著者
足立 幸彦 諸岡 留美
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.174-180, 2009 (Released:2009-06-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

黄疸はビリルビンの生成から肝細胞でのグルクロン酸抱合を経て腸管内への排泄までのいずれかの代謝·輸送段階の破綻によって発症する.近年肝細胞の抱合酵素UGT1A1,毛細胆管膜のATP依存性輸送蛋白MRP2,類洞側膜局在のMRP3等の核内レセプターによる発現調節についての解明が進んでいる.Gilbert症候群を起こすUGT1A1遺伝子多型(UGT1A1*6)と薬物や発癌物質の代謝にかかわるUGT1Aアイソザイムの遺伝子多型(UGT1A6*2,UGT1A7*3)とのリンクが認められ,また有機アニオン系薬物を輸送するMRP2活性がDubin-Johnson症候群で欠如,肝細胞内輸送蛋白GSTαがRotor症候群で欠如していることから,各種体質性黄疸において薬物代謝遅延が生じ得る.これらの代謝酵素,輸送蛋白は黄疸を伴う後天性の肝胆道疾患でも低下が報告されており,薬物代謝の面からも大きな問題となるので注意が必要である.
著者
太田 仁 別府 倫兄 二川 俊二
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.100-107, 2002-05-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
21

腹嚢癌切除69例を対象に進展様式と遠隔成績との関連を検討し,予後を規定する因子を明らかにすることを目的とした.切除例の内訳は,m癌11例,mp癌7例,ss癌30例,se,si癌21例で,予後良好なm,mp癌を除いた進行癌について,各因子別の予後を比較した.治癒切除率は,ss癌83.3%,se,si癌19.0%であり,根治度別の5年生存率は治癒切除55.2%,非治癒切除では3年生存例を認めなかった.リンパ節転移の有無別では,n(-)の5年生存率は50.4%,n(+)では5.7%,binf因子の有無別では,binf(-)35.6%,binf(+)では3年生存例はなかった.その他の予後不良因子として,stageIII,IV,乳頭型以外の肉眼形態,Gn(+)があげられた.5年以上長期生存の進行胆嚢癌症例は,いずれも治癒切除例で,binfは全例陰性,リンパ節転移陽性はn1(+)の1例のみであった.
著者
内山 和久
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-44, 1992

従来より肝内結石はビリルビンカルシウム石(以下ビリルビン石)とされてきたが, 今回胆嚢結石43個(コレステロール石16個, ビリルビン石16個, 黒色石11個)を対象とし, 肝内結石症25個をその構成成分から分類した. 分析は, 1.赤外線分光分析による胆石成分の分析, 2.胆嚢胆管胆汁における胆汁酸分析, 3.胆石に含まれる胆汁酸濃度およびその分画, 4.胆石内の無機元素濃度の4項目について行い, これらを多変量解析した.その結果, 肝内結石は黒色石に類似するもの(I型), ビリルビン石(II型), コレステロール石に近いもの(III型)の3種に分類され, 肝内結石に含有されるコレステロール成分により, 20%以下のものをI型, 21から40%のものはII型, 41%以上のものをIII型にすればよいことが判明した.臨床的にII型は他に比べて疼痛, 発熱, 黄疸などが強く, 肝内胆管の拡張・狭窄ともに存在する例が多いなど, それぞれの型別に臨床的特徴が認められた.
著者
糸井 隆夫 土屋 貴愛 栗原 俊夫 石井 健太郎 辻 修二郎
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-46, 2013

<b>要旨:</b>胆管ステンティングおよび胆嚢ステンティングの際の注意すべきポイントについて解説した.胆管ステンティングにおいてはステントの種類と特性を理解しておくことが肝要である.特に胆管メタルステントに関しては近年様々な種類のものが登場しており,ステントの特徴(カバーの有無,編み込み型かレーザーカット型か,再収納の可否など)を理解した上でのステンティングが極めて重要である.胆嚢ステンティングにおいてはまず胆嚢内にガイドワイヤーを送り込むことが重要であり,胆嚢管の分岐パターンを理解して効率よく確実な胆嚢管挿管を心がけることが大切である.<br>
著者
中村 弘樹 木下 博明 広橋 一裕 久保 正二 田中 宏 塚本 忠司 藤尾 長久
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.22-28, 1994-02-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
17

