著者
大川 なつか
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.49-59, 2019-03-31

西洋において記憶術は、修辞学の一つとして古い歴史をもつ。しかし、我が国の西洋教育史において、記憶術はこれまであまり着目されてこなかった。そこで本稿では、記憶術の歴史をエラスムスにみる教育方法を中心に検討する。キケロの記憶術は、クインテリアヌスによって批判的に受け入れられ、エラスムスによって受け継がれる。他方、エラスムスは、キケロ主義者であり、また新プラトン主義者でもあったカミッロと記憶術を巡って対立する。16世紀当時、彼らの論争は、ルネサンス期の記憶術の在り方において関心を集めたが、その影響は、17世紀に初の子ども向け絵入り教科書『世界図絵』を出版したコメニウスの中に見て取ることができる。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.38, pp.63-76, 2017

本論の目的は、東日本旅客鉄道(JR 東日本)による常磐線特急料金変更の動機を解明し、同社の利益増加と地域活性化の両方を実現する方策を提示することである。常磐線特急料金変更は、割安な特急定期券の廃止を伴ったことから、沿線自治体および消費者の反発を招いた。JR 東日本は特急料金収入の増加を狙い、特急定期券の廃止を断行したが、特急定期券の復活こそが同社の利益増加と地域活性化につながる。政府は消費者保護を図るため、鉄道事業法を改正するとともに、鉄道事業者もステークホルダーと連携して魅力的な街づくりに向けて共働することが求められている。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.39, pp.117-134, 2018-03-31

観光まちづくりの中で、公共施設として自治体が保有するプロ野球球場を核としたまちづくりによって交流人口の増加をはじめとする地域活性化に取り組む地域を事例として、企業会計的アプローチに基づく観光まちづくりの論理の解明を試みる。仮説「公共施設を活用した観光まちづくりへの企業会計手法の適用は、自治体と観光関係主体の戦略的提携に役立ち、観光誘客を導く」を検証するために、学術的設問として「公共施設を活用した観光まちづくりへの企業会計手法適用の論理とは何か」および「公共施設を活用した観光まちづくりへの企業会計手法の適用は、自治体と観光関係主体の戦略的提携に役立ち、観光誘客を導くか」を提示し、検証する。プロ野球球場は観光振興の視点も踏まえて、鉄道アクセス利便性確保を前提に、着地型観光と連動した地域活性化を実現するため、企業会計の観点を踏まえた観光関係主体との戦略的提携を締結することが、プロ野球・鉄道・地域の「三方よし」を実現することにつながると考えられる。そして、地方自治体は持続可能なまちをつくるためのビジョンを提示し、定住人口と交流人口の増加を図ることが求められる。
著者
越川 靖子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.161-176, 2013-03-31

最近、活気のある市場としてコンテンツやキャラクターが挙げられるほどに、国内だけでなく国外でも支持を得ている。これにより多くのモノに何かしらのキャラクターが付されることが多く、製作者も消費者もキャラクターの根本的な存在理由を考えずに、ただキャラクター商品を市場に投入しているように見受けられる。よって、消費者にとってキャラクターは全てキャラクターであってそれ以上それ以下でもないもの、つまりコンテンツ、キャラクター、ブランドといった表現として、各々受け取られていないのではないかという疑問がある。本稿ではキャラクターをその根本的な存在理由を基に分類した上で、最近特に盛り上がっているゆるキャラとブランド化についても触れている。
著者
越川 靖子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.32, pp.155-167, 2011-03-31

「ながら」が当然になったことから、TVCM におけるBGM は消費者にとって映像よりも重要な情報伝達およびコミュニケーション手段になったと考えられる。音楽はムード作りや感情に大きく影響を与え記憶に残りやすくなる。つまり、日本人の好む音楽的特徴を明らかにすることで、記憶に残りTVCM の内容や印象を消費者へ訴求しやすくなるといえる。 海外文献レビューを行うと、英語は強弱アクセントであることや音符に言葉をのせやすいことから音楽的要素のみで実証研究を行っている。しかし、日本語は高低アクセントや1 語1 音といった違いがあるため、本稿では音楽的特徴および日本語的特徴を併せて実証研究を行った。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.32, pp.107-142, 2011-03-31

