著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.136-141, 2017-03-20 (Released:2017-09-01)
参考文献数
5

高校化学でも学習する炎色反応は,現在の重要な微量元素分析法である原子分光分析法の始まりといえる。本講座では,原子と光の相互作用(発光・吸光・蛍光)を利用した各種原子分光分析法の原理とその発展の過程について,励起源(物質を原子化し励起するためのエネルギー源)や光源などの技術の進歩を通して概説する。
著者
村井 紀元 村上 雅彦 東 弘志 加藤 博久 草野 満夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.103-107, 2009-02-28 (Released:2011-05-12)
参考文献数
14

房総半島沿岸地域において,一般に食される,カタクチイワシにより急性腹症をきたした3例を経験した.主訴はいずれも腹痛,嘔気,嘔吐であり,食後3~5時間で発症した.腹部所見では,腹部全体におよぶ強い圧痛を認め,腹部単純X線写真ではいずれも小腸ガス像を認めた.血液検査所見では,いずれも白血球数の増加を認めたが,発熱はみられなかった.また,腹部エコー・上部消化管内視鏡検査では特に異常所見はみられなかった.全例ともに絶飲食による保存療法により,1~3日以内に症状は消失した.魚類摂食後の腹痛の原因としては,寄生虫によるもの,食中毒によるものなどが挙げられるが,今回の症例ではアニサキス症などは否定され,便培養の結果で有意な所見なく,発症までの時間的経過や,大量摂取という状況より,ヒスタミン中毒によるものと推察された.ヒスタミン中毒とは,ヒスタミンの蓄積した赤身魚を摂食後,数分から数時間以内に様々なアレルギー様疾患を起こす病態のことをいう.マグロやサバ,イワシなどが主な原因食として挙げられ,カタクチイワシもヒスタミン中毒魚の一種である.ヒスタミン中毒による症状は,比較的軽度とされており,その診断には問診が重要ともいわれている.今回のように腹部所見の強い症例では,緊急手術の要否の判断に難渋する可能性もあり,急性腹症の患者の診察においては,ヒスタミン中毒も念頭において,問診,診断,治療にあたる必要があると思われた.
著者
村上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.46-55, 2007 (Released:2011-01-14)
参考文献数
10
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.90-95, 2022-02-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
10

紫外・可視吸光光度法は,測定の原理・装置共に比較的理解しやすく,機器分析法の基本を身につけるための初歩的教材として取り入れやすいものと思われる。その一方で,受講者数の多い実験クラスでの実施のために十分な台数の装置を用意することは難しい。本稿では,吸光光度法による定量の原理を概説した上,教材としての活用が期待される安価かつ容易に作製できる簡易光度計の例として,光源・検出器共に発光ダイオード(LED)を用いた簡易光度計の事例について紹介し,試作による知見を踏まえてその作製・使用のポイントについて述べる。
著者
加藤 博久 村上 雅彦 新井 一成 草野 満夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.156-157, 1996-06-07 (Released:2015-03-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

It has been reported that one of the effects of proton pump inhibitor (PPI) is inhibition from exocrine pancreas. We treated two cases of reflex esophagitis due to total gastrectomy with PPI and they were cured soon. Case 1 : A 71-year-old man was operated upon total gastrectomy (6-interposition) for early gastric cancer. He had felt aphagia and heart burn from ten days after operation. We had been following up him for three years with camostat mesilate, but his symptoms had been unchanged and the endoscopy had revealed esophagitis which was Savary-Miller (SM) stage III. Case 2 : Total gastrectomy (Roux-Y) for early gastric cancer was carried out to a woman who was 53 years old. Her symptoms were nausea and heart burn from eight days after operation. She had never been treating by any medicines. Four months after operation, her symptoms had been stronger and endoscopic findings was esophagitis of SM stage III. In both cases, their symptoms were got under control soon and esophagitises were changed to SM stage I-II with single medication of PPI for several weeks.
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.32-37, 2015-01-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

向流分配抽出法は,溶媒抽出(液-液抽出)を多段階で行うことで,1回の抽出では達成できない高度な分離を可能とする方法である。この方法はCraig(クレイグ)抽出として知られ,クロマトグラフィー確立以前の当時には困難であったペプチド類などの生体関連分子の相互分離を可能とし,その後の生化学・生命科学の発展に大きく貢献した。現在では,一部の用途を除いてその座を各種クロマトグラフィーに譲った感があるものの,その原理と巧妙な具現化の手法は今なお興味深い上,クロマトグラフィーにおける分離を理解するための近似モデルとして有用である。加えて近年では,従来のクロマトグラフィーにはない本法の優れた特徴を,巧みな手法で活かした「向流クロマトグラフィー」として再び注目されつつある。本稿では,高校化学で学習する溶媒抽出の原理をCraig抽出に発展させ,クロマトグラフィーの原理との対応に触れるとともに,向流クロマトグラフィーの近年の発展について述べる。
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.548-553, 2013-11-20 (Released:2017-06-30)

