著者
太田 幸雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.A31-A41, 1994-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
3
著者
岩崎 好陽 中浦 久雄 谷川 昇 泉川 碩雄 飯田 靖雄
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.446-451, 1984-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
14

自動車排ガスの臭気について検討した。6車種 (ガソリン車2台, ジーゼル車4台) について各走行モードごとに, 三点比較式臭袋法により臭気濃度を測定し, O.E.R。を算出した。また臭気強度および排ガスの成分も一部測定した。その結果以下のことが明らかになった。(1) 自動車排ガスの臭気濃度はガソリン車よりジーゼル車の方が高く, またジーゼル車においては, 大型になる程臭気濃度も高かった。(2) 大型ジーゼル車の臭気濃度は10,000~30,000 (臭気指数40~45) 程度であり, 0.E.R.は105前後であった。(3) ジーゼル車において, 希釈倍数xと臭気強度y (TIA尺度) との関係はy=7.1-1.7logxとなり, Kendallらの結果とほぼ一致した。
著者
藤田 慎一 千秋 鋭夫 寺田 信之
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.407-415, 1983

1981年10~11月, 相模湾沿岸から八丈島に至る海域の上空と八丈島において, サブミクロンエアロゾルの観測を実施した。観測には静電方式と光散乱方式の2台のエアロゾル計を併用し, 粒径0.003~10μmの粒子総数と粒径分布を, 連続的に求めた。<BR>観測データを解析した結果, エアロゾルの挙動は海域の気象条件に大きく依存することがわかった。高気圧に覆われ弱い北東風が吹く条件下では, エアロゾルは相模湾の沿岸で最大濃度 (~10<SUP>3</SUP>cm<SUP>-</SUP>3) を示し, 離岸距離に対して距離定数が10<SUP>-6</SUP>~10<SUP>-5</SUP>m<SUP>-1</SUP>の指数関数型の減衰を呈した。海上に優勢な偏西風が卓越する条件下では, 八丈島近海のエアロゾル濃度は, 平常時よりも3倍近い増加を示すことがあった。風系を解析した結果, この汚染気魂は中京地域から輸送されたものと推定された。一方, 前線性の擾乱に伴う雨雲の中では, 粒子総数が低下するとともに, 粒径分布の勾配がJungeの逆3乗則から大きく偏奇することを見出した。この粒径分布の変化をエアロゾルと降水要素との相互作用に要因するものと考え, サブミクロンェァロゾルの除去効率をみつもったところ, 観測値は理論的に予想される値よりもはるかに大きなものとなることがわかった。
著者
近藤 矩朗 佐治 光
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.273-288, 1992-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
122
被引用文献数
4

大気汚染物質は植物の葉の表面にある気孔を通して植物に吸収される。吸収された汚染物質は細胞内で毒物を生成して生体物質に損傷を与え, その結果, 光合成機能を阻害して成長を抑制したり, クロロフィルや脂質を破壊して細胞の壊死を引き起こす。植物の障害の程度は, まず第一に, 大気汚染物質の吸収口である気孔の開度によって支配される。吸収された大気汚染物質は, 二酸化硫黄 (SO2) の場合は亜硫酸 (SO3 2-), 二酸化窒素 (NO2) の場合は亜硝酸 (NO2-) 等の毒物を生成する。オゾン (O3) の場合はO3そのものが毒物として働く。更に, 大気汚染物質の種類によらず反応性の高い活性酸素が生成され, 強力な毒性を示す。植物にはこれらの毒物を解毒するための代謝系が存在し, 低濃度の大気汚染物質に対してはある程度まで耐えることができる。したがって, 植物における毒物の生成速度と解毒能力のパランスによって, 大気汚染物質による障害の程度は左右される。また, 植物にはこれらの毒物から自身を守るための動的な防御反応がある。植物は, 大気汚染物質に触れた時に, 気孔の開度を減少させたり増大させたりする。植物が大気汚染物質に反応して気孔開度を減少させる能力は植物ホルモンのアブシジン酸によって制御されており, 大気汚染物質に対する植物の一種の防御機能と考えられる。植物を低濃度の大気汚染物質と接触させると, 植物体内で活性酸素の解毒に関与する酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ, グルタチナンレダクターゼ, アスコルピン酸ペルオキシダーゼ, カタラーゼ等の活性が増加する。また, 植物をNO2と接触させると, 硝酸レダクターゼの光による誘導が抑えられて, 毒物であるNO2-が植物葉内に蓄積するのが抑えられる。これらの知見をもとに, 遺伝子操作などにより大気汚染物質由来の毒物の解毒に関与する酵素の活性を変えて, 大気汚染物質に対する植物の耐性を改変しようとする試みがなされている。
著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.72-90, 1993-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
107
被引用文献数
5