最近3年間の肝胆道手術症例213例の肝門部胆管合流形式を検討したところ, 総肝管より肝内に向かって第1次および第2次分枝の合流形式は, 2枝合流型149例(70%), 3枝合流型30例(14%), 後枝独立合流型11例(5%) および左肝管に後枝が合流する型23例(11%)であった. 2枝合流型のうち, 右肝管に第3 次分枝の右前枝と右後枝が別個に合流する破格が2例(1%), 第4次分枝以降の肝管枝が肝門部に合流する破格が2例(1%) みられた. これらの肝管枝は, 後枝独立合流型の右後枝や左肝管に後枝が合流する型の右前枝とともに, 副肝管とされることがある. しかし, 帰納的に類推すると, 諸家が従来副肝管と呼称した胆管枝が実は, 肝管の第 2, 3, ……n次分枝 (ある肝領域の唯一の胆汁排出枝) の破格と考えられた. 「副」は付随的な意味ゆえ, 機能的に同等な肝管枝が形態上「副肝管」とされるのは不適当で, この場合「異所性肝管」と呼称すべきである.
著者
相原 直樹 田妻 進 大屋 敏秀 初鹿 寿美恵 山下 喜史 堀川 和彦 越智 秀典 寺面 和史 平野 巨通 三浦 弘之 佐々木 雅敏 梶山 梧朗
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-13, 1994-02-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
12

大柴胡湯によるコレステロール胆石形成に対する影響を, コレステロール胆石形成モデルを用いて検討した. 雄性ゴールデンハムスターを, 普通食投与群 (N群: n=12), グルコース食投与群 (L群:n=14), 1%大柴胡湯添加グルコース食投与群 (L+D群:n=12) の3群にわけ4週間飼育した後, 胆石出現率, 胆汁脂質, 血清脂質および肝組織中の脂質の差を検討した. コレステロール胆石の出現率は, L群において71%と高率であったが, NおよびL+D群においては胆石形成を認めなかった. 胆汁中の胆石形成指数は, N群0.44±0.28, L群0.85±0.19, L+D群0.43±0.24 と大柴胡湯投与により有意に低下していた. 一方, 血清脂質は, コレステロール, 中性脂肪ともにL群においてN群, L+D群に比し有意に上昇したが, N群, L+D群間に有意の差は認めなかった. 肝組織中の脂質はN群に比べL+D群において遊離コンステロールの低下, コレステロールエステルの上昇, L群においては逆の変化を認めた. 以上より, 大柴胡湯は, 腸管でのコレスデロール吸収抑制, 肝でのコレステロール合成抑制および胆汁酸への異化亢進により, 胆汁中コレステロール飽和度を低下させ, 胆石形成に抑制的に作用することが示唆された.
著者
中沼 安二 佐藤 保則 中西 喜嗣
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.592-598, 2012 (Released:2012-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

要旨:胆管内乳頭状腫瘍intraductal papillary neoplasm of bile duct(IPNB)は,肝内外の胆管内に発生する乳頭状腫瘍で,狭い線維性血管芯を中心とした病変であり,2010年WHOの消化器腫瘍分類の改訂で,胆管癌の前癌・早期癌病変として認知された.胆管壁内外へ浸潤し,通常の胆管癌へと進展する症例も知られている.そして,IPNBは,膵に見られる導管内乳頭状粘液性腫瘍IPMN,特に主膵管型に類似することが注目されている.最近,膵IPMNの分枝型に相当するIPNB症例が相次いで報告されている.これら分枝型IPNBはいずれも胆管周囲付属腺に病変の主座を置く病変であり,嚢胞状,特に瘤状あるいは憩室状の変化を示した.現時点で,分枝型IPNBとして報告されている病理像を解説し,その発生,進展機序を述べた.
著者
中沢 貴宏 大原 弘隆 城 卓志
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.569-578, 2010 (Released:2011-01-07)
参考文献数
30
被引用文献数
4

要旨:IgG4関連硬化性胆管炎は原発性硬化性胆管炎や胆管癌との鑑別が必要である.自己免疫性膵炎の合併の有無,血清IgG4値,全身合併症を参考に,胆管像,管腔内超音波像で診断することが重要である.胆管の生検診断は胆管癌の除外に有用である.膵病変が明らかでなく,硬化性胆管炎のみを認める症例は診断に難渋する.治療は自己免疫性膵炎と同様にステロイドの投与で軽快するが,再燃を繰り返す症例やステロイドに反応が悪い症例に対して海外では免疫抑制剤の併用も行われている.予後はおおむね良好であるが,肝萎縮をきたす症例も報告されている.