著者
井川 純一 志和 資朗 中西 大輔 車地 未帆 菊本 修 井手下 久登
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.97-103, 2010-10-25

不安状態における自律神経機能を客観的に評価する目的で,指尖脈波を用いた心拍変動の分析を行った.対象は,不安状態を主訴に治療中の患者25名(男性6名,女性19名,平均年齢47.7歳).対照群33名(男性6名,女性27名,平均年齢48.7歳)であった.脈波測定装置を用いて低周波(Low Frequency:LF)成分および高周波(High Frequency:HF)成分を抽出し,LF/HFを交感神経,HFを副交感神経指標とした.心理指標としてはSTAIの状態不安と特性不安を測定した.不安群が対照群に比べ,副交感神経指標(HF)が低下する傾向が見られた.また,STAIと生理指標では,特性不安と副交感神経指標(HF)との間に有意な負の相関が認められた.以上のことから,不安状態における自律神経機能は,副交感神経指標(HF)によって客観的に評価できる可能性が示唆された.
著者
岡部 洋一
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.65-68, 1982-06-30
被引用文献数
1

A model of formation of mind is proposed giving an example of small size neuron networks. Neural system changes its structure along with the growth of a creature. However, there are two ways of thinking that neuron networks are decided a priori by the heredity or a posteriori by the interaction with the outer world. First it is discussed that the rough structure of neuron networks may be given a priori but the fine structure, such as synaptic conductance, must be decided a posteriori. Secondly the final goal of neuron networks is discussed, and it is supposed that a neural system changes its structure aiming appropriate input stimuli; that is, it does not want too strong stimuli nor too weak stimuli. This supposition is confirmed by the study of the reflex arc for avoidance of dangers, along with the discussions of the homeostasis of creatures and the teaching principles. The result is represented by a performance index of the total neural system. Finally it is discussed how the synaptic conductances in the neural system are determined to appropriate values. It is shown that synapses would find appropriate conductances by jittering their conductances and checking the response of the performance index. The proposed model is deduced by the discussion of small size networks, however we hope that a similar model can be adapted to bigger networks, too.
著者
堀内 聡 津田 彰 橋本 英一郎 甲斐 ひろみ 賀 文潔
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.93-98, 2008-10-25

主観的幸福感がメンタルストレステストに対するストレス反応に影響するという証拠が増えている.235名の対象者から選抜された主観的幸福感が高いグループと低いグループ(各8名)に対して,スピーチと暗算課題からなるメンタルストレステストを負荷した時の心拍(HR)及び主観的ストレス反応を比較した.メンタルストレステストは,10分間の前課題期,2分間のスピーチ準備期,3分間のスピーチ期,5分間の暗算課題期,そして30分間の後課題期からなっていた.主観的ストレス反応は,NASA-TLXにより測定された.幸福感が低いグループのHRは,前課題期及び暗算時において,幸福観感が高いグループよりも高かった.主観的ストレス反応は,両グループで差異がなかった.
著者
青井 利哉 川辺 浩史 上久保 晶子 柿木 昇治
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.60-64, 2000-03-31

これまでの脳波バイオフィードバック研究は, α波出現に伴う主観的状態の変化や, その制御方略に関するものが主であり, 訓練による行動指標の変化を検討した研究は見られない.脳波バイオフィードバックの効果の検討として, 計量可能な行動指標の変化を観察することは, 訓練効果の評価の妥当性を向上させる.本実験においてはα波増強訓練, およびβ波増強訓練が時間評価に及ぼす影響について検討することが目的である.時間評価は15秒, 30秒, 60秒を設定して, 被験者にバイオフィードバック訓練前後で計測させた.α波バイオフィードバック訓練により主観的時間評価は長く評価され, β波バイオフィードバック訓練により短く評価されることが明らかになった.これは脳波周波数の増加は時間評価の過小評価をもたらすとしたWerboff(1962)の知見を支持するものである.本実験において, 脳波バイオフィードバック訓練と時問評価との対応関係が見られた.
著者
松本 清 佐久間 春夫
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.47-53, 2009-04-25

本稿では,競争的状況におけるP300について,平均振幅の分析から得られた結果を確かめるために,主成分分析(PCA)を用いて分析された.P300は競争の結果を呈示することによって誘発され,その競争では競争心の高い被験者と低い被験者が見える相手または見えない相手とともに,予告刺激を伴う反応時間課題を行った.その結果,slow waveやPINVといった8つの主成分が抽出され,3番目の成分は競争結果の呈示後約300msでピークとなっていたためP300と同定された.P300の振幅を反映しているとされる成分得点について,被験者の競争心の高さ,相手の可視性,勝敗,頭皮上の分布の効果が調査された.競争心の高い人は,見えない相手との競争的状況の方が見える相手とよりもP300が増大した.競争心の低い人は,見える相手と競争した時の方が見えない相手とよりも,P300が増大し反応時間が短縮した.これらの結果は,競争心の高い人が競争的状況下では注意資源を分散させることによって活発に情報処理を行い,競争心の低い人の覚醒レベルが見える相手と競争する時に増加したことを示唆している.競争条件での負けた試行よりも勝った試行におけるP300の増大が全体的に観察され,このことは競争事態における課題が勝つことを目指して遂行されたことを示している.頭皮上の分布は,これまでに報告されているように,頭頂部よりも中心部に,左半球よりも正中部に優位であった.本研究の結果は先行研究の結果を支持し,競争的状況下の認知活動の新しい特徴を見出した.
著者
西村 千秋 小坂 明生 常光 和子 吉沢 修治 南雲 仁一
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.28-33, 1984-06-30

手掌部より導出された皮膚電位水準(SPL)は覚醒水準の低下とともにその電気的陰性度が減少する。この現象を利用して自動車運転時の覚醒水準の評価を行なった。第一の実験において,試走路運転中のドライバーからSPL,脳波(EEG),眼球運動(EOG)および心電図(ECG)の導出を行なった。実験中に,覚醒水準の低下に起因する危険な運転が見られた。実験の結果,SPLとEOGについては覚醒水準と相関のあることが示された。しかし,EEGとECGについては覚醒水準との関連が認められなかった。つぎに第二の実験を行ない,SPLを覚醒水準の指標として,その制御可能性を検討した。ドライバーのSPLが所定の閾価に達すると,実験者は音声刺激をドライバーに与えた。この実験の結果,SPLは閾価以上に保持され,運転行動にもミスのないことが示された。このフィードバック手法は,自動車の運転手や飛行機のパイロットなどのためのいねむり警報システムに利用できるであろう。