著者
永山 賀子 今野 創祐 逸村 裕
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.124, pp.2154, 2023-09-30 (Released:2023-10-24)

国立大学図書館における除籍の現状を規程や課題,再活用方法から明らかにし,今後必要な方策を検討するため,Webサイト分析と質問紙調査を行った。その結果,館によって規程の充実度に差があること,現場での課題は書架スペースの確保,業務上の負担等であることなどが明らかになった。今後詳細な公開規程を備えていくことと,全国的なシェアード・プリントを提案する。業務上の負担が大きいという館が多い以上,すぐに取り組むことは難しいだろうが,現状を改善するため少しずつ検討を進めていく必要がある。
著者
永澤 恵美
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.121, pp.2137, 2022-08-31 (Released:2022-08-02)

東北大学附属図書館では10年以上前から情報発信ツールの一つとしてSNSを活用してきた。近年,新たなツールの出現や既存ツールの機能アップデートのほか,スマートフォンやタブレット端末の普及により,SNSの利用がより身近で手軽なものとなっている。本稿では,Twitter,Instagram,YouTubeといった代表的なSNSを活用した大学図書館の新たな情報発信のあり方や,運用体制とルール策定のほか,活用事例を紹介する。
著者
小島 浩之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.1-11, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

本稿は,図書館職員が中国の古典籍を整理する際に必要な情報を得るための手引きとして,基礎知識や基本情報をまとめたものである。漢籍の定義からはじめて,漢籍を読み解くための基本参考書,辞書・辞典類について解説を加えたのち,分類,目録,書誌学・古文書学の順に,それぞれの伝統や学術背景に則して論じ,最後に敬意表現や避諱を例に,内容から年代などを推定する実例を附している。
著者
寺島 久美子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.1706, 2017-12-29 (Released:2017-12-29)

本稿では2016年11月に南洋理工大学(NTU),シンガポール国立大学(NUS),シンガポール経営大学(SMU)で実施したインタビュー調査に基づき,シンガポールの大学図書館での研究支援について報告する。NTU図書館はオープンアクセス義務化やリサーチデータポリシーに対応してきめ細かなサポートを行い,NUS図書館は研究サイクル全体を支援する組織を立ち上げ,SMU図書館は商用の研究マネジメントツールを導入して研究情報登録の効率化を図っていた。シンガポールの大学図書館は先進的な研究支援サービスを提供し,研究成果の可視化に貢献していた。
著者
森嶋 桃子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.121, pp.2141, 2022-08-31 (Released:2022-08-26)

慶應義塾大学湘南藤沢メディアセンターでは2020年春,コロナ禍によって不可能となった対面によるレファレンスサービスの代替手段として,チャット,LINE,ZoomといったICTツールの利用を開始した。また,キャンパスに来られない学生への図書館のプレゼンスを高め,新サービスを広報する手段として,SNS(Twitter,Facebook,Instagram)を積極的に活用した。各ツールの特徴,メリットやデメリット等について紹介する。
著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1718, 2018-03-31 (Released:2018-03-07)

大学図書館における「教育」の機能は重要さを増しており,その成否の鍵を握るのが図書館職員である。本研究の目的は,国立大学の大学図書館における「教育」活動に着目し,その担い手となる職員の量と質に関して,大学間の格差の実態を明らかにすることである。分析の結果,とりわけ司書数における雇用形態別の大学階層間格差は拡大していることが明らかとなった。大規模な総合型大学では,小規模な単科型大学に比べて,正規採用で専門性の高い司書が,「教育」活動に従事する傾向が強まっている。
著者
高橋 菜奈子 庄司 三千子 山本 淳一 餌取 直子 豊田 裕昭 立石 亜紀子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2035, 2019-08-31 (Released:2019-09-26)