アルミニウム(Al)は,小さな比重と高い導電性などの優れた特性から工業用金属材料として欠くことのできない元素である。一方有機合成化学においても,有機金属利用の初期から現在に至るまで種々のアルミニウム化合物が有用な反応剤および触媒として用いられており,歴史的にも重要で興味深い応用例が数多く見られる。本講座では,はじめに「Alの化学」を理解する上でのキーポイントとなる元素としてのAlの特徴と,これに基づくAl化合物の一般的性質について述べ,これを軸として有機合成反応での利用(還元剤,ルイス酸触媒およびアルキル化試薬としての作用とその制御)について概説する。
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.246-251, 2015-05-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

キレート滴定法は,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその類縁体が,多くの金属イオンと価数に依らず1:1のキレート錯体を形成することを利用した金属イオンの容量分析法である。この方法は,主にCa^<2+>及びMg^<2+>の滴定法(水の硬度の測定)として知られさているが,適当な条件と金属指示薬の使用によって多くの金属イオンのmg/Lレベルでの定量が可能である。本稿では,キレート滴定法の原理,そこで用いられる応用的な手法(逆滴定,置換滴定,マスキングなど)について概説するとともに,これを用いたいくつかの金属イオンの定量法を紹介する。
著者
小沢 慶彰 村上 雅彦 渡辺 誠 冨岡 幸大 吉澤 宗大 五藤 哲 山崎 公靖 藤森 聡 大塚 耕司 青木 武士
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.696-700, 2015 (Released:2016-09-10)
参考文献数
8

直腸腫瘍に対し砕石位にて手術施行後に下肢コンパートメント症候群を合併した2例を経験したので,その予防対策とともに報告する.症例1は61歳男性.直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術施行した.体位は砕石位,下肢の固定にはブーツタイプの固定具を用い,術中は頭低位,右低位とした.手術時間は6時間25分であった.第1病日より左下腿の自発痛と腫脹を認めた.後脛骨神経・伏在神経領域の痺れ,足関節・足趾底屈筋群の筋力低下を認めた.下肢造影CTで左内側筋肉の腫脹と低吸収域を認めた.血清CKは10,888IU/Lと高値,コンパートメント圧は22mmHgと高値であった.左下腿浅後方に限局したコンパートメント症候群と診断し,同日筋膜減張切開を施行した.術後は後遺症なく軽快した.症例2は60歳男性.直腸GISTに対し腹会陰式直腸切断術を施行した.体位,下肢の固定は症例1と同様であり,手術時間4時間50分であった.術直後より左大腿~下腿の自発痛と腫脹を認めた.術後5時間には下腿腫脹増悪,血清CKは30,462IU/Lで,コンパートメント圧は60mmHgと高値であった.左下腿コンパートメント症候群と診断,同日筋膜減張切開を施行した.術後は後遺症なく軽快した.直腸に対する手術は砕石位で行うことが多いため,下腿圧迫から生じる下肢コンパートメント症候群の発症を十分念頭におく必要がある.一度発症すれば重篤な機能障害を残す可能性のある合併症であり,砕石位を取る際には十分な配慮をもって固定する必要がある.また,発症した際には早期に適切な対処が必要である.当手術室ではこれらの臨床経験から,砕石位手術の際に新たな基準を設定,導入しており,導入後は同様の合併症は認めていない.それら詳細も含めて報告する.
著者
渡辺 誠 村上 雅彦 小沢 慶彰 五藤 哲 山崎 公靖 藤森 聡 大塚 耕司 青木 武士
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.647-651, 2015 (Released:2016-09-10)
参考文献数
18

炭水化物含有飲料水 (CD) の胃内容排出時間を超音波検査にて検討する.健康成人被験者4例 (男女各2例,平均年齢52歳) に対して,水,6.2% CD (ポカリスエット®),12.5% CD (100mlあたり6.3gのブドウ糖末を付加したポカリスエット®) を,中7日隔日で各々400ml全量摂取し,腹部超音波検査にて胃幽門部面積 (PA) を経時的に測定した.全例,各飲料水の摂取は可能であった.水では,45分で摂取前のPAと同等になった.6.2% CDでは60分で全例,摂取前のPAと同等になった.12.5% CDでは,4例中2例において摂取後60分で,また90分で残り2例も摂取前のPAと同等になった.健康成人被験者において,400mlの12.5% CDは,摂取後90分以内に胃から排泄された.全身麻酔導入2時間前までの12.5% CD摂取は可能であることが示唆された.
著者
福田 賢一郎 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二 村上 雅彦 小林 洋一 中島 靖浩 中村 元保 香月 姿乃 鈴木 恵輔 井上 元 柿 佑樹 前田 敦雄 加藤 晶人
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.58-68, 2020