日本列島は世界でも有数の火山地域である。このため, 火山活動により大気中へ放出される硫黄化合物は, 量的にみて人間活動に匹敵するものと推定されている。本報では, 硫黄化合物の物質収支における火山活動の役割を整理するとともに, 環境の酸性化に及ぼす火山活動の影響について, 最近の研究動向をとりまとめた。日本列島を対象にして, 火山噴出物の輸送をモデル化していくうえで, 検討すべき問題点についても考察を加えた。

1 0 0 0 地球温暖化

著者
山本 晋
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.A81-A89, 1991

二酸化炭素をはじめとするメタン, フロン, 亜酸化窒素などの温室効果ガスの増大による地球温暖化とそれに伴う様々な環境悪影響が懸念されています。最近の観測によれば二酸化炭素濃度は約350ppmで年々1.5ppmの割合で増加しており, メタン, フロン等も増加しています。IPCC (気候変動に関する政府間パネル: 1990年8月) の報告によれば, このままの状態を放置すると, 来世紀には全球平均気温が3℃上昇し, 平均海面は最大1m上昇することになります。気象庁の報告によれば過去100年間の全球平均地上気温は上昇傾向にあり, これは温室効果ガスの増加による気温上昇予測結果と一致しています。しかし, 現段階ではこの気温上昇が温室効果によると断定するにはデータが十分ではありません. また, 現在人類が化石燃料の使用によって放出している二酸化炭素は一年間に炭素換算50億トンです。このうち大気中に残留するのは結果として約半量で, 残りは海洋, 植物などにより吸収されていると推定されていますが, 大気圏, 水圏, 地圏, 植物圏相互間での二酸化炭素の交換過程は定量的に解明されておらず, 二酸化炭素の循環モデルは今後の研究課題として残されています。<BR>温暖化は数十年から百年という長い期間に顕在化する現象であり, 顕在化してからでは対策を立てても遅いということになりかねません。ここでは, 地球温暖化問題を考える上での基礎的知識, 現状での科学的知見について,「温暖化の原因・機構と現状」と「温暖化の将来予測と予想される環境影響」の二回に分けて紹介します。本入門講座が「地球温暖化」問題を理解し, 対策を考える上で多少なりとも参考になれば幸いです。
著者
私市 和俊
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5-6, pp.347-352, 1982-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
6

硫黄酸化物日平均値濃度の累積度数分布に近似される分布モデルについて考察した。候補としたモデルは, 適用が容易で2母数を含む, 正規, 対数正規, Weibullの各分布であり, 測定値との適合度を次の3種類の方法で検討した。すなわち, 確率紙による方法, AICによる方法, 各パーセント値における測定値と計算値の差の標準偏差に注目する方法を利用した。その結果, ここで取り上げた3分布の中では, 一部の解析を除いて, 対数正規分布が良いことが分かった。また,日本全国で測定されたデータの解析により, 対数正規, Weibull分布の母数の推定量が取る範囲および経年変化が明らかにされた。これらの値は, 大気汚染制御上の要素として利用できるであろう。
著者
野内 勇 大橋 毅 早福 正孝
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.392-402, 1984

