著者
山本 省
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.111-120, 1999-03

『喜びは残る』の作者ジオノは人間が生まれ死ぬのはごく当たり前のことだから死を異常なものではなくむしろ自然な現象と考えていた。しかし,自殺についてはいささか事情が異なる。生きていく喜びの欠如,何らかの価値観の喪失,こうしたことが自殺の原因になりうる。『喜びは残る』では4人の登場人物が自殺する。エレーヌの夫とシルヴは何の喜びもないグレモーヌ高原の住人たちに特有の病気が嵩じて自殺し,オロールは喜びは見出したがそれを持続させることができず死を選ぶ。高原の住人たちに生きる喜びを教えてきたボビはジョゼフィーヌとの情交を重ねるうちに自分には穏やかな喜びは不可能になっていくのを痛感する。もはや高原にいる意味がなくなったと判断し高原をあとにしたポビは激しい嵐のなかで死ぬ。反対に動物や植物に喜びを見出し精彩あふれる生活を取り戻していった住人たちも存在する。この物語では,4人の死者がでたにもかかわらず,生きる喜びの種は確実にまかれたということが確認される。死者たちも世界の運行に異常なことは何もなかったかのように参加する。寂しげだったグレモーヌ高原に鹿が遊び,羊が啼き,小鳥や小動物が徘徊し,花々が咲き乱れるようになったのである。
著者
松尾 信一 森下 芳臣 大島 浩二
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.59-90, 1984-07

ニホンカモシカの骨格の形態学的研究の一環として,前肢骨格に引き続き,今回は,後肢骨格について調査研究を行なった。1.カモシカの後肢骨は,寛骨(腸骨,坐骨,恥骨),大腿骨,膝蓋骨,脛骨,腓骨,足根骨,中足骨,趾骨,種子骨および副蹄内の2個の小骨片から成り,それらの骨の各部位を確認し,図譜を作成した。2.カモシカの後肢骨格は,反芻動物の一般的な特徴を備え,概観的には,ヤギやヒツジの骨格に類似していた。また,ウシとは,骨格の大きさで区別できた。3.カモシカの寛骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。閉鎖孔,寛骨臼,大腿直筋外側野,腸歩翼,腸骨稜,寛結節,仙結節,殿筋面と殿筋線,大坐骨切痕,坐骨体,坐骨板,坐骨結節,小坐骨切痕,恥骨櫛,閉鎖溝および大腿骨副靱帯溝。カモシカの閉鎖孔の周縁に家畜解剖学用語には使用されていない背側閉鎖結節と腹側閉鎖結節の存在を発見し,靱帯解剖学用語を参照して命名した。4.カモシカの骨盤では,雌雄差について調査した。また,骨盤腔の形でヤギやヒツジと区別できた。5.カモシカの大腿骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。大腿骨頭,頭窩,大腿骨頸,転子窩,転子間稜,大転子,大腿骨粗面,顆上窩,顆間窩および栄養孔の位置。6.カモシカの膝蓋骨は,概観的にウシと異なり,ヤギやヒツジと類似していた。7.カモシカの下腿骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。脛骨では,外側顆,膝窩切痕,顆間区,顆間隆起,脛骨粗面,脛骨体,前縁,外側面および遠位端。また,腓骨は,腓骨頭と外果より成り,ヤギやヒツジのものによく類似していた。8.カモシカの長骨では,脛骨が最も長く,次に尺骨,大腿骨,上腕骨,橈骨,中足骨,中手骨の順であった。9.カモシカの足根骨は,ヤギやヒツジのものと類似しており,一部,ウシのものとは異なっていた。10.カモシカの中足骨では,退化している第二中足骨が,第三・四中足骨の近位(上端)の後内側に小突起として付着していた。一方,ヤギやヒツジでは,第三・四中足骨の近位には,第二中足骨との関節面が存在していた。さらに,中足骨と中手骨の形態的差異についても,カモシカとヤギでは異なっていた。11.カモシカの趾骨は,ヤギやヒツジのものに類似して細長かった。一方,ウシのものは,太くて短かった。さらに,カモシカでは前肢の指骨の方が,後肢の趾骨よりも太くて短かった。12.カモシカの四肢骨における雌雄差は,寛骨と骨盤においてのみ認められた。
著者
茅原 紘 川上 晃 奥谷 能彦 中西 潮 只左 弘治
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-44, 1991-07