千葉大学,お茶の水女子大学,横浜国立大学は平成26年に図書館間連携に関する申し合わせを結び,単独大学では不可能な課題解決手法の開発・実施に取り組んできた。5年間という当初に設定した期間を経過し,三大学が当面の検討事項として掲げた6つの課題について,これまでの活動を総括し,成果と課題をまとめる。特に三大学連携の発端となったシェアード・プリントについては,電子ジャーナルのバックファイルがあるものについて実験を行い,利用の実態を明らかにし,本格的な実現に向けた課題点を整理した。
著者
尾城 友視
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.2034, 2019-03-31 (Released:2019-04-25)

近年オランダでは,政策レベルでオープンアクセス (OA) が推進され,各大学図書館において現場レベルでの支援が行われている。本稿では,2018年11月にユトレヒト大学,ティルブルフ大学,オランダ大学協会 (VSNU) で実施したインタビュー調査に基づき,オランダの大学図書館におけるOA支援について報告する。ユトレヒト大学では,戦略プランにOA支援を位置づけ,OAファンドやジャーナル出版支援といった取組みを進めている。ティルブルフ大学では,オープンサイエンスに関するアクションプランの中で,ジャーナル出版支援やプレプリント発信等を目指す動きが見られる。VSNUでは,出版社交渉をはじめとする活動により,国内のOA活動を推進している。これらのオランダにおける取組みは,日本の大学図書館における研究支援のあり方を考える上でのモデルケースになると考える。
著者
佐藤 初美
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.2032, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)

1985年に運用を開始したNACSIS-CATは,共同分担目録方式によって日本の大学図書館の業務負担を軽減するとともに総合目録データベースの構築に成功し,日本国内のみならず海外の日本関連の研究者たちの研究活動に大きく貢献した。一方で学術情報流通の主流は着実に紙から電子へと移行した。将来にわたって学術研究の支援を確実に行っていくためには,NACSIS-CAT/ILLを基本とした学術情報流通の枠組みを早急に再構築していく必要がある。本稿では,新たな学術情報システムの構築を巡る検討の経緯を振り返り,2020年段階での変更点を詳述するとともに,その後の展望について述べる。
著者
末田 真樹子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.1705, 2017-12-29 (Released:2017-12-29)

英国における電子リソースの利用統計についてその活用事例を報告し,日本における利用統計の現状と可能性について検討する。本稿は平成28年度に実施したインタビュー調査に基づき,電子ジャーナル・電子ブックの利用統計を一元的に提供するJournal Usage Statistics Portal (JUSP)の現状と課題,各図書館におけるJUSPの利用状況,利用統計を中心とした電子リソース管理について報告する。JUSPは意思決定において,利用統計を活用できるように設計されており,参加機関は各状況に応じて利用している。最後に国内の利用統計および電子リソース管理業務の動向についても概観する。
著者
首東 誠
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.24-33, 2016-03-04 (Released:2017-09-29)

学位規則の改正(平成25年3月11日公布,同年4月1日施行)により博士論文がインターネットの利用により公表されるようになってから丸2年が経過し,規則上,施行初年度の博士論文(全文もしくは要約)は全てインターネット(原則,機関リポジトリ)上に出揃うこととなった。オープンアクセスにかかる新たな動きが見られる今,国としての初のオープンアクセス義務化政策である博論OAにかかる学位規則の改正について,当時,文部科学省の大学図書館係長として関わった立場から改めて振り返ってみた。
著者
山田 周治 忽那 一代
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.27-35, 1998-08

京都大学附属図書館では、平成8年度から世界へ向けて情報発信を目指した電子図書館システム(京都大学エンサイクロペディア)を計画し、平成10年3月より正式公開した。このシステムの主要な機能の1つである新しいデータベースとして、附属図書館の所蔵する貴重資料の画像テータを含んだマルチメディアデータベースがある。このデータベースの作成を電子図書館の公開に先行して平成8年度科学研究費で実施した経緯を報告する。併せて画像データ作成テスト結果の概要を報告する。
著者
渡邉 朋子 船山 桂子 大和田 康代 Watanabe Tomoko Funayama Keiko Owada Yasuyo ワタナベ トモコ フナヤマ ケイコ オオワダ ヤスヨ
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
no.94, pp.18-27, 2012-03