患者に対する医療安全の確保は感染管理とともに病院における危機管理の骨格である.さらに病院評価としても院内の医療安全システムの構築が求められている.近年では予期せぬ院内急変への対応だけではなく,院内急変の予防に向けた取り組み(RRS:Rapid Response System)が注目されている.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では緊急性に応じて院内急変プロトコールがいくつか存在する. RRS導入前における予期せぬ院内急変について,特に緊急性の最も高い緊急コード事例(コードブルー事例)について検討を行った.方法:2014年4月から2018年3月までの4年間にコードブルーの要請があった症例129例を対象として解析を行った.院内急変のうち入院患者は41.0%であり,その他が外来患者や患者家族・職員であった.平均年齢は63.6歳であった.心肺停止症例は26.4%であり,平均年齢は71.2歳であった.心肺停止症例の82.4%は入院患者であった.発生頻度は入院1,000人当たり4.36人であった.心肺停止患者のうち44%で蘇生に成功したが,神経機能が急変前まで改善した例は全心肺停止症例の20.6%のみであった.心拍再開までの時間が短い症例で神経機能予後は良好であった.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では院内心肺停止の発生頻度は過去の報告よりは少ない傾向にあったが,今後の院内急変対応の課題としては院内心停止患者の救命率をより向上させること,さらには院内心停止発生率をさらに低下させるためRRSの導入を含めたシステムの構築が必要である.院内発生の心肺停止症例でも予後不良例は依然として存在している.したがって,院内急変あるいは院内心肺停止を予防することが将来的な病院の医療安全の確保の方策として極めて重要である.
著者
村上 雅彦 清水 喜徳 普光江 嘉広 李 雨元 李 雅弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.334-336, 1993

上部消化管内視鏡検査後に発症した急性胃粘膜病変の1例を経験したので報告する.症例は37歳男性.検診にて上部消化管内視鏡検査施行したが, 4日後突然に激しい上腹部痛出現し当院来院.再度内視鏡検査施行し, 前庭部を中心に出血性, 多発性の浅い小潰瘍が観察された.絶食, 補液, 抗潰瘍剤投与により1週間後には症状消失し, 1カ月後にはわずかな瘢痕を残すのみで, ほぼ完全に治癒した.近年, 上部消化管内視鏡検査の普及により, 本症は増加の傾向にあり, その発症に関してH.P.感染が有力視されており, 今後内視鏡機器の洗浄, 消毒に対し十分な注意が必要と思われた.
著者
菅野 喜久子 木下 寛也 森田 達也 佐藤 一樹 清水 恵 秋山 聖子 村上 雅彦 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.131-139, 2014 (Released:2014-11-15)
参考文献数
28

東日本大震災後のがん患者の緩和ケア・在宅医療については, ほとんど調査がされていない. 本研究では, 震災時のがん患者の緩和ケアと在宅医療の実態を明らかにし, 今後の大規模災害に向けたシステムの提言やマニュアルの整備のための基礎資料を作成することを目的とした.被災沿岸地域の医療者53名に半構造化面接を行った. 結果より, がん患者の緩和ケア・在宅医療に対する医療者の経験は, 【がん患者への医療提供の障害】【津波被害や避難の際に内服薬を喪失した患者への服薬継続の障害】【ライフラインの途絶による在宅療養患者への医療提供の障害】【地域の医療者と後方医療支援や医療救護班との連携の障害】【医療者に対する精神的ケア】【原発事故地域の医療提供の障害】の6カテゴリーに整理された. 大規模災害に向けた備えの基礎資料となり, 災害時のがん患者の緩和ケア・在宅療養に関する問題やその対応方法について明らかとなった.
著者
成田 和広 鈴木 和雄 李 雨元 相田 貞継 普光江 嘉広 村上 雅彦 草野 満夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.112-115, 1996-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9

症例は68歳, 男性, 上腹部痛による急性腹症にて入院.上部消化管内視鏡検査にて, 胃体部から前庭部に浅いびらんが多発しており, 急性胃粘膜病変と診断された.絶飲食のもと, ファモチジン20mgを12時間毎に投与開始したところ, 翌日より幻覚, 見当識障害, 夜間徘徊等の異常行動出現した.精神障害症状が持続するため4日目にファモチジンを中止したところ, 24時間以内に速やかに同症状が消失した, H2受容体拮抗剤の副作用に, 可逆性の錯乱状態があるが報告例は少ない.本剤の使用頻度は増加傾向にあり, 日常容易に処方され, その副作用は忘れがちである.状況によっては本例のような副作用の出現もあり, 注意深い使用が必要と思われた.