今回,砂糖の約2000倍の甘味を持つといわれるペリラルチンと類似構造を有するように,甘味発現のAH-B-X系に基づき,(1)オキシムをシッフ塩基に置き換えたアナローグ,(2)オキシムをペプチド結合に置き換え,水酸基を持つアミノ酸Ser,Thrを導入したアナローグを合成した。(1)では,perillaldehydeや,他のアルデヒドにアミンを導入したものについても呈味は得られなかった。(2)の場合,C端保護Thr,Serに有機酸を導入した場合苦味を呈し,C端無保護の時酸味となった。ところが,Ferulic acidを導入した場合,C端保護時で甘味を呈した。このことから,Ferulic acidの特殊な構造と,SerおよびThrの水酸基の位置が微妙に甘味に関連している事が推定される。
著者
佐藤 幸雄 熊代 克巳
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.61-69, 1985-12

セイヨウナシの葉やけ発生要因と考えられる気孔運動機能の鈍化が,他の果樹にも認められるかどうかを知るため,ナシ,リンゴ,モモ及びブドウを用いて,葉の比較蒸散量及び蒸散抵抗を調べた。得られた結果の概要は次のとおりである。1.葉齢の進行にともなう気孔運動能の鈍化は,葉やけの発生しやすいナシ「バートレット」が最も著しく,6月下旬にすでにその微候が認められ,7月中旬から急速に進行した。しかし葉やけの発生が認められないモモ「缶桃5号」は,8月下旬においてもなお気孔の運動機能が鋭敏であった。ブドウ「コンコード」は,8月上旬以降に機能鈍化が認められたが,「バートレット」ほど顕著ではなかった。またリンゴ「ふじ」も8月上旬以降に機能鈍化の微候を示したが,その程度は比較的軽かった。2.ナシの品種別比較では,「バートレット」の機能鈍化が最も著しかった。「新水」は7月中旬に「バートレット」と同程度の機能鈍化を示したが,それ以降はさほど進行しなかった。また「幸水」は,8月中旬以降に急速に機能鈍化が進行し,9月上旬には「新水」とほぼ同程度となった。3.夏季の高温乾燥条件下における着生葉の蒸散抵抗は,「缶桃5号」が最も高く,次いで「ふじ」,「コンコード」,「幸水」,「新水」,「バートレット」の順に低下し,「バートレット」が最低であった。またいずれの果樹も新梢の基部葉は先端部葉に比べて低かった。4.葉やけ発生率と気孔の運動機能との関係をセイヨウナシについて調べた結果,発生率の高い品種ほど機能鈍化が著しい傾向がみられた。しかし「プレコース」のみは機能鈍化が著しかったが,葉やけ発生率は低かった。
著者
村井 秀夫 松尾 信一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.p245-257, 1974-12