野外に生育しているペチュニアの葉被害とPAN汚染の関係を明らかにするために, PAN感受性のペチュニア (ホワイトエンサイン種) を用いて, 1976年から1983年の間の5か年間4月から11月まで有楽町でほぼ毎日ペチュニアの被害観察と大気中のPAN濃度の測定を行った。ペチュニアのPAN被害は1976年には15回, 他の年は4-6回の発生があった。ペチュニアの被害発生率は日最高PAN濃度が5PP<SUP>b</SUP>以下および日PANドースが25PP<SUP>b・h</SUP>以下では10%以下であった。そして, 被害発生率は日最高濃度や日ドースの増加とともに増加した。しかし, ペチュニア葉被害面積と日PAN濃度との問には有意な相関はなかった。<BR>PAN汚染の地域分布を調べるために, 指標植物としてペチュニア (ホワイトエンサイン種, PAN感受性とブルーエンサイン種, PAN抵抗性) を用いたモニタリング観察調査を都内5か所 (青梅, 石神井, 用賀, 有楽町, 足立) で1982年と1983年に行った。ホワイトエンサインの被害は2か年の調査の間5月から10月までは5調査地点のうち1地点以上で毎月観察された。2か年の結果をまとめると, ホワイトエンサインおよびブルーエンサインの月間累積葉被害は東京西部 (青梅, 用賀, 石神井) の方が東京東部 (足立) よりかなり大きかった。なお, ブルーエンサインの月間累積葉被害はホワイトエンサインに比べ約半分程度であった。ペチュニアを用いたこれら野外調査の結果は, PAN汚染が晩春から秋にかけて都内全域で発生していることを明らかにした。
著者
才木 義夫 中沢 誠
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.287-293, 1990-07-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

地球温暖化の要因物質であるCO2について, ガソリン自動車の走行時における排: 出係数を求め, TRIASの理論値と比較した。また, 排出係数とガソリン販売量の統計データから我が国におけるガソリン自動車からのCO2排出総量を計算し, その経年推移を調べた。ガソリン自動車からのガソリン1l当たりのCO2排出量 (排出係数) はTRIASの理論値では2.38kg/lであるが, 市街地の実走行モードおよび定速モードにおける排ガス分析結果から求めた排出係数は2.32kg/lおよび2.35kg/lとなり, 理論値より実走行モードで約25%低い値となった。この原因はガソリン中の炭素がCO2に変化する以外にその一部がCO, HCおよび粒子状物質に消費されているためと考えられる。ガソリン自動車の走行時のCO2排出量 (9/km) は車速が約50km/hで最低となり, それより低速側および高速側で増大する傾向を示した。ガソリン販売章と実走行時の排出係数から求めた我が国のCO2排出総量は1987年度で89, 293×103トンであり, 毎年ほぼ増加している。前年度比で見た場合, 1971年度から1978年度が約3~9%, 1979年度から1987年度が約2%の増加であった。
著者
岡本 眞一 塩沢 清茂
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.12-22, 1992-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
54
被引用文献数
1

液化ガス燃料や有害化学物質の漏洩事故により生じる高密度ガスの拡散挙動はよく知られている一般の大気汚染物質の拡散とはまったく異なっている。このため, アメリカおよびヨーロッパ諸国では, このような高密度ガスの挙動を理解するために, 多くの拡散実験が実施された。そして, これらの関連施設のリスク評価のための予測モデルも多数提案されている。ここでは, これらの高密度ガスの拡散について論評を加えた。
著者
岩崎 好陽 中浦 久雄 谷川 昇 泉川 碩雄 飯田 靖雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.446-451, 1984

自動車排ガスの臭気について検討した。6車種 (ガソリン車2台, ジーゼル車4台) について各走行モードごとに, 三点比較式臭袋法により臭気濃度を測定し, O.E.R。を算出した。また臭気強度および排ガスの成分も一部測定した。その結果以下のことが明らかになった。<BR>(1) 自動車排ガスの臭気濃度はガソリン車よりジーゼル車の方が高く, またジーゼル車においては, 大型になる程臭気濃度も高かった。<BR>(2) 大型ジーゼル車の臭気濃度は10,000~30,000 (臭気指数40~45) 程度であり, 0.E.R.は10<SUP>5</SUP>前後であった。<BR>(3) ジーゼル車において, 希釈倍数<I>x</I>と臭気強度<I>y</I> (TIA尺度) との関係は<I>y</I>=7.1-1.7log<I>x</I>となり, Kendallらの結果とほぼ一致した。
著者
常盤 寛
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.A8-A15, 1992-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
20
被引用文献数
2
著者
古明地 哲人
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.A103-A111, 1993-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
26