本論は,鉄道事業者が通勤輸送向け着席保証列車を運行する意義を明らかにし,今後の通勤輸送向け着席保証列車の新規運行の可能性を展望することを目的とする。通勤輸送向け着席保証列車の意義および運行可能性について,全国の事例および東武鉄道東上本線TJ ライナーの採算性分析を踏まえ検討する。利用客の着席ニーズが高い場合,鉄道事業者は,通勤輸送向け着席保証列車を運行することで,収益を確保することができる。しかし,鉄道事業者にとって,通勤輸送向け着席保証列車の運行は,企業価値向上と着席機会の提供を通じた利用客の便益確保を両立する手段として位置付けることが重要である。利用客に着席という「選択肢」を提供する通勤輸送向け着席保証列車を運行することで,鉄道の魅力を向上させ,環境に優しい鉄道の利用促進につなげることができれば,自動車の利用者を減らし,CO2 削減,交通事故防止および道路渋滞の抑制を図ることも可能となる。
著者
横手 逸男
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.30, pp.155-169, 2009-03-31

日本国憲法は「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」(2 条)と規定し、皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」(1 条)と定めており、皇位継承資格を「男系の男子」に限定している。皇位継承の安定的確保は、国家の根本体制にもかかわる重要な問題である。しかし、皇太子の次の世代の男子が悠仁親王1 人という現況においては必ずしも「安定的な皇位継承」が確保されているわけではない。皇位継承問題、皇室典範改正問題については今までなされた論争をふまえて慎重かつ十分な検討が必要である。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.37, pp.95-113, 2016

北海道新幹線について、日本一割高な特急料金の上限設定が総括原価方式に基づき認可された。しかし、割高な特急料金は、移動の自由の制約ならびに地域間交流や地域活性化の阻害要因となる懸念がある。航空路線に対して競争力のある価格設定の企画乗車券や鉄道の特性を生かした周遊券の全国の JR 線の駅窓口での発売、旅行商品の発売および寝台列車・観光列車を JR 他社と協力して運行すること等の工夫が必要である。JR北海道は、JR 他社との戦略的提携を進め、北海道新幹線の利便性向上を進める必要がある。また、JR グループと沿線自治体が連携して、道南・青森エリアの観光資源を広域的に PR することで、新たな観光需要を掘り起こす取り組みも必要である。JR 北海道が列車の安全運行に専念できる制度設計は、北海道新幹線の信頼性を高め、道南・青森エリアの観光振興に貢献する最善策である。
著者
大塚 良治
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.33, pp.57-72, 2012-03-31

鉄道会社が鉄道車両を取得する方法としては主に、車両メーカーに発注し新造車両の引渡しを受ける方法と、他社の中古車両を譲り受ける方法の2 つがある。比較的財政的余裕のあるJR 旅客会社や大手私鉄では、メンテナンスコスト削減や省エネを図ること等を意図して、新造車両を導入することも可能である。そして、旧型車両を廃車にすることが決定された場合、解体処分または他社への譲渡等を選択することとなる。しかし、中小私鉄にとっては、新造車両を導入するための初期投資資金を捻出することは困難な場合が多いことから、JR 旅客会社や大手私鉄で廃車となった中古車両に目を向けることとなるのである。鉄道車両のうち「電車」の法定耐用年数は13 年であるが、通常鉄道車両の使用期間は30 年〜 40 年である。本論は、新造車両の取得と減価償却に係る会計処理、および中古車両の売買と減価償却に係る会計処理をそれぞれ検討し、廃車時期としては比較的短期と判断される年数として新造から20年以内に廃車となることが意思決定された鉄道車両に係る減損処理について議論する。そして、減損処理を実施することで、投下資本利益率(ROI)向上すること、および資産の過大表示は、ROI を押し下げる要因となることを明らかにする。
著者
西岡 由美
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.28, pp.19-28, 2007-03-31

This article focuses on the path dependency in the young labor market by using micro-data of 4,159 new employees in 994 companies.In this article, the following findings are revealed: (a) path dependency factors such as educational background and transitional process (School-to-work) influence the separation rate of young employees and current evaluations at each company; (b) the tendencies of the path dependency are different between high school graduates and university (including technical and junior college, graduate school) graduates, (c) in the higher education sector, the impact of the path dependency factors on the evaluation are more effective than others, (d) in high school graduates case the separation rate is influenced by educational backgrounds, whereas the separation rate is affected by the path backgrounds in university graduates.
著者
小棹 理子 関 祐太郎
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.31, pp.63-78, 2010-03-31