Nagano-ken (Shinano no kuni) was very famous for a horse breeding area in Japan. In January 1972, an old scroll of horse medicine was found from an old family, the Sasakos, at Komagane, Nagano-ken. The scroll was copied in 1710 from the original by Harimano-Kami Ansai in 1579. The basic feature of the scroll is founded on the traditional Chinese horse medicine and Buddhism. It has several sections. First; the summarized graph of the Chinese five natural elements such as fire, wood, earth, metal and water. Second; the anatomical charts of the five parenchymatous organs and six viscera, the pictures of a horse body, horse's face, Buddha's face, the five storied stone Pagoda (Stupa) and [ア] (sanskrit). These are divided respectively by the five colors (blue, red, white, black and yellow), and the parts of the same color of each picture are connected with a same color line. Third; explanatory notes and diagrams of interrelationships of seasons, the old calender, Buddhism, the body and diseases with the five natural elements. Fourth; two pictures of the horse body show points for acupuncture. Fifth; the aim of the arrangement of this scroll was to summarize concisely from the Ankishu (the name of Chinese horse medicne). Lastly; names of authorized scholars of this School, The founder was Memyo Bosa-tsu (Asvaghosa) in India. Successors; Sanzo priest in Tang (China), Funsen (a Japanese Buddhist priest) etc. , and the scroll was kept in the Ansai School. The scroll shows that one horse medicine in Japan was brought directly from China.
著者
安井 俊樹 根本 和洋 南 峰夫 北村 嘉邦
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 = Journal of the Faculty of Agriculture, Shinshu University (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9-15, 2015-03

ネパールにおける花卉産業の現状を明らかにするために,信州大学のネパール農業実習で訪れたカトマンズ,ポカラ,マルファ,ナラヤンガートにおいて調査を行った。主に切り花を取り扱うフラワーズデコレーターでは切り花に関して,主に鉢花を取り扱うナーサリーでは鉢花に関して,品目,価格,販売形態および流通経路について開き取り調査を行った。マリーゴールド(Tagetes spp. ),アジサイ(Hydrangea spp. ),ユリ(Lilium spp. )については特に注目し,認知度,用途,嗜好について開き取り調査した。調査結果をもとに,ネパールにおける花卉産業の成熟度,花卉と文化,宗教との関係について考察した。
著者
信州大学農学部図書・紀要編集委員会 信州大学農学部農学情報係
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.73-82, 2000-10

本学部図書分館では,平成8(1996)年度より週日は,17時から20時までの3時間開館時間延長を行っている。また,10(1998)年度より土曜日も10時から16時までの開館を行うことにした。そのため,平成8,9年度に引き続き,10,11年度においては,同じく延長時間内の利用状況に加え,土曜開館時間中,さらに両年度の前期,後期の通常授業期(通常期)および試験・補講期(試験期)の各1週間(月~金)を選び開館全時間を通じての利用状況を調査した。調査は,延長時間内については前回の調査と同じく17:30~19:30までの間30分おきに5回,週日の9:00~5:00までは,9時より1時間おきに9回,また土曜日は10時半より1時間おきに6回,館内閲覧室・書庫およびロビー・印刷室にいる利用者の数を記録することで行った。さらに各調査日の調査時刻ごとの在館者数を集計し,これを当日の延べ利用者数として解析に用いた。 全日調査による1日平均延べ利用者数は,通常期で150~190,試験期で300名前後であり,これから実際の1日当たり利用者数は通常期で100~150名,試験期で200名強と推定された。1日当たりでみると,これら利用者のうち60~70%が閲覧室,30~40%がロビーに在室していたが,通常期午前はロビー在室者の割合が高い。通常期においては利用者の数は午前中は少なく,午後次第に増加して16:00ないし17:00にピークに達した後,延長時間内を通じて減少した。試験期でも利用者数が午前中から増加し始めること,ピーク到達が15:00~16:00であることを除けば同様の日内推移がみられた。また,開館延長時間内の利用者数は,通常期,試験期ともに,1日の利用者総数の約1・4と推量された。 平成10,11年度前・後期における延長時間内利用者数は,先の報告の8,9年度における利用者数よりかなり増加した。しかし,利用者数の各期間内推移,曜日の影響,延長時間内の在館者数推移等については,前報結果と大差はなかった。 土曜日における利用者数は週日昼間の1・3以下であったが日による違いが大きく,全般に前期,後期の前半は少なく試験期が近づくにつれ増加,試験期には100名内外,ないしそれ以上の数にまで達したものの,前半でも時に試験期に近い利用者数の日もあった。午前中の利用者は少なく,在館者数は午後次第に増加し,閉館前15:30に最大値になった例が多かった。開館時間の設定については,今後なお検討の余地があるかも知れない。土曜開館の場合,他に比べロビー利用者の割合が少なく全利用者数の20~30%にとどまった。
著者
鈴木 茂忠 宮尾 嶽雄 西沢 寿晃 高田 靖司
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.p147-177, 1977-12
被引用文献数
4