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震において,筑波大学附属図書館は震度6 弱の地震に見舞われた。開館中の地震にも関わらず人的被害は幸いにしてゼロであったが,図書の大量落下を筆頭に施設設備・所蔵資料は多大な被害を受けた。そのような状況下で,当館は部分的開館と復旧作業を並行して行うことになった。本稿では,当館の職員およびボランティアによる復旧の過程について報告する。
著者
渡邉 朋子 船山 桂子 大和田 康代
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.18-27, 2012-03-31 (Released:2017-11-01)

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震において,筑波大学附属図書館は震度6弱の地震に見舞われた。開館中の地震にも関わらず人的被害は幸いにしてゼロであったが,図書の大量落下を筆頭に施設設備・所蔵資料は多大な被害を受けた。そのような状況下で,当館は部分的開館と復旧作業を並行して行うことになった。本稿では,当館の職員およびボランティアによる復旧の過程について報告する。
著者
岡田 悦夫
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.31-41, 2008-08-31 (Released:2017-11-09)

2007年4月から,神戸学院大学ポートアイランド図書館を全面業務委託した。業務スタッフ15人による図書館まるごとの運営は,全国的にも先駆的事業であるのか,関西だけでなく,中国・中部・関東・東北からも大学関係者等が大勢見学に訪れている。新図書館開設準備や委託業務を導入した経緯,導入後の動きなどを記録することで次へのステップを図り,記録を公開することにより,全国の大学(図書館)の参考になればと考えた。なお,この事業は,2007年度私立大学等経常費補助金特別補助「教育・学習方法等改善支援」に採択された。
著者
関川 雅彦
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.11-19, 2014-09-05 (Released:2017-10-31)

わが国の大学図書館の管理運営の状況について,文部科学省が実施する学術情報基盤実態調査報告をもとに分析した。分析対象は,資料購入費,図書館運営費,図書館職員数,業務委託,年間購入冊数,電子ジャーナルアクセス可能タイトル数等である。図書館の予算,図書館職員数,年間購入冊数のいずれも減少を続けており,職員は臨時の割合が専任の割合を超えた。業務種別では整理業務の比率が下がり,業務委託は全面委託が急増し,全体の10%に達している。
著者
SCHIMMER Ralf GESCHUHN Kai Karin VOGLER Andreas 田村 香代子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2012, 2018-08-31 (Released:2018-09-12)

この白書では,現在の購読型科学雑誌の集合体をオープンアクセスのビジネスモデルへ大規模に転換することについて,事実に基づいて強力に論証する。現存する雑誌は十分にテストされた機能をもっているので,維持され,かつ21世紀の研究のための需要に応えなければならないが,同時にその裏にある支出の流れは大幅に再構築される。オープンアクセスへ向けたこの決定的な前進は,十分な勢いをもっている。今ある多様なイニシアティブは,この明確な目標にまとまってゆくために協調するものでなくてはならない。研究の国際的な性質は,世界の一流の研究機関のコンセンサスを通じたものでなくては,この転換が真に世界的な規模で達成されることはないだろうということを暗示している。全ての状況を勘案すれば,すでに学術出版システムに投下されている資金は,未来へ向けて持続可能な転換を可能とするために十分なものである。現在雑誌購読システムの中に封じ込められている資金は回収されオープンアクセス出版サービスに再投資されるべきであるという理解が共有されなければならない。現在の図書館資料購入予算は,財政面やそれ以外のリスク無しでの転換を可能とするための究極の宝物庫である。目標は,今もなお研究者から要求されている,出版社が提供する確立したサービス水準を維持する一方で,必要な支払の流れを再定義し再編成することである。根本的なビジネスモデルを破壊することによって,雑誌出版が生き延びていくための力は維持され,未来の学術界の発展へ確かな足跡を残すことができる。