テキストデータを対象とするテキストマイニング手法を用いて、本学のオープンキャンパス来場者(高校生)に対するアンケート調査の回答部分のうちの感想・コメントなど、自由記述部分の分析を行った。昨年同様に、6月と7月の来場者データを対象とし、分析結果の年次変化を検討した。6 月と7 月では来場者の進学意思の決定度合いが異なることと、学科ごとに印象が違うことは昨年と同じ傾向が認められた。また、効果的なイベントなどを抽出するのに本手法が有効であることが示唆された。
著者
内藤 寿子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.29, pp.95-107, 2008-03-31

映画『あれは港の灯だ』(今井正監督 水木洋子脚本 1961 年 東映)は、「李承晩ライン」を舞台に、日本漁船で操業する在日韓国人青年の葛藤を描いた作品である。この作品は、日本と朝鮮半島のはざまで生きざるをえない「在日」のアイデンティティーの問題を先駆的にとらえた作品だといえ、現在、高く評価されている。本稿では、『あれは港の灯だ』の脚本を執筆した水木洋子に着目し、映画の製作過程の一端を明らかにした。
著者
大橋 まり子
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.28, pp.101-111, 2007-03-31

This paper compares apologies by Japanese and Australians. The data is based on the result of a Discourse Completion Test from 53 Japanese and 22 Australians. The result shows that Japanese apologies are influenced by uchi soto relation, on the other hand Australian apologies have no relation to social factors.
著者
小棹 理子 石田 英弥
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.30, pp.83-95, 2009-03-31

テキストデータを対象とするテキストマイニング手法を、本学のオープンキャンパス来場者(高校生)に対するアンケート調査の回答部分のうち、感想・コメントなど、フリーコメント部分の分析に適用することを試みた。参加生徒は、いずれの学科においても「楽しく」「良い雰囲気」、と答え、ポジティブ評価であるが、学科により多少印象が異なることがわかった。また、6 月時点の感想「また来たい」、が7 月では見られなくなったことが興味深い。
著者
横手 逸男
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.163-178, 2020-03-31

平成28(2016)年8月8日,「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」がビデオメッセージで発表されて以降,内閣は,天皇の公務の負担軽減を図るため「有識者会議」を設置し検討を重ね,また国会では衆参両院正副議長の下で,天皇陛下の「退位に関する法整備のあり方」が検討された。内閣は,国会や有識者会議で示された意見をもとに「天皇陛下の退位等に関する皇室典範特例法案」を作成して国会に提出し,本法案は平成29(2017)年6月9日に可決成立し,平成31年4月30日に施行された。本法の制定過程においては,法案の施行日,天皇陛下の退位と新天皇の即位に関する儀式をめぐる憲法上の問題,女性宮家創設の問題等さまざまな議論が噴出した。本稿では,皇位継承儀式の特に憲法上の論点と課題を明確にし,今後の研究の一助としたい。
著者
岩崎 敏之
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-8, 2012-03-31

学生が主体的に学ぶために有効な方法の一つとして、アクティブラーニングがある。本論では、木造耐力壁ジャパンカップの意義を振り返ることにより、アクティブラーニングの仕掛けとして活用できるイベントの必要条件として次の3つを提示した。1.実践的に取り組んだことへの成果が可視化されること2.個人の取り組みではなく、チームで取り組まざるを得ない要求がなされること3.ひとつの教育機関で閉じた形ではなく、社会と関わる機会が提供されていること
著者
野口 周一
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.121-128, 2019

2018年4月より道徳の教科化が始まった。その道徳の教科書を分析すると、問題点が透けて見えてくる。つまり徳目主義を克服できないということである。筆者は埼玉県立朝霞高校の台湾修学旅行が偏向教育とやり玉に挙げられたことから説き起こし、小学校で「国を愛する心情」の育成がそれ以前から始まっているという問題点を指摘した。即ち、愛国心教育の問題は未解決のまま、今後の課題として存在する。私たちは一つひとつの歴史事実の背景と本質に目を凝らさなければならない。そして愛国心教育の問題に取り組みつつ、筆者の今後の道徳教育研究の序論としたい。
著者
松本 竜一
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.41, pp.105-125, 2020

本稿では,アート・マーケティングの拡張を試みるためにマーケティング4.0の知見を借りる. そして, 新たなセグメントに対するアプローチを検討する. 新たなセグメントとして期待できるのは若者, 女性, ネティズン(Young people, women, and netizens : YWN)である. これらのセグメントは文化に影響を与えるという. そこで, 本稿はアートの消費促進を検討するために, 若者, 女性, ネティズンのサブカルチャー的な想像力の活用について考察する.