著者
小茂田 岳広
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.153-161, 2021-04-15 (Released:2021-08-05)
参考文献数
15

現代の品質管理では,高次元の工程管理がますます重要になってきている.従前からある多変量管理図に加え,近年では高次元の管理特性のうち一部の情報しか利用できないような状況においてどの管理特性を選択するかを効率的に決定するサンプリング戦略が開発されている.本論文では 2 つの新しい手法を導入したサンプリング戦略を提案する.1 点目は相関関係を考慮して観測する管理特性を選択するように統計量を改良した.2 点目は変数選択をする統計量と管理状態かどうかを判定する統計量を分離した.この新しいサンプリング戦略は,相関関係を考慮していない従来手法よりも,特に全特性数が観測できる特性数に比べて大きいときに,平均変化が起きた際の検知能力が高いことが 2 つのシミュレーションによって示された.
著者
黒木 学 宮川 雅巳
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.79-89, 1999-04-15 (Released:2018-10-20)

工程解析において品質特性とともに環境要因, 材料特性, 処理条件, 中間特性といった要因系変数が連続変数として観測される場合を扱う.特性と要因の関係に加えて要因間の関係を記述するのに, 因果ダイアグラムと線形構造方程式モデルを用いる.特性をねらいの範囲に調整・制御するために, ある処理条件に対して外的操作を加える状況を考える.この設定において統計的因果分析の最近の成果である介入効果の推測理論を, 工程解析の場面に適用する基本的フレームワークを与え, 回帰モデルで介入効果を識別するための変数選択基準を明らかにする.また, 線形構造方程式モデルにおいて, 平均に加えて分散に対する介入効果を明示する.具体的な適用例に通してこれらの有効性を考察する.
著者
芳賀 敏郎 竹内 啓 奥野 忠一
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.35-40, 1976-04-15 (Released:2019-03-13)

重回帰分析における説明変数の選択の基準として従来使われていた「残差平方和 RSS」に対して,最近 Allen の提案した「予測平方和 PSS」について検討した.(1) 計算量を大幅に減少するアルゴリズムを考案した. (2) PSS の性質,特に RSS との違いを調べるために,2つのモデル実験を行った.(3) PSS, MSEP, RSS の期待値 (またはその下限) を求めた.(4) 自由度2重調製済重相関係数 R**^2 を提案し,R**^2 の最大を基準とする変数選択は,F IN = F OUT = 2 とする通常の逐次選択法に近いことを証明した.
著者
及川 忠雄
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.296-302, 2013
参考文献数
5

The registration organization of ISO 9001 work on improvement of the quality awareness, reinforcement of the system infrastructure. On the other hand, the interest of the manager are sales amount improvement and profitability improvement. This difference is regarded as the reason why the interest of the manager is light. Therefore we studied promotion for ISO 9001 to contribute to an administrative action. The interest aim that there is of the organization are quality, cost, price and delivery. Furthermore, we study structure and the technique of the process to achieve them. We are going to finally edit them as "guideline to run QMS".
著者
塚田 則夫 長田 洋
出版者
一般社団法人 日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.255-261, 2002
参考文献数
3
被引用文献数
1

認証登録企業・事業所数は,ISO9000sでは2万3,000件,ISO14001で6,000件を超えており,その分野はサービス産業,官公庁などに拡大している.また,ISO9000sとISO14001の二つを共に認証登録している企業・事業所も増加している.<BR> しかし,品質/環境マネジメントシステムは従来からの活動の流れが異なり,かつ管理・推進部署が異なるためにそれぞれが独立して構築される.このような独立したシステムは全体のマネジメントシステムとして考えると多くの課題を含む.<BR> 一方,ISO9001はマネジメントシステム規格としての改訂に伴いISO14001との両立性を考慮した構成となった.このことは二つのマネジメントシステムを融合させることの可能性を増加させた.<BR> 本研究では,ISO9001とISO14001を融合するための考え方・手法の適用事例を示し,さらにこの融合によってマネジメントシステムが強化されることについて述べている.
著者
TANSUVAN Prasit
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.36-38, 1996-04-15

