著者
高久 元
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-38, 1998-05-25
被引用文献数
7

インドネシア共和国スマトラ島西スマトラ州に生息する食糞性甲虫体表上よりハエダニ科ハエダニ属Macrocheles kraepelini種複合体の1種であるM. hallidayi Walter and Krantz, 1986雌個体を採集し飼育を行った.その結果, 第1若虫, 第2若虫及び雄が得られ, それらの詳細な記載を行った.kraepelini種複合体に属する種の多くは成体及び第2若虫の第4脚膝節に7本の毛を有するという特徴をもつ.ハエダニ科のNeopodocinum属でも同様の特徴が見られるが, Neopodocinum属では第1若虫の第4脚膝節上の毛は5本のみであるのに対し, 今回得られたM. hallidayiでは6本であり, M. hallidayiが属する種複合体の特徴的な形質状態であると考えられる.また, M. aestivus Halliday, 1986は, 背板毛の形態, 胸板の模様, 第4脚膝節の毛数などにおいてkraepelini種複合体の種と共通の特徴をもつことから, 新たにkraepelini種複合体の構成種とした.
著者
後藤 哲雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.125-127, 2008-11-25
著者
武田 富美子 當間 孝子 宮城 一郎
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-133, 1998-11-25
被引用文献数
4

沖縄県内の床の塵中ダニについては, 従来2.0mmまたは0.5mmメッシュと0.075mmメッシュのふるいを使ってダニを分離した結果が報告されてきた.今回はTarsonemus属のような小型のダニを逃がさないために0.032mmメッシュのふるいを加え, 沖縄県内の3軒の家(A, B, C)から寝室床の塵を採集し各種ダニの出現頻度と出現数を調査した.ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinusが優占種で, 総ダニ数の43.4%であったが, Tarsonemus属のホコリダニTarsonemus spp.は23.4%, Tarsonemus属同様小型のミジンイレコダニCryptoplophora absconditaも12.1%を占めることを確認した.室内塵中から多数のミジンイレコダニが報告されたのはこれが初めてである.ヤケヒョウヒダニ, ホソツメダニCheyletus eruditus, Bak属のツメダニBak sp., イエササラダニHaplochthonius simplex, カザリヒワダニCosmochthonius reticulatus, ミジンイレコダニおよびTarsonemus属のホコリダニは, 年間を通して検出された.また, Cosmoglyphus sp.はこれまで日本の室内塵中からの報告はなかったが, Cの寝室床の5月には総ダニ数の22.2%を占めた.
著者
大空 鷹介 矢野 修一
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-92, 2008-11-25
被引用文献数
5

半数倍数性の性決定様式を持つナミハダニ雌成虫は未受精では雄しか産めないため,未受精雌の受精を早めるような適応が見られるかもしれない.母子交配が可能なナミハダニでは,この適応が息子の形質にまで影響している可能性がある.そこで,母親の受精の有無が息子の形質に与える影響について,1)母親を早く受精させるため,未受精雌の長男は(受精雌の長男より)早く成長するか,2)未受精雌の息子と受精雌の息子で雌を獲得する能力に差異があるか,3)未受精雌の息子と受精雌の息子で分散性に差があるか,の3つの仮説を検証した.その結果,母親の受精の有無という産卵前の母性効果も,母親が同居したかどうかという産卵後の母性効果も,認められなかった.一方,未受精雌の息子の方が受精雌の息子よりも先に雌をガードすることが多かった.また,分散性も未受精雌の息子の方が高かった.これは,受精雌の息子に比べて未受精雌の息子の周囲にはより低い雌比が予測されるため,未受精雌の息子が雌の探索やガードにより多くのコストを割いている結果だと考えられる.
著者
栗城 源一
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-13, 1993-05-25
被引用文献数
2

福島県猪苗代町谷地平地区のミズゴケ湿原で最も優占するササラダニ, ヤチモンツキダニTrhypochthoniellus setosus Willmannを種々の温度条件下で飼育し, その生殖法, 産仔数, 各発育段階の成長速度を検討した。ヤチモンツキダニの生殖法は, 産雌単為生殖で卵胎生である。雌は最盛期には1∿3日間隔で幼虫を1個体ずつ産下し, 20℃での平均産仔数は3.3個体, 25℃では10.5個体, 29℃では14.1個体で, 産下限界温度は15.1℃であった。第一若虫が第二若虫に脱皮するまでの発育限界温度は8.5℃, 産下された幼虫が成虫になるまでの有効積算温量は1600.5日度と算定された。
著者
内川 公人 川森 文彦 川合 清也 熊田 信夫
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-98, 1993-11-25
被引用文献数
7

神奈川県山北町における調査によって, 鈴木の見取り法のうち特に黒布を用いる方法がタテツツガムシ幼虫の野外サンプリングに非常に適していることを確かめた。この方法でタテツツガムシ幼虫がミカン畑の内外に多数生息していること, 比較的湿度の高い地点に謂集するらしいこと, などを確認した。野外で本種幼虫を多数採集するにも鈴木の見取り法は効率的であるが, 一旦採集した幼虫を実験室内で回収するのに種々の工夫を加える必要があるものと思われた。
著者
後藤 哲雄 穐澤 崇 渡邊 匡彦 土屋 明子 嶋崎 明香
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.93-103, 2005-11-25
被引用文献数
1 25

ミヤコカブリダニ(ミヤコ)の個体数は, 1990年以降に日本各地で急激に増加し, 関東以西の慣行防除果樹園ではそれまでの優占種であったケナガカブリダニ(ケナガ)と置き換わってきている.一方, 北日本への分布の拡大傾向は小さい.このような種の置換と分布拡大の要因を明らかにする一環として, 本報告ではミヤコの休眠性の有無と2種の耐寒性を報告する.ミヤコは, 短日条件と長日条件の産卵前期間が同じであり, 休眠性はなかった.2種間およびケナガの休眠と非休眠個体間の過冷却点(supercooling point)に有意差はなく, -21.9〜-23.3℃であった.ケナガ・休眠雌は, -5℃で7日以上生存した(>50%)が, ミヤコとケナガ・非休眠雌は5日以内に70〜85%が死亡した.このことからミヤコの北進が遅いのは耐寒性がわずかに弱いことも一因であると考えられた.一方, いずれの種においても生残した雌は20℃長日条件下で2個体を除いて産卵し, 産下卵の大半がふ化した.従って, 低温ストレスは産卵数やふ化率への影響が少なく, ミヤコも冬季の低温条件下で生き残ることができる地域では, 定着が可能であると考えられた.