Investigation is running on since April 1975 in order to make clear the food habit of the Japanese marten, Martes melampus melampus on the eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake. In view of the results so far achieved, the authors attempted to make clear the food habit to examine scat samples, which were collected in the upper part of low mountaineous zone (1,200-1,600m above the sea level : we called "the A zone") and the sub-alpine zone (1,700-2,600m above the sea level : we called "the B zone") on the eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake from the end of March 1976 to the end of January 1977. In the present paper, especially the authors will be discussed on the following several points : i) change of food habit from autumn to winter in each year of 1975 and 1976 in the A zone. , ii) the change throughout the year in the A zone, and iii) difference of food habit between the A and B zones. The results obtained were summarized as follows 1) The number of scats collected in the A zone was less amount since August and thereafter its number suddenly increased from September. However, the authors could not be clear what had caused the results. 2) In the A zone, food habit from March to June seemed to be dependent on animal diet, while at the time from September to January of succeeding year, it may be dependent essentially on vegetable diet rather than animal. And both animal and vegetable were eaten in July and August. In the B zone, on the other hand, there was scarcely any scat which contained only animal component and scat containning vegetable component or vegetable and animal were commonly found from September to December. 3) Food habit was dependent on animal diet, namely, Lepus brachyurus from March to June in the A zone. 4) There was scarcely any scat which contained only animal and that containning vegetable component or vegetable and animal component were commonly found from September to December in the A zone. Food component in scat from July to August would be intermediate before June and after September within a year. 5) Kinds of vegetable diet eaten by the Japanese marten were Rubus, Pari-etales (Actinidia) and Sorbus in July and August, in September and October, and in November and January, respectively. 6) Sorbus was mainly eaten from November to January in 1976 as a vegetable diet, which had not been found at all in the previous report of 1976 (SUZUKI, MIYAO et al) in the A zone. It seemed to be considered that the lower temperature during June to September might cause the difference of kinds in vegetable diet among 1975 and 1976. 7) Lepus brachyurus and murine rodents were the most important as an animal diet in the A zone and the mutual compensatory relation as a companion diet would be recognized among two kinds of animals, that is, the higher the frequency of appearance of the murine rodents, the lower the L. brachyurus occurred and the frequency relation was vice versa. These tendencies may suggest that the Japanese marten may attack the animal as a density-dependent factor and the Japanese marten may be used to eat the animal which increased the population density. 8) Frequency of scat which contained animal component (L. brachyurus or Coleopterous insect) became higher in July and August and the component changed to both animal and vegetable in September and then it reached about 50% for vegetable diet (Sorbus) in the B zone. 9) Animal diet was much weight rather than vegetable in the B zone compar-ing with the diet in the A zone. 10) Main animal diet was L. brachyurus in the B zone.
著者
鈴木 茂忠 宮尾 嶽雄 西沢 寿晃 高田 靖司
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.p47-79, 1978-07