タイ経済の成長率は,89年から93年まで年率9.7%というように急激な成長を遂げ,ASEANでは最も大きい経済国である.海外からの投資の中で日本が最も重要であり,今や日常生活の至る所にタイで生産された日本製品があふれている.日本企業が進出してくろと当然のことながら,日本的マネジメントの技術,あるいはTQCが様々な形で持ち込まれる.たとえば,日本電装のタイの子会社は10年以上も前からQCCを導入し,数年前からは方針管理を導入し成功している.しかしながら,これらは親会社の資源やノウハウが導入できる日本または日本とのジョイントベンチャー企業での話であり,現地のタイ企業ではそのような機会は与えられていない.一般論として言えば,現在タイにはTQCは普及していない.それはタイの環境や人を変えるための専門家がほとんどいないことにその理由がある.TQCのコースはあるが,それに出席し感心するだけであり,仕事に戻るとすっかり忘れてしまう.たとえTQCを導入したいと思ってもどのようにスタートさせればよいのかわからない.さらにスタートのさせ方を知っていても次にどのように道を進めばよいのかわからないといった具合である.このような進め方の専門コンサルタントが不足で,現在タイ国中で1人から2人といった現状である.タイの仕事のやり方は,プロダクト・アウトで問題が起きてもまず自分のミスではないという態度,常にノープロブレム,PDCAのDだけ等々で例えられるように,まずこれを変えなければ,いくらTQCの高尚なツールを持ち込んでも意味をなさない.現在いくつかのTQCのプロモーションを図るプロジェクトが実施あるいは計画されているが必ずしも十分ではないと考えられる.今後タイのTQCのプロモーションのためには,具体的でしかもインパクトのある計画を打ち出すことが急務であると思われる.
著者
宮越 直樹
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.7-13, 2016-01-15

In Japan, the lessons learned from Fukushima Dai-ichi nuclear accident have been reflecting and implementing to the nuclear facilities in order to re-start their operations. However, when we review the Fukushima nuclear accident from the viewpoint of the quality assurance, it is regrettable that this nuclear quality assurance could not contribute to prevent from Fukushima nuclear accident. The nuclear quality assurance up to now was mainly focused to the quality of the products and maintaining and operating activities of the nuclear facilities. Essentially, the quality assurance is a scientific approach to achieve the objectives and consists of identifying quality problems, providing their solutions and corrective actions to prevent from recurrence. It should be also effective to achieve nuclear safety. Fukushima Dai-ichi nuclear accident taught us that nuclear safety is achieved by the efforts of all participants of the nuclear business. Nuclear safety starts from siting and terminates decommissioning including emergency preparedness. It is important to reconsider wide-ranging and more in-depth management systems to contribute safety. It should be a kind of social system involving all participants.
著者
吉野 睦
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.286-293, 2014-07

Recently, it is required to treat the big-data also in the manufacturing industry. They are laboratory data, inspection data, diagnosis data, and so on. But, unfortunately, they are not able to compute with conventional multivariate analysis. The causes are an increase of power of a test and the curse of dimensionality. Then, the new statistical method called "data-driven analysis" is applied as solution. On the other hand, conventional SQC method corresponds to "event-driven analysis". The difference between both is a difference of the conditional probability used as a criterion of judgment. Event-driven analysis uses P(O | T), and data-driven analysis uses P(T | O), where T is theory and O is observation. In in-house statistics education, the educational content that makes this difference clear was desired. This report reviews how this subject was tackled by several examples in DENSO.
著者
仁科 健
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.104-110, 1999-01-15

累積和管理図の設計法は二つある.一つは, ARL(Average Run Length)による方法であり, 他方は, Johnsonらにより提案されたWaldの逐次検定による方法である.累積和管理図のように連続する統計量が独立ではない管理図の性能を確率的に説明することはそれほど簡単ではない.仁科^[2]は, 異常判定までの時間の確率分布(RLD)のハザード関数により, 時間的意味を持つARLに保守的な確率的意味を与えた.一方, Waldの逐次検定による設計方法に対しては, 第一種の過誤の確率に関する厳密な議論はされていない.本論文は, 累積和統計量のマルコフ性と観測値の分布に仮定する単調尤度比の性質からWaldの逐次検定を基礎とした累積和管理図の設計方法が幾何分布のハザード関数の意味で保守的であり, かつARLによる設計より保守的であることを示している.また, 数値計算によりその保守性の程度と検出力への影響を示す.
著者
川村 大伸
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.276-279, 2014-07-15

Although the word of big data is very popular in Japan nowadays, it is not introduced many examples about manufacturing processes relevant to big data. This paper reports several examples of big data on process control for semiconductor manufacturing. Specifically, the number of the measurement point on a wafer, the sensors of semiconductor equipments, QWACS (Quality early Warning Alarm Control System) for real-time statistical process control are introduced, comparing the past with the present. Moreover, QWACS has been developed by NEC Corporation. Furthermore, the examples are discussed from the viewpoints of volume, variety, velocity and veracity which the feature of big data has.
著者
Nagata Yasushi Miyakawa Masami Yokozawa Toshiyuki
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.83-92, 2003-07-15
被引用文献数
2