大気汚染の研究範囲はこれまで専ら人の健康, 植物影響に関する研究分野に関心が集中してきた。そしてこれらに関係する形で大気中での汚染現象を気象, 拡散, 化学反応モデル, 汚染物質と被影響対象との量一反応関係として扱う等, 多くの学問分野を包含する手法も使用されてきた。しかし, 緊急避難としての性格が大きかったこれまでの環境調査研究の中にも, 近年は環境問題のより幅広い現象に関心が広がり, 歴史的な文化遺産, 文化財への影響, その保存法等の調査も徐々に実施されはじめて来た。文化財のおかれている現状, また文化財の面からのより質の高い, 良好な環境について紹介したい。
著者
松丸 恒夫 松岡 義浩 白鳥 孝治
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.279-285, 1985-08-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
3

ヨウ素精製工場に隣接するナシ園において, ナシの葉の葉肉部がネクロシス化し, 激しい場合は落葉するという異常症状が発生した。そこで原因究明をねらいとして現地実態調査を行った。その結果は以下のとおりである。1) 異常症状は葉脈間の葉肉部にネクロシスを生ずるタイプと葉縁部にネクロシスを生ずるタイプに分けられた。前者には品種「幸水」,「新水」が, 後者には「八幸」,「八君」が相当した。2) 異常症状の発生には品種間差が認められ,「幸水」,「八幸」が感受性,「長十郎」が抵抗性,「新水」,「八君」はその中間であった。3) ヨウ素, 塩素, 硫黄, 臭素, フッ素成分の葉分析の結果, 被害葉のヨウ素含有率のみが異常に高いことが認められた。4) ヨウ素精製工場周辺のナシ以外の植物調査の結果, 6種類の植物葉にネクロシス又はクロロシスを伴う異常症状が確認された。また, それらの植物葉を分析した結果, すべての葉に高濃度のヨウ素が検出された。5) ナシの葉の異常症状の原因はヨウ素の過剰集積によるもので, ヨウ素の飛来源は隣接するヨウ素精製工場であろうと推察された。また, 異常症状の発現する葉中ヨウ素含有率の限界値は, 感受性の「幸水」,「八幸」で20~50ppm (乾物当たり) と考えられた。
著者
Youichi OHKUBO Chieko KADOSIMA Takashi KANEKO Junichi CHUCHIYA Yosiaki AKUTSU Masamitu TAMURA Tadao YOSHIDA
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
Journal of Japan Society of Air Pollution (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.212-220, 1990-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
17
被引用文献数
2

シガレヅトスモーク中には高反応性で見かけ上長寿命の気相ラジラルが存在することが見いだされている。このラジカルの生体への有害性に関する基礎的な知見を得るため, シガレットスモークおよびスモーク中の気相ラジカル生成をモデル化したオレフィン/NO/空気系反応ガスが生体膜の主要構成脂質である高度不飽和脂酸 (PUFA) の自動酸化を開始することを共役ジエン生成法および酸素吸収法を用いて検討した。その結果, シガレットスモークは主としてその気相ラジカルによりPUFAの自動酸化を開始し, 生体に有害な過酸化物を生成することを見いだした。
著者
藤田 慎一 中山 稔夫 矢田部 照夫 千秋 鋭夫
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.183-193, 1984-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
20
被引用文献数
2