Investigation has been made from May 1975 to January 1977 in order to make clear the food habit of the Japanese serow, Capricornis crispus on eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake, where the University Forest in the Faculty of Agriculture, Shinshu University expands. The investigating area is a low temperate zone and is enveloped in natural forest in upper part of low mountaineous zone (1,200-1,600m above the sea level). Seasonal change of food plants was clear up by analyzing the plant traces eaten by the Japanese serow. This analysis didn't express quantitative estimation of plant eaten by the animal, but identification of plant, namely, qualitative list of plant species. Further, there was less data obtained from March to April and we were obliged to omit it. The results obtained were summarized as follows (1) The Japanese serow was used to bite tip of herbs, young trees and shrubs off and the animal seems not to be grazing herbivore, but browsing herbivore or snip feeder. (2) Total 189 plant species were listed up as the food of the Japanese serow, among them, 94 species (27 families) for herb ; 85 species (29 families) for broadleaf tree ; 7 species (2 families) for coniferous tree ; and 3 species (1 family) for bamboo grass, respectively. The number of species eaten by the Japanese serow reached to maximum in July (106 species) and thereafter down to minimum in November. (3) Number of plant species of herb and broad-leaf tree was divided into a half in each from May to November and the two plant groups should become themain food enough to feed at this time. While, ever-green coniferous tree and bamboo grass might be added to the two plant groups during winter from December to February. Number of herb species decreased suddenly and broad-leaf tree, therfore, might act an important role on food and percentage utility of broad-leaf reached on 83.1% at the time of February. On the other hand, the ever-green coniferous tree was down to 5% and 2% for bamboo grass. In the investigating area, there was so small amount of biomass for ever-green coniferous tree that the tree seemed to be a secondary food. (4) Plants feeded on each month throughout a year (but March and April could not be observed yet) were as follows : Hydrangea paniculata, H. cuspidata, H. macrophylla, Rubus kinashii, R. rnorifolius, Euonymus sieboldiana, Helwingia japonica, Clethra barbinervis, Sambucus sieboldiana and Viburnum furcatam. Above 10 species were all deciduous broad-leaf tree and the Japanese serow were used to feed on twings and leaf during spring to autumn and on twigs with winter bud. Moreover, plants feeded for the most part within a year were as follows Polygonum reynoutria, Clematis stans, Cirsium tanakae, Artemisia vulgaris, and Vitis coignetiae. It may be considered that these two sorts of plant species shall become a fundamental food resource for the Japanese serow in the area. (5) Petasites japonicus, Trillium tschonoskii, T. apetalon and Paris tetraphylla, which expand new green leaves to be the first to do other plants at the time of early spring may play a compensatory role upon many species of food plants feeded throughout a year. (6) Various species of herb and broad-leaf tree were feeded during summer, such as the plants mentioned (4) and Heracleum lanatum, Angelica multisecta, Cacaria hastata, Ainsliaea acerifolia, Eupatrium sachalinense, Elatostemma involuc-ratum and Boehmeria tricuspis as well. (7) Leaf of Petasites japonicus, fall down leaves of broad-leaf tree, dried herbs and nuts of Quercus crispula which were feeded during the late autumn must become a major food at the only short time of pass through autumn to winter. (8) Twigs and leaves of ever-green coniferous tree and bamboo grass which were feeded during only winter season (December to February), will supply for food in winter. In this period, the Japanese serow would usually not to be enough to feed the plant mentioned (4) and ever-green coniferous tree and bamboo grass seemed to be a suitable food for keeping hunger away. (9) Some poisonous plants were rearely feeded such as Scapolia japonica, Aco-nitum japonicum, Aquilegia buergeriana, Veratrum stamineum, Pieris elliptica, Aesculus turbinata and Buddleja insignis.(10) Plant species which did not remain traces eaten by the Japanese serow in the investigating area were as follows : Rhododendron degronianum, R. japonicum, Macleya cordata, Convallaria majalis, Shortia soldanelloides, Arisaema, Matteuccia struthiopteris, Blechnum niponicum etc.
著者
野口 茜 武田 俊之 渡辺 剛 保井 久子
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 2008-03

