著者
金子 康樹
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.2151, 2023-03-31 (Released:2023-06-01)

研究DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として,わが国の大学,研究機関において,研究データ管理に対する取り組みが急速に進んでいる。研究データ管理がどのような背景で重要視されるようになったかを概観し,それを踏まえて,慶應義塾における研究データ管理の実施に向けて,研究データポリシーの策定,データ管理計画の項目策定,GakuninRDMの利用などのこれまでの取り組みを紹介し,今後に向けて機関を超えた協力の有効性を述べた。
著者
小陳 左和子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.1-11, 2012-03-31 (Released:2017-11-01)

2011年3月11日に発生した東日本大震災により,東北大学附属図書館において地震当日に職員や利用者がとった行動,施設や書架,蔵書等に受けた被害,その後のボランティアとの協働による復旧作業や図書館サービス再開の経過及び今後の復興に向けた取り組みについて,10か月が経過した時点での状況を報告する。
著者
酒井 由紀子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.71-85, 2014-09-05 (Released:2017-10-31)

大学図書館の機能・役割の高度化・多様化に伴い,専門性を有した大学図書館員の人材確保はより重要なものとなっている。本稿では,そのために必要な人材養成・育成の現状と強化の取組みを幅広く概観し,大学図書館員の専門職制度を目指して今後とるべき関係者の方策を探る。
著者
オージェリ ジョン 大学図書館研究編集委員会
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2135, 2021-11-30 (Released:2022-06-24)

コロナ禍がキャンパスの対面活動の大半を実質停止させたとき,それはまた,教育・学習の実践活動において,対面/遠隔の次元を超え,将来的な議論へと集中する,先例なきパラダイムシフトを引き起こした。2020年の春以降行われた対応で劇的に増加した実践活動の中には,教育活動の新規性に関する教員の考え方が大幅に進化したことを反映したものもあった。特にその性質上,オンラインで実施される非同期型学習活動は,ポストコロナ時代のシナリオにおいて,コロナ前の形態への単純な回復だけにとどまらず,対面型への移行を考慮するのに十分重要な妥当性を示した。そのような移行において,日本国内に普及したラーニング・コモンズは,平時おこなわれるインフォーマルな活動から,さらに緊密な教授陣の関与を示唆するノンフォーマルモデルへと移行する機会を見いだすことができる。それにより,ラーニング・コモンズは,新たなレベルでの学術戦略の統合を達成し,それらが支援するように設計されたアクティブラーニングに関して,コロナ前に直面していた限界を超えることができる。教育及び学習の実践の中長期的見通しを示すものとして,本論文はこうしたラーニング・コモンズのコロナ前の状況を振り返り,ラーニング・コモンズを巻き込むことができる新しい非同期型対面活動への移行の性質及び条件について検討する。
著者
磯本 善男
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.82-89, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

2015年11月30日から12月2日にかけて,灰色文献の国際会議であるGL17とGreyForum4.1が開催された。従来のテキスト型だけでなく,研究データや視聴覚資料,ソーシャルメディア等,様々な形態の灰色文献に関する報告が行われた。現在日本でも活発になりつつあるオープンサイエンスの議論にも有用と思われる,世界の灰色文献の最新動向を紹介する。
著者
佐々木 俊介
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.2130, 2022-03-31 (Released:2022-03-18)

2019~2020年度,桜美林大学では新宿区と町田市内に新しいキャンパスが開設され,それぞれ既存の学群が移転するにあたり,教員の意向や大学の方針について協議検討しながら,基本的な図書館サービス提供とともに新しい試みにも取り組んだ。新宿キャンパスでは印刷物を配置しない電子図書館機能を持つ学修空間を,東京ひなたやまキャンパスには図書館内で演劇等のパフォーマンスや作品展示等も可能な設備を盛り込むなど,学群の教育方針に沿ったかたちでの図書館設計と管理・運営を行っているが,同時進行で発生したCOVID-19感染拡大により大きな影響も受けていることを報告する。
著者
原 香寿子 守屋 文葉
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.2126, 2022-03-31 (Released:2022-03-18)

東京大学附属図書館では,「新図書館計画」の名のもとに2015~2020年に本郷キャンパスにある総合図書館の大規模な改修工事を行った。本稿では,計画段階から完了するまでの工事の過程を振り返り記録するとともに,新装された施設・設備を紹介する。
著者
湯浅 俊彦
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2129, 2021-11-30 (Released:2021-12-09)

大学図書館における電子資料の契約と提供は,業務処理のテクニックの問題ではなく,現在の大学図書館の喫緊の課題である大学DX(デジタルトランスフォーメーション)と関連づけて考える必要がある。本稿では,日本語タイトルの電子学術書を授業で活用するための歴史的経緯を振り返り,学生が1人1台のデバイスをもつことなどの情報環境整備,電子図書館サービスなどの図書館情報資源整備の必要性を検討する。また,学生の授業成果物などを電子書籍化し,電子図書館に登録・公開する「知の循環構造」の構築を実践的に行う,図書館のプロデュース機能から見た電子資料の契約と提供について考察する。
著者
小島 浩之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-9, 2002-03-31 (Released:2017-12-19)

