- 著者
-
加藤 雅也
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
- 雑誌
- Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.3, pp.219-233, 2012 (Released:2012-07-21)
- 参考文献数
- 52
- 被引用文献数
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52
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カンキツは,果実に様々なカロテノイドが含まれる.カンキツ果実のカロテノイド含量および組成は,品種間において非常に多様である.ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)は,砂じょうに β-クリプトキサンチンを主に集積する.バレンシアオレンジ(Citrus sinensis Osbeck)は,砂じょうに主にビオラキサンチンを集積する.リスボンレモン(Citrus limon Burm.f.)は,砂じょうに低レベルのカロテノイドを集積する.カンキツ果実の成熟過程におけるカロテノド集積メカニズムを解明するために,カロテノイドプロフィールの異なる上記カンキツ 3 種を用いて,カロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現を比較,調査した.その結果,カンキツ果実のフラベドおよび砂じょうにおけるカロテノイドの集積は,カロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現により,高度に調節されていることが明らかとなった.‘たまみ’は,‘清見’(Citrus unshiu Marc. × Citrus sinensis Osbeck)に‘ウィルキング’(Citrus nobilis Lour. × Citrus deliciosa Ten.)を交雑して,育成された品種である.砂じょうに,ウンシュウミカンより多く β-クリプトキサンチンを蓄積する‘たまみ’における β-クリプトキサンチンの集積メカニズムを解明するために,‘たまみ’のカロテノイド生合成および代謝分解に関わる遺伝子の発現を調査した.その結果,‘たまみ’における β-クリプトキサンチンの集積メカニズムは,ウンシュウミカンと同様のメカニズムであることが明らかとなった.また,最近の研究では,培養した砂じょうを用いて,カロテノイド含量および組成を調節する要因について調査した.