毎年冬季に流行するインフルエンザ感染症は,主にA型インフルエンザウイルス(Flu)により発症する。A型Fluは,複数の亜型に分類されることやゲノム変異が頻繁に起こることから,その予防にワクチン接種は完全とは言えず,また抗Flu薬も問題が多い。一方,紅茶や緑茶等の茶フラボノイドは,高いFlu感染阻害作用を有することが注目されている。そこで,我々はアントシアニンなどのフラボノイドを多量に含む果実であるカシスに注目し,その抗Flu作用を検討した。その結果,カシスエキスはFluに対して高い赤血球凝集阻害作用を示し,Flu感染モデルマウスを用いた試験において,発症率を減少させ,生存率を高めた。これらのことから,カシスエキスはA型Fluの予防に有効であると考えられた。また,活性成分の探索のため,カシスエキスを合成吸着樹脂にて分画し,赤血球凝集阻害作用を調べた。その結果,アントシアニン以外の物質が含まれる画分に,強い吸着阻害作用を有する化合物の存在が示唆された。
著者
佐藤 幸雄
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-62, 1994-08
被引用文献数
1

野辺山高原におけるハイブッシュ・ブルーベリー栽培の可能性を検討するため,5か年にわたって生育相,寒害,果実収量及び果粒重について調査を行った。1. 調査5か年間の平均発芽日は,品種によって多少異なり,4月29日~5月3日であった。また,開花日も品種によって異なり,5月28日~6月8日であった。しかし,開花期間は品種による差が少なく,およそ25日間であった。2. 収穫時期は品種による差が大きく,早生種7月下旬~8月下旬,中晩生種は8月上中旬~9月中旬以降で,平均収穫期間は短い品種で約25日間,長い品種で約50日間で,2倍の差がみられた。3. 1株当りの新梢発生数は,'ノースランド'が最も多く,最小の'ブルータ'の3.7倍であった。しかし,新梢長については,品種間で有意差は認められなかった。4. 寒害被害新梢数の割合は,'コリンズ'が最高で,ついで'ウエィマウス'及び'コビル'も高かったが,'ジャージー','ノースランド'及び'ブルーレィ'は比較的低かった。寒害被害新梢長の割合についても同様の傾向がみられた。5. 果実収量は年次変動が極めて大きく,1986年は収穫皆無に近かったが,1988年にはかなりの収量が得られ,とくに'ノースランド'では,1株当り平均7㎏以上に達した。しかし,'コリンズ','ウエィマウス','ブルータ'及び'アーリーブルー'の各品種は極端に少なかった。6. 供試10品種のうち,果粒重が最も大きかったのは,'バークレィ'の約1.5gで,ついで'コリンズ'及び'コビル'も比較的大粒であった。しかし,'ノースランド'及び'ジャージー'は小粒で,いずれも1g未満であった。
著者
辻井 弘忠 赤羽 明子
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.125-138, 1994-12

本実験では,日本在来馬のうち木曽馬を中心に電気泳動法を用いて血液蛋白質型を分析し,遺伝形質としての特徴を解析することを試みた。供試馬は,木曽馬24頭の他に,北海道和種,対州馬,トカラ馬,サラブレッド,ブルトンおよびペルシュロンを用いた。血液蛋白質型の分析に用いた電気泳動法は,水平式ポリアクリルアミドグラジェンゲル電気泳動法(HPAGE法),ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGIEF法),澱粉ゲル電気泳動法の3種を用いた。各血液蛋白質型の対立遺伝子頻度を算出した結果,遺伝子構成には馬種間の差異があることが判った。特に,Tf(トランスフェリン)型,Es(エステラーゼ)型およびHb(ヘモグロビン)型においては,馬種間の差異のみならず,日本在来馬とサラブレッドおよび重種馬の遺伝子構成の違いを認識することができた。つまり,Tf型に関しては,TfF は木曽馬のみに,TfH1は北海道和種のみに,TfF1 はサラブレッドのみにみられた。Es型に関しては,EsH は木曽馬および北海道和種に,EsO は木曽馬のみにみられた。また,Hb型に関しては,HbAはトカラ馬を除く日本在来馬のみに見られた。また,木曽馬において従来報告されたものと比較して,頭数の急激な減数が始まる前と後では遺伝子構成に変動がみられた。特にTf型では,消失したと思われる対立遺伝子を2種類確認できた。これは集団サイズの急激な縮小による機会的遺伝浮動の影響であると考えられた。
著者
山本 省
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.79-90, 1998-03