中国では80年代後半から図書や出版の標準化が進められた。これに伴い標題紙,版権頁といった情報源もISOに準拠して標準化され,同時に出版者はCIPデータの提出と表示を義務づけられた。こういった情報源の標準化は1990年からほぼ10年間で成し遂げられた。したがって90年代以降に出版された中国書は,書誌構造を捉え易くなっている。これに対し80年代以前の図書は原則論が必ずしも通用するとは限らず,書誌構造を把握しにくい場合も多い。
著者
富田 さわ子 武部 真子 田波 真弓 柴田 育子 堀越 香織 芳鐘 文子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.117, 2021

一橋大学附属図書館では,令和元(2019)年10月12日(土),東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の影響により,書庫内に大規模な浸水被害が発生した。施設や書架,蔵書等に受けた被害,復旧作業の経過及び今後に向けた取り組みについて,約1年が経過した時点での状況を報告する。
著者
石山 夕記
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.63-70, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

2015年11月,ドイツの学術図書館を訪問し,学習空間についてのインタビュー調査及び訪問調査を行った。調査の結果,学習空間に関するいくつかの特徴と,利用者の利用行動から学習空間を作り出していく図書館側の姿勢を見て取ることができた。このような姿勢は,今後日本の大学図書館において、利用者が求める学習空間を実現していく上でも,大いに参考になるであろう。
著者
三角 太郎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2044, 2019-08-31 (Released:2019-09-12)

類縁機関とされる博物館(Museum)・図書館(Library)・文書館(Archives)の間の連携については,文化情報資源の共有化という点からも期待が大きい。一方で大学内の大学博物館,大学図書館,大学文書館の連携についての報告事例は少ない。しかし,デジタルアーカイブや企画展示などにおいては,今後連携の効果が期待できると考えており,本稿では,まずそれぞれの組織の性質,共通点と相違点を分析する。その上でデジタルアーカイブと企画展示について,東北大学の取組みを事例として紹介する。
著者
市村 櫻子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.24-32, 2013

<p>東京大学柏図書館は,開館当初からの一般市民への大学図書館開放に加えて,平成20年10月に「東京大学柏図書館友の会」を発足させた。以来,図書の貸出だけでなく,大学の教員・学生・図書館職員が協力して,ブックトーク,上映会,音楽会等,幅広い事業を展開している。また,柏市立図書館や柏市内の大学図書館と連携し,同一テーマによる資料の企画展示,ビブリオバトル柏市決勝大会,市民の図書館見学ツアー等,大学図書館の特色を活かした事業を連携して展開している。</p>
著者
堀部 文子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.75-82, 2014-12-26 (Released:2017-10-31)

文部科学省の審議会等の答申等により,大学における高等教育の質的転換が求められる中,大学図書館にも教育への人的支援が期待されている。現状で人的支援の一例として挙がるのは図書館講習会である。そこで,より最適な図書館講習会実施のため,インストラクショナルデザインを導入したデータベース講習会の設計と実施を行った。その事例を報告する。
著者
生貝 直人
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.11-18, 2016-11-28 (Released:2017-09-15)

本稿では、デジタルアーカイブに関わる近年の法政策動向と、それが図書館をはじめとする文化施設の活動に与える影響を理解することを目的として、まず国内外におけるデジタルアーカイブの法政策の状況、特に統合ポータルの構築に向けた各国の施策を紹介し、次に2015年度に文化庁で行われたデジタルアーカイブ促進のための著作権制度の見直し(図書館複製、孤児作品問題対策、紹介・解説のための利用等)を検討し、最後に今後の課題としての書籍等資料の全文検索サービスのあり方について論じる。
著者
佐藤 亜紀
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.2057, 2020-03-31 (Released:2020-03-04)

本稿は,2019年9 月に訪問したシドニー大学図書館(University of Sydney Library),ニューサウスウェールズ大学図書館(University of New South Wales Library), メルボルン大学図書館(University of Melbourne Library),モナシュ大学図書館(Monash University Library),でのインタビュー調査に基づきオーストラリアの大学図書館における研究データ管理支援サービスについて報告する。調査から,大学によって使用しているツールや重点を置いているサービスは違うが,研究データのライフサイクルに即したサービスを展開していることがわかった。
著者
松原 悠 斎藤 未夏 石津 朋之 大山 貴稔 佐藤 まみ子 新村 麻実 野村 港二
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.1703, 2017-12-29 (Released:2017-12-29)

筑波大学中央図書館のラーニング・コモンズ「ラーニング・スクエア」では,2015年10~12月,オープンなスペースである「グループ学習スペース」において,大学院生対象の授業科目「ザ・プレゼンテーション」を10回にわたり実施した。講師と受講者を対象に調査したところ,ラーニング・スクエアは,開放的で立ち寄りやすいという点が評価されている一方で,周囲の目や音が気になるため授業への集中が妨げられるという側面もあり,活発な議論や発表の場として活用するには課題が存在することが明らかとなった。
著者
深貝 保則
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, 2017

情報ネットワーク化の急速な進展のもとで,図書館の役割も学術研究の流儀も,相応に変化しつつある。図書館のスタッフたちは機関リポジトリの活用と並んで,電子的コンテンツのデータ登録について周到な工夫を施しつつある。だが,学術情報の共有について進展を図るという昨今の課題の遂行とともに,むしろそれ以上に,同時的双方向的に討論することが可能となったことの積極的な意味を捉えておくことが重要である。2回連載のこの論説の前半では,17世紀ヨーロッパを舞台とする科学革命以来の「知」の交換と公刊の様式の変遷に注目して,学術コミュニケーションの多層的な進展の可能性を考える。