1982年8~9月, 伊豆諸島・首都圏および関東内陸においてオゾンの観測を実施し, 首都圏のオキシダント濃度に及ぼすパックグラウソドオゾンの影響について検討した。観測データは, 移動平均法を適用して周期と振幅とが異なる三つの成分に分離し, 各成分のモードと気象条件との関係を調べた。首都圏における夏期の高濃度オキシダントの発生パタンは,(1) 24時間周期の変動が卓越する場合と (2) 24時間周期の上に数日周期の変動が重畳する場合の二つに分類できる。(1) は光化学反応によるオキシダントの生成と消滅に, また (2) は成層圏に起源を持つノミックグラウンドオゾンの沈降に関係するものと考えられる。バックグラゥンドオゾンの寄与は低気圧性擾乱の後面で顕在化し, その影響は南北200km以上の広い水平スケールに及ぶことがある。
著者
孫 富順 新田 裕史 前田 和甫 金 潤信 柳澤 幸雄
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.334-342, 1990-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
29

1989年1月に韓国で一酸化炭素 (以下CO) の室内濃度と個人曝露濃度の測定を行った。同時に室内汚染と個人曝露濃度に影響を及ぼす家庭特性を調べるための質問紙調査も行った。室内濃度は台所と居間で, 個人曝露濃度は最近開発されたパッシブCOサンプラーを用いて, 主婦に対して測定を行った。調査対象は都市地域であるソウルと地方である忠清南道Togoから, 暖房形態として伝統的オソドル又はオンドルポィラーを使用する世帯を選んだ。その結果, 日平均で室内CO濃度は台所23ppmと居間12ppm, 個人濃度はその中間の18ppmに及んでいた。室内濃度と個人曝露濃度には家庭特性, 特にオンドルのタイプの影響が認められた。さらに, 家庭での換気設備および対象家庭の社会経済的水準が室内CO濃度に影響を与える重要な要因であることが明らかになった。
著者
松本 光弘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.64-71, 1988-02-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
19
被引用文献数
3

雨水中のカルボン酸の測定に, 排除イオソクロマトグラフィー (以下, ICE法と略) の適用を検討した。その結果, 5種のカルボン酸 (ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, コハク酸, グルタール酸) を迅速にかつ同時に定量することができた。しかし, シュウ酸とマロン酸についてはICE法では分離が悪いため, 通常のイオソクロマトグラフィーで定量した。雨水中のカルボン酸は, 室温では数日で完全に分解するが, クロロホルムあるいは塩化水銀を添加することにより室温でも3ヵ月間以上安定であった。雨水中のカルボン酸濃度の年平均値は, ギ酸0.181μg/ml, 酢酸0.112μg/ml, その他のカルボン酸は0.Ol8μg/ml以下であった。雨水中の水素イオン濃度に及ぼすカルボン酸の寄与率の年平均値は, ギ酸3.89%, 酢酸0.59%であり, カルボン酸全体で4.94%と見積ることができた。
著者
寺田 伸枝 溝口 勲 河野 俊彦 林 豊
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.512-520, 1986

18ヶ月間にわたって, O<SUB>3</SUB> (0.1ppm) とNO<SUB>2</SUB> (0.3ppm) に単独, 複合暴露したラットの肺の病理学的変化について検討した。<BR>O<SUB>3</SUB>の単独暴露では, 1ヶ月後に, II型細胞の腫大と増加, I型とII型の中間型の細胞, 血管内皮細胞のpinocytotic vesiclesの増加, 肺胞壁間質の軽度の水腫が認められた。水腫液の貯留によって開大した組織間隙には, 離開した膠原線維と遊走細胞がみられ, air-bloodbarrierの肥厚を生じていた。3ヶ月後では, より進行した間 質の水腫が広汎に認められたが, 6, 18ヶ月後では消失する傾向にあり, また肺胞上皮の変化はほとんどみられなかった。<BR>0<SUB>3</SUB>とNO<SUB>2</SUB>の複合暴露では, O<SUB>3</SUB>単独暴露に比べ, 全暴露期間にわたって間質の水腫がより顕著に, かつ広汎に認められた。また中間型細胞が少数認められ, 肺胞上皮にも, 持続的な影響を及ぼしていると考えられた。