主体的に学ぶために有効な方法の一つとして、アクティブラーニングがある。本論では、木造耐力壁ジャパンカップの意義を振り返ることにより、アクティブラーニングの仕掛けとして活用できるイベントの必要条件として次の3つを提示した。1.実践的に取り組んだことへの成果が可視化されること2.個人の取り組みではなく、チームで取り組まざるを得ない要求がなされること3.ひとつの教育機関で閉じた形ではなく、社会と関わる機会が提供されていること
著者
野口 周一
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.121-128, 2019

2018年4月より道徳の教科化が始まった。その道徳の教科書を分析すると、問題点が透けて見えてくる。つまり徳目主義を克服できないということである。筆者は埼玉県立朝霞高校の台湾修学旅行が偏向教育とやり玉に挙げられたことから説き起こし、小学校で「国を愛する心情」の育成がそれ以前から始まっているという問題点を指摘した。即ち、愛国心教育の問題は未解決のまま、今後の課題として存在する。私たちは一つひとつの歴史事実の背景と本質に目を凝らさなければならない。そして愛国心教育の問題に取り組みつつ、筆者の今後の道徳教育研究の序論としたい。
著者
松本 竜一
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.105-125, 2020

本稿では,アート・マーケティングの拡張を試みるためにマーケティング4.0の知見を借りる. そして, 新たなセグメントに対するアプローチを検討する. 新たなセグメントとして期待できるのは若者, 女性, ネティズン(Young people, women, and netizens : YWN)である. これらのセグメントは文化に影響を与えるという. そこで, 本稿はアートの消費促進を検討するために, 若者, 女性, ネティズンのサブカルチャー的な想像力の活用について考察する.
著者
山本 幸正 Yukimasa Yamamoto 湘北短期大学 Shohoku College
出版者
湘北短期大学・紀要委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.29, pp.109-120, 2008

敗戦後に公布された法律、たとえば姦通罪を廃止した改正刑法、あるいは優生保護法などが文学に与えた影響は決して小さなものではなかった。しかし1958 年から完全に施行された売春防止法が文学に与えた影響については、これまでさほど論じられて来なかった。本稿では、敗戦後に小田原にあった抹香町という「淫売窟」を舞台に数々の作品を発表し、ブームにまでなった川崎長太郎の諸作品を読むことを通して、売春防止法と文学の関わりの一側面について考察することを試みた。「娼婦」一般ではなく、ひとりの女の肉体を通して売春防止法と対峙した私小説家の姿は、売春防止法以後の買売春と文学の関わりを考える上でも、看過することのできないものである。
著者
山本 幸正 Yukimasa Yamamoto 湘北短期大学 Shohoku College
出版者
湘北短期大学・図書館委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.30, pp.143-154, 2009

1950 年に発表された「抹香町」以降、徐々に醸成されていった川崎長太郎のブームは、平野謙が「新事態」と呼んだように、マスメディアの時代における文学について再考を促すものだった。本稿は、『自選全集』にも収録されず読まれないままになっている川崎の作品が、先行作品のメタ言説となっていることを明らかにし、次いでその作品を享受した女性読者を分析することで、1950 年代における小説(家)と読者の関わりの一端をあきらかにすることを試みたものである。
著者
前田 久美子 佐藤 美保子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.147-161, 2020

本稿では、2 年間2名の非常勤講師がインテリアデザイン教育を本学129 教室と図書館においてクリスマスディスプレイをテーマに、プロジェクト学習として取り組み考察している。その結果、実践的な学習であるアクティブラーニングが学習活動の意欲やコミュニケーション能力の発達に効果をもたらすと考えられた。今後のインテリアデザイン教育の授業運営と研究について、継続的に考察することとする。
著者
内海 太祐
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-11, 2019-03-31