複数の計測器の性能を比較する場合,入力と出力の間に単回帰モデルを想定して,回帰係数と誤差分散のそれぞれを比較することが考えられる。しかし,計測器の物理的なメカニズムが異なり,出力の単位が異なる場合は,このような比較には意味がない。そこで,出力の単位に依存せず,回帰係数と誤差分散の両方のかねあいをはかる尺度としてSN比が提案されている。このSN比の違いの検定は,統計学的には誤差に正規性を仮定すると,非心t分布の非心パラメータの検定問題に帰着する。厳密な検定は大変複雑になるので,本稿では非心t分布に分散安定化変換を適用することにより簡便な検定方式を導く。同じ問題に対してMiwaが別の検定方式を導いている。本稿では,2つ以上の計測器のSN比の一様性の検定に対して,両者の検定方式の性能を比較し,提案する検定方式は公称の値に近くて公称の値以下となる有意水準を持つこと,そして妥当な検出力を持つことを示す。
著者
黒木 学 宮川 雅巳
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.79-89, 1999-04-15
被引用文献数
8

工程解析において品質特性とともに環境要因, 材料特性, 処理条件, 中間特性といった要因系変数が連続変数として観測される場合を扱う.特性と要因の関係に加えて要因間の関係を記述するのに, 因果ダイアグラムと線形構造方程式モデルを用いる.特性をねらいの範囲に調整・制御するために, ある処理条件に対して外的操作を加える状況を考える.この設定において統計的因果分析の最近の成果である介入効果の推測理論を, 工程解析の場面に適用する基本的フレームワークを与え, 回帰モデルで介入効果を識別するための変数選択基準を明らかにする.また, 線形構造方程式モデルにおいて, 平均に加えて分散に対する介入効果を明示する.具体的な適用例に通してこれらの有効性を考察する.
著者
宮川 雅巳 吉田 勝実
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.12-18, 1992-04-15
被引用文献数
1

In this paper, interaction patterns in L_<18> orthogonal array are classified as the confounding patterns between interaction and main effect ,and the degree of confounding is evaluated quantitatively for each pattern. An equivalence relationship is defined among the forms of confounding patterns to classify into several confounding patterns. To evaluate the degree of confounding quantitatively, the ratio of sums of squares between interaction and main effect are used. For instance, these results suggest that when there are only factors with three levels and the number of factors is six at most, these factors should be assigned from the third column to reduce the confoundings as least as possible.
著者
永田 靖
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.78-88, 1997-04-15
被引用文献数
1

回帰分析において寄与率R^2,自由度調整済み寄与率R*^2は,モデルの適合度を表す指標として常に参照される統計量である.さらに,品質管理の分野では自由度2重調整済み寄与率R**^2が参照されることも多い.しかし,自由度調整済み寄与率や自由度2重調製済み寄与率は変数選択の立場から導入されたものである.変数選択の観点からよい統計量であるかどうかと,母寄与率の点推定の観点からよい統計量であるかどうかは別の問題である.本稿では,修正寄与率R*^<2+>=max {0, R*^2},R**^<2+>=max{0, R**^<2+>}を含めて,母寄与率の点推定の立場から検討する.得られる結論は次のとおりである.推定精度の観点からは,どのタイプの寄与率もサンプルサイズがかなり大きくないと信頼しにくい.このことを念頭に入れた上でモデルの適合度の尺度として用いるのならば,バイアスの程度とMSEの観点からR*^<2+>を用いるのが一番望ましい.R^2には重大な上側へのバイアスが存在する.また,自由度2重調製済み寄与率R**^2やその修正寄与率R**^<2+>は下側へのバイアスが重大であり,MSEも他の寄与率に比べて大きいので母寄与率の点推定量として適切ではない.
著者
仁科 健
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, 1987-01-15

互いに独立な連続する確率変数の位置母数がシフト変化するモデルを想定する。このモデルには, 「変化の検出」, 「変化点の推定」, および「変化量の推定」の3つの問題がある.本研究は, これらの問題を解析する手法として累積和法を取り上げ, 「変化量の推定」を対象とする.変化量の推定量には, BS 5703 (1980), Woodward (1964)ら, および仁科(1983)があり, 今回の報告では, 変化点の推定量の分布との関連からこれらの推定量を評価する.