『世界の歌』は晩秋から冬を経て初春にいたるあいだに失踪した息子を父親が探し出し家に連れ帰るという物語であるが,重要な場面の多くは夜の闇のなかで展開する。その闇のなかでは当然のことながら松明やランプなどの光が揺れ動く。また,登場人物においても人間の闇を象徴する身体的欠陥を持った人物が幾人かあらわれるが,彼らは単なる弱者ではなく普通の人間たちが感じとることのできないことを知覚する能力に恵まれていたりする。勿論のことながら若さや力にみち溢れた人間の内部にもさまざまな闇の部分(欠点)が潜んでいる。 この物語においては動植物や自然界のさまざまな現象も人間たちが繰り広げるドラマと密接な関わりを持ったものとして描写される。人間のドラマも自然界のなかのひとつの現象でしかない。上流の村と下流の村を結び付けている河もまた大きな意味を担っている。その河の周辺の自然界と人間界の闇と光の交錯から立ちのぼってくるのが「世界の歌」なのである。
著者
有馬 博 北原 英一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.p59-72, 1988-12

ベニバナインゲン3品種を準高冷地(信州大学農学部附属農場圃場,標高754m,年平均気温10.7℃)で播種期を変えて栽培し,生育,開花及び結きょう経過を調査するとともにこの地帯での経済栽培の可否を判定した。生育は寒地より明らかに早く,また無霜期間が高冷地より長かったため良く生育し,1株当たり約4,000花が咲いた。平均結きょう率は約4%であったが,秋に未熟のまま凍結して廃棄されるさやは少なかった。晩生種を終霜期ころに早く播種し,過繁茂にしないように注意すれば,準高冷地でも1粒重1.8g以上の種子が10a当たり300kg以上収穫でき,経済栽培が可能であることが明らかとなった。
著者
平岡 直樹 小池 政嗣 高木 由久
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-35, 1998-09
被引用文献数
1

本研究は松本旧城下町を対象とし,歴史的住宅地の持つ空間構成の特徴を明らかにすることを目的とする。旧軽輩武家町の中から西町と堂町を事例地として選び,町並みの特徴を最も表出する道路から見える空間の構成を調査した。 その結果,伝統的な構成要素である門冠り,門柱,囲障,これらのセットバック,むくり破風等が特に強い相互関連をもって出現していることが明らかになった。そして,それらの代表的な素材や形状は,アカマツの門冠り,一間以上の高い石柱や木柱,高さ一間あまりの板塀,道路線から半間程度のセットバック,玄関上のむくり破風である。これらはそれぞれが歴史的な構成要素としてあらわれるだけでなく,組み合わされ,一つの格式を持った門構えとして出現することで,より一層旧武家町としての町並みの特徴をあらわしている。
著者
南 峰夫 氏原 暉男 根本 和洋
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-43, 1998-09

ネパールにおいて、1984年以来、植物遺伝資源の収集と聞き取り調査を行ってきた。作物別の収集点数とその標高分布から、ネパールの農業における新大陸起源の作物の占める位置について考察した。新大陸作物は栽培の歴史が短いにもかかわらず、ネパールの農業において重要な位置を占めていた。トウモロコシはイネに次ぐ栽培面積と生産量を持つ丘陵地帯の最も重要な穀類となっており、多くの在来系統と、多様な作付体系が成立していた。バレイショはイモ類生産量の70%を占め、他作物の栽培が困難な標高3500m以上まで栽培されており、高地における重要な主食作物になっていた。さらにトウガラシはネパールの食生活に欠かせないものとなっている。これら収集した新大陸作物(トウモロコシ、インゲンマメ、アマランサス、トウガラシ)の在来系統の諸特性を栽培調査したところ、多様な変異が認められ、遺伝資源として有用であることを確認した。