2000年代以降、基礎学力の低下は多くのところで指摘されており、基礎学力を向上させることは大学教育を実施する上で多くの大学にとって喫緊の課題である。本研究では学生の基礎学力を測定する上で、就職活動などでもよく使われるSPIの非言語分野の理解力向上を適応学習を活用しながら実施した。通常の紙テキストによる一斉授業で同内容を実施したものとの比較した結果、適応学習を適切に運用すれば理解度の低い学生の理解力向上につながると考えられる。また、理解度の高い学生についても学力を伸長できる可能性がある。
著者
小笠原 大輔
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.73-81, 2019-03-31

短期大学生を対象に側方倒立回転の上達を目的とし、週1回4か月間「なかよしぶらぶら側転」の簡易版である「なかよしパッチンぐるぐる」を行った。その結果、実施前後の習熟度を比較したところ、多くの者に左右両方向とも上達が見られた。また多くの者が楽しいと感じながらも、それほど難しさを感じていないことが明らかになった。従って、本実践は側方倒立回転上達のための初歩段階としての運動として有効であると考えられる。
著者
横手 逸男 Itsuo Yokote 湘北短期大学保育学科
出版者
湘北短期大学・図書館委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.36, pp.135-145, 2015-03-31

平成11 年には,「国旗及び国歌に関する法律」が制定された。東京都教育委員会は平成15 年に「入学式,卒業式等における国歌斉唱の実施について(通達)」を都立学校の各校長宛に発したが,近年,これに関連する訴訟が数多く提起されている。本稿では,平成23 年5 月30 日の最高裁判所判決を検討して,「君が代斉唱」と憲法19 条の思想・良心の自由に関する問題を考察してみたい。The Act on National Flag and National Anthem was enacted in 1999. The Chair of the Tokyo Metropolitan Board of Education, as of October 23,issued a circular notice to the principals of Tokyo Metropolitan high schools, etc. entitled "Circular Notice on the Implementation of the Hoisting of the National Flag and the Singing of theNational Anthem in the Enrollment Ceremony, Graduation Ceremony, etc. In this paper especially studies on May 30, 2011, the Supreme Court decision.
著者
伊藤 善隆
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-14, 2018-03-31

本稿は、島根県出雲市大社町の手錢記念館に所蔵される俳諧資料の中から、『深秘十八体』(写本一冊)と「諸国誹人名寄」を翻刻紹介するものである。
著者
伊藤 善隆
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.39, pp.15-23, 2018-03-31

美濃派の季寄である『俳諧鑑草』(個人蔵)を翻刻する。本書は、季語を十二ヶ月に分類・配列したもので、美濃派の季寄として注目すべきものである。
著者
丸井 貴史
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.39, pp.25-46, 2018-03-31

式亭三馬の読本『梅精奇談 魁草紙』は、中国白話小説『今古奇観』所収作品のうち四篇を翻案したもので、近世における白話小説受容のあり方を考える上で看過することのできない作品である。全五巻のうち、本稿では巻四・五の翻刻を掲げる。巻一~三については、本誌前号を参照されたい。
著者
大塚 良治 Ryoji Otsuka 湘北短期大学総合ビジネス学科
出版者
湘北短期大学・図書館委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.34, pp.127-152, 2013-03-31

2000 年3 月の鉄道事業法改正により、旅客鉄道事業の退出は、従来の許可制から、原則1 年前の事前届出制に緩和され、以降鉄道路線の廃止が続出した。近畿日本鉄道(近鉄)は、同社が運営する内部・八王子線について、長年にわたって乗車人員減少に伴う営業損失が続いていることを理由として、BRT(バス高速輸送システム)への転換を提案した。これまで廃止された鉄道路線の多くが、営業損益の改善を見込めないことを理由として廃止に追い込まれてきたが、一方で不採算路線について費用対効果分析が実施され、社会的便益が会計上の営業損失を超えると判断された結果、行政より補助金投入がなされて、存続が実現している場合がある。内部・八王子線についても、費用対効果分析を実施した結果、鉄道存続の方がBRT 化よりも社会的便益がはるかに大きいことが明らかとなった。市民も株主として出資する第三セクター会社に同線の運営を継承させた上でかつ特殊狭軌路線として維持することが、最大の社会的便益かつ最小の公的負担額を実現し、市民の利用を最も促進することができる方策である。The revisions of the railway business act in Japan result many abolition cases of unprofitable railways.Kintetsu corporation expressed a conversion of Utsube and Hachioji lines from railways to Bus Rapid Transit (BRT). But we must discuss whether unprofitable railways must be continued or abolished, based on the costbenefit analysis. There are many cases of realizing continuations of railways, since the local governments take into account that social benefits of unprofitable railways above operating profits of these railways. Based on the costbenefit analysis of Utsube and Hachioji Lines, we must discuss a measure that the local governments set up the third sector railway company, then citizens invest in this company. This measure leads realizing maximum social
著者
大塚 良治 Ryoji Otsuka 湘北短期大学総合ビジネス学科
出版者
湘北短期大学・図書館委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.34, pp.115-126, 2013-03-31

近年、バス高速輸送システム(BRT)が鉄道の代替交通機関として認知されるようになってきた。近畿日本鉄道(近鉄)は、同社が運営する内部・八王子線について、長年にわたって乗車人員減少に伴う営業損失が続いていることを理由として、同線のBRT への転換を提案し、四日市市に対してBRT 転換の初期費用の補助を求める意向を表明した。鉄道を廃止して、バス専用レーンを設置した、旧鹿島鉄道代替バス(かしてつバス)の事例では、乗車人員の回復や地価下げ止まり効果は確認されていない。定時性が確保されかつ運営費用が低廉という利点だけでBRT 化を進めるのではなく、鉄道の存廃について、社会的便益の観点で検証することが肝要である。The Kintetsu corporation expressed a plan of a conversion of Utsube and Hachioji lines from railway to Bus Rapid Transit. This paper discusses impacts by abolishing railways based on a case of Bus Rapid Transit after abolishing Kashima Railway. We must discuss a continuation of railways based on cost-benefit analysis.
著者
伊藤 善隆
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-16, 2017-03-31

本稿は、島根県出雲市大社町の手賤記念館に所蔵される俳諧資料の中から、『俳諧根本式』(写本一冊)を翻刻紹介するものである。手賤家は、貞享年間に大社に移り住んだ喜右衛門長光(寛文二年~寛延二年)を祖とする商家で、町役の大年寄を長く勤めた。歴代の当主は文芸にも関心を寄せ、和歌・漢詩・俳諧に熱心であった。本書には、序文や奥書がなく、成立や書写者、書写年次などは不明である。しかし、巻頭(第一丁裏)に、「冠李」の蔵書印が捺してあることから、おそらくは、冠李(享保四年~寛政八年、三代目当主季硯の弟)が、自ら書写して所蔵していたと推測されるものである。なお、本書と同じ罫線を摺った料紙を使用し、筆跡も共通する『俳諧十五篇』(手賤記念館蔵本)については、前号に翻刻を掲載した。本書は、たんに冠李に関わる資料というだけでなく、近世中期の大社でどのように俳諧が享受されていたのかを探るためにも重要な資料である。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.33, pp.73-105, 2012-03-31

鉄道事業者は自社の収入増加に関心を集中させるために、自社の利用促進策を主要な営業施策としがちにすることは否めない。本論は、異なる鉄道事業者同士が戦略的提携を実施することによって、鉄道ネットワークの持続的運営につなげる方策について議論する。特に、JR 旅客会社や大手私鉄が自社の利用促進策に、地方の中小私鉄を積極的に取り込むことが、自社の収入増加につながるとともに、中小私鉄の活性化ひいては鉄道ネットワークの持続的運営にも寄与する。本論では、JR 旅客会社の収入分配に見る鉄道ネットワークの魅力低下の事例をまず考察した上で,鉄道事業者間の戦略的提携の事例を概観し、JR 旅客会社・大手私鉄と中小私鉄による戦略的提携の効果と可能性について、アンケート調査の結果